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みっかめー。

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 さて、あれから頑張って歩いた結果、あっという間に夜になってしまったので、昨日同様野宿をしました。
 猪肉を焼いて食ったんだけど、さすが豚科というか、豚科だよね? 知らんけど。まあいいや。美味しかったです。骨も良い肉の味がしてた。

 いや、肉しか食ってねェよ! 他の味が食いてェよ!
 もうやだよ! 元々アタシぁそんな肉ばっか食えねェんだよ! サラダ食べたい! 野菜! 野菜くれ!

『ユーリャさんは猫獣人なので、肉ばっかりでも大丈夫ですよ?』
「精神が人間なんすよアタシぁ」
『そういうものなんです?』
「そういうものなんすよ」
『へぇー』

 へぇーじゃねぇわ。
 つーか猫だって草食うだろ。野菜必要だろ。

『それよりも、ドラゴさんと連絡ついて良かったですね!』
「そーね」
『あれ、嬉しくないんですか?』

 不思議そうな声を聞きながらずんずんと歩く。
表情は、あんまり意識してなかったけど多分これ無表情だ。

 なにせ、コイツが全ての元凶。ゆえにチャット機能ならなんやらを見せられて、ドラゴさんらしき人物と会話が出来たことさえ、なんというか疑わしい。
 まぁ、悟られるのもアレだから一応隠すんですけども。

「…………いや、うれしーっすよ?」
『アッ、なんですかその裏がありそうな影のある顔……ッ!』
「いや、なんでアンタが嬉しそうなんすか」

 コイツの考えは一向に読めない。自分の心や考えを逐一読まれていることは、これだけ一緒に居れば自ずと理解出来た。
 だからこそ、コイツがそんなアタシを野放しにしていることが理解出来ない。
 読めないものは、信頼しきれないわけで。仕方ないとはいえ不安要素が強いのはどうにもいただけない。

『わたくしが信用出来ないのは分かりますが、ダメですよ。雰囲気に出てます。しかしそれがまたイイ!』
「それダメ出しなんすか、それとも褒めてるんすか」
『両方です』
「あ……うん……」

 マジでなんなんコイツ。

 さすがに、こういうノリやテンションには多少なりとも慣れた。
 しかし、なんも分からん。

 こうやって必死になってコイツを疑っているけど、だんだん無駄なことなんじゃないかと思えてきたりもしている。本当に何も考えてなさそうに見えるからだ。
 だがしかし、信用したらなんか負けた気もする。

 とはいえ、信用出来る要素も少ない今は、やっぱ疑うことしか出来ん訳で。
 決定的な何か、例えば、三人がちゃんと揃うことが出来たら多少信用してもいいと判断出来るだろう。
 それまでは神経すり減らしながら、無駄かもしれん猜疑心で心を守るとしよう。

『そういえばドラゴさんはどこかの村に滞在してるんですっけ』
「あァ、うん、そう。とりあえず、なるべくその村を拠点にするようには言っといたっす」
『なら、きっと大丈夫ですね!』

 ものすごく明るく嬉しそうに言われたけども、そこにも問題があるんだよなぁ実は。

「それなんすけど、ドラゴさんがちょっと迷子になったらそれ意味無いと思うんすよね」
『あ……』
「まぁ、知り合ったおばあちゃんの手伝いに夢中みたいなんで、暫くは大丈夫かと……」
『なるほど……』

 正直、このドラゴさんがアタシの友人のドラゴさんで間違いないなら、天然過ぎるドラゴさんがアタシら三人の中で一番行動パターンが読めない。
 自分はそれなりに考えて行動してるつもりではあるが、他人から見ればアタシだって行動パターンは読めないだろうけども、ドラゴさんの場合他の追随を許さないくらいには、通常状態のパターンが行方不明だ。

 ゲームの戦闘じゃめちゃくちゃ頼りになるタンクなんだが、現実は本当に天然なので一緒に居るとツッコミが楽しいんだよねェ。
 それはさておき、じっとしていてくれるならちょっとそこの村でじっとしてて欲しい。

『あ、そういえばハーツさんとは……』
「全然ダメっすね。多分アレ通知切ってるっす」
『……あちゃー……』

 ハーツさんもマイペースなんだよなぁ。
 とはいえ、あの人の行動パターンはドラゴさんと比べれば多少なりとも読めるのでマシだ。
 多分今頃美味しいものを探してウロウロしてるんだろう。食いしん坊だから。

