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本編 2 『婚約者』
第2-13話 最後の大仕事。そして悪魔騒動の終息
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王城の謁見の間を、存分にグッチャぐちゃの、ボッロボロにし、大変満足してから帰宅したベリー達一行は、ポチの淹れてくれた茶を飲み、サロンでマッタリとしていた。
パパンは侯爵邸に置いて来ました。「はぁ…これからどうなるか…」と項垂れてたから、「後で様子見てくるよ」と背中をポンポンと叩いて労わっておいた。
サロンで茶を飲みながら、集まった面々と話をしていたら、ハクに抱っこされたミライがやって来た。
「ぱぁぱ」と手を伸ばし、エドに抱っこをせがむミライは最高にカワユスです。
「ミライちゃん!はぁ…天使…」とエドパパがムチムチ頬っぺにスリスリ。「きゃはっ」と笑顔満開ミライはマジで天使です。
実はこの激可愛いミライは、『ビターズ王国』の貴族子息で、本名は『アヴェニール・F・クロフォード』。クロフォード侯爵家嫡男の息子なんですよ。
エドが保護して連れて来た時に、鑑定をして発覚。「捨てられた?」 「わざと逃がした?」 「返さないと不味くない?」と、大慌て。
ウルが《調べてくるっくるぅ》と飛び出して行き、数時間後に《わっかりましたの助ぇ》と帰って来て、《クロフォード侯爵家は大罪を犯し、全員処刑されたってぇ》との報告を受け、エドが引き取り育てる事にしたのだ。
「冤罪かな?」と、私は思った。
エドは悲痛な表情で「かもなぁ。ビターズの国王って『残虐王』って言われてるよな」とミライを撫でていた。
サイラスは泣きそうな顔で「冤罪かもしれませんね。歯向かう者は容赦なく王自ら処刑するという、残虐な国ですから」と見詰めていた。
そんな暴君が統治してたら、ビターズ王国も直ぐに滅亡するわね。と、聞きながら思っていた。
そうそう。『ミライ』と名付けたのはウルなの。
《アヴェニールってさぁ、地球の何処かの国の言葉で『未来』でしょ?だから、この子はミライちゃんだねぇ》と、のほほんと言ってから急に真面目な顔をし、突如、額に指を宛て、ミライに魔法を使ったのよ。
《小兎神族ウルティアルスが命名する。君の名は本日より『ミライ・ベリーズ・アズマ』とする》と勝手に改名したんすよ。
私は、「ベリーズ・アズマって、私とエドの子供みたいじゃない。何でベリー付けたし!」とアホウルを捕まえて、シェイクしながら怒ったんだけど、
エドは、「そっか…『ミライ・ベリーズ・アズマ』…ミライか。やっべぇな!ユージより先にベリーちゃんとの子を手に入れた!もう俺、結婚しなくて良いや!」とめっちゃ嬉しそうだった。
サイラスは、「その子はクロフォード家の子供であって、エドワードとベリー様の子では有りません。貴方は仮母になってくれそうな女性を見付けて、早々に結婚した方が良いと思いますよ」と苦言と助言をした。
その後2人はミライを間に挟んでバチバチと火花を散らしてたのよね。
エドと戯れてるミライを愛でながら、当時の事を思い返していて気付いた。あのバチバチは、まさか私を巡って繰り広げていたのか?と。
(そうだったら、やっべぇほど鈍いな私!)
今更ながら気付いた事に恥ずかしくなり、顔を覆ってアウアウ言ってたら、「どうしました?」 「どした?」と顔を覗かれ、「リーたいのぉ?」と、ミライにまで心配されてしまった。
ちっさい手で頭ポンポンだよ!「たいたいーのーねー♪ぽいっぽーい♪」って変な歌を歌って頭ポンポン!可愛さマックスで鼻血出るわ!
