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本編 最強冒険者

story157/迷惑な訪問者

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ある街の貴族街に位置する立派な屋敷の一室で、当主の男が従者に厭らしく指示を出していた。

「丘の上に突如現れた豪華な建物を手に入れてこい。あれは私にこそ相応しい物だ」

その言葉に震えながらも、従者は背中を竦めて固くなり、当主の男に対して反抗の言葉を口にした。

「それはできません。あの土地は高位貴族、フォルティエ辺境伯家の所有物件です」

従者の言葉に、当主の男の顔が醜く歪み怒りが溢れ出た。
その男は激しく怒鳴り散らし、従者に向かって手を振り上げた。

「バカ者めが!そんな事は知っておるわ!黙って私の言うことを聞け!
この街の中で、私が手に入れたい物は何でも手に入るのが当たり前なのだ!」

従者の表情は怯えと頑固さが交錯していたが、彼は当主の男に立ち向かって言った。

「申し訳ありませんが、それは法に反する行為です。他の貴族の所有物を奪うなどということは、
我々の名誉を汚すことになります」

当主の男は目を細め、嘲笑うような声で従者に言い放った。

「名誉?そんなくだらないものを気にするな!私の欲望が何よりも尊いのだ!」

やり取りはますます激化し、屋敷の一室は緊迫した空気に包まれた。

従者は怒りに震えながらも、自分の信念を守り続ける覚悟を持っていた。
彼は当主の男に対して再び口を開いた。

「ご理解いただけないかもしれませんが、
私たちの使命はただの快楽や欲望の追求ではなく、社会の秩序や調和を守ることです」

当主の男の顔に怒りの渦が広がり、彼は激しく手を振り回すと、従者に向かって突っ込んできた。

「無能者めが!出来ないからと屁理屈を捏ねるな!」

従者は身をかわし、自分の身を守った。
その瞬間、当主の男の怒りが頂点に達し、彼は屋敷から出て行くように従者に命じた。

「消えろ!この屋敷から出てけ!無能な従者などいらない!」

従者は一瞬たじろぎながらも、背筋を正して深々と頭を下げたまま言った。

「かしこまりました。ただし、どうかくれぐれも後悔しないようにしてください。」

その言葉を最後に従者は退室し、当主の男は怒りと憤りを胸に抱えたままひとり残された。

従者をクビにした当主の男は、新たに従者を雇い、ますます傲慢な態度で指示を出し始めた。

「君は私の貴族としての地位に相応しい従者であることを忘れるな。
丘の上にある、あの豪華な建物を手に入れてこい。
私の為に働く者として、それは当然のことだ」

新たな従者は、戸惑いながらも、当主の男の厚顔な態度にただ頷くことしかできなかった。
まだ短期間しか付き合っていないが、この当主の男の気まぐれや傲慢さを予感していた。

