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みっかめそのにー。

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 猫獣人の特徴、夜行性。俊敏。持久力には欠けるがアクロバティックな動きが得意。隠密性にけ、狭い隙間を通り抜けることが出来るなど、肉体の柔軟性も高い。

『とはいえ、ユーリャさんはレベルが高いですから、蚊を叩く程度で大体の生き物は死にます』
「いや、なんすかそれ、やだこわい」

 ワタナベさんの説明を聞きながら、木々の隙間を走り抜ける。
 川はなんかジャンプで飛び越えられたので自分の身体が強化されてる事は理解してたけど、まさかそんな感じだったなんて。

 つーか蚊とそのへんの生き物を一緒にしたくないんすけど。
 え、力加減間違えたらマジでヤバいじゃん。やだ。
 そんな感じで殺人犯とかなりたくないんすけど。

『そんなこと言われても、こっちにもレベルって概念があるんで仕方ないですよ』
「えっ、そうなんだ」

 そういえばアタシ、ゲームの自キャラのレベルカンストさせてたんだった。
 それをそのまま持ってきたらそりゃそうなるか……、……いや、待てよ?

「……弱体化させとけば良かったんじゃ……?」
『その前に魂定着しちゃったんで無理でしたねー』
「無理だったか……」

 でもそれアタシら悪くねェんだよな。

「じゃあ、呪いとかそういう装備で弱体化させるのは?」
『レベルが高過ぎて大体の呪いとか精神異常とかレジストしますんで意味ないですね。ただの不気味な装備の人になりますよ』
「えぇえ……」

 やだ……。

「神的なヒト達に弱体化の呪いをかけてもらうのは?」
『うーん、難しいと思います』
「なんで」
『あとはてめぇでなんとかしやがれ、って丸投げされちゃったんですよね、わたくし』
「いや、シワ寄せがアタシらに来てんすけど」
『てへ』
「てへじゃねぇよ」

 シバくぞ。

『ともかく、この世界はわたくしが管轄していた世界です。基準が地球のRPGやオンラインゲームのファンタジー世界なので、なんかあちこちがゲームっぽい雰囲気なのは仕様だと思ってください』
「仕様……」
『それから、ゲームを参考に色々作ったので、地球と同じ植物が生えてたり生えてなかったり違う植物があったりぐちゃぐちゃです』
「ぐちゃぐちゃ……」

 ひでぇ世界もあったもんだ。
 ただの趣味で出来てんじゃん。

『あとは……そうですね、この世界独自の言語とか色々作ろうとは思ったんですが、面倒だったのでほぼ一言語です。よくある感じで、共通語って呼ばれてます』
「へぇ」
『ちなみにユーリャさん達はちゃんと言語理解出来るようにしてありますので、読み書きにも不自由は無いと思います』

 やったー、便利ー。

『他にご質問は?』
「あ、じゃあ一個。冒険者って居る?」
『居ますよ。この世界では組合と呼ばれる組織に加入することを条件に、冒険者を名乗ることが許されています』

 なんだろう。気のせいかな、響きが農協っぽいんすけど。

『彼らは左手の甲に、冒険者章と呼ばれる独自の印章を魔法で刻み、それによって個人を判別したり、お金を預ける口座を開設したり、今までのダンジョン踏破歴などを記したり、なんか色々してます』
「すげぇゲームっぽい」
『仕様ですから』

 仕様だった。

『冒険者は組合に加入さえすれば誰でもなれる職業ではあるんですが、荒事が多かったり、とにかく危険と隣り合わせなので、借金返済したい人とかそういう人がよく一獲千金狙って死んでます』
「あ、よくあるパターン」

 ゲームとかそういうのでよく“へんじがない ただのしかばねのようだ”とかされてるやつだ。

『だいたいはそんな感じですね』
「なるほど。……そういやいつもゲームしてて気になってたんすけど、そういう冒険者が所属してる団体ってどうやって成り立ってんすかね」

 何が収入源なんすかね。

『うーん、この世界の場合は、大体のファンタジー世界にならって完全中立なので、国に属しきらずに流通を回したり、ダンジョンの管理したりして運営されてます』
「……え、そんなんで成り立つんすか」