ソファに座って、ミライを肩車しているエドの太腿に乗っかり、「ミライちゃ~ん!天使ちゃ~ん!おいでぇ」とミライを奪い、そのまま腿の上でミライをギュゥギュゥしていたら、「こら!ベリー!」と頭に手刀を下ろされた。
「痛ぁぁい!?何すんのよユージ!陥没するじゃない!」
ユージ「阿呆かお前は!自分が何処に座ってるのか見てみろ!!」
チラッ「見たわよ?だから何?エドの太腿の上だけど?」
ユージ「俺じゃない男の腿の上だ!お前の彼氏は俺!エドから降りろ」
「わ、分かったわよ……ブーブー」
ミライ「ぶっぶー。ウージーぶっぶー。たい~たい~」
「ねぇ。ユージはブーよねぇ」
別に良いじゃない。抱き着いたり、キスしたりした訳じゃないんだし。向こうがどう思ってようが、私にとってエドはお兄ちゃんなのよ。全く、短気よねぇ。
ヤレヤレと溜め息を吐きながら、ミライを抱えエドから降りた。そしてユージに『あっかんべー』をして、天使の頭に「ちゅっ」とした。
そのあと「ミライ、積み木遊びしに行こうねぇ」と頬スリスリ、「きゃはっ!きー?あい!」可愛い返事にデレデレしながらサロンを後にした。
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サロンには、残されたメンバーのエド、ユージ、サイラス、3人の男がソファに座っており、部屋の中はベリーの姿が消えた後の微妙な空気と静寂に包まれていた。
その場には『ハク』と『ポチ』も居たが、彼等は空気となって皆を見守っていた。『余計なお世話はしない』と誓っているのだ。
シーンっと静まり返る部屋、その沈黙を破ったのはサイラスだった。
サイラス 「ベリー様の無邪気さは可愛らしいですが、あれは小悪魔ですね…いや、もはや悪魔ですね…エド、大丈夫ですか?魂抜けてますよ」
ベリーの無邪気さ攻撃をモロに喰らったエドは、色んな衝撃を受けて固まっていた。サイラスが話し掛けてもポッカーンとしたまま動かなかったので、頬を思いっ切りギュムっと抓ったら漸く復活した。
「……ッいで!!はっ!」痛みで我に返ったエドは、何が起こったか思い出し、目元を腕で隠し天井に向かって吠えた。
「っかぁ!マジでベリーちゃん凶悪だわ!」耳が真っ赤に染まってる。エドは純情ボーイなのだ。
サイラスは、サロンの出入り口を悲痛な顔で見詰め続けているユージにも声を掛けた。「ユージ、あんな風に怒鳴りつけるのは得策では有りませんよ」
「……だってよ…着替えてサロンに来たら、自分の恋人が他の男の膝の上に居るとか、信じられっか?あの光景を見たら誰だって怒るわ!」
“”ベリーがエドと浮気をしてた“”とは思ってねぇけど、2年間で距離詰めすぎなんだよ。サイラスともだけど、エドとも前より仲良くなってるしさ。
いや、前から仲は良かったけど、あの『ミライくん』と一緒に居る時の3人が、『一家族』に見えるんだよ。幸せそうに笑い合ってさ…俺の入る隙間がねぇ!
サイラス「気持ちは分かりますが、ベリー様に悪気は無いんですよ。分かりますよね?『何がダメなのか』を丁寧に解く必要があるんです。上からギャイギャイ言っても、萎縮して反発するだけですよ」
ユージ「……はぁ。分かってる。強く言い過ぎたって反省してるよ。ちょっとベリーの所へ行ってくるわ」
悪気ない無邪気さは、時には予期せぬ結果を引き起こすことがある。ということを教えなければいけないな。純粋な無邪気さは可愛いが、その裏に潜む危険性を理解してんのか?と問いたい。
あと、俺が何に怒ってるのかも、ちゃんと理解させないとな!あのニブチンに!
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後ろ手で手を振りサロンを出て行ったユージを、無言で見送ったサイラスとエドは、扉が閉まった瞬間、「「はぁぁぁ」」と長~い深~い溜め息を零した。
サイラス「小悪魔ベリーには参るな。なぁ、エドって純情すぎだよな。そんなナリしてさ。何歳よお前。ははは!」
エド「やっと仮面外したか、この猫被りムッツリ策士やろう」
サイラス「猫被りって…まぁ、今はエドしか居ないし、取り繕う必要も無いだろ。ハクとポチにはバレてるしな。
で・だ。あのな、男ってのは全員ムッツリだと思うぞ?お前も、あのユージも。他の市井の男も貴族もな」
エド「ええ?ユージはオープンじゃね?俺らの前で平気で愛でて、触って、口付けしてるしよ。てか、デイビッドってベリーちゃんの事を好きなのかね?」
サイラス「ユージがそれをしてたのって、ベリー様が8~9歳の『幼女』の時だろ?あの頃は純粋に愛でてただけじゃないか?だが今、色々と成長したベリー様には下心満載だろ。鼻の下ノビノビだぞアイツ。
気持ちは分からんでもないがな。あの体付きは目に毒だし。あと、デイビッドの気持ちは分からん。それは本人に聞けよ」
エド「……いや、デイビッドの事は今はイイわ。てかマジでさぁ、成長し過ぎじゃね?なんだあのポヨンポヨン。無意識に目線が一点集中しちゃわねぇ?お前もだろ?」
サイラス「ははっ!国王も貴族達も凝視してたよな。ギザ追い掛けながら目潰ししといたわ!国王以外な。で、俺はあの胸より、鎖骨と手指と脚だな。ベリー様って特に脚が綺麗なんだよな」
怖っわ!まぁ俺も何人か、いけ好かない貴族の髪の毛チリッチリにしたけどよ。サイラスのがやべぇな。目潰しって何したんよコイツ。
エド「なんだその緩んだ顔。美形が台無しだぞ。
で、指と脚は…まぁ分かる。スラッとしてて綺麗だもんな。んで?なんで鎖骨?鎖骨の何が良いんだ?あの窪みか?」
(美形に美形と言われてもな…しかも男に…)
まぁそれはいいか。んじゃ、鎖骨の何が良いのか、純情男には分からんだろうから教えてやるか。
サイラス「ちょっと耳かせ」
エド「あ?ああ……」
サイラス(ゴニョ──でさ、アレ──なわけよ)コソッ。
エド(!?おっ前!それしたの?というか、サイラス経験済なん?ベリーちゃん好きなくせに?)コソッ。
サイラス(それとコレとは別だって。俺はとっくの昔に捨てたぞ。娼館だけどな。お前も脱しとけって)コソッ。
エド(まじかぁ。娼館……今度さ連れてってくんね?)コソッ。
サイラス(あ゙?一人で行けよ。Sランクくん)コソッ。
エド(Sランク関係無くね?バーで酒奢るからよぉ)コソッ。
サイラス(バーの酒マズイから要らん。ニホンの“”ビール“”を所望する)コソッ。
エド(オーケー!ベリーちゃんに頼み込むわ。だから連れてって)コソッ。
サイラス(それなら良かろう)コソッ。
この後も2人は、コソコソと小声で『男の子の事情』等を話していた。それは、ベリーがウルと一緒にサロンに戻って来るまで続いていた。
そんな中、部屋の中で静かに佇んでいたハクは、耳が良いので全ての会話が聞こえていて、(ベリー様は本当におモテになりますねぇ。いやはや罪深いお方だ)と、心の中で独り言ちていた。
ポチは会話が聞こえないよう、耳をペッタンと伏せて目を瞑っていた。(ボクは無…ボクは無…きこえない…無…)
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【その頃のウル】
はいは~い!ウルだよぉ~!こちらシュガーズ王国王城の謁見の間でぇす!ブイブイ!