従者は、当主の言葉に逆らうことはできないと判断し、
その指示を忠実に実行するために動き出した。

「あの建物は他の貴族の所有物件だということだが、どのように手に入れれば良いのか…」

と従者は思いながら、調査を始めた。

数日間、従者はあらゆる情報を集め、あの豪華な“ようちえん”という建物の所有者を突き止めた。

土地の権利者は、辺境伯家3男との事だが、建物は平民が所有者だという事だったので、
簡単に交渉出来ると高を括って、晩餐会が行われるという情報の元、その場に赴いた。

「平民の分際で晩餐会なんてな、しかも参加者全員が野蛮な冒険者!
学のない脳筋共など私の巧みな話術で思い通りに操ってみせよう!」

そう高らかに宣言したまま、堂々と会場へと足を踏み入れた。

----そんな男が現れる晩餐会当日より数日前----

幼稚園が貴族に狙われてるなど、微塵も思ってない所有者のショウマは、
アレクの上で眠ったまま、朝を迎えた。

「……おはようアレク。僕を抱えたまま寝たの?身体痛くない?」

「おはようショウマ。ちゅっ。全然痛くないぞ、この体勢で寝るの最高だな」

「ええ?ふふっ。何でぇ?寝ずらいし重くない?」

「全然だな、お前の温もりを重みと共に身近で感じられて最高だぞ?ちゅっ」

「んッ…ちゅ…あッ…ちゅ…ん…ねぇ…んちゅ…アレク待って…ちゅ…ギルド行かないと…ちゅ」

「ははっ。悪ぃ、止まらんくなった。マイキーが迎えに来たみたいだし、支度してギルド行くか」

2人でベッドから起き上がり、身支度を整えて、迎えに来たマイキーを伴ってギルドへ向かった。

受け付けで報酬を受取り、依頼を受けたいというマイキーとその場で別れ、
僕達は、朝の賑やかな市場を手を繋いで見て周り、その足で海岸線まで赴いた。

ゴミひとつ落ちてない綺麗な砂浜に2人で座り、ユアンとシェリーのお祝いについて話し合った。

「幼稚園の横の広場でガーデンパーティしようよ。
綺麗に会場を飾り付けて、沢山の料理とかお酒とか提供するの」

「へぇ、貴族の舞踏会みたいな感じか?それとも豪華な晩餐会って感じか?」

「ん~、どっちかって言えば、晩餐会かな?ダンスをする訳じゃないし。
食べて飲んで、ワイワイ楽しくお祝いする感じかな」

そんな話を2人でイチャイチャしながらしていたら、見知らぬ人に声を掛けられた。

「あの、少々お尋ねしたい事があるのですが。
あの丘の上に突如現れた建物の所有者を知りませんか?」

その問に僕が答えようとしたら、口を開く前に止められ、アレクが対応するのを黙って見ていた。

「何故そのような事をお聞きになりたいのですか?貴方は、何処かの貴族の方の従者ですか?」

「失礼致しました。わたくし、ヴィツィオ男爵家当主に仕えてる者です。
我が主があの建物を所望しておりまして、所有者の方と交渉出来ないかと思い探しているのです」

「ヴィツィオ男爵家の従者の方ですか。あの土地はフォルティエ辺境伯家3男が所有してますよ?
それを分かった上で交渉なさりたいと?」

「難しい事だとは思っておりますが……
あの……“土地の所有者は“と仰いましたが、建物は違うのですか?」

「ああ。建物は辺境伯家3男の婚約者の物だ。それが何だというんだ?」

「あ、いえ。何でも有りません。色々と教えて頂き感謝します。では失礼致します。
(怖っ!冒険者風情が調子こくなよ!3男様の婚約者を調べてみるか)」


アレクが喋りながら威圧を放ったら、ペコッと頭を下げてブツブツ言いながら去って行った。

その後ろ姿が見えなくなってから、アレクに色々聞いてみた。

「何でその場で正体を明かさなかったの?」
「建物って簡単に奪われちゃうの?」
「僕、平民だけど大丈夫?」

不安になった僕の数々の質問に、アレクは優しく囁きながら答えてくれた。

「正体なんか明かしたら、折角のショウマとの時間を潰されちまうだろ?
あと、建物の件は大丈夫だ。
貴族には貴族の潰し方があるから、ユリウス兄上に今の事を知らせとく。
それと、お前は平民じゃないだろ?もうフォルティエ家の一員だし、神の愛し子だろ?
安心しろ、何かあっても俺が守ってやるから」

そう言ってギュッと抱き締めてくれたから「なら大丈夫かな」と安心して家に帰った。

その次の日から、時折遊びに来る子供達と戯れながら、1人黙々と準備を進めた。

アレクはギルドに用事があるからと、朝からマイキーと一緒に出掛けてたので、居なかった。

少し寂しく思いながらも着々と会場を飾り付け、晩餐会当日を迎えた。

集まってくれたのは、副ギルのトゥアーレさん、息子のカイくん、
神官長トラモント様、グレイン、他数名の冒険者達。

そして少し遅れて、ユアンとシェリーが渋いおじ様を連れて現れた。

「ユアン、シェリー!いらっしゃい!そちらの渋い素敵なおじ様は誰?」

「ショウマ、この度は本当にありがとうっす。
俺たちの為にこんな素敵な会を開いてくれて嬉しいっす」

「おう!俺からも礼を言わせてくれ!こんな盛大に晩餐会なんて開いてくれてありがとうな!
こっちのオッサンは俺の親父なんだよ。目出度い席だからな、強引に連れて来たぜ!」

「そうなんだ!ユアンのお父様なんだね♪
初めまして、ショウマって言います。この度は息子さんのご婚姻おめでとうございます!
料理とか、お酒とか沢山あるので楽しんでって下さいね!」

そんなこんなして、皆に挨拶しながら談笑してたら、アレクに肩を叩かれた。
そして、会場の入り口を見るように促されたので目線を向けたら、見知らぬ人が立っていた。

(誰だアレ?)そんな事を思ってたら、突然大声で叫びだした。

「その建物の所有権について交渉しに来た!
晩餐会を中止し、所有者である平民の者よ出て参れ!」

そう宣言した直後、会場全体が静寂に包まれた。
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