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ふつかめー。
しおりを挟むさて、なんだかんだ色々ありまして、ようやく三人は合流出来たのだった!!
『出来てないですよね』
「願望くらい大きな声で言わせてくださいよ、しょっぱいっすね」
いいじゃねっすかそのくらい。マジしょっぱいすわ。
はぁー、と溜息を吐き出しながら起き上がる。
地べたにそのまま寝たから体が痛いかと思いきや、なんか全然普通である。虫にも刺されてないし、なんかすげーね。コレ。
昨夜頑張ってリボルバーの撃鉄から出る火花と弾薬の火薬で起こした焚き火はさすがに消えてしまっていたけど、なんかそんなに必要なかったからいいや。寒くもなかったし。
でも枝は勿体なかったかねぇ。一応素材だったし。まあ腐るほどあるからいいか。
『しょっぱくないです。食べないでください』
「いや、食わんわ」
見るからに美味しくなさそうやんアンタ。全然肉無いし。
いや、肉あっても人型の喋る何かを食べようなんてサイコパスでもない限りありえないけど。
『あっ、でも性的に食べられるのはアリです!』
「いや、こっちはナシっすね」
どうしろというのか。いや、自分腐ってないんで。ハーツさんは腐ってたけど。つーかコイツ男なんか女なんか全然分からんし、まずそれ以前にこんなちっさいのに欲情しねぇわ。
『えっ? なぜです?』
「なぜてアンタ、守備範囲外から言われても」
『頑張ればお好みの姿で大きくなれるので大丈夫ですよ?』
なにが大丈夫なの?
いくら好みの姿でも中身がアンタの時点で無理なんだが?
「いやそういう問題じゃねぇのよ。朝からどういう会話?」
『ほら、朝って性欲が増えるじゃないですか』
「それ神様もなの?」
『違いますけど』
「なんで言った?」
なんなの?
『それより、ものは相談なんですが』
「なんすか。食わんすよ」
『そっちはいつでも大歓迎なんですけれどもそうじゃなくて』
「歓迎せんでもろて」
アンタマジで無いんで。無理なんで。どう考えても無理なんで。
『もし良かったら、二人にフレンド間メールまたはチャットを送ってみてくれませんか?』
「……あー、なるほど。それでもしかしたらワンチャン連絡取れると思ってんすね」
『えっ、ダメなんですか』
驚いたような声音と明滅する光から、多分結構不安なんだろうと察する。
一晩しか一緒にいなかった訳だけど、なんとなくどういう感情でどういう光り方をするのかは分かったような気がする。
ダンジョンボスがどういう動きしたらどういう攻撃してくるかみたいな、そういう感じで普段から観察眼が鍛えられているからだろう。
「んー……あの二人がゲームのステータス基本設定で、メールとかの通知をONにしてるかoffにしてるか……、賭けっすね」
『くうっ、ダメ元でお願いします!』
ホントにダメ元なんだよな。
うるさいからって切ってそうなんだもんあの二人。実際どうかは知らんけど。ゲームと同じ設定になってるか、もしくはこの世界に来たことで設定が無効化されてんのかどうなのか。それによっても違うしな。
「一応やってはみるけど、連絡付かなくても知らんよ? とりま朝は迷惑だから昼ね」
『なるほどたしかに、かしこまりました』
サラッと納得した小さいのを視界の端に、雲間と森林の隙間から覗く空をぼんやり見ていたところで、腹が小さく“むきゅう”と鳴いた。
緊張してて麻痺してたっぽいけど、どうやら腹が減ったようである。
つーか腹ってそんな音するんだ知らんかった。
「それより腹へりっすわー」
『そういえば、来てから何も食べてないですね』
そうなんよねー。どうしたもんかな。
「こーいう時こそなんか出してよピカえもん」
『ピカえもんて何』
「なんかピカピカ光ってるから」
『安直過ぎる』
失礼な。
このアタシのネーミングセンスは絶賛されてたんだぞ。主にドラゴさんから。
あれ? だからアウトなのか?