2日前かな?天界から戻ったらベリーちゃんに、『城かパーティ会場に天罰っぽく見える魔法を落として』って頼まれてぇ、《神様に頼むか、自分でやればぁ?》って言ったんだけどぉ、
『神様じゃ要らん事しそうだし、私がやると“”悪魔だ!“”魔女だ!“”ってなって、今度は私の討伐を命令しそうでしょ?だから、ウルがやって!』
ってお願いされてさぁ。『余興が終わったらね』って言われてぇ、(まぁ、面白そうだし)って思って《オーケイ!》と了承したんだよねぇ。
んでんで、ユージ達が“”ドカン!バキン!ザシュ!“”って盛大に暴れ回ってぇ、会場をメッタメタにした後に、お願い通り《ゴッドラース》って命名した魔法をぶっ放したわけよぉ。城じゃ無くて、『帰還パーティの会場』にね。
ウルは一応『小兎神族』っていう種族で神様の眷属だからさぁ、間接的でも『殺し』は御法度なのぉ。だから、『人族の皮を被った悪魔』がいっぱい居る城に攻撃はしなかったわけぇ。
もし一人でも殺しちゃったら、消滅しちゃうのだぁ!怖っわ!だよねぇ。ブルブル。
会場破壊を確認したから、ウルは屋敷に帰ろうと思ったんだけどさぁ。ふと、知ってる魔力をキャッチしたの。
フヨフヨと飛びながら辿って行ったら、『デイビッド』を発見☆
ウル《やほ~ビッド。おひさしブリブリぃ》
ビッド「あ!ウル!ってことは、この騒ぎって苺ちゃんが関わってるの??」
ウル《ん~?そだねぇ。苺ちゃんをバカにした王族、貴族に天罰が降りたのぉ》
ビッド「天罰…か…あの『英雄達を讃えるパーティ』ってやつで?それとも、第2王子の婚約者の件?」
ウル《まぁ、ぜ~~んぶに!かなぁ。国王や宰相達がベリーちゃんにした仕打ちにブッチンしたのぉ。だからぁ、自業自得ってヤツねぇ》
ビッド「そっか…自業自得なら仕方ないね。ねぇ、苺ちゃんは元気?今度会いに行くって伝えといてくれる?」
ウル《オーケイなのでぇす。じゃあねぇ!》
ビッドくんも、ベリーちゃんラブ中♡だもんねぇ。ボクの相棒はモッテモテだねぇ。可愛いもんなぁベリーちゃん。口悪いけどねぇ。ニシシ。
今はユージとラブラブちゅっちゅ♡な恋人してるけどぉ。サイラスに気持ちが傾いてるっぽいんだよねぇ。2年間、献身的に支えてたからなぁ、あの色男ぉ。
サイラスの姿が見えなかったら寂しそうな顔して探してるし、見付けたら超~笑顔!ベリーちゃんのあれ、無意識なんだろうなぁ。
ま、誰と恋人になろうが、結婚しようが良いんだけどぉ。ベリーちゃんが幸せになれるならねぇ。
ウル《この際、全員と結婚すれば良いのにねぇ》
ま、中身が生粋の日本人だからムリなんだろうね。向こうは一夫一婦制だからぁ。『この際、常識を捨てろよ!』って言いたいっちゃ。
ウル《まっ、なるようになるか。よしっと!帰る前に、どうなったか見てこようっと》
パッとその場で謁見の間に転移したウルは、喚き散らしてる国王と宰相を発見☆
そして、周りをクルクル飛び回り、《ほへぇ》《ひぇぇ》《怖いもの知らずぅ》と言葉を零していた。
国王「ええい!使えん奴等め!結界くらい壊せんのか!」
宰相「無能魔法士は要らないんですよ。近衛騎士よ、剣で結界を壊しなさい!」
国王「いいか!聞け貴様ら!外に出たら悪魔諸共、あの偽物共を捕らえるのだ!民の前で悪事を暴き、奴等を裁くことが我が国の責務である!悪魔と共謀し、無実の人々を苦しめる者たちに対しては容赦なく厳罰を下すぞ!」
宰相「我々は国を守る者たち!偽りの英雄や聖女たちに騙される事なく、真の正義を貫くのです!我が国を守るために、そして民の安全のために、決して許すことはできない!力を合わせ、悪しき者たちを一網打尽にし、この国の平和を取り戻すのです!」
ウル《おっわぁ。捕縛命令が出たよぉ?元はと言えば、『極秘情報』が漏れたのが原因じゃ~ん。そして勝手に『国の英雄達』に仕立てて、パーティやら婚約者やらって押し付けたのが悪いのにぃ。『真の正義』なんて何処にあるんだろぉ?》
国王や宰相の煽りにより、「悪に鉄槌を!」、「反逆罪で処刑を!」、「裏切り者に罰を!」という貴族達の声が会場中に響き渡っていた。
近衛騎士、魔法士は、「悪に粛清を!」と一緒になって叫ぶ者と、「天罰が…」 「神の怒りが…」と恐怖に震える者とに分かれてた。
ウルは、飛び回りながら考えていた。ベリー達に伝えるかどうかを。《ん~、ん~》
よし!決めたもんねぇ。ベリーちゃん達は悪じゃないもぉん。反省するのは君達だよぉ!
