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本編 最強冒険者
story206/息子と執事
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王都の貴族街の中にある、一際大きく立派な邸宅の主であるダウィン侯爵が、
ガーディアンにある別宅の一室で、執事の男からの報告を受け、不敵な笑みを浮かべていた。
ダウィン侯爵家は、商業の世界での成功を通じて富と権力を手に入れた貴族であった。
多くの商店を経営し、巨額の利益を上げていた。
そのため、彼の家系は商業界において随一の存在とされ、多くの人々がその名の恩恵に頼っていた。
展開している商品は、各種ポーションや、魔除け香、干し肉やテント等、冒険者や騎士の必需品と、
他国から輸入している岩塩や砂糖。そして農家から仕入れている野菜である。
だが、その富と権力は、正攻法で手に入れた物ではない。
先祖である私の曾祖父は子爵であったが、小規模な商店から権利を奪い続けることで大いなる富を築いたのだ。
曾祖父の野心と執念は、家系を通じて私に受け継がれている。
曾祖父の成功は、父である先代の時代に頂点を迎えた。
王から侯爵の地位を賜っただけでなく、大きな政治的権力を手に入れた。
これによって家族は社会の上層部に君臨し、他の人々を手駒として利用することさえ可能になった。
しかし、現侯爵である私は、ただ富や権力を受け継いだだけではない。
私の性格は、先祖たちの野心と残忍さを色濃く受け継いでいる。
私は冷酷で残虐、非道な行いに手を染めることをためらわない。
だが、そんな私でも愛する者がいた。彼は私の唯一無二の存在だったのに、目の前で魔物に食い殺されてしまった。
あの光景は今でも忘れられない。だから、人族とは違う生命体を根絶やしにする為、商売の傍ら積極的に行動しているのだ。
だから、執事から齎された報告に、私は笑みを深め大きく頷いたのだ。
「Aランク冒険者アレックス。本名はアレクレス・フォルティエ。辺境伯で騎士家系の三男坊だったな。
排除命令をしたのに、資格凍結に留めると副ギルドマスターに言われた時は腸が煮えくり返ったが…
自ら資格剥奪と国外退去を申し出たとなると、自分が亜人だと認めたと同意ではないか?そう思わんかギルよ」
「……左様でございますね。然しながら一つ懸念が御座います。
彼方の奥方様が今代の神の愛し子様との事ですが、天罰等は御座いませんでしょうか。私それが心配なのです」
「ふむ。その懸念は尤もだな。だが安心せよ。愛し子様は半神であり、我々人族の味方であるはずだ。
夫の正体が亜人だと解れば、愛し子様お自ら手を汚してくれるであろうよ」
「……そうで御座いますね。そのあと、傷心の愛し子様に手を差し伸べ、サイラス様と婚姻させ恩恵を賜る。
そのようにお考えなので御座いましょう?」
「くくく。よく解っておるではないか。流石ギルだな。
神の愛し子…製紙工場を手掛けた人物であり、王都のスラム街を一掃し、商店街を作った偉人。
無数の走るゴーレムを所持しており、ここガーディアンに壮観な屋敷を構える半神」
「……左様で御座います。製紙工場と商店街を手に入れるのは無理で御座いますが、
サイラス様と婚姻した暁にはゴーレムと屋敷が手に入りますからね。それで更に富が得られるわけで御座いますね」
「甘いなギルよ。製紙工場も手に入れるぞ。ユリウス・フォルティエを亡き者にして権利を奪うのだ。
騎士家系に産まれた氷魔法しか使えない落ちこぼれだ。
護衛騎士の剣豪をどうにか出来れば、葬り去るのは容易いだろうよ」
「……畏まりました。ではその役目、私の息子グレインにお任せ下さい。
元近衛騎士ですから剣の腕は確かですし、フォルティエ家の次男と顔見知りですから、対象に近付くのが容易だと思います」
「ああ。グレインか。今は冒険者だったな。では侯爵家からの特別依頼としてギルドに依頼書を出しとけ。
それとサイラスに執務室へ来るよう伝えろ。では行って良し」
「畏まりました。では御前失礼致します」
パタン…コツコツコツ…
「ふむ。行ったな。おい影よ。貴様ら今の話し聞いてたな。ギルの監視とサイラスの護衛で、二人適した能力の者をそれぞれ配置しろ。
他の者は、引き続き亜人共の排除の為に動け」
「御意」
「ああ、見目の良い者と使えそうなスキル持ちは捕らえて来いよ。見目良い者は金になるからな。
逆らうなよ亜人風情共。ま、逆らったら隷属の首輪で絞め殺されるだけだがな!あっはっは!では行けゴミ共」
「……くっ…御意」シュッ…
ふん。せいぜい人族の役に立ってから生命を散らせよ虫けら共が。
そしてギルよ。お前が秘密裏に亜人共を逃がしているのは知っておるのだぞ。
今回はグレインを使ってどんな裏切り行為をするんだろうな。発覚したが最後、生命は無いと思えよ。
コンコンコン
「…お呼びですか父上。手短に願いますよ。これから支店に出勤なんですから」(どうせ碌な用事じゃねぇだろ)
「おお!愛しいサイラス!いつ見ても亡き妻にソックリだ!可愛いぞ息子よ!
