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ドラゴさんのみっかめそのごー。

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 神々は、天界を模倣し世界を創り、神々を模倣し人々を創った。
 森の神はエルフ族、戦いの神々は多種多様な亜人種族、大地の神はドワーフ族、そして、知恵の神は人間族を創り上げた。

 彼らは手と手を取り合い、それぞれの長所を活かしながら世界を繁栄させて行った。
 しかしその中で、戦いの神の中でも一際好戦的な神から生まれた種族、魔人族が争いを始めた。
 争いは火種と化し、さらには大きな炎となり、どの種族も一歩も引かず、泥沼化した。

 神々はその争いを終わらせる為に仕方なく、人々に“レベル”を授けたのだ。

「え、なんかいきなりゲームっぽくなった」

 理屈はなんとなく分からんでもないけどそんなんでいいのこの世界の神々。
 この神話アレでしょ、レベルついたら優劣が出来て強いのが勝ったから争いが終わったとかなんかそんなんでしょ知らんけど。

「……そのレベルってのは、可能性の伸び代で、俺たちの指標となってる訳だ……」
「ふむふむ」

 職レベルMAXって何と聞いたら、丁寧に神話から教えてくれたので、きっと誰かから自分が記憶喪失的なことを聞いて気を使ってくれたんだろう。すごく親切この人。

「……中でも職レベルってのは、生活に密接したものから、全く関係ないものまで多岐に渡る……」
「うん」
「……それのレベルMAXとなると、もう伝説なんだ」
「伝説……」

 よく分からんけど、伝説だから伝説なんだろうなぁ。
 ……これで理解したと言っていいのか全然わからんけどまあいいや。

「え、なんで自分がレベルMAXだと思ったの?」

 自分、のところで自分を指差しつつ尋ねると、親方さんは静かに語り始めてくれた。

「……ドワーフ族の伝承に“鍛冶極めし者 槌の音鋭く 短く 光明の中よりいづる”ってのがある」
「わぁ」

 すごい、本当に伝説っぽい。

「……アンタの打ち方を見てると、その鍛冶師なら誰でも知ってる伝承のことを思い出した」
「いや、まぁ、たしかに短かったし光ったけど……」

 むしろゲームみたいな光り方と出来上がり方したけど。

「……それに、こいつを見りゃ分かる」
「へ」

 親方さんが、打った剣を様々な角度で眺めながら呟いた。

「……ここらではお目にかかれない、上等な剣だ」
「そーなの?」

 鑑定とかそういうやつ、自分は出来ないから分からんのだが、上等なのソレ?

「……あんな少量の屑鉄から、こんなレア等級の剣を作れる腕前、レベルMAX以外考えられない」

 ていうかレア等級なの?

「いや、たまたまそうなっただけで、違うかもしれないじゃん?」
「……じゃあもう一度打ってくれるか」
「え」

 や、別に打つのはいいけど、親方さんはいいのそれ。

「……都合よく、材料は揃ってる。街の鍛冶屋に比べれば、質は劣るだろうが……銅の剣、鉄の剣、鋼の剣を三本ずつ、作ってみてくれ」
「え、えぇえ」
「……そうすりゃ、分かる。たまたまなのか、実力なのか」

 なるほど。鍛冶屋さんには鍛冶屋さんの実力テストがあるんだな。

「……わかった」

 


 そして作った九本の剣は、さっきと同じように光りながら一瞬で出来上がっていった。

「いや、なんでぇ!?」

 意味わからんよ!
 そりゃこんなにぽんぽん剣が出来たらめっちゃ楽しいけどさ!
 いくら自分でもこんな風に剣が出来るなんてありえないことはわかるよ!