ウルは《少~し派手に行くよぉ!にひひひ》と、不穏な言葉と不気味な笑い声をあげ、《ウルちゃんバズーカ!》天井を「ドガーーン」突き破り、天高く飛び上がった。
国王「!?何奴……ああああ!我が城が!」
宰相「王よ!あの悪魔達の仕業でしょう!」
護衛騎士「まだそんな事を言ってるのか!神の怒りに触れたんですよ我々は!これは天罰ですよ!」
「ぎゃあ!」 「殺される~」 「ここから出せ!」
突然の出来事に、謁見の間はまたしても大混乱に陥った。叫び声を上げ右往左往する貴族や騎士、魔法士達。会場はパニックルームになっていた。
その様子を空中を漂いながら一瞥し、《ファントム!》幻影魔法で『創成神』を空に投影し、音声拡張魔法を使い、声を張り上げた。
ウル《我が神の愛し子を侮辱し冒涜した悪っしき者達よ!我が怒りを買い、神の裁きを味わう愚かな者達よ!
貴様達の罪深き行いは、この天罰によって許されることはない!神の御意志に逆らい、神聖なる存在『神々の寵愛児』に冒涜を働く者よ、神の怒りをその身に焼き付けよ!》
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【王城】
国王「あぁ…主神様が降臨なされた…」
宰相「なんと神々しい…あの悪魔達を罰して下さるのですね…主神様に感謝と祈りを…」
護衛騎士「……罰を喰らうのは我々ですよ…宰相、頭沸いてんのか?いい加減に気付けよ!ハゲ野郎が!」
「神よ!我々をお救い下さい!」 「ああ…主神様…我らが光…」 「なんとお美しい…」
ビッド「ウル今度は何するのか知らないけど、派手に暴れて楽しそうだなぁ…僕も魔法ぶっ放そうかなぁ…」
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【市井の民達】
「うっわ!なんだアレ!バケモンか!?」
男性の指差す先と一声で皆が空を見上げた。
「空に何か居るぞ!」
「何だありゃ。まさか神様か?」
「愛し子を侮辱しただってよ。そんなバカいんだな」
「天罰って聞こえたぞ!」
「城の方で爆発あったけど、関係してるのかしらね」
「王族や貴族が何かしたんだろうさ。愛し子ってのに」
「ママー、何かお空にデッカイ人いるー!」
「きっと主神様ね。悪い事をすると罰を受けるのよ」
「罰!?ボク良い子だから大丈夫だよねママー!?」
キャロル「神って本当に居るのね…『神の愛し子』を侮辱して天罰とか、さすが異世界ね」
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【王都上空】
まずは奴等が死なないように結界張ってぇ。雷の雨とかバリバリ落としてみよう!それで反省してよねぇ。
ウル《悪っしき者に天罰を!この神の裁きを受けるのだ!《サンダーレイン!》》
バリバリバリバリ!!
