196 / 233
本編 最強冒険者
story174/賑やかな食卓
しおりを挟む
朝陽が差し込む寝室の窓辺に座り、ウトウトとしながらも眠る事をせず、
アレクとマイキーの無事を祈り、帰宅する瞬間を今か今かと待ち侘びていた。
気配を辿ったら、街の中の1箇所から動かず、その場に留まっているのが分かっていたので、
(何処かの宿屋で一晩過ごしたのかな……)と思ったり、
(まさか怪我して動けないとか……)と思ったり、
(心配だから迎えに行こうかな……)と思ったりしながら夜を明かした。
太陽が昇って暫く経った頃、ベビールームから、
「んぎゃぁあ、んぎゃぁあ」とエスポアの泣き声が聞こえてきたので、重い腰を上げ部屋へと向かった。
「エスポア~、起きたのぉ。お腹空いたかなぁ?」
そう声を掛けながら、お尻のチェックをし、オムツを替えてから抱き上げ、ミルクを飲ませた。
「んきゃ、あいぃ、んく、んく、んく」
「美味しいぃ?凄い勢いで飲むねぇ。ふふっ」
小さい手で、必死に僕の指とポーション瓶を掴み、真面目な顔して飲んでる姿が可愛くて、
ニコニコと笑顔で暫し見入っていたら、
「まーまー、まーまー、パパと、にぃにと、にゃんと、きちゃよ、ぶーんって」
アレクとマイキーが帰ってきたという知らせを、ルナが伝えに来た。
その報告を受けて、僕は「ホッ」と一息ついた。
そして「良かった…」と呟いた瞬間、身体に安心感が広がり、同時に一筋の涙が頬を伝った。
昨日から魔物討伐に向かったアレクとマイキー。
彼らの戻りを心配して、不安で、一晩中祈り続けていた僕の想いが、少しだけ報われた瞬間だった。
「ルナ、エスポア、一緒にお外まで行ってお出迎えしようか。そしてお帰りのハグだよぉ」
「あい!ルナ、にゃんとギューしゅる!」
ルナの言葉を不思議に思い「“にゃん“って何?」と首を傾げて聞いてみたら、
「…?にゃん、にゃん、にぇこしゃん!」と元気いっぱいに答えた。
(ん~?子猫でも拾ったのかな?)と思いながら、エスポアを抱え、ルナと手を繋ぎ、外へと出た。
そして丘の入り口まで歩いて行き気配を辿ってみたら、
アレクとマイキーの他に、もう1つ知らない魔力をキャッチした。
ルナは“にゃん”と言っていたから猫だと思ったのに、感じる魔力反応は人のもの。
しかも大きさからして、子供のものだと気付いた。
だから(被害に遭った孤児でも連れ帰ってきたのかな?)と考えながら到着を待ちわびた。
暫くすると肉眼でハッキリ見える距離まで近付いて来ており、
「あ!ルナ見えたよ!パパとお兄ちゃん!」と喜びの声を上げた僕と、
「きゃあ!パーパー、にぃにー、にゃんにゃん!」と飛び跳ねながら奇声を上げたルナが、
こちらに向かってくる2人に、手を振りながら待っていた。アレク達も気付いたようで手を振り返してくれた。
でもよく見ると、お腹に小さい子供を抱え、後ろにマイキーを乗せてバイクを走らせており、
その姿がなんともシュールで、腹を抱えて笑ってしまった。「あっはは!なにあの格好!」
でも、やっと、やっと無事な姿を自分の目で確認できた安堵感から、嗚咽を漏らして泣いてしまった。
「良かったよぉ、ぐすっ、アレクゥ、ぐすっ、マイキー」
そして数分後「ブォン」というエンジン音と、
「ショウマー!ルナー!エスポアー!」というアレクの声と、
「ママー!ルナー!エスくーん!」というマイキーの声、そして……
「んにゃぁああ!」という猫の叫び声を辺り一面に響かせながら、僕達の目の前に到着した。
瞬間、エスポアがマイキーに向かって手を伸ばし「んだぁあ!」と抱っこをせがみ、しがみつき、