ところでサイラスよ。唐突な質問だが、恋人もしくは婚約者はいるのか?」
(本当に唐突だな。可愛いとか気持ち悪ぃんだよ)
「…いえ、居りませんが。というか父上が反対なさるので今まで居た事ありませんよ。何故です?」
「そうか、そうだったな。今まで悪かった。
だが、そんなお前に朗報だ。喜べサイラス。お前に婚約者が出来るぞ!相手はなんと神の愛し子様だ!」
(は?神の愛し子様って、アレクレスさんと婚姻してなかったか?子供も居るはずだよな?頭沸いてんのか?)
「……はぁ。何かの冗談ですか?あの方は婚姻してるし、子持ちですよ?」
「─という事なんだ。解ったかサイラスよ」
(呆れた。未だに亜人差別が酷いな。母上を食らったのは魔物であって亜人じゃねぇだろ)
「話しは解りました。用事はそれだけですか?もう時間が無いので失礼しますね。
……父上。亜人族は我々と同じで、意志を持った存在ですよ。魔物とは違うんです。
差別して迫害する父上こそが魔物と同意だと私は思いますね。では…」
「クソガキが!人が下手に出れば調子に乗りおって!私に舐めた口きく貴様はもはや息子では無い!
今日この時をもって侯爵家を追放する!支店長の地位も取り下げだ!さっさと出てけ!」
(クソはテメェだよ!)ペコっ。パタン……
(はぁ。やっと解放された!あんなヤツ父親だと思ったことねぇよ!ただの大量殺人鬼だよ!)
「ふぅ。清々したぁ!ギル、やっと解放されたよ。無一文になっちゃったけどねぇ」
「坊ちゃん…本当に出て行かれるのですか?行く宛てはあるのですか?
私は貴方の執事です…侯爵様ではなくサイラス様のお傍に居とう御座います…」
「実はね、“困った時は頼って“って言ってくれた亜人族の男の子が居たんだけど、その子の所に行こうと思う。
ギルも連れて行きたいけど…本当に父上から離れて大丈夫?見張ってる影の方が報告しちゃうよ?」
「心配はいりません。絶対防御のスキルがあるので剣も魔法も効きませんから。私も共に行かせて下さい」
「そっか。ふふふ。では行こうかギル。あの丘の上、マイキーくんのところへ」
「あそこで御座いますか!実は先程──なので少々まずいかもしれません」
「……資格剥奪と国外退去…権利の奪取…なんてことを…
我が父ながら非道過ぎる…半分同じ血が流れてると思うと吐き気がする!