ベリー達を罵ってた者だけに結界を張り、そこをターゲットにして雷の雨を降らせた。
纏う膜に遮られ、身を焼かれる事はないが、相当な恐怖だろう。喰らった者達は失神し、その場で倒れ伏せた。
ただ、国王だけは気を失わず呆然としているだけだった。それは、国王が強靭だからではない。ウルが意図的にターゲットから外したのだ。一言物申す為に。
やり切ったウルは幻影を消し、王の耳元で囁いた。
ウル《我は神の眷属ウルティアルス。神々の寵愛児であるストロベリー様に仕える者である。此度の天罰は貴様等が招いた結果である。今後、彼女達に関わる事を禁ずる。悪魔は性根の腐った己の中に存在する。良い行いをし、王として国を安寧に導け。さすれば神も許すだろう》
国王「……その命、しかと承りました…良き王になると、神の眷属ウルティアルス様に誓います」
うんうん。立派な賢王になってねぇシュガーズ国王さん。この国はベリーちゃんの母国だからね、無くなったら泣いちゃうもんきっと。
ウル《では、ベリー邸へ帰りましょっかねぇ。サラバ愚民共!あーはっはっはっ!》
こうして、ウルの活躍?により、一連の悪魔騒動が終息した。今後は何事もなく、平穏無事に過ごせるのか…それは神にも分からない。
ベリーには、平和な人生を送ってほしい。そう願うばかりだ。
パパンは侯爵邸に置いて来ました。「はぁ…これからどうなるか…」と項垂れてたから、「後で様子見てくるよ」と背中をポンポンと叩いて労わっておいた。
サロンで茶を飲みながら、集まった面々と話をしていたら、ハクに抱っこされたミライがやって来た。
「ぱぁぱ」と手を伸ばし、エドに抱っこをせがむミライは最高にカワユスです。
「ミライちゃん!はぁ…天使…」とエドパパがムチムチ頬っぺにスリスリ。「きゃはっ」と笑顔満開ミライはマジで天使です。
実はこの激可愛いミライは、『ビターズ王国』の貴族子息で、本名は『アヴェニール・F・クロフォード』。クロフォード侯爵家嫡男の息子なんですよ。
エドが保護して連れて来た時に、鑑定をして発覚。「捨てられた?」 「わざと逃がした?」 「返さないと不味くない?」と、大慌て。
ウルが《調べてくるっくるぅ》と飛び出して行き、数時間後に《わっかりましたの助ぇ》と帰って来て、《クロフォード侯爵家は大罪を犯し、全員処刑されたってぇ》との報告を受け、エドが引き取り育てる事にしたのだ。
「冤罪かな?」と、私は思った。
エドは悲痛な表情で「かもなぁ。ビターズの国王って『残虐王』って言われてるよな」とミライを撫でていた。
サイラスは泣きそうな顔で「冤罪かもしれませんね。歯向かう者は容赦なく王自ら処刑するという、残虐な国ですから」と見詰めていた。
そんな暴君が統治してたら、ビターズ王国も直ぐに滅亡するわね。と、聞きながら思っていた。
そうそう。『ミライ』と名付けたのはウルなの。
《アヴェニールってさぁ、地球の何処かの国の言葉で『未来』でしょ?だから、この子はミライちゃんだねぇ》と、のほほんと言ってから急に真面目な顔をし、突如、額に指を宛て、ミライに魔法を使ったのよ。
《小兎神族ウルティアルスが命名する。君の名は本日より『ミライ・ベリーズ・アズマ』とする》と勝手に改名したんすよ。
私は、「ベリーズ・アズマって、私とエドの子供みたいじゃない。何でベリー付けたし!」とアホウルを捕まえて、シェイクしながら怒ったんだけど、
エドは、「そっか…『ミライ・ベリーズ・アズマ』…ミライか。やっべぇな!ユージより先にベリーちゃんとの子を手に入れた!もう俺、結婚しなくて良いや!」とめっちゃ嬉しそうだった。
サイラスは、「その子はクロフォード家の子供であって、エドワードとベリー様の子では有りません。貴方は仮母になってくれそうな女性を見付けて、早々に結婚した方が良いと思いますよ」と苦言と助言をした。
その後2人はミライを間に挟んでバチバチと火花を散らしてたのよね。
エドと戯れてるミライを愛でながら、当時の事を思い返していて気付いた。あのバチバチは、まさか私を巡って繰り広げていたのか?と。
(そうだったら、やっべぇほど鈍いな私!)
今更ながら気付いた事に恥ずかしくなり、顔を覆ってアウアウ言ってたら、「どうしました?」 「どした?」と顔を覗かれ、「リーたいのぉ?」と、ミライにまで心配されてしまった。
ちっさい手で頭ポンポンだよ!「たいたいーのーねー♪ぽいっぽーい♪」って変な歌を歌って頭ポンポン!可愛さマックスで鼻血出るわ!
ソファに座って、ミライを肩車しているエドの太腿に乗っかり、「ミライちゃ~ん!天使ちゃ~ん!おいでぇ」とミライを奪い、そのまま腿の上でミライをギュゥギュゥしていたら、「こら!ベリー!」と頭に手刀を下ろされた。
「痛ぁぁい!?何すんのよユージ!陥没するじゃない!」
ユージ「阿呆かお前は!自分が何処に座ってるのか見てみろ!!」
チラッ「見たわよ?だから何?エドの太腿の上だけど?」
ユージ「俺じゃない男の腿の上だ!お前の彼氏は俺!エドから降りろ」
「わ、分かったわよ……ブーブー」
ミライ「ぶっぶー。ウージーぶっぶー。たい~たい~」
「ねぇ。ユージはブーよねぇ」
別に良いじゃない。抱き着いたり、キスしたりした訳じゃないんだし。向こうがどう思ってようが、私にとってエドはお兄ちゃんなのよ。全く、短気よねぇ。
ヤレヤレと溜め息を吐きながら、ミライを抱えエドから降りた。そしてユージに『あっかんべー』をして、天使の頭に「ちゅっ」とした。
そのあと「ミライ、積み木遊びしに行こうねぇ」と頬スリスリ、「きゃはっ!きー?あい!」可愛い返事にデレデレしながらサロンを後にした。
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サロンには、残されたメンバーのエド、ユージ、サイラス、3人の男がソファに座っており、部屋の中はベリーの姿が消えた後の微妙な空気と静寂に包まれていた。