「それでも収穫はあったんで、なんとかなりますさ」
『収穫?』
「ドラゴさんが村に滞在してるってこたァ、あの動いてない点はドラゴさんってことでしょ」
『なるほど!』

 つまりはそういうことである。

「まずはこのままハーツさんを確保してから、ドラゴさんの居る村に向かえばなんとか三人揃うと思うんすよね」
『そうですね! それならきっとなんとかなると思います!』
「やめてフラグ立てないで」

 めっちゃ嬉しそうにしてるとこ悪いんですがマジでやめて。

『えっ? どういうことです?』
「あるんすよ。そういう風に“やったか?”とかぬか喜びさせて実は無理でしたーってテンプレが」
『そ、そんな……、なんなんですかその悪魔みたいな所業は……』
「様式美っつーか、なんつーか、そんな感じのアレっすわ」
『そんな感じのアレなんですか……』

 そんな感じのアレなんよ。人間って本当に……なんか、あの、……アレすよね。まあいいや。

「そういう事もあるんで、変に期待し過ぎない方がいいっすよ」
『はい……気を付けます……!』

 しょんぼりするかと思いきや、なんか決意を新たにしてしまったようである。
 つーかそのピカピカ光るのやめてくれればコイツの表情とか体格とか顔立ちとか分かるのにな。
 こんなだからあんま信用出来ねェんだよ。まぁ別にそんな興味無いからいいけど。

「そういや、ハーツさんの方に向かってるのは良いんすけど、これ、どこなんすかね」
『うーん、このまま真っ直ぐ進んでも大丈夫とは思いますが……』

 お?

「この先に何があるか分かるんすか?」
『大きめの川がありますね』
「へぇ、大きめの川……」

 地図がなくても地形が分かるのは便利だな。その機能アタシも欲しいんすけど、なんでそういうの無いんすかコレ。実際歩かないと地形出てこないとかこの地図マジで役立たずじゃん。

『ユーリャさんなら飛び越えられると思います』
「え、橋とかないの?」
『途中で道を見つける事が出来れば』
「なるほどそりゃそうか」

 橋があるってこたァ、道があるってことだからね。

『ところで昨日も思ったんですが、なんで歩いてるんです?』
「え?」

 いきなり突拍子のないことを言い出したと思ったが、なんか不思議そうな顔でこっちを見てそうな雰囲気である。

 なにそれ、歩く以外に移動手段ってあんの?

『ゲームそのままのユーリャさんを持ってきたので、走ったり跳んだりした方が速いですよ。物理的に』
「……つまり、どういうことなんすか?」

 ん? なんか嫌な予感して来たな?

『えーと、ユーリャさんはレベルが高いので、ほとんど疲れないから睡眠も要らないし、速度も車並だし、なんなら猫獣人なので夜に行動した方が元気です』

 キッパリ告げられたそんな言葉を聞いて、思わず息を吸い込んだ。

「なんで今それ言うかな?」

 昨日言えよ! 無駄な時間過ごしちまったじゃねェか!

『え、だって、せっかくの異世界を楽しんでるのかと思って』
「楽しんでたけど! つーかチート付いてんだったらその具体的な説明ちゃんとしろや!」

 戦闘力のことだけだと思ってたわバカタレ。

『三回も説明するの面倒なので、三人揃ってからにしようかと……』
「いや遅ェわ」
『遅いかぁ』
「遅ぇよ」

 つーかそのくらいなら自分だって説明出来るわ!
誰か一人に話して後の説明丸投げするとか出来るだろ!

『あっ、なるほど! その手があったか!』

 なるほど! じゃねェんだわ。考えろよ頼むから。お前神だろ。

『あ、元神です。今はサポートしか出来ません!』
「そういう話してねェし、なんならサポートの為に説明はしとくべきだろ。面倒くさがんな」
『たしかに!』

 いや、もう、なんか、……うん、いいや。ツッコミ入れんのもめんどくせェ。放置しよう。疲れた。

 色々と諦めて、とりあえずはこの体の特徴やら特性やらの説明を聞きながら、足を進め続けたのだった。


 
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