「しかしこのままだとアンタの名前ピカえもんで定着しそうっすね」
『えっやだ、もうちょいなんかいいのないんですか』
ええー。なんだよワガママだなぁ。
「じゃあ飯出して」
『ご飯は出せないですが、食べられる物ならこの近くにありますよ』
「なんすか」
『鹿』
鹿……。
「てこたァ……ジビエか……、アタシそゆの捌いたことないんすけど」
『狩ればわたくしが何とかします』
おおー。マジか。
「やったぜさすがはワタナベさん」
『ワタナベ誰』
「え、やっぱピカえもんがよかったんすか?」
『え、いやです』
すごい真顔で言ってそうな声聞こえてきたウケる。
「じゃあワタナベさんで」
『……分かりましたよ……これからわたくしはワタナベですね……』
「なんでそんな残念そうなんすか」
めっちゃウケるんすけど。
『もうちょい良いの付けて欲しかった……』
「いやっすめんどくさい」
『ひどい』
別にひどかねぇだろ心狭ェな。
「……しっかし狩りかぁ」
『何か問題でも?』
不思議そうな声音での質問に、困ったように腕を組んで溜息を吐く。
「これから罪のない動物を殺めるのかと思うと……」
『えっ』
「どう殺れば苦しめずに済みますかね」
下手に苦しませると味が落ちそうなんだよね。内臓とかが傷付いて胃液やなにやらが入ると味がうんたらかんたら、ってドラゴさんが言ってた。
『あっ殺す気は満々なんですね』
「当たり前じゃないすか、これから美味しく頂くのに」
『美味しく頂く気も満々なんですね』
「弱肉強食っしょ、こういう時は」
それがアタシにちゃんと出来るかは別だけど。
だが馬肉がユッケで美味しく食べられるんだから鹿肉だって食えるはずだ。生で食えるかは知らんけど。
あ、でも寄生虫とか怖いから焼くべき? 新鮮なら大丈夫?
サバイバル疎いから分からんなぁ。
まぁ、焼けば食えるか。
『あ、ここから10時の方向、100メートルくらい先に鹿居ますよ』
「遠っ」
なんでそんな遠くなん。木のせいで全然見えんけど。
『それ以外の個体はこっちに気付いて逃げてます』
「え~、感覚鋭敏~」
なるほどさすがは野生動物。
しかしそうなると遠距離物理攻撃マジ便利そうだな。
問題は弓にするか銃にするかだけど、森の中で障害物多いから威力が高い方がいいかな。
だけど銃だと音が大きいから逃げられる可能性が高いか。
となると弓かなぁ。
えーと、弓……弓……ボウガンもあるな?
ちなみにこの武器だけど、選択したら勝手に手の中に出てくるのでとても便利である。どうなってるのかは考えない。めんどくさいから。
しかし今回の場合は、持ち運びと隠密性考えると小型の弓を選ぶべきなんだけど、威力が……うーん。
まあいいか、小弓でやれるだけやってみよう。
狩れるといいなぁ。
結論。武器、なんでもよかった。
ワタナベさんの言ってた方向に慎重に向かったらホントに鹿が居たので、そーっと弓に矢をつがえて、引いて、離したら、通りすがりの結構太い枝を貫通した上で鹿の頭が吹っ飛んだのである。
グロかった。
ぱぁんって弾けて、びちゃびちゃってなって、血の海を作り出してしまった。完全なる大惨事。
なんてことをしちまったんだアタシぁ。
『さあ今です! 早くアイテムとして収納しましょう!』
「そんな……」
いくらなんでも薄情ってもんだよそりゃ。目の前でひとつの命を刈り取ってしまったのに、まるで物みたいに……。
『鮮度が落ちます!』
「それはアカン!」
生肉は鮮度が命!
全然何したらいいか分からなかったが、アイテム収納と思いながら手をかざしたら鹿が消えた。
「どうなってんすかこれ」
『所持品の確認をしてみてください』
「おけ」
メニュー画面を開いて所持品を見る。
「お?」
鹿革、鹿胸肉、鹿モモ肉、鹿の肝臓……、すげー、なんか分類別に捌かれてる。
取り出すのはちょっと汚れるから今は置いといて。
「これって、セオリー通りなら時間止まってるんすよね?」
『もちろんです!』
「やったー」
さすがやでぇ。……って、いかんいかん。こいつを信用し過ぎるのは危ないんだった。もしもの事を考えて、一番最悪のパターンとプランAとかBとか用意しとかなきゃ。
はー、めんどくさ。やっぱ放置したい。
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