ルナがアレクに張り付いてる子供を「にゃんにゃん!」と言いながら魔法で自分の元へと運び抱きつき、
僕とアレクは「おかえりなさい」「ただいま」と言いながら口付けと共に抱き合った。
そのまま暫く、キスしたり、抱き合ったりと、イチャイチャとしていたら、もの凄い視線を感じ、
「はっ!」として目線を向けたら、茶色と白のグラデヘアと琥珀色の瞳をした、子猫の人形さんと目が合った。
そして一瞬の間を置いて「超かわいい!!」と叫んだ僕の声と、
「エンジェルだにゃ!」と叫んだ子供の声が重なり合って、その場で共鳴した。
「ア、アレク!この猫ちゃんはどうしたの??めちゃくちゃ可愛い!こんにちは、お名前は?」
「カイト・ツシマにゃ、昨日この世界に来て、速攻スタンピードに出会したにゃよ。エンジェル様のお名前は?」
可愛いクリクリの猫目と、ピコピコと動いてる耳に悶えていたら、聞こえたフレーズに固まった。
そして、頭の中で(カイト・ツシマ?)と(昨日来た?)と言葉を反芻してから、
「どぇえ!その名前の響きって…君、日本からの転生者なの!?ウソでしょ~!!」
事実に盛大に驚き、頬に手を当て叫んだら、アレクに頭を撫でられ「ほら、自己紹介しろ」と言われた。
「あ、ごめんね。つい驚いちゃって。僕は、ショウマ・アマギ・フォルティエです。同じ転生者だよ」
ニコッと笑い、自分の名前を告げたら、今度はカイト君が目を見開き驚き、何故か涙を流した。
「まさか、天城 翔馬くんだったにゃんて…君さ、○○市に住んでて、その地域の進学校に通ってにゃかった?
ボクちの名前に聞き覚えにゃい?“対馬 海斗”にゃよ。
自分で言うのもにゃんだけど、あの街じゃ有名にゃ名前だった筈にゃよ」
そう問われ、「ん~?」と記憶を手繰り寄せていたら、いきなりアレクに抱っこされ、
「ショウマ、カイトも。とりあえず家の中入ろうぜ。俺達さ、昨日の夜から何も食ってねぇから腹減った」
と言われたので「それは大変!」と慌ててユアゾンを開き、サンドイッチを購入した。が……
アレクは僕を抱っこ、マイキーはエスポアを抱っこ、
カイト君はルナを抱っこしており、手が離せない状態だったので、家に着くまでは諦めて、大人しく運ばれた。
その間に思い出した。
彼は同じ市内にあった男子校の陽キャ集団の中の1人で、天才ボクサーって言われてた人だと。
そして同時に思い出したのは、近所に住んでいたということと、幼少期にカイト君に虐められていたこと。
それは僕にとって忘れたい記憶の一つで、その出来事は僕の人格形成に大きな影響を与え、
暗くジメジメとした性格を持つキッカケの1つとなったんだ。
そんな彼が目の前にいる。何故か頭に耳を付けた猫の子供の姿で。可愛いんだけどね、凄く。
だけど、古傷が開きジクジクと痛む感覚に襲われ、それを払拭したくてギュムッと目を瞑り、
アレクの胸に顔を埋めて、背中に手を回し、ギュッとしがみついた。
その様子を哀しそうな顔をして見つめていたカイト君だけど、僕はそれに気付かなかった。
そしてその状態で家の中へと入り、リビングに到着したけど、離れたくなくて必死にしがみついていた。
「ショウマ…心配させてごめんな。……お前、顔色悪いぞ?ベッドで横になるか?」
「ん…凄く心配した。ずっと帰ってくるの待ってた…。ご飯食べたらアレクと2人になりたい」
「それは俺も大歓迎だが、エスポア達はどうする?」
僕たちの会話を聞いていたマイキーが「エスポアはオレが見てるよ。全然離れてくれないし…」と言い、
ルナはカイト君に掴まり「にゃんと、あしょんでりゅ!まーま、ねんねちてきて」
と言ってくれたので、お言葉に甘えることにした。