ギル、早急に謝罪に向かおう。ギルドの件は…一緒に考えてくれ」
「承知致しましたサイラス様」
アレクの冒険者資格を凍結させたダウィン侯爵と、その息子と執事がそんなやり取りをやっていた頃、
冒険者ギルドから家に帰って来たアレクは、「……ただいま」と呟き、
……キョロキョロ「ショウマは部屋か?」室内を見回して、ショウマを探し、
«サーチ»「あ、いた。庭にエスポアと居るな」魔法を使って居場所を特定したり、
「これからどうすっかな」ソファに座って項垂れたり、「はぁぁぁぁ」天井を見上げ盛大に溜め息を吐いたり、
「……でねぇな。はぁぁ」トイレで踏ん張ったり、「ふぃい。気持ちいぜ」シャワーを浴びたり、
パコッ。パクっ。「!?かっらい!なんだこの野菜!劇物じゃねぇか!」冷蔵庫を開け野菜を齧ったり、
「おおう。結構汚れてんなぁ。手で洗ってやるか」普段使わない大広間で愛車のバイクを洗ったりと、
ウロウロと室内を彷徨い、所在無しに落ち着かなく動き回っていた。
そして、愛車のバイクを洗ったあと、「はぁーあ!」と叫び、大の字で床に四肢を投げ出し目を瞑った。
どのくらいそうして居たのか、目を開けたのは、ショウマが俺の名を呼び、エスが頬をペチペチ叩いていたからだ。
「アレクぅ。おかえりなさい。ちゅっ」
「あだだぁ。あだぁ。だぁー」ペチペチ
「おう。ただいま。エスポア、ペチペチじゃなくて、パパにチュウは?」
「……んむー」ゴンッ。「!?あぎゃあ、おぎゃあ…」
「あららら。勢い良すぎて顔面からダイブしちゃったね。痛い痛いの飛んでけぇ」«ヒール»
「ショウマ、俺にもそれやって。めちゃくちゃ可愛いその仕草。顔も心も痛いんだよー」
「ふふふ。痛いの痛いの飛んでけぇ!ちゅっ。
……で、アレクにお客さんが来てるよ?それで呼びに来たんだけど。ダウィン侯爵の息子と執事だってさ」
“ダウィン”その名を聞いた瞬間、ドクンっと心臓が音を立て、鼓動が急速に上がった。
俺を破滅に追いやった憎き男の息子と執事が一体何の用だよ?これ以上俺から何を奪う気だ?
内容次第じゃ侯爵の息子だろうが斬り捨てるぞ、クソ野郎が!
「ア、アレク?どうしたの?顔が般若みたいになってる…さっきから様子が変なのってその人のせい?
帰ってもらおうか?日を改めてもらう?」
「いや悪ぃ。心配させたな。ちゅっ。大丈夫だ。どこにいる?リビングか?」
(大丈夫じゃなさそうなんだけど…殺気立って空気ピリピリしてるもん!)
「……玄関横の応接室っぽい部屋に案内したけど…僕も一緒に話し聞こうか?一人で平気?」
「ちゅっ。横に居てくれるか?俺が暴走しそうになったら止めてくれ。……行くぞ」
「え!?あ、うん。わ、分かった」
暴走ってなに!暴走って!怖いんだけど!とりあえず殺気を抑えてアレクぅ!
(どうか何も起きませんように…アーメン)ボソッ
ガーディアンにある別宅の一室で、執事の男からの報告を受け、不敵な笑みを浮かべていた。
ダウィン侯爵家は、商業の世界での成功を通じて富と権力を手に入れた貴族であった。
多くの商店を経営し、巨額の利益を上げていた。
そのため、彼の家系は商業界において随一の存在とされ、多くの人々がその名の恩恵に頼っていた。
展開している商品は、各種ポーションや、魔除け香、干し肉やテント等、冒険者や騎士の必需品と、
他国から輸入している岩塩や砂糖。そして農家から仕入れている野菜である。
だが、その富と権力は、正攻法で手に入れた物ではない。
先祖である私の曾祖父は子爵であったが、小規模な商店から権利を奪い続けることで大いなる富を築いたのだ。
曾祖父の野心と執念は、家系を通じて私に受け継がれている。
曾祖父の成功は、父である先代の時代に頂点を迎えた。
王から侯爵の地位を賜っただけでなく、大きな政治的権力を手に入れた。
これによって家族は社会の上層部に君臨し、他の人々を手駒として利用することさえ可能になった。
しかし、現侯爵である私は、ただ富や権力を受け継いだだけではない。
私の性格は、先祖たちの野心と残忍さを色濃く受け継いでいる。
私は冷酷で残虐、非道な行いに手を染めることをためらわない。
だが、そんな私でも愛する者がいた。彼は私の唯一無二の存在だったのに、目の前で魔物に食い殺されてしまった。
あの光景は今でも忘れられない。だから、人族とは違う生命体を根絶やしにする為、商売の傍ら積極的に行動しているのだ。
だから、執事から齎された報告に、私は笑みを深め大きく頷いたのだ。
「Aランク冒険者アレックス。本名はアレクレス・フォルティエ。辺境伯で騎士家系の三男坊だったな。
排除命令をしたのに、資格凍結に留めると副ギルドマスターに言われた時は腸が煮えくり返ったが…
自ら資格剥奪と国外退去を申し出たとなると、自分が亜人だと認めたと同意ではないか?そう思わんかギルよ」
「……左様でございますね。然しながら一つ懸念が御座います。
彼方の奥方様が今代の神の愛し子様との事ですが、天罰等は御座いませんでしょうか。私それが心配なのです」
「ふむ。その懸念は尤もだな。だが安心せよ。愛し子様は半神であり、我々人族の味方であるはずだ。
夫の正体が亜人だと解れば、愛し子様お自ら手を汚してくれるであろうよ」
「……そうで御座いますね。そのあと、傷心の愛し子様に手を差し伸べ、サイラス様と婚姻させ恩恵を賜る。
そのようにお考えなので御座いましょう?」
「くくく。よく解っておるではないか。流石ギルだな。
神の愛し子…製紙工場を手掛けた人物であり、王都のスラム街を一掃し、商店街を作った偉人。
無数の走るゴーレムを所持しており、ここガーディアンに壮観な屋敷を構える半神」
「……左様で御座います。製紙工場と商店街を手に入れるのは無理で御座いますが、
サイラス様と婚姻した暁にはゴーレムと屋敷が手に入りますからね。それで更に富が得られるわけで御座いますね」
「甘いなギルよ。製紙工場も手に入れるぞ。ユリウス・フォルティエを亡き者にして権利を奪うのだ。
騎士家系に産まれた氷魔法しか使えない落ちこぼれだ。
護衛騎士の剣豪をどうにか出来れば、葬り去るのは容易いだろうよ」
「……畏まりました。ではその役目、私の息子グレインにお任せ下さい。
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「……くっ…御意」シュッ…
ふん。せいぜい人族の役に立ってから生命を散らせよ虫けら共が。
そしてギルよ。お前が秘密裏に亜人共を逃がしているのは知っておるのだぞ。
今回はグレインを使ってどんな裏切り行為をするんだろうな。発覚したが最後、生命は無いと思えよ。
コンコンコン
「…お呼びですか父上。手短に願いますよ。これから支店に出勤なんですから」(どうせ碌な用事じゃねぇだろ)
「おお!愛しいサイラス!いつ見ても亡き妻にソックリだ!可愛いぞ息子よ!
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(本当に唐突だな。可愛いとか気持ち悪ぃんだよ)
「…いえ、居りませんが。というか父上が反対なさるので今まで居た事ありませんよ。何故です?」
「そうか、そうだったな。今まで悪かった。
だが、そんなお前に朗報だ。喜べサイラス。お前に婚約者が出来るぞ!相手はなんと神の愛し子様だ!」
(は?神の愛し子様って、アレクレスさんと婚姻してなかったか?子供も居るはずだよな?頭沸いてんのか?)
「……はぁ。何かの冗談ですか?あの方は婚姻してるし、子持ちですよ?」
「─という事なんだ。解ったかサイラスよ」
(呆れた。未だに亜人差別が酷いな。母上を食らったのは魔物であって亜人じゃねぇだろ)
「話しは解りました。用事はそれだけですか?もう時間が無いので失礼しますね。
……父上。亜人族は我々と同じで、意志を持った存在ですよ。魔物とは違うんです。
差別して迫害する父上こそが魔物と同意だと私は思いますね。では…」
「クソガキが!人が下手に出れば調子に乗りおって!私に舐めた口きく貴様はもはや息子では無い!
