15 / 68
みっかめー。
しおりを挟むさて、あれから頑張って歩いた結果、あっという間に夜になってしまったので、昨日同様野宿をしました。
猪肉を焼いて食ったんだけど、さすが豚科というか、豚科だよね? 知らんけど。まあいいや。美味しかったです。骨も良い肉の味がしてた。
いや、肉しか食ってねェよ! 他の味が食いてェよ!
もうやだよ! 元々アタシぁそんな肉ばっか食えねェんだよ! サラダ食べたい! 野菜! 野菜くれ!
『ユーリャさんは猫獣人なので、肉ばっかりでも大丈夫ですよ?』
「精神が人間なんすよアタシぁ」
『そういうものなんです?』
「そういうものなんすよ」
『へぇー』
へぇーじゃねぇわ。
つーか猫だって草食うだろ。野菜必要だろ。
『それよりも、ドラゴさんと連絡ついて良かったですね!』
「そーね」
『あれ、嬉しくないんですか?』
不思議そうな声を聞きながらずんずんと歩く。
表情は、あんまり意識してなかったけど多分これ無表情だ。
なにせ、コイツが全ての元凶。ゆえにチャット機能ならなんやらを見せられて、ドラゴさんらしき人物と会話が出来たことさえ、なんというか疑わしい。
まぁ、悟られるのもアレだから一応隠すんですけども。
「…………いや、うれしーっすよ?」
『アッ、なんですかその裏がありそうな影のある顔……ッ!』
「いや、なんでアンタが嬉しそうなんすか」
コイツの考えは一向に読めない。自分の心や考えを逐一読まれていることは、これだけ一緒に居れば自ずと理解出来た。
だからこそ、コイツがそんなアタシを野放しにしていることが理解出来ない。
読めないものは、信頼しきれないわけで。仕方ないとはいえ不安要素が強いのはどうにもいただけない。
『わたくしが信用出来ないのは分かりますが、ダメですよ。雰囲気に出てます。しかしそれがまたイイ!』
「それダメ出しなんすか、それとも褒めてるんすか」
『両方です』
「あ……うん……」
マジでなんなんコイツ。
さすがに、こういうノリやテンションには多少なりとも慣れた。
しかし、なんも分からん。
こうやって必死になってコイツを疑っているけど、だんだん無駄なことなんじゃないかと思えてきたりもしている。本当に何も考えてなさそうに見えるからだ。
だがしかし、信用したらなんか負けた気もする。
とはいえ、信用出来る要素も少ない今は、やっぱ疑うことしか出来ん訳で。
決定的な何か、例えば、三人がちゃんと揃うことが出来たら多少信用してもいいと判断出来るだろう。
それまでは神経すり減らしながら、無駄かもしれん猜疑心で心を守るとしよう。
『そういえばドラゴさんはどこかの村に滞在してるんですっけ』
「あァ、うん、そう。とりあえず、なるべくその村を拠点にするようには言っといたっす」
『なら、きっと大丈夫ですね!』
ものすごく明るく嬉しそうに言われたけども、そこにも問題があるんだよなぁ実は。
「それなんすけど、ドラゴさんがちょっと迷子になったらそれ意味無いと思うんすよね」
『あ……』
「まぁ、知り合ったおばあちゃんの手伝いに夢中みたいなんで、暫くは大丈夫かと……」
『なるほど……』
正直、このドラゴさんがアタシの友人のドラゴさんで間違いないなら、天然過ぎるドラゴさんがアタシら三人の中で一番行動パターンが読めない。
自分はそれなりに考えて行動してるつもりではあるが、他人から見ればアタシだって行動パターンは読めないだろうけども、ドラゴさんの場合他の追随を許さないくらいには、通常状態のパターンが行方不明だ。
ゲームの戦闘じゃめちゃくちゃ頼りになるタンクなんだが、現実は本当に天然なので一緒に居るとツッコミが楽しいんだよねェ。
それはさておき、じっとしていてくれるならちょっとそこの村でじっとしてて欲しい。
『あ、そういえばハーツさんとは……』
「全然ダメっすね。多分アレ通知切ってるっす」
『……あちゃー……』
ハーツさんもマイペースなんだよなぁ。
とはいえ、あの人の行動パターンはドラゴさんと比べれば多少なりとも読めるのでマシだ。
多分今頃美味しいものを探してウロウロしてるんだろう。食いしん坊だから。
「それでも収穫はあったんで、なんとかなりますさ」
『収穫?』
「ドラゴさんが村に滞在してるってこたァ、あの動いてない点はドラゴさんってことでしょ」
『なるほど!』
つまりはそういうことである。
「まずはこのままハーツさんを確保してから、ドラゴさんの居る村に向かえばなんとか三人揃うと思うんすよね」
『そうですね! それならきっとなんとかなると思います!』
「やめてフラグ立てないで」
めっちゃ嬉しそうにしてるとこ悪いんですがマジでやめて。
『えっ? どういうことです?』
「あるんすよ。そういう風に“やったか?”とかぬか喜びさせて実は無理でしたーってテンプレが」
『そ、そんな……、なんなんですかその悪魔みたいな所業は……』
「様式美っつーか、なんつーか、そんな感じのアレっすわ」
『そんな感じのアレなんですか……』
そんな感じのアレなんよ。人間って本当に……なんか、あの、……アレすよね。まあいいや。
「そういう事もあるんで、変に期待し過ぎない方がいいっすよ」
『はい……気を付けます……!』
しょんぼりするかと思いきや、なんか決意を新たにしてしまったようである。
つーかそのピカピカ光るのやめてくれればコイツの表情とか体格とか顔立ちとか分かるのにな。
こんなだからあんま信用出来ねェんだよ。まぁ別にそんな興味無いからいいけど。
「そういや、ハーツさんの方に向かってるのは良いんすけど、これ、どこなんすかね」
『うーん、このまま真っ直ぐ進んでも大丈夫とは思いますが……』
お?
