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ハーツさんのふつかめそのにー。

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 はてさて、もしかしたら今の姿はゲームで使ってた自機じゃないかとは思ったものの、やっぱり違うかもしれないので、その確認の為に街へ向かおうとしている訳ですが。

「あの、メルガインさん、本当にこっちで合っているんです?」
「すみません、僕、ミルガインです。そして道は合ってます」
「これ、道なんです?」
「……み、道です」

 森をそのまま突っ切るのを道と申すか。

「いや、方角だけで進んでますよねこれ」
「……方角が合ってれば辿り着けます!」
「途中で崖とかあったらどうする気ななんです?」
「来る途中には無かったので大丈夫です!」

 それ本当に大丈夫なんですかね?

「大丈夫です!」

 ものすごい自信である。



 そんな訳でしばらく歩いたんですが、お約束の展開というか。

「どうしてこんな所に大きな川が……!?」

 いや、どうしてって。そりゃ道以外の所を歩けばこうなりますよね。

「橋は、無さそうですね……」
「そうですねぇ」

 困ったように辺りを見回すメルガイン君に、とりあえずで返事をするわたし。

 まあ、橋があったら道もあると思うんですけどね。

 しかし、結構大きな川だ。深さもそれなりにありそうだし、落ちたらどこまで流されるか分からない感じ。
 とはいえ、避けるのもめんどくさい。んー、ジャンプしたら越えられませんかねこれ。このつよつよボディなら問題ない気がする。
 濡れても乾かせばいいよね。ちょっとやってみようかな。
 実験というか、そんな軽い気持ちでメルガイン君の服の襟の所掴んで跳んでみた。

「えっ? ちょ、あの待っ」

 ……結論から言おう。なんかものすごい速さで対岸にぶっ飛んだ。

「ひ、ひいいぃ……」

 ガクガクと震えるメルガイン君からなんとも情けない声が出ている。

 うん。ごめん。わたしもこれはさすがに怖かったです。
 ずさーっと着地は出来たけど、なんか、あの、心臓バクバクなんですけど、この体どうなってるの怖い。

 考えなかったことにして、ぱんぱんとあちこちを叩いて埃をはらう。

「……行きますか」
「まっ、待ってください! なんですか今の!?」
「さぁ?」

 正直、全然分からない。なんでしょうね今の。

「ここでも手の内は見せないおつもりなんですね……! さすがです……!」

 違うんだけど、うん。まあいいや。

「さぁ、行きましょうメルガイン君」
「……そう、ですね……」

 メルガイン君を置いて、足を動かす。

「あ、あのっ」
「なんですか?」

 来ないなら置いてっていい?

「あの、僕、ミルガインなんです……!」

 うん。紛らわしいなぁ。その名前。



 そんなこんなで、ようやく街に辿り着いた。途中で道を見付けられたのが大きいと思う。
 視界の先に街を囲んでいるらしい塀が見えた。赤いから、レンガかな。あんまり建築とかそういうの詳しくないから石材とか全然分からんけど。

 なお途中でメルガイン君が力尽きたので肩に載せて? 担いで? まあどっちでもいいや。
 ともかく道案内だけしてもらった。本来なら三日はかかる道程だったらしいけども、着いちゃいましたね。なんでこの体エルフなのに身体能力ゴリラなんですかね。
 エルフは森の民ってよくある設定だけど、そういう意味の森の民なんでしょうか。やだ。

 ちなみにメルガイン君は街に到着する直前くらいで完全に電池が切れたみたいに寝落ちてしまった。
 これ、わたしが街に入るために色々頑張らなきゃいけないパターンですね。めんどくさいなぁ。

「おい貴様、止まれ!」

 ほてほて歩いて塀の前まで来たら門番の人に止められた。異世界あるあるである。いやー、実際に体験するとうざいね。
 というか本当に異世界来たっぽい感じがしますね。ちょっとわくわくする。
 