「ありがと2人とも。さあ、ご飯たべようか。今日は和食だよぉ。ほら、座って。カイト君もね」
過ぎ去った過去の出来事は一旦頭の隅に追いやり、今は家族が揃ったことを喜ぼうと、明るく声を掛けた。
カイト君は「翔馬くん、ボクちのことは放っといていいにゃよ。家族水入らずの邪魔はしないにゃ」
と言っていたけど、ルナに「めっ!にゃん、ごあん、たべりゅの!うまうまよー」と怒られ、
アレクに「遠慮すんな、カイトも昨日から何も食ってねぇだろ?ショウマの飯は美味いぞ」と頭を撫でられ、
マイキーには「そんな細いと、ルナの遊びについていけないよ。もっと筋肉付けないと」とニヤッとされ、
そこに参加したエスポアからも「んだぁ、うぶぶ、だぁだぁ」と通訳必須なバブ語で言われ、
「にゃはっ」と苦笑を漏らし「じゃあ、遠慮にゃく頂くにゃ。オールウェイズありがとにゃ。
翔馬くん、グッドなファミリーにゃね」と言いながら席についた。
僕はその言い方に「あはは!カイト君、ルー語で喋っても誰も分かんないから!」と爆笑しながら座った。
案の定、アレクもマイキーもキョトンとしており、
「オルウェイ?」「グドなファミ?」「ルゴって何だ?」と口々に言葉を発し首を傾げていた。
それを見て「あ、ソーリー、ごめんにゃ!」と慌てて謝ったカイト君が面白くて、僕は更に笑い声を上げた。
そんな賑やかな食事風景を楽しんでいたら、過去のことなんてどうでも良くなり、頭の隅から消し去った。
そして、食事中は色々なことを聞いてみた。
「ねぇ。カイト君って“プロ目前”って言われてたボクサーだよね?どうしてこの世界に?」
「んにゃ。ベタな漫画のひとシーンみたいにゃけど。
ハートブレイクして、ズーンってなってる所に、川で溺れるニャンコを発見したにゃ。
慌てて飛び込んでレスキューしようとしたら溺れて、ドンブラコと流され、気付いたら白い部屋に居たにゃね」
だから、言葉!悲しい話なのに笑っちゃうから!
「ん゙ん゙ッ。えっと、失恋して川で溺れて、神様のところで目覚めたってことね。
で、フェリス様に猫獣人にして貰って、この世界へと転生して来たってことかな?」
アレク達にも分かるように解釈しながら聞き返したら、
「んにゃ?神様のネームは、レディなんとかだったにゃね。オネェ様のゴッドだったにゃよ。
“猫になりたい”って言ったのに、この地に降りたら猫ボーイになってたにゃよ」
と、真面目な顔して喋ってますけど!言葉!やめて!
「もーだめ!あっははは!カイト君なんで単語を英語にして喋るの!
真面目に話してても巫山戯て聞こえるんだけど!あー可笑しい。それに、ぷぷぷっ、なんで猫なの!」
その後もルー語…いや、カイト語を炸裂させながら喋るカイト君と、終始笑いながら会話をし、食事を終えた。
そして、満腹になったお腹を擦りながらリビングでまったりしていたら睡魔に襲われ、
アレクの肩にもたれ掛かり、幸せな気持ちのまま、深い眠りに落ちていった。
(パパ、まーま、ニコニコて、ねんねちた。みーな、ちーよ)コソッ
(アレクも寝ておいでよ。ルナとエスポアのことはオレとカイトに任せて)コソッ
「あいあいさー!(あ、ごめんにゃさい。ルナちゃんと遊んでるにゃ、おやすみにゃ)コソッ
「ははっ。ありがとな。カイト、遠慮せずこの家でゆっくりしてろよ。マイキー、あとは頼んだぞ」
(((あいあいさーーー!!)))コソコソ
「あはは!仲良くしてろよーおやすみー」
元気な子供たちの返事に笑いながら声を掛け、ショウマを抱え寝室へと入り、ベッドに2人で横になり、
「おやすみショウマ、ちゅっ」と口付けをしてから目を閉じ、ギュッと抱き締めながら、俺も眠りについた。