「この先に何があるか分かるんすか?」
『大きめの川がありますね』
「へぇ、大きめの川……」
地図がなくても地形が分かるのは便利だな。その機能アタシも欲しいんすけど、なんでそういうの無いんすかコレ。実際歩かないと地形出てこないとかこの地図マジで役立たずじゃん。
『ユーリャさんなら飛び越えられると思います』
「え、橋とかないの?」
『途中で道を見つける事が出来れば』
「なるほどそりゃそうか」
橋があるってこたァ、道があるってことだからね。
『ところで昨日も思ったんですが、なんで歩いてるんです?』
「え?」
いきなり突拍子のないことを言い出したと思ったが、なんか不思議そうな顔でこっちを見てそうな雰囲気である。
なにそれ、歩く以外に移動手段ってあんの?
『ゲームそのままのユーリャさんを持ってきたので、走ったり跳んだりした方が速いですよ。物理的に』
「……つまり、どういうことなんすか?」
ん? なんか嫌な予感して来たな?
『えーと、ユーリャさんはレベルが高いので、ほとんど疲れないから睡眠も要らないし、速度も車並だし、なんなら猫獣人なので夜に行動した方が元気です』
キッパリ告げられたそんな言葉を聞いて、思わず息を吸い込んだ。
「なんで今それ言うかな?」
昨日言えよ! 無駄な時間過ごしちまったじゃねェか!
『え、だって、せっかくの異世界を楽しんでるのかと思って』
「楽しんでたけど! つーかチート付いてんだったらその具体的な説明ちゃんとしろや!」
戦闘力のことだけだと思ってたわバカタレ。
『三回も説明するの面倒なので、三人揃ってからにしようかと……』
「いや遅ェわ」
『遅いかぁ』
「遅ぇよ」
つーかそのくらいなら自分だって説明出来るわ!
誰か一人に話して後の説明丸投げするとか出来るだろ!
『あっ、なるほど! その手があったか!』
なるほど! じゃねェんだわ。考えろよ頼むから。お前神だろ。
『あ、元神です。今はサポートしか出来ません!』
「そういう話してねェし、なんならサポートの為に説明はしとくべきだろ。面倒くさがんな」
『たしかに!』
いや、もう、なんか、……うん、いいや。ツッコミ入れんのもめんどくせェ。放置しよう。疲れた。
色々と諦めて、とりあえずはこの体の特徴やら特性やらの説明を聞きながら、足を進め続けたのだった。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
もう一度生まれたからには死ぬまで生きてやるのだ~幼女魔術師リューリは諸国漫遊する~
くまのこ
ファンタジー
※冒頭に子供が虐待されているシーンがあります。苦手な方は、ご注意ください※
ここではない世界と今ではない時代の物語。
家族の誰にも似ていないと、取り替え子の迷信により両親から虐待されていた幼女・リューリ。
ある日、頭部を強く打った際に、彼女は自身が男性であり凄腕の魔術師で、訳も分からず何者かに殺害された前世を思い出す。
実家にいれば、いずれ虐待死するだけと悟り、リューリは逃亡する。
前世で培った魔法の知識と技術を頼みに生きようとしたリューリだったが、幼児であるがゆえ行動に制約が多く行き詰る。
トラブルに巻き込まれていたリューリを保護したのは、気のいい元剣士を始めとする旅の一行だった。
一行に溺愛されながら旅をするうち、他人を信用していなかったリューリの内面に変化が起きる。
やがて前世の自身の痕跡と、殺害された理由に辿り着いたリューリは、同時に世界の危機に直面する……!
※主人公の転生先は生前と同じ世界です※
※この物語の舞台になっている惑星は、重力や大気の組成、気候条件、太陽にあたる恒星の周囲を公転しているとか月にあたる衛星があるなど、諸々が地球とほぼ同じと考えていただいて問題ありません。また、人間以外に生息している動植物なども、特に記載がない限り、地球上にいるものと同じだと思ってください※
※舞台は西洋ファンタジー風の異世界ではありますが「中世ヨーロッパ」ではありません。また文明レベルも「中世ヨーロッパ準拠」ではありません。魔法を使った「ご都合便利テクノロジー」が存在し、毎日風呂に入ったり水洗トイレを使うのも普通の世界です※
※固有名詞や人名、度量衡などは、現代日本でも分かりやすいように翻訳したものもありますので御了承ください※
※この作品は「ノベルアッププラス」様、「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。※
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
黒髪の聖女は薬師を装う
暇野無学
ファンタジー
天下無敵の聖女様(多分)でも治癒魔法は極力使いません。知られたら面倒なので隠して薬師になったのに、ポーションの効き目が有りすぎていきなり大騒ぎになっちまった。予定外の事ばかりで異世界転移は波瀾万丈の予感。
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる