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ドラゴさんとハーツさんのいちんちめそのにー。
しおりを挟むおばあちゃんを背負っておばあちゃんのお家まで歩く。
なんかめちゃくちゃ歩きにくいけど、がんばってるよ。
自分の足ってこんなに長かったっけ。ていうか自分ってこんなだったっけ。まあいいや。
「すまないねぇ」
「んーん、おばあちゃんこそだいじょーぶ?」
「ありがとうねぇ」
「いえいえー」
『……もしもし、聞こえますか?』
「ぱっ!?」
なんかいきなり声が聞こえてきてびっくりした。
まわりを確認するけど誰もいない。えっ、おばけ? 夢なのに?
あ、そっか夢か。夢だからしかたないね。
色々出てくるよね。夢ってだいたいよくわかんないもん。
つまり、この声はよくわかんない別の人だ!
『あ、はい、えっ?』
戸惑ったような声が頭に響くけど、よくわかんないからほっとこう!
『いや、あの、まって』
だってよくわかんない人に関わってるヒマないもん。
おばあちゃんをおばあちゃんのお家まで届けないといけないからね!
ずんずん歩いて、おばあちゃんちを目指す。
なんかこのあたりの木の枝めっちゃ低いから、おばあちゃんに当たらないようにがんばらなきゃ!
『ちょ、喋らせてくださ』
木の枝がもろいからそのまま歩いていこう。なんかメキメキへし折れてくからだんだん楽しくなってきた。
あっ、今うさぎみたいなのいた! 白いの!
『えっ?』
あっ、そうか、もしかしてこれって、今見えたうさぎが話しかけてるのかな?
『あ、いや、そうじゃなくて』
えっ、違うの?
『はい』
えー、もふもふじゃないのか……。
『はい……』
もふもふだったらよかったのになぁ。まあいっか。
それよりおばあちゃんをおばあちゃんのお家に届けなきゃいけないし、お腹空いたし、あれ、夢の中でお腹空いてる?
すごいリアルな夢だなぁ。
『なんでそうなったんですか』
え? もふもふは自分がなった方がいい?
『……いや、それは聞いてないです』
うーん、なんだろこれ、幻聴かな。やだなー、夢の中で幻聴とか。
『えっ、あの、幻聴じゃないです』
でもなー、幻聴は幻聴じゃないって言うらしいからなー。怖いよねー幻聴。まあ自分はそれなったことないんだけど。
あれ? 今なってんのかなこれ。
『ですから、ちょ、ま、聞いてお願い』
もー、わかったよー、聞けばいいんでしょー。
『メニュー画面のメール開いてくれればいいので! 開いて! 下さい!』
えぇー? なにそれー? うそだぁ。
『いやなんでそこで疑うの!?』
「どうかしたのかい?」
「んーん! なんか聞こえただけだからなんでもないよ~!」
「そうかい、なんだろうねぇ」
「なんだろねぇ~」
『絶対……絶対メール見てくださいね……』
やっぱりオバケだったかもしれない。やだなー。
* * * * * * * *
「なんなんだよてめえは! 急に出て来て邪魔しやがって!」
『あ、もしもし、聞こえますか?』
血まみれのリーダーっぽい男性が声を荒らげて怒鳴るのを視界に捉えながら肉を食べていたら、頭の中から知らない声が響いた。
ちょうど咀嚼音とその他色々と重なって何を言っているのかさっぱり分からない。
「え? なんですか? 肉はあげないって言いましたよね」
「何の話だよ!」
『はじめまして、恐れ入ります、実はですね、色々あってあなた達をこの世界に飛ばしてしまった者なんですけれども』
ふむふむ?
頭の中の声とリーダーっぽい男性の怒鳴り声が若干ズレたので頑張って聞いていたけど、早速面倒になって適当に返す。
「何か調味料でも見付けたんです?」
「ねぇよ!!」
『いえ、あの、ですから、そうじゃなくてですね』
なんだ、違うのか。
「うーん、肉が欲しいなら自分で狩りに行ってくださいね」
『えっ?』
「そんな話してねぇわ!」
お、これは聞き取れましたね。なるほど。
「じゃあ普通に話せばいいじゃないですか」
なんでこの人二重音声で話してんです?