アレクとマイキーの無事を祈り、帰宅する瞬間を今か今かと待ち侘びていた。
気配を辿ったら、街の中の1箇所から動かず、その場に留まっているのが分かっていたので、
(何処かの宿屋で一晩過ごしたのかな……)と思ったり、
(まさか怪我して動けないとか……)と思ったり、
(心配だから迎えに行こうかな……)と思ったりしながら夜を明かした。
太陽が昇って暫く経った頃、ベビールームから、
「んぎゃぁあ、んぎゃぁあ」とエスポアの泣き声が聞こえてきたので、重い腰を上げ部屋へと向かった。
「エスポア~、起きたのぉ。お腹空いたかなぁ?」
そう声を掛けながら、お尻のチェックをし、オムツを替えてから抱き上げ、ミルクを飲ませた。
「んきゃ、あいぃ、んく、んく、んく」
「美味しいぃ?凄い勢いで飲むねぇ。ふふっ」
小さい手で、必死に僕の指とポーション瓶を掴み、真面目な顔して飲んでる姿が可愛くて、
ニコニコと笑顔で暫し見入っていたら、
「まーまー、まーまー、パパと、にぃにと、にゃんと、きちゃよ、ぶーんって」
アレクとマイキーが帰ってきたという知らせを、ルナが伝えに来た。
その報告を受けて、僕は「ホッ」と一息ついた。
そして「良かった…」と呟いた瞬間、身体に安心感が広がり、同時に一筋の涙が頬を伝った。
昨日から魔物討伐に向かったアレクとマイキー。
彼らの戻りを心配して、不安で、一晩中祈り続けていた僕の想いが、少しだけ報われた瞬間だった。
「ルナ、エスポア、一緒にお外まで行ってお出迎えしようか。そしてお帰りのハグだよぉ」
「あい!ルナ、にゃんとギューしゅる!」
ルナの言葉を不思議に思い「“にゃん“って何?」と首を傾げて聞いてみたら、
「…?にゃん、にゃん、にぇこしゃん!」と元気いっぱいに答えた。
(ん~?子猫でも拾ったのかな?)と思いながら、エスポアを抱え、ルナと手を繋ぎ、外へと出た。
そして丘の入り口まで歩いて行き気配を辿ってみたら、
アレクとマイキーの他に、もう1つ知らない魔力をキャッチした。
ルナは“にゃん”と言っていたから猫だと思ったのに、感じる魔力反応は人のもの。
しかも大きさからして、子供のものだと気付いた。
だから(被害に遭った孤児でも連れ帰ってきたのかな?)と考えながら到着を待ちわびた。
暫くすると肉眼でハッキリ見える距離まで近付いて来ており、
「あ!ルナ見えたよ!パパとお兄ちゃん!」と喜びの声を上げた僕と、
「きゃあ!パーパー、にぃにー、にゃんにゃん!」と飛び跳ねながら奇声を上げたルナが、
こちらに向かってくる2人に、手を振りながら待っていた。アレク達も気付いたようで手を振り返してくれた。
でもよく見ると、お腹に小さい子供を抱え、後ろにマイキーを乗せてバイクを走らせており、
その姿がなんともシュールで、腹を抱えて笑ってしまった。「あっはは!なにあの格好!」
でも、やっと、やっと無事な姿を自分の目で確認できた安堵感から、嗚咽を漏らして泣いてしまった。
「良かったよぉ、ぐすっ、アレクゥ、ぐすっ、マイキー」
そして数分後「ブォン」というエンジン音と、
「ショウマー!ルナー!エスポアー!」というアレクの声と、
「ママー!ルナー!エスくーん!」というマイキーの声、そして……
「んにゃぁああ!」という猫の叫び声を辺り一面に響かせながら、僕達の目の前に到着した。
瞬間、エスポアがマイキーに向かって手を伸ばし「んだぁあ!」と抱っこをせがみ、しがみつき、
ルナがアレクに張り付いてる子供を「にゃんにゃん!」と言いながら魔法で自分の元へと運び抱きつき、
僕とアレクは「おかえりなさい」「ただいま」と言いながら口付けと共に抱き合った。
