上 下
6 / 68

ドラゴさんとハーツさんのいちんちめそのにー。

しおりを挟む
 



 おばあちゃんを背負っておばあちゃんのお家まで歩く。
 なんかめちゃくちゃ歩きにくいけど、がんばってるよ。
 自分の足ってこんなに長かったっけ。ていうか自分ってこんなだったっけ。まあいいや。

「すまないねぇ」
「んーん、おばあちゃんこそだいじょーぶ?」
「ありがとうねぇ」
「いえいえー」
『……もしもし、聞こえますか?』
「ぱっ!?」

 なんかいきなり声が聞こえてきてびっくりした。
 まわりを確認するけど誰もいない。えっ、おばけ? 夢なのに?
 あ、そっか夢か。夢だからしかたないね。
 色々出てくるよね。夢ってだいたいよくわかんないもん。
 つまり、この声はよくわかんない別の人だ!

『あ、はい、えっ?』

 戸惑ったような声が頭に響くけど、よくわかんないからほっとこう!

『いや、あの、まって』

 だってよくわかんない人に関わってるヒマないもん。
 おばあちゃんをおばあちゃんのお家まで届けないといけないからね!
 ずんずん歩いて、おばあちゃんちを目指す。
 なんかこのあたりの木の枝めっちゃ低いから、おばあちゃんに当たらないようにがんばらなきゃ!

『ちょ、喋らせてくださ』

 木の枝がもろいからそのまま歩いていこう。なんかメキメキへし折れてくからだんだん楽しくなってきた。
 あっ、今うさぎみたいなのいた! 白いの!

『えっ?』

 あっ、そうか、もしかしてこれって、今見えたうさぎが話しかけてるのかな?

『あ、いや、そうじゃなくて』

 えっ、違うの?

『はい』

 えー、もふもふじゃないのか……。

『はい……』

 もふもふだったらよかったのになぁ。まあいっか。
 それよりおばあちゃんをおばあちゃんのお家に届けなきゃいけないし、お腹空いたし、あれ、夢の中でお腹空いてる?
 すごいリアルな夢だなぁ。

『なんでそうなったんですか』

 え? もふもふは自分がなった方がいい?

『……いや、それは聞いてないです』

 うーん、なんだろこれ、幻聴かな。やだなー、夢の中で幻聴とか。

『えっ、あの、幻聴じゃないです』

 でもなー、幻聴は幻聴じゃないって言うらしいからなー。怖いよねー幻聴。まあ自分はそれなったことないんだけど。
 あれ? 今なってんのかなこれ。

『ですから、ちょ、ま、聞いてお願い』

 もー、わかったよー、聞けばいいんでしょー。

『メニュー画面のメール開いてくれればいいので! 開いて! 下さい!』

 えぇー? なにそれー? うそだぁ。

『いやなんでそこで疑うの!?』

「どうかしたのかい?」
「んーん! なんか聞こえただけだからなんでもないよ~!」
「そうかい、なんだろうねぇ」
「なんだろねぇ~」

『絶対……絶対メール見てくださいね……』

 やっぱりオバケだったかもしれない。やだなー。




 * * * * * * * *




「なんなんだよてめえは! 急に出て来て邪魔しやがって!」
『あ、もしもし、聞こえますか?』

 血まみれのリーダーっぽい男性が声を荒らげて怒鳴るのを視界に捉えながら肉を食べていたら、頭の中から知らない声が響いた。
 ちょうど咀嚼音とその他色々と重なって何を言っているのかさっぱり分からない。

「え? なんですか? 肉はあげないって言いましたよね」
「何の話だよ!」
『はじめまして、恐れ入ります、実はですね、色々あってあなた達をこの世界に飛ばしてしまった者なんですけれども』

 ふむふむ?
 頭の中の声とリーダーっぽい男性の怒鳴り声が若干ズレたので頑張って聞いていたけど、早速面倒になって適当に返す。

「何か調味料でも見付けたんです?」
「ねぇよ!!」
『いえ、あの、ですから、そうじゃなくてですね』

 なんだ、違うのか。

「うーん、肉が欲しいなら自分で狩りに行ってくださいね」
『えっ?』
「そんな話してねぇわ!」

 お、これは聞き取れましたね。なるほど。

「じゃあ普通に話せばいいじゃないですか」

 なんでこの人二重音声で話してんです?