「こんなんゲームじゃん……」
「……さっきから言ってる、その、げーむ、とはなんなんだ?」
「ゲームは、あー、なんだっけ」

 説明難しいんだよなぁ。

「……まあいい、どれも質は申し分ない。むしろ上等すぎるくらいだ。……これでアンタがレベルMAXだと分かったな」
「待って、ちゃんと作りたいんだけど」

 金槌でカンカンやっただけで完成なんて、自分が納得できない。

「……つまり?」
「多分これ、簡易で製作してるだけなんだよ。ほんとはもっと丁寧に出来るし、もっとクオリティが上げられるはずなんだ」
「……それは、本当か?」
「うん」

 ゲームと同じ仕様なら、だけど。

「……なら、ちょいと待ってろ」
「え?」

 親方さんは、炉の向こうあたり、材料を置いてある所の棚からひょいと何かを取り出した。

「……ほら、これを使え」
「え、これ、見たことない」
「……ミスリルだ」
「初めて見た!」

 炉の明かりに照らされたそれは、銀にもプラチナにも似ているけど、どこかうっすら青みを帯びていた。
 ミスリルなんて、ファンタジーでしか無い素材だよね。
 あれ、どうだっけ。あったっけ。大体のゲームにあるからちょっと分からん。まあいいや。

「……剣にも防具にも魔道具にも使える、魔力伝導率が高く加工しやすい。強度は打ち手次第な、ギャンブルみたいな素材だ」

 あっ、これファンタジーでしか無い素材だね!
 だって魔力伝導率とか言ってるもん。ファンタジーだわー。

「え、でもこれ、……いいの?」
「……それを扱うには、俺はまだレベルが足りてない」
「でも、足りれば加工出来るじゃん」

 レベルなんて上げればいいんだよ?

「……あと、五十年はかかる」
「ぱ!?」

 五十年は長すぎない!?
 え、そんなかかるんだレベル上げ。

「……いつか、この手で、とは思っていたが、今年でもう四十だ……。ドワーフ族の神から洗礼でも受けない限り、規定のレベルに上がる頃には九十……」
「え、洗礼受けたら寿命伸びるの?」
「……神に認められれば、な」
「なるほどなぁ……」

 よく分からんけど大変なんだなぁ、職人さんって。

「……さぁ、俺は気にせずそれを使ってくれ」
「ほんとにいいの? いきなり規定レベルに達したらどうするの?」
「……その時はまた買えばいい」
「うーん。じゃあ今度お金出来たら買ってくるよ。材料使うだけ使ってそのままはちょっとヤダし」

 材料ってお金かかるんだよね。自分でもそれは知ってるよ。だからこそ失敗だってしたくないんだよね。

「……そうか。見かけによらず、律儀だな」
「見かけはワイルドダンディだよ」

 イケオジだよ。

「……予備のハンマーでいいのか?」
「うん、ちょっとやりにくいけど大丈夫、イケる」
「……じゃあ、やってみてくれ」
「任せろ」

 受け取ったミスリルをでっかいペンチみたいなやつで挟む。
 これの正式名称知らんけど、そんなんは作業に関係ないのでまあいいや。

 そのまま炉に突っ込んで少し溶けるのを待った。自然と何をしたらいいのかが分かる。なんかワクワクした。
 金床の上に赤くなったミスリルを置いて、いざハンマーで打とうとした瞬間だった。

「んぇっ!?」

 ペロン、となんかメニュー画面みたいなやつが出て来た。
 内容は、何をしたら高品質になるのかとか、残り何工程あるのかとか、今使える鍛冶スキルとか、なんかそんなアレだ。

「どうした?」
「えっと、だ、大丈夫イケる」

 早くしないと冷えちゃうから、とりあえずやろう。
 ええと、ええと、まずは“鍛治職人の知恵”で、まだ完成しないようにして、それから、“匠の恩恵”でクオリティを上げ……上がり過ぎてクオリティゲージMAXになったなにこれ。
 まあいいや完成させなきゃ終わらないし。えーと、そしたら“単純作業”で少しずつ打って行けばいいよね、うん……なんか知らんがヨシ!

 作業場に槌を振るう音が響く。
 とはいえ、スキルを使っているからか、不思議な音だ。

 コン、カンカンカン、コンコン、みたいな慎重な作業をしてるような音と、ガンッ! という鋭い音だ。
 そして最後に一際大きな光がミスリルから放たれた。

「できた!」

 ペンチみたいなやつの先、ミスリルの塊があった場所に、見事に輝く片手剣があった。

 ……いや、なんでこれ出来たん?


 
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