そのまま暫く、キスしたり、抱き合ったりと、イチャイチャとしていたら、もの凄い視線を感じ、
「はっ!」として目線を向けたら、茶色と白のグラデヘアと琥珀色の瞳をした、子猫の人形さんと目が合った。
そして一瞬の間を置いて「超かわいい!!」と叫んだ僕の声と、
「エンジェルだにゃ!」と叫んだ子供の声が重なり合って、その場で共鳴した。
「ア、アレク!この猫ちゃんはどうしたの??めちゃくちゃ可愛い!こんにちは、お名前は?」
「カイト・ツシマにゃ、昨日この世界に来て、速攻スタンピードに出会したにゃよ。エンジェル様のお名前は?」
可愛いクリクリの猫目と、ピコピコと動いてる耳に悶えていたら、聞こえたフレーズに固まった。
そして、頭の中で(カイト・ツシマ?)と(昨日来た?)と言葉を反芻してから、
「どぇえ!その名前の響きって…君、日本からの転生者なの!?ウソでしょ~!!」
事実に盛大に驚き、頬に手を当て叫んだら、アレクに頭を撫でられ「ほら、自己紹介しろ」と言われた。
「あ、ごめんね。つい驚いちゃって。僕は、ショウマ・アマギ・フォルティエです。同じ転生者だよ」
ニコッと笑い、自分の名前を告げたら、今度はカイト君が目を見開き驚き、何故か涙を流した。
「まさか、天城 翔馬くんだったにゃんて…君さ、○○市に住んでて、その地域の進学校に通ってにゃかった?
ボクちの名前に聞き覚えにゃい?“対馬 海斗”にゃよ。
自分で言うのもにゃんだけど、あの街じゃ有名にゃ名前だった筈にゃよ」
そう問われ、「ん~?」と記憶を手繰り寄せていたら、いきなりアレクに抱っこされ、
「ショウマ、カイトも。とりあえず家の中入ろうぜ。俺達さ、昨日の夜から何も食ってねぇから腹減った」
と言われたので「それは大変!」と慌ててユアゾンを開き、サンドイッチを購入した。が……
アレクは僕を抱っこ、マイキーはエスポアを抱っこ、
カイト君はルナを抱っこしており、手が離せない状態だったので、家に着くまでは諦めて、大人しく運ばれた。
その間に思い出した。
彼は同じ市内にあった男子校の陽キャ集団の中の1人で、天才ボクサーって言われてた人だと。
そして同時に思い出したのは、近所に住んでいたということと、幼少期にカイト君に虐められていたこと。
それは僕にとって忘れたい記憶の一つで、その出来事は僕の人格形成に大きな影響を与え、
暗くジメジメとした性格を持つキッカケの1つとなったんだ。
そんな彼が目の前にいる。何故か頭に耳を付けた猫の子供の姿で。可愛いんだけどね、凄く。
だけど、古傷が開きジクジクと痛む感覚に襲われ、それを払拭したくてギュムッと目を瞑り、
アレクの胸に顔を埋めて、背中に手を回し、ギュッとしがみついた。
その様子を哀しそうな顔をして見つめていたカイト君だけど、僕はそれに気付かなかった。
そしてその状態で家の中へと入り、リビングに到着したけど、離れたくなくて必死にしがみついていた。
「ショウマ…心配させてごめんな。……お前、顔色悪いぞ?ベッドで横になるか?」
「ん…凄く心配した。ずっと帰ってくるの待ってた…。ご飯食べたらアレクと2人になりたい」
「それは俺も大歓迎だが、エスポア達はどうする?」
僕たちの会話を聞いていたマイキーが「エスポアはオレが見てるよ。全然離れてくれないし…」と言い、
ルナはカイト君に掴まり「にゃんと、あしょんでりゅ!まーま、ねんねちてきて」
と言ってくれたので、お言葉に甘えることにした。
「ありがと2人とも。さあ、ご飯たべようか。今日は和食だよぉ。ほら、座って。カイト君もね」
過ぎ去った過去の出来事は一旦頭の隅に追いやり、今は家族が揃ったことを喜ぼうと、明るく声を掛けた。