「てめえのせいだろうが!」
『あ、はい……』
「人のせいにしないで下さいよ。まったく、せっかくの食事がまずくなるじゃないですか」
今食事中なんで、静かにしてほしい。
唾とか飛ばさないでくださいね。
「てめぇ……! バカにしてんのか!!」
『あの、ちょ、まって』
それよりもさっき採ったハーブっぽいやつ、これちょっとだけ載せて肉と一緒に食べてみたらめっちゃ美味しいんですけど、すごいね。一気にサラダチキンみたいな味になった。ハーブすごい。おいしい。
「ハッ、ソイツを庇うってこたぁ、あれか、アッチの趣味でもあんのか?」
『メニュー画面あるんですってば』
「それよりこの辺で美味しいものってどっかに売ってないですかね」
なんか色々言ってるけど、随分やかましい夢ですねぇ。なんなんだろ。不思議。
「…………もういい! てめぇら行くぞ!」
『いえ、だから、そこのメールに書いて』
「あ、お疲れ様でしたー」
『聞いてお願い』
リーダーっぽい男性が、他の血まみれ半泣き男性たちを引き連れて、ぷんすかしながら帰って行ったので、もぐもぐ食べながら手を振った。食べながらでもある程度頑張れば普通に喋れるの凄いですねぇ、さすが夢。
で、さっきからなんなんでしょうねこの声は。
『メニュー画面にある簡易の地図をですね、見てほしいんです』
メニュー画面?
そんなのあるのか……あ、ホントに出た。
へぇー、地図だ。なるほどなぁ。こっち行くとどうなるんですかね。
『ちょ、あの、そっちは逆で』
「待ってください!」
「ん?」
真っ白でなんも使えないなこの地図。来たことないとこに来たんですねぇ。とか考えていたら、転がっていたはずの少女がいつの間にか起き上がって声をかけて来ていた。
「危ないところを、本当にありがとうございました」
「あぁ、こっちこそ貴重な火をありがとうございました、それじゃこれで」
「え?」
『ああああああまって!』
うるさいなぁ、この子まで副音声付いてんのか。
ホントにどうしてこんな夢見てるんでしょう。わたしの頭の中どうなってんのかな。
「あっ、あのっ、お礼をさせてください!」
「いや、いいです、別にそういうの」
『聞いて!』
なんかさっきと同じ声のような気もするけど、分からないからいいか。考えるの面倒くさいし。
「そうはいきません! 受けた恩は必ず返すのが我が家の家訓なんです!」
「そうなんですね。でもわたしそういうのいらないんで」
『聞けよ!』
さっきからうまく聞き取れないのに聞けとはこれ如何に。
同時に喋る方が悪くない?
聞かせる気ないじゃんね。
「僕はミルガインっていいます! お名前をお伺いしてもいいですか?」
「え? きみオトコの娘だったの?」
「はい! れっきとした人間族の男子です!」
よくよく聞けば女の子にしては少しだけハスキーな声質だ。
とはいえ、女の子の中でもこのくらいの声質の子は普通に居るでしょうし、よく聞かなきゃ分からんなこれ。特にわたしは二重音声も付いてたから全然分からんかったですね。そんなに聞いたか知らんけど。
「えっ、あー、なるほど、把握」
「はい?」
男が三人と、オトコの娘。とくれば、何が起こるかというと……、とまで考えてピーンと来た。
改めて彼をじっと眺めて観察する。
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「あいつら、きみを女の子だと思ってナンパしてきたんでしょう」
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『聞いてよ……聞いてくださいよ……もうやだこの人……』
聞いて欲しいならもっと落ち着いた時に話しかけてくださいね。
『あ……はい……』
しっかし、不思議な夢ですねぇ。ぼんやりそう思いながら、食べかけの肉を両手に適当な方へと歩き始めたのだった。
「まってください! せめてお名前を!」
きみは別に付いてこなくていいよ。
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