今日この時をもって侯爵家を追放する!支店長の地位も取り下げだ!さっさと出てけ!」
(クソはテメェだよ!)ペコっ。パタン……
(はぁ。やっと解放された!あんなヤツ父親だと思ったことねぇよ!ただの大量殺人鬼だよ!)
「ふぅ。清々したぁ!ギル、やっと解放されたよ。無一文になっちゃったけどねぇ」
「坊ちゃん…本当に出て行かれるのですか?行く宛てはあるのですか?
私は貴方の執事です…侯爵様ではなくサイラス様のお傍に居とう御座います…」
「実はね、“困った時は頼って“って言ってくれた亜人族の男の子が居たんだけど、その子の所に行こうと思う。
ギルも連れて行きたいけど…本当に父上から離れて大丈夫?見張ってる影の方が報告しちゃうよ?」
「心配はいりません。絶対防御のスキルがあるので剣も魔法も効きませんから。私も共に行かせて下さい」
「そっか。ふふふ。では行こうかギル。あの丘の上、マイキーくんのところへ」
「あそこで御座いますか!実は先程──なので少々まずいかもしれません」
「……資格剥奪と国外退去…権利の奪取…なんてことを…
我が父ながら非道過ぎる…半分同じ血が流れてると思うと吐き気がする!
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「承知致しましたサイラス様」
アレクの冒険者資格を凍結させたダウィン侯爵と、その息子と執事がそんなやり取りをやっていた頃、
冒険者ギルドから家に帰って来たアレクは、「……ただいま」と呟き、
……キョロキョロ「ショウマは部屋か?」室内を見回して、ショウマを探し、
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「これからどうすっかな」ソファに座って項垂れたり、「はぁぁぁぁ」天井を見上げ盛大に溜め息を吐いたり、
「……でねぇな。はぁぁ」トイレで踏ん張ったり、「ふぃい。気持ちいぜ」シャワーを浴びたり、
パコッ。パクっ。「!?かっらい!なんだこの野菜!劇物じゃねぇか!」冷蔵庫を開け野菜を齧ったり、
「おおう。結構汚れてんなぁ。手で洗ってやるか」普段使わない大広間で愛車のバイクを洗ったりと、
ウロウロと室内を彷徨い、所在無しに落ち着かなく動き回っていた。
そして、愛車のバイクを洗ったあと、「はぁーあ!」と叫び、大の字で床に四肢を投げ出し目を瞑った。
どのくらいそうして居たのか、目を開けたのは、ショウマが俺の名を呼び、エスが頬をペチペチ叩いていたからだ。
「アレクぅ。おかえりなさい。ちゅっ」
「あだだぁ。あだぁ。だぁー」ペチペチ
「おう。ただいま。エスポア、ペチペチじゃなくて、パパにチュウは?」
「……んむー」ゴンッ。「!?あぎゃあ、おぎゃあ…」
「あららら。勢い良すぎて顔面からダイブしちゃったね。痛い痛いの飛んでけぇ」«ヒール»
「ショウマ、俺にもそれやって。めちゃくちゃ可愛いその仕草。顔も心も痛いんだよー」
「ふふふ。痛いの痛いの飛んでけぇ!ちゅっ。
……で、アレクにお客さんが来てるよ?それで呼びに来たんだけど。ダウィン侯爵の息子と執事だってさ」
“ダウィン”その名を聞いた瞬間、ドクンっと心臓が音を立て、鼓動が急速に上がった。
俺を破滅に追いやった憎き男の息子と執事が一体何の用だよ?これ以上俺から何を奪う気だ?
内容次第じゃ侯爵の息子だろうが斬り捨てるぞ、クソ野郎が!
「ア、アレク?どうしたの?顔が般若みたいになってる…さっきから様子が変なのってその人のせい?
帰ってもらおうか?日を改めてもらう?」
「いや悪ぃ。心配させたな。ちゅっ。大丈夫だ。どこにいる?リビングか?」
(大丈夫じゃなさそうなんだけど…殺気立って空気ピリピリしてるもん!)
「……玄関横の応接室っぽい部屋に案内したけど…僕も一緒に話し聞こうか?一人で平気?」
「ちゅっ。横に居てくれるか?俺が暴走しそうになったら止めてくれ。……行くぞ」
「え!?あ、うん。わ、分かった」
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