 なんか怖い団体なんじゃないすよね。いやっすよそんなん。そういう夢は壊さないで欲しい。

『…………ダンジョンの資源に頼り切ってるのは、あると思います』
「大丈夫なんすかそれ」

 腐ってないといいなぁ。たまにあるよね、ラノベとかそういうので、上層部が汚職まみれとか。やだなぁそういうのだったら。

『一応、街の便利屋さんみたいなポジションではあるので、それなりに儲けはあるはずですよ!』
「それだと、商人達ってどうなってるんです?」
『商人組合は流通の要ですね。交易や輸出入などが主な収入源で、それを街に卸したりする感じでしょうか』 

 へぇー、なるほど。
 でも、そっちもそっちでなんかありそうな感じするのなんなんすかね。いやなんすけど。

「あ、それなら狩った鹿肉持ち込んだら引き取ってくれるんすかね」
『だったら冒険者組合のが手数料が低いですよ』
「あー、商人組合、手数料高いんすか」
『はい、なんかすごく高いみたいです』

 つーか手数料とかあんのね。まあそりゃそうか。手数料取らないと維持費とかあるだろうしね。

「まぁ、新参や一見さんは足元見てるんでしょ。信用は金で買うってやつっすね。ある程度人脈を築かないと安く出来ないのはよくある事っす」
『なるほど。でもそう考えると、冒険者組合はどうして安いんでしょうか』

 通り抜けようとしたら顔面に極太の木の枝が来たけど、軽く身を屈めるだけで避けられた。
 身が軽すぎてすぐどっかにぶつかりそうなのに、普通に避けられるとか、自分がどうなってんのかよく分からん。

「んー、商人組合と差別化を図るために維持費と人件費の最低限だけ取ってるって感じすかね」
『それになにかメリットがあるんですか?』
「安く買ってたくさん売ることで儲け出してんじゃないすか? 質より量ってやつ」

 ちょっと走るだけで景色がすごいスピードで流れてくんだけど、ちょっとでも体の動かし方を確認しといてほんとに良かった。
 でないと今頃絶対コケてる。

『あー、なるほど。そっちのが手数料を安く出来るんですね』
「まぁ、細かいところは実際に調べてみないと分かりませんがね」
『調べるつもりなんですか!?』

 つーか、どっかから驚いた声が聞こえるけど、コイツ今どこに居るんだろう。
 まさかとは思うけど頭の上に居ないよね。猫耳の間とか。もし居たらあとでシバこう。

「え、市場調査しといた方が高く売れるとこ探しやすいじゃないすか」
『そういうものなんですね……』

 いや、何言ってんのアンタ。

「そりゃそうでしょうよ。そういうことしとかないとどこで騙されてぼったくられるか」
『あー……なるほど』

 商人ってのはしたたかだしね。どういう商売してるかは商人によって違う。
 彼らにとっちゃ騙される方が悪いってことになってるわけで、なら自衛は大事っていうね。

 とか色々考えていたら、ふと森を抜けた。

「お?」

 開けた視界の先に、街と塀が見えた。
 それから道と、門だろうか。行商らしき人が何人か並んでいるのも見える。

『あ、街ですね。あれは……あ、良かった。ここ比較的平和な国ですよ』
「比較的平和ってのが気になるんですが」

 それ平和じゃない国もあるってことじゃないすか。ガチめに嫌なんすけど。

『そりゃ日本だって比較的平和な国だったでしょうに』
「まぁ、そりゃそうすけど」
『日本と違うのは、スラム街があって、スリがちょっと居て、夜道に強盗がうろうろしてて、女の子は昼でも一人で歩かせられないってくらいです』
「あ、それ平和なんだ」

 日本国外で聞いてた治安だよそれ。ぬるま湯だった日本と比べたらダメなやつだよ。なんで日本持ち出したんすかアンタ。

 とはいえここは異世界。そういうこともあるわけで、甘えたことは言ってられない。

 簡易の地図を見る。
 青い点は、街の方向だ。

「んじゃ、情報収集と行きますか……」

 軽く身だしなみを確認してから、改めて気合いを入れたのだった。


 
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