その場には『ハク』と『ポチ』も居たが、彼等は空気となって皆を見守っていた。『余計なお世話はしない』と誓っているのだ。
シーンっと静まり返る部屋、その沈黙を破ったのはサイラスだった。
サイラス 「ベリー様の無邪気さは可愛らしいですが、あれは小悪魔ですね…いや、もはや悪魔ですね…エド、大丈夫ですか?魂抜けてますよ」
ベリーの無邪気さ攻撃をモロに喰らったエドは、色んな衝撃を受けて固まっていた。サイラスが話し掛けてもポッカーンとしたまま動かなかったので、頬を思いっ切りギュムっと抓ったら漸く復活した。
「……ッいで!!はっ!」痛みで我に返ったエドは、何が起こったか思い出し、目元を腕で隠し天井に向かって吠えた。
「っかぁ!マジでベリーちゃん凶悪だわ!」耳が真っ赤に染まってる。エドは純情ボーイなのだ。
サイラスは、サロンの出入り口を悲痛な顔で見詰め続けているユージにも声を掛けた。「ユージ、あんな風に怒鳴りつけるのは得策では有りませんよ」
「……だってよ…着替えてサロンに来たら、自分の恋人が他の男の膝の上に居るとか、信じられっか?あの光景を見たら誰だって怒るわ!」
“”ベリーがエドと浮気をしてた“”とは思ってねぇけど、2年間で距離詰めすぎなんだよ。サイラスともだけど、エドとも前より仲良くなってるしさ。
いや、前から仲は良かったけど、あの『ミライくん』と一緒に居る時の3人が、『一家族』に見えるんだよ。幸せそうに笑い合ってさ…俺の入る隙間がねぇ!
サイラス「気持ちは分かりますが、ベリー様に悪気は無いんですよ。分かりますよね?『何がダメなのか』を丁寧に解く必要があるんです。上からギャイギャイ言っても、萎縮して反発するだけですよ」
ユージ「……はぁ。分かってる。強く言い過ぎたって反省してるよ。ちょっとベリーの所へ行ってくるわ」
悪気ない無邪気さは、時には予期せぬ結果を引き起こすことがある。ということを教えなければいけないな。純粋な無邪気さは可愛いが、その裏に潜む危険性を理解してんのか?と問いたい。
あと、俺が何に怒ってるのかも、ちゃんと理解させないとな!あのニブチンに!
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後ろ手で手を振りサロンを出て行ったユージを、無言で見送ったサイラスとエドは、扉が閉まった瞬間、「「はぁぁぁ」」と長~い深~い溜め息を零した。
サイラス「小悪魔ベリーには参るな。なぁ、エドって純情すぎだよな。そんなナリしてさ。何歳よお前。ははは!」
エド「やっと仮面外したか、この猫被りムッツリ策士やろう」
サイラス「猫被りって…まぁ、今はエドしか居ないし、取り繕う必要も無いだろ。ハクとポチにはバレてるしな。
で・だ。あのな、男ってのは全員ムッツリだと思うぞ?お前も、あのユージも。他の市井の男も貴族もな」
エド「ええ?ユージはオープンじゃね?俺らの前で平気で愛でて、触って、口付けしてるしよ。てか、デイビッドってベリーちゃんの事を好きなのかね?」
サイラス「ユージがそれをしてたのって、ベリー様が8~9歳の『幼女』の時だろ?あの頃は純粋に愛でてただけじゃないか?だが今、色々と成長したベリー様には下心満載だろ。鼻の下ノビノビだぞアイツ。
気持ちは分からんでもないがな。あの体付きは目に毒だし。あと、デイビッドの気持ちは分からん。それは本人に聞けよ」
エド「……いや、デイビッドの事は今はイイわ。てかマジでさぁ、成長し過ぎじゃね?なんだあのポヨンポヨン。無意識に目線が一点集中しちゃわねぇ?お前もだろ?」
サイラス「ははっ!国王も貴族達も凝視してたよな。ギザ追い掛けながら目潰ししといたわ!国王以外な。で、俺はあの胸より、鎖骨と手指と脚だな。ベリー様って特に脚が綺麗なんだよな」
怖っわ!まぁ俺も何人か、いけ好かない貴族の髪の毛チリッチリにしたけどよ。サイラスのがやべぇな。目潰しって何したんよコイツ。
エド「なんだその緩んだ顔。美形が台無しだぞ。
で、指と脚は…まぁ分かる。スラッとしてて綺麗だもんな。んで?なんで鎖骨?鎖骨の何が良いんだ?あの窪みか?」
(美形に美形と言われてもな…しかも男に…)
まぁそれはいいか。んじゃ、鎖骨の何が良いのか、純情男には分からんだろうから教えてやるか。
サイラス「ちょっと耳かせ」
エド「あ?ああ……」
サイラス(ゴニョ──でさ、アレ──なわけよ)コソッ。
エド(!?おっ前!それしたの?というか、サイラス経験済なん?ベリーちゃん好きなくせに?)コソッ。
サイラス(それとコレとは別だって。俺はとっくの昔に捨てたぞ。娼館だけどな。お前も脱しとけって)コソッ。
エド(まじかぁ。娼館……今度さ連れてってくんね?)コソッ。
サイラス(あ゙?一人で行けよ。Sランクくん)コソッ。
エド(Sランク関係無くね?バーで酒奢るからよぉ)コソッ。
サイラス(バーの酒マズイから要らん。ニホンの“”ビール“”を所望する)コソッ。
エド(オーケー!ベリーちゃんに頼み込むわ。だから連れてって)コソッ。
サイラス(それなら良かろう)コソッ。
この後も2人は、コソコソと小声で『男の子の事情』等を話していた。それは、ベリーがウルと一緒にサロンに戻って来るまで続いていた。
そんな中、部屋の中で静かに佇んでいたハクは、耳が良いので全ての会話が聞こえていて、(ベリー様は本当におモテになりますねぇ。いやはや罪深いお方だ)と、心の中で独り言ちていた。
ポチは会話が聞こえないよう、耳をペッタンと伏せて目を瞑っていた。(ボクは無…ボクは無…きこえない…無…)
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【その頃のウル】
はいは~い!ウルだよぉ~!こちらシュガーズ王国王城の謁見の間でぇす!ブイブイ!
2日前かな?天界から戻ったらベリーちゃんに、『城かパーティ会場に天罰っぽく見える魔法を落として』って頼まれてぇ、《神様に頼むか、自分でやればぁ?》って言ったんだけどぉ、
『神様じゃ要らん事しそうだし、私がやると“”悪魔だ!“”魔女だ!“”ってなって、今度は私の討伐を命令しそうでしょ?だから、ウルがやって!』
ってお願いされてさぁ。『余興が終わったらね』って言われてぇ、(まぁ、面白そうだし)って思って《オーケイ!》と了承したんだよねぇ。
んでんで、ユージ達が“”ドカン!バキン!ザシュ!“”って盛大に暴れ回ってぇ、会場をメッタメタにした後に、お願い通り《ゴッドラース》って命名した魔法をぶっ放したわけよぉ。城じゃ無くて、『帰還パーティの会場』にね。
ウルは一応『小兎神族』っていう種族で神様の眷属だからさぁ、間接的でも『殺し』は御法度なのぉ。だから、『人族の皮を被った悪魔』がいっぱい居る城に攻撃はしなかったわけぇ。
もし一人でも殺しちゃったら、消滅しちゃうのだぁ!怖っわ!だよねぇ。ブルブル。
会場破壊を確認したから、ウルは屋敷に帰ろうと思ったんだけどさぁ。ふと、知ってる魔力をキャッチしたの。
フヨフヨと飛びながら辿って行ったら、『デイビッド』を発見☆
ウル《やほ~ビッド。おひさしブリブリぃ》
ビッド「あ!ウル!ってことは、この騒ぎって苺ちゃんが関わってるの??」
ウル《ん~?そだねぇ。苺ちゃんをバカにした王族、貴族に天罰が降りたのぉ》
ビッド「天罰…か…あの『英雄達を讃えるパーティ』ってやつで?それとも、第2王子の婚約者の件?」
ウル《まぁ、ぜ~~んぶに!かなぁ。国王や宰相達がベリーちゃんにした仕打ちにブッチンしたのぉ。だからぁ、自業自得ってヤツねぇ》
ビッド「そっか…自業自得なら仕方ないね。ねぇ、苺ちゃんは元気?今度会いに行くって伝えといてくれる?」
ウル《オーケイなのでぇす。じゃあねぇ!》
ビッドくんも、ベリーちゃんラブ中♡だもんねぇ。ボクの相棒はモッテモテだねぇ。可愛いもんなぁベリーちゃん。口悪いけどねぇ。ニシシ。
今はユージとラブラブちゅっちゅ♡な恋人してるけどぉ。サイラスに気持ちが傾いてるっぽいんだよねぇ。2年間、献身的に支えてたからなぁ、あの色男ぉ。
サイラスの姿が見えなかったら寂しそうな顔して探してるし、見付けたら超~笑顔!ベリーちゃんのあれ、無意識なんだろうなぁ。
ま、誰と恋人になろうが、結婚しようが良いんだけどぉ。ベリーちゃんが幸せになれるならねぇ。
ウル《この際、全員と結婚すれば良いのにねぇ》
ま、中身が生粋の日本人だからムリなんだろうね。向こうは一夫一婦制だからぁ。『この際、常識を捨てろよ!』って言いたいっちゃ。
ウル《まっ、なるようになるか。よしっと!帰る前に、どうなったか見てこようっと》
パッとその場で謁見の間に転移したウルは、喚き散らしてる国王と宰相を発見☆
そして、周りをクルクル飛び回り、《ほへぇ》《ひぇぇ》《怖いもの知らずぅ》と言葉を零していた。
国王「ええい!使えん奴等め!結界くらい壊せんのか!」
宰相「無能魔法士は要らないんですよ。近衛騎士よ、剣で結界を壊しなさい!」
国王「いいか!聞け貴様ら!外に出たら悪魔諸共、あの偽物共を捕らえるのだ!民の前で悪事を暴き、奴等を裁くことが我が国の責務である!悪魔と共謀し、無実の人々を苦しめる者たちに対しては容赦なく厳罰を下すぞ!」
宰相「我々は国を守る者たち!偽りの英雄や聖女たちに騙される事なく、真の正義を貫くのです!我が国を守るために、そして民の安全のために、決して許すことはできない!力を合わせ、悪しき者たちを一網打尽にし、この国の平和を取り戻すのです!」
ウル《おっわぁ。捕縛命令が出たよぉ?元はと言えば、『極秘情報』が漏れたのが原因じゃ~ん。そして勝手に『国の英雄達』に仕立てて、パーティやら婚約者やらって押し付けたのが悪いのにぃ。『真の正義』なんて何処にあるんだろぉ?》
国王や宰相の煽りにより、「悪に鉄槌を!」、「反逆罪で処刑を!」、「裏切り者に罰を!」という貴族達の声が会場中に響き渡っていた。
近衛騎士、魔法士は、「悪に粛清を!」と一緒になって叫ぶ者と、「天罰が…」 「神の怒りが…」と恐怖に震える者とに分かれてた。
ウルは、飛び回りながら考えていた。ベリー達に伝えるかどうかを。《ん~、ん~》
よし!決めたもんねぇ。ベリーちゃん達は悪じゃないもぉん。反省するのは君達だよぉ!
