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みんないっしょのいつかめー!

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 次の日。
 ミルガイン君に子供達を任せた後に、三人でもう一度村長さんの所へ行った結果、色々と教えて貰えた。

 まず、領主に報告して戸籍を作ってもらわないと正式な住民とは見なされず、税金が高いらしい。
 なおそれ以外にも、結婚したり、持ち家が持てなかったりするらしいとか。
 身分証だけだと賃貸のみ可能なんだそうだ。

 結婚はどうでもいいけど、家は欲しいので戸籍作ってもらわんとアカンっすね。
 賃貸だとなんか壊した時面倒くさそうだし、どうせなら持ち家が良い。

 半分以上村長さんの話を聞いてなかった二人に改めてそんな説明する。

「そんで後日、空いてる土地のいくつかを、領主さんから許可貰えたら書類にして渡してくれるってさ」
「そん中から選んで住めってことか」

 うん。そういうことです。
 まあ、二人は鍛冶屋さんの内装とか気になって話どころじゃなかったからね。仕方ないね。

「じゃあその書類が来るまでの間にドラゴさんの身分証を作らないとですね」
「身分証無いと戸籍作れないとか、ファンタジーなのに地味に現実的だなぁ」
『現実ですから……』

 ワタナベさんがツッコミを入れているがスルーである。
 下手に反応すると面倒臭いからね。

 なお、戸籍は領主から正式に住民として登録されたら作られるわけなのだが、それにはどうしても身分証が必要だ。世間的には移住に分類されるからかもしれない。まあ、そりゃそうか。

「そういえばそうだった」

 ドラゴさん反応しちゃったよ。今は人が居ないから良いけど、誰かが見てたら変な人に見られるからワタナベさんの言葉は基本スルーしようって話し合ったの思い出してよ。忘れてんなコレ。まあいいか。ドラゴさんだしな。

「むしろ身分証がありゃ戸籍作れんだから、あっちより簡単なんじゃね? 知らんけど」
「知らんのか」
「知らんすよ」

 そういう知り合いが居たら分かるかもしれんが、アタシのまわりにゃ居なかったんで。知らんです。

「身分証ってどうやったら作れるん?」
「冒険者章ゲットしたら作れるようになるっすよ」
「つまり、ドラゴさんも街に行く必要がありますね」
「おぉ~」

 左手の冒険者章をドラゴさんに見せながら説明すると、ドラゴさんは冒険者章を色んな角度から眺めながら目を輝かせた。

 ドラゴさんの白目、黒いからか瞳のアイスブルーがよく目立つ。
 マジで氷みたいな透明感あるアイスブルーなんだが、その目どうなってんすかね。

 そういやみんなの目の色とかちゃんと見てなかったな?
 ハーツさんは、……えーと、メガネ反射させるの止めて見えない。

「ま、アタシらも組合に報告せにゃならんし、一回みんなで街行きやすか」
「めんどくさいですね」

 目の色、とりあえず今は置いとこう。あんま見えんし。

「ハーツさんこの村でお留守番します?」
「それはちょっと寂しいんで嫌です」
「嫌かぁ」

 じゃあ仕方ないね。



 というわけで、簡単に準備して街へ向かうことになった。

「じゃーねみんな! 街に行ってくる!」

 明るく断言したドラゴさんに、子供達が寂しそうな声をあげた。

「何しに行くんだよ……?」
「おじさん、遠く行っちゃうの……?」
「ん? まぁ、そうだね?」

 さすがのドラゴさんである。そうだね、じゃねェよ。

「やだ……行かないでぇ……!」
「おっさんの嘘つき! どこも行かねーって言ったじゃん!」

 ほらもう誤解したー。

 なんでサラちゃんが泣いたのか、どうしてロン少年に責められるのかも分からず、混乱していたドラゴさんに横から声をかける。

「あーぁ、もードラゴさん主語足りてねェから泣かしちゃったじゃん」
「あ! そっか!」

 どうやら言ったつもりだったらしい。
 うん。ホントにドラゴさんいつも通りだな。異世界に来てもいつも通りってなかなか難しそうなのに、すごいな。尊敬する。
 アタシなんかちょいちょいパンクしそうになってたり………………してねェな? あれ? まあいいか。