「てめえのせいだろうが!」
『あ、はい……』
「人のせいにしないで下さいよ。まったく、せっかくの食事がまずくなるじゃないですか」

 今食事中なんで、静かにしてほしい。
 唾とか飛ばさないでくださいね。

「てめぇ……! バカにしてんのか!!」
『あの、ちょ、まって』

 それよりもさっき採ったハーブっぽいやつ、これちょっとだけ載せて肉と一緒に食べてみたらめっちゃ美味しいんですけど、すごいね。一気にサラダチキンみたいな味になった。ハーブすごい。おいしい。

「ハッ、ソイツを庇うってこたぁ、あれか、アッチの趣味でもあんのか?」
『メニュー画面あるんですってば』
「それよりこの辺で美味しいものってどっかに売ってないですかね」

 なんか色々言ってるけど、随分やかましい夢ですねぇ。なんなんだろ。不思議。

「…………もういい! てめぇら行くぞ!」
『いえ、だから、そこのメールに書いて』
「あ、お疲れ様でしたー」
『聞いてお願い』

 リーダーっぽい男性が、他の血まみれ半泣き男性たちを引き連れて、ぷんすかしながら帰って行ったので、もぐもぐ食べながら手を振った。食べながらでもある程度頑張れば普通に喋れるの凄いですねぇ、さすが夢。
 で、さっきからなんなんでしょうねこの声は。

『メニュー画面にある簡易の地図をですね、見てほしいんです』

 メニュー画面?
 そんなのあるのか……あ、ホントに出た。
 へぇー、地図だ。なるほどなぁ。こっち行くとどうなるんですかね。

『ちょ、あの、そっちは逆で』
「待ってください!」
「ん?」

 真っ白でなんも使えないなこの地図。来たことないとこに来たんですねぇ。とか考えていたら、転がっていたはずの少女がいつの間にか起き上がって声をかけて来ていた。

「危ないところを、本当にありがとうございました」
「あぁ、こっちこそ貴重な火をありがとうございました、それじゃこれで」
「え?」
『ああああああまって!』

 うるさいなぁ、この子まで副音声付いてんのか。
 ホントにどうしてこんな夢見てるんでしょう。わたしの頭の中どうなってんのかな。

「あっ、あのっ、お礼をさせてください!」
「いや、いいです、別にそういうの」
『聞いて!』

 なんかさっきと同じ声のような気もするけど、分からないからいいか。考えるの面倒くさいし。

「そうはいきません! 受けた恩は必ず返すのが我が家の家訓なんです!」
「そうなんですね。でもわたしそういうのいらないんで」
『聞けよ!』

 さっきからうまく聞き取れないのに聞けとはこれ如何に。
 同時に喋る方が悪くない?
 聞かせる気ないじゃんね。

「僕はミルガインっていいます! お名前をお伺いしてもいいですか?」
「え? きみオトコの娘だったの?」
「はい! れっきとした人間族の男子です!」

 よくよく聞けば女の子にしては少しだけハスキーな声質だ。
 とはいえ、女の子の中でもこのくらいの声質の子は普通に居るでしょうし、よく聞かなきゃ分からんなこれ。特にわたしは二重音声も付いてたから全然分からんかったですね。そんなに聞いたか知らんけど。

「えっ、あー、なるほど、把握」
「はい?」

 男が三人と、オトコの娘。とくれば、何が起こるかというと……、とまで考えてピーンと来た。
 改めて彼をじっと眺めて観察する。
 金髪に碧眼、可愛らしい顔、そしてパッと見ワンピースにも見えるプリーストの白い牧師服のような装備と、華奢な体躯。なるほどなるほど、これはたしかに女の子に見えますね。

「あいつら、きみを女の子だと思ってナンパしてきたんでしょう」
「はい! 男だって言っても信じてくれなくて、股間握らせてやっと納得して頂けたかと思ったら突然怒って魔法ぶっぱなして来たんです!」
「なんで股間握らせてんの」

 そりゃ怒るよ。逆セクハラじゃん。
 あれ、でも両方男だった場合どういうセクハラになるんでしょう。
 ん? セクハラされたからセクハラし返したわけだから、プラマイゼロ? ん?
 うん、ダメだよく分からない。まあいいや。

「でも世の中にはそういうオトコの娘に興奮する変態さんもいらっしゃるから気をつけた方がいいですよ」
「そうなんですか!?」

『聞いてよ……聞いてくださいよ……もうやだこの人……』

 聞いて欲しいならもっと落ち着いた時に話しかけてくださいね。

『あ……はい……』

 しっかし、不思議な夢ですねぇ。ぼんやりそう思いながら、食べかけの肉を両手に適当な方へと歩き始めたのだった。

「まってください! せめてお名前を!」

 きみは別に付いてこなくていいよ。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

二度目の勇者の美醜逆転世界ハーレムルート

猫丸
恋愛
全人類の悲願である魔王討伐を果たした地球の勇者。 彼を待っていたのは富でも名誉でもなく、ただ使い捨てられたという現実と別の次元への強制転移だった。 地球でもなく、勇者として召喚された世界でもない世界。 そこは美醜の価値観が逆転した歪な世界だった。 そうして少年と少女は出会い―――物語は始まる。 他のサイトでも投稿しているものに手を加えたものになります。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた

愛丸 リナ
恋愛
 少女は綺麗過ぎた。  整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。  最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?  でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。  クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……  たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた  それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない ______________________________ ATTENTION 自己満小説満載 一話ずつ、出来上がり次第投稿 急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする 文章が変な時があります 恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定 以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。

SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。 サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」

処理中です...