ウルは《少~し派手に行くよぉ!にひひひ》と、不穏な言葉と不気味な笑い声をあげ、《ウルちゃんバズーカ!》天井を「ドガーーン」突き破り、天高く飛び上がった。
国王「!?何奴……ああああ!我が城が!」
宰相「王よ!あの悪魔達の仕業でしょう!」
護衛騎士「まだそんな事を言ってるのか!神の怒りに触れたんですよ我々は!これは天罰ですよ!」
「ぎゃあ!」 「殺される~」 「ここから出せ!」
突然の出来事に、謁見の間はまたしても大混乱に陥った。叫び声を上げ右往左往する貴族や騎士、魔法士達。会場はパニックルームになっていた。
その様子を空中を漂いながら一瞥し、《ファントム!》幻影魔法で『創成神』を空に投影し、音声拡張魔法を使い、声を張り上げた。
ウル《我が神の愛し子を侮辱し冒涜した悪っしき者達よ!我が怒りを買い、神の裁きを味わう愚かな者達よ!
貴様達の罪深き行いは、この天罰によって許されることはない!神の御意志に逆らい、神聖なる存在『神々の寵愛児』に冒涜を働く者よ、神の怒りをその身に焼き付けよ!》
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【王城】
国王「あぁ…主神様が降臨なされた…」
宰相「なんと神々しい…あの悪魔達を罰して下さるのですね…主神様に感謝と祈りを…」
護衛騎士「……罰を喰らうのは我々ですよ…宰相、頭沸いてんのか?いい加減に気付けよ!ハゲ野郎が!」
「神よ!我々をお救い下さい!」 「ああ…主神様…我らが光…」 「なんとお美しい…」
ビッド「ウル今度は何するのか知らないけど、派手に暴れて楽しそうだなぁ…僕も魔法ぶっ放そうかなぁ…」
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【市井の民達】
「うっわ!なんだアレ!バケモンか!?」
男性の指差す先と一声で皆が空を見上げた。
「空に何か居るぞ!」
「何だありゃ。まさか神様か?」
「愛し子を侮辱しただってよ。そんなバカいんだな」
「天罰って聞こえたぞ!」
「城の方で爆発あったけど、関係してるのかしらね」
「王族や貴族が何かしたんだろうさ。愛し子ってのに」
「ママー、何かお空にデッカイ人いるー!」
「きっと主神様ね。悪い事をすると罰を受けるのよ」
「罰!?ボク良い子だから大丈夫だよねママー!?」
キャロル「神って本当に居るのね…『神の愛し子』を侮辱して天罰とか、さすが異世界ね」
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【王都上空】
まずは奴等が死なないように結界張ってぇ。雷の雨とかバリバリ落としてみよう!それで反省してよねぇ。
ウル《悪っしき者に天罰を!この神の裁きを受けるのだ!《サンダーレイン!》》
バリバリバリバリ!!
ベリー達を罵ってた者だけに結界を張り、そこをターゲットにして雷の雨を降らせた。
纏う膜に遮られ、身を焼かれる事はないが、相当な恐怖だろう。喰らった者達は失神し、その場で倒れ伏せた。
ただ、国王だけは気を失わず呆然としているだけだった。それは、国王が強靭だからではない。ウルが意図的にターゲットから外したのだ。一言物申す為に。
やり切ったウルは幻影を消し、王の耳元で囁いた。
ウル《我は神の眷属ウルティアルス。神々の寵愛児であるストロベリー様に仕える者である。此度の天罰は貴様等が招いた結果である。今後、彼女達に関わる事を禁ずる。悪魔は性根の腐った己の中に存在する。良い行いをし、王として国を安寧に導け。さすれば神も許すだろう》
国王「……その命、しかと承りました…良き王になると、神の眷属ウルティアルス様に誓います」
うんうん。立派な賢王になってねぇシュガーズ国王さん。この国はベリーちゃんの母国だからね、無くなったら泣いちゃうもんきっと。
ウル《では、ベリー邸へ帰りましょっかねぇ。サラバ愚民共!あーはっはっはっ!》
こうして、ウルの活躍?により、一連の悪魔騒動が終息した。今後は何事もなく、平穏無事に過ごせるのか…それは神にも分からない。
ベリーには、平和な人生を送ってほしい。そう願うばかりだ。
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