「通行証、もしくは冒険者章を見せろ」

 すごいなぁ。ラノベでよく見たよそのセリフ。ホントに言うんですねぇ。

「あ、すみません、わたし、この国の者じゃないので無いです」
「無い!?」

 本当の事を言っただけなのに、ものすごい怪訝そうな顔をされてしまった。そして、じっと耳を見られて、なんか納得したような顔をされた。

「なるほどな、エルフなら仕方ない」

 え、仕方ない感じの種族なんですかエルフって。

「それで?」
「はい?」
「偏屈なエルフが、どうしてこんな僻地の街に?」
「あ、そういう認識なんですね」

 懐から出した書類に何かを書きながら、確認していく門番の人。
 多分これ、簡単な取り調べというか、確認というか、なんだっけ忘れたからいいや。そんな感じのアレでしょう。

「そりゃそうだろ。人間とはそれなりに友好関係があるにも関わらず、あんなに閉鎖的なんだから」

 ふむふむ、どうやらこの世界のエルフは、ファンタジーのイメージでよくあるタイプのエルフな感じの種族らしい。

「しかし、アンタは普通に話せるんだな。俺の知ってるエルフじゃ、吃ってたり早口過ぎたり専門的過ぎたりで何言ってんのか全然分かんねーのに」
「へぇー、そうなんですね」

 エルフって引きこもりのコミュ障限界オタクか何かなんです?

「アンタ、名前は?」
「フレア・ハーツと申します」
「ん、よし。見たところ力尽きた冒険者を拾ってきただけみたいだし、大丈夫だろ。ほい、簡易通行許可証だ。これを役所に持ってけば簡易の身分証が作れる。それまでこの許可証は三日間しか使えないから気を付けろよ。あとの細かい決まりは役所で聞きゃいい」
「わぁ、ありがとうございます」

 言い慣れているのか全然噛まずに説明出来る門番さんの高スペックぶりにちょっと感心しつつ渡された書類を見ると、見たことない文字がたくさん並んでいた。
 でもなんでか読める。やったぁ。なんか知らんけどご都合主義ありがとう。

「拾った冒険者は冒険者組合の施設が役所の横に併設されてるからそこに放り込んどけばいいぞ」

 なんかこの感じから察するに、多分、冒険者ってよく落ちてるんですねぇ。

「分かりました。ご親切にありがとうございます。ひとつ確認なのですが、役所ってどこですか?」
「役所はこの門をくぐってそのまま突き当たりまで行くとちょうど正面にある。“アルヘイン街役所”ってでっかく書いてる建物だ。わかりやすいだろ?」
「わぁ、わたし方向音痴なのでそれはありがたいです」

 本当にめちゃくちゃありがたい。なにせちょっと迷子になっただけなのに三時間とか消えていくからなぁ。

「んじゃ、他に質問はないな? 通ってよし! アルヘインへようこそ」
「ありがとうございます」

 すごく親切な門番さんだった。うざいとか思って本当にすみませんでした。
 お礼を言って、門をくぐった。



 はい。迷いました。

 うん、どうしてでしょう。
 美味しそうなお肉とか売ってる屋台をちょっと巡って冷やかしてただけなのに、どこに迷う要素があったんでしょう。本当に不思議。

 なんか気が付いたら、ものすごく物騒な雰囲気の路地に入ってしまっていました。ここはどこ。
 それでも足は止めずにほてほてと歩く。

 なんか臭いと思ったらあちこちに生ゴミ落ちてるし、ホームレスみたいな人が隅で転がってたりしてるんですが、なにここ。いきなり世紀末みたいになってる。
 さすがに嫌な感じがするので、そろそろメルガイン君には起床して欲しい。そして道案内して欲しい。

 ふと、遠目から汚い格好の男性が五人くらいで徒党を組んで、ニヤニヤ笑いながら近寄って来た。

 と思ったら、わたしの姿を近くで見た瞬間顔を引き攣らせ、
「うわぁぁぁこいつエルフだ!!!」
「変な魔法の実験台にされるぞ!!!」
「逃げろ!! 早く! おいどけよ!!」
「助けてくれぇぇぇぇ!! 俺には妻と子が居るんだ!」
「ひいいいいいいい!!!」
 と、ホラー映画ばりの大声と顔面で思い思いに叫び散らかしながら全力で逃げて行った。ものすごく全力で。

 ……いや、まって。
 この世界のエルフのイメージどうなってるの。


 
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