「大丈夫ですよ、わたしたちはこの村の近辺に家を持つ予定なので」
「へ?」
「えっ」

 ハーツさんの説明で、ロン少年とサラちゃんが驚いた顔で固まった。
 そんな二人へ、ドラゴさんが明るく言葉を投げかける。

「うん、だから身分証作って戸籍作ってくるね」
「こせき……?」
「つまり、家を持つ為の戸籍を取得しに、一時的に街へ出かけてくるだけなんです」
「戸籍がねェと家持てないし、住民にもなれないんすよ」

 ぽかーん、とした子供達に改めてハーツさんが説明してくれたので、補足情報を付け足しておく。

「……帰ってくんの?」
「うん。ついでにちょっと見物してから帰ってくるね。お土産何がいい?」

 ロン少年の呟くみたいな小さな声にさえ、ドラゴさんは全く気にした様子もなくあっけらかんと答えて、笑った。
 そんなドラゴさんにロン少年が反発しないわけが無く、案の定彼は顔を真っ赤にして声を荒らげた。

「帰ってくるんなら初めから言えよ! バカ!」
「あー、バカって言ったー。バカって言う方がバカなんだよー? お土産買ってこないぞロンちゃん」
「ぐぬぅ! じゃあ、木剣……」

 拗ねながらも、ちゃんと欲しいお土産は言えるロン少年である。

「ロン君、ごめんなさい、言ってないよ」
「ぐぬぬ……! わかったよ! ごめんなさい! 木剣買ってきて欲しいです!」
「わかった、木剣だね!」

 そんな様子を見ていた一番年長さんな幼女、リリンちゃんが、呆れたように肩を竦めた。本日の髪型はポニーテールらしい。おしゃれさんである。

「どーせそんな事だろうとは思ってたわ。あたしお土産は綺麗な刺繍のハンカチがいいなあ」
「わたしは、本……かな……」

 サラちゃんも続けて欲しいお土産リクエストをドラゴさんに言いつつ、モジモジしている。

「ハンカチと、本、うん。覚えた! 街の道具屋さんで探してみるね」

 そんな感じで答えたドラゴさんだったが、ふとロン少年の違和感に気付いた。

「んー? なんかロンちゃん今日普段より元気なくない? なんかあった?」

 普段は鈍感なのにこういう時には気付いてしまうので、なかなか罪作りなオッサンになっているようである。

「うるせえ……」
「ほっといてあげなさいよ。ついさっき失恋したんだから」
「す、すみません、僕のせいで……」

 心底申し訳なさそうに俯くミルガイン君と、虚無みたいな顔で遠くを見つめているロン少年の様子から、察してしまった。

「あー、もしかして、ミルガイン君のこと男だって知っちゃった感じすか」
「……失恋じゃねぇ! つーか、あんな女にしか見えない男なんて知るか!」

 なるほどー。可愛い女の子だと思って、ちょっといいな、と思ってた子が男子だと気付いて世の中の理不尽さを知ってしまったんすね。仕方ないね。

「泣いてんじゃん」
「泣いてねぇし!」

 涙目になってたら泣いてるでいいと思うっすよ。

「色仕掛けにも引っかかりそうになってたもんなぁ」
「うるせぇよ! つーかそんなモンこれっぽっちも引っかかってねぇんだからな!」

 ドラゴさんの言葉に普段通りに噛み付いているが、若干覇気がない。どうやら相当ショックだったらしい。
 がんばれロン少年。長い人生そういうこともあるよ。知らんけど。

「……うん、やっぱり僕、僧兵になります」
「まぁ、そうなるわな」

 ついでにミルガイン君の決意も新たに固まってしまったようだ。いたいけな少年の恋心を砕いてしまったんだから、第二、第三の被害者が出る前に筋肉を付けておきたいと思ったのだろう。
 がんばれミルガイン君。応援してる。

「じゃあいってきまーす」
「ちょ、ドラゴさん先行かないで! アンタ道分からんでしょうよ!」
「では、また来ますね」
「お世話になりました!」
「またねー!」

 色々とグダグダなそんな感じで、ミルガイン君と一緒に街へと向かったのだった。



 
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