カイト君は「翔馬くん、ボクちのことは放っといていいにゃよ。家族水入らずの邪魔はしないにゃ」
と言っていたけど、ルナに「めっ!にゃん、ごあん、たべりゅの!うまうまよー」と怒られ、
アレクに「遠慮すんな、カイトも昨日から何も食ってねぇだろ?ショウマの飯は美味いぞ」と頭を撫でられ、
マイキーには「そんな細いと、ルナの遊びについていけないよ。もっと筋肉付けないと」とニヤッとされ、
そこに参加したエスポアからも「んだぁ、うぶぶ、だぁだぁ」と通訳必須なバブ語で言われ、
「にゃはっ」と苦笑を漏らし「じゃあ、遠慮にゃく頂くにゃ。オールウェイズありがとにゃ。
翔馬くん、グッドなファミリーにゃね」と言いながら席についた。
僕はその言い方に「あはは!カイト君、ルー語で喋っても誰も分かんないから!」と爆笑しながら座った。
案の定、アレクもマイキーもキョトンとしており、
「オルウェイ?」「グドなファミ?」「ルゴって何だ?」と口々に言葉を発し首を傾げていた。
それを見て「あ、ソーリー、ごめんにゃ!」と慌てて謝ったカイト君が面白くて、僕は更に笑い声を上げた。
そんな賑やかな食事風景を楽しんでいたら、過去のことなんてどうでも良くなり、頭の隅から消し去った。
そして、食事中は色々なことを聞いてみた。
「ねぇ。カイト君って“プロ目前”って言われてたボクサーだよね?どうしてこの世界に?」
「んにゃ。ベタな漫画のひとシーンみたいにゃけど。
ハートブレイクして、ズーンってなってる所に、川で溺れるニャンコを発見したにゃ。
慌てて飛び込んでレスキューしようとしたら溺れて、ドンブラコと流され、気付いたら白い部屋に居たにゃね」
だから、言葉!悲しい話なのに笑っちゃうから!
「ん゙ん゙ッ。えっと、失恋して川で溺れて、神様のところで目覚めたってことね。
で、フェリス様に猫獣人にして貰って、この世界へと転生して来たってことかな?」
アレク達にも分かるように解釈しながら聞き返したら、
「んにゃ?神様のネームは、レディなんとかだったにゃね。オネェ様のゴッドだったにゃよ。
“猫になりたい”って言ったのに、この地に降りたら猫ボーイになってたにゃよ」
と、真面目な顔して喋ってますけど!言葉!やめて!
「もーだめ!あっははは!カイト君なんで単語を英語にして喋るの!
真面目に話してても巫山戯て聞こえるんだけど!あー可笑しい。それに、ぷぷぷっ、なんで猫なの!」
その後もルー語…いや、カイト語を炸裂させながら喋るカイト君と、終始笑いながら会話をし、食事を終えた。
そして、満腹になったお腹を擦りながらリビングでまったりしていたら睡魔に襲われ、
アレクの肩にもたれ掛かり、幸せな気持ちのまま、深い眠りに落ちていった。
(パパ、まーま、ニコニコて、ねんねちた。みーな、ちーよ)コソッ
(アレクも寝ておいでよ。ルナとエスポアのことはオレとカイトに任せて)コソッ
「あいあいさー!(あ、ごめんにゃさい。ルナちゃんと遊んでるにゃ、おやすみにゃ)コソッ
「ははっ。ありがとな。カイト、遠慮せずこの家でゆっくりしてろよ。マイキー、あとは頼んだぞ」
(((あいあいさーーー!!)))コソコソ
「あはは!仲良くしてろよーおやすみー」
元気な子供たちの返事に笑いながら声を掛け、ショウマを抱え寝室へと入り、ベッドに2人で横になり、
「おやすみショウマ、ちゅっ」と口付けをしてから目を閉じ、ギュッと抱き締めながら、俺も眠りについた。
0
お気に入りに追加
1,675
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる