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sidestory ニクス×エクシェル編
sidestoryニクス×エクシェル(前編)
しおりを挟む俺の名前はニクスリオ・オロークス。
転生者で元日本人の記憶があるんだ。
俺は、フォルティエ領の騎士爵家系に産まれた。
日本人の記憶は3歳の頃に突然思い出したんだ。
俺は26歳、大型書店に勤める会社員だった。
最後の記憶は、ヘッドライトの眩しい光と、宙を舞う青年の姿だった。
それが翔馬だったんだが、それはまた別の話しで。
最初は凄い戸惑ったよ。
26歳で普通に社会人として働いてたのに、
気付いたら3歳の子供なんだからな。
更に戸惑い驚いたのは母親の性別だった。
“母”といえば、普通は“女性”だろ?
なのに、俺の母上は“男性”なんだ。
そこでまず、1驚きした。
次に驚いたのは、転生した世界の男女比率だった。
9対1の割合で、男性ばかりが存在していたからだ。
でも、驚いたのは一瞬だけで、すぐに順応した。
転生してきたことを思い出した時、
俺は自身が生粋のゲイだった事も思い出したからだ。
俺は前世で男性との関係に憧れを抱いていたが、
日本人だった時代では、それを隠さなければならない状況だった。
社会的な制約や偏見によって、俺は本当の自分を表現することができなかった。
しかし、異世界での転生によって、俺は新たな機会と自由を手に入れたんだ。
俺は転生した事も、ゲイだった事も受け入れ、
開放感に包まれた。
自分の性的指向を抑える必要もなく、堂々と自分らしさを追求することができるんだからな。
幼い頃の俺は、家族と共に騎士爵家に住んでいた。
父上は厳格な騎士であり、母上は優しい男性だった。
二人には三人の子供がいるが、俺が末っ子だ。
父上は俺に騎士の道を志すよう期待していた。
幼い俺は、その期待に応えようとしっかりと勉強をし、剣術の修行に励んだ。
父上の厳しい指導のもと、剣の腕を磨いていった。
しかし、戦闘以外の面でも俺は成長を遂げていった。
母上の手ほどきで料理を覚え、家事を手伝うこともあった。
兄姉たちとも仲良く遊びながら、笑い声が絶えない家庭だった。
6歳の頃、俺は父と共に領主様の嫡男であるユリウス様の生誕祭に招待された。
このイベントが俺とユリウス様の初めての出会いであり、
後に婚約者となる領主家次男のエクシェルとも出会うことになる瞬間だった。
当時俺達は年齢も近く、すぐに打ち解けることができた。
特にエクシェルとはいつも一緒に遊んでいた。
お互いに騎士になる夢を抱いていたため、常に一緒に鍛錬していたんだ。
そして8歳の時、俺達は貴族学院の騎士科に入学することになった。
その時、エクシェルが俺の婚約者に指定された。
俺達二人にとっては大きな出来事であり、
これから一緒に学び、成長していくことを誓いあった。
貴族学院での日々は、厳しい修行や学業に追われるものだったが、
俺達はお互いの成長を支え合い、励まし合ってきた。
俺は常にエクシェルの隣にいることができ、彼の存在が俺にとって大きな力となった。
騎士科では、武術の技術を磨くだけでなく、
貴族としての品位や職務、責任も教えられた。
俺達は騎士としての心構えを身につけるため、厳しい修行に取り組んだ。
それと同時に、俺達は愛を育んでいった。
鍛錬の合間には、互いの心を支え合い、励まし合う言葉や笑顔が溢れていた。
そんなエクシェルは、幼い頃から不思議な表情を見せることがあった。
ある日、鍛錬をしている最中、怪我をしたエクシェルが恍惚な表情を浮かべていた。
俺はその光景を目にし、心の中で疑問を抱いた。なぜアイツは幼少期からそうした表情を見せるのだろうか?と。
エクシェルとの親交が深まるにつれて、彼の内面に秘められた何かがあることに気付いた。
彼は他の子供たちとは異なる特別な部分を持っているのだという確信が湧いてきた。
ある日、俺は勇気を振り絞ってエクシェルに尋ねた。
「エクシェル、あの恍惚な表情は何なんだ? 何か特別なことがあるのか?」
エクシェルは当初驚いた表情を浮かべたが、
すぐに哀愁漂う笑みを浮かべて、深い溜め息をつきながら言葉を紡いだ。
「この個性はずっと前からあるんだ。
小さい頃に怪我をしたり、ちょっとした痛みを感じることで、他の人とは違う感覚が走ってくるんだ。
最初はただの好奇心から、その感覚を追い求めるようになったんだ」
これが俺達14歳の頃で、エクシェルの性癖が明らかになった瞬間だった。
俺は驚きを隠せなかったが、エクシェルの手を握りしめることで気持ちを受け止めていることを示した。
そんな話しをした数日後、院の訓練場で事件が起こったんだ。
寮の部屋で寛いでた俺の元に驚愕な報せが届いた。
“エクシェルが血塗れで倒れている“と。
それを聞いて慌てて訓練場まで駆けつけたら、
身体中は傷だらけで、血が滴り落ちているエクシェルが倒れていた。
俺は心配で抱き起こして声を掛けた、が、彼の意識はしっかりとしているようだった。
「エクシェル、大丈夫か?何があったんだ?」
エクシェルは苦しそうに笑いながら言った。
「ああ……大丈夫だ。これは自分でやったんだよ。
ニクスには分からないだろうな。
俺は…痛みを感じることで、奇妙な快感を覚えるんだ。
でも今回は少し度を越してしまったみたいだ…はは」
「エクシェル、お前の性癖は分かったけど、
自分で傷つけるなんて、どうしてそんなことをする?」
俺は困惑しながらも心配しながら訊ねた。
エクシェルは苦笑いしながら答えた。
「前にも言ったじゃん。自分を傷つけることで感じる快感があるんだって。
普通の人には理解できないかもしれないけど、
それが俺にとっての特別な何かなんだ。」
「特別な何かって、性的に興奮するって事でしょ?
それは分かったよ。でも限度ってあるだろ?」
「確かに、限度はある。でも、それって言葉通りの意味ではないんだ。」
俺は首を傾げながら、尋ねた。
「言葉通りの意味じゃないって、どういうことだ?」
エクシェルはしばらく黙って考えた後、困ったように言葉を続けた。
「自分を傷つけることで感じる快感は、確かに性的な側面もある。
でもそれ以上に、何かを超える感覚なんだ。」
俺が不思議そうに眉をひそめると、エクシェルは続けた。
「普通の人が理解できないのは、自虐的な行為が快感を生むこと自体を受け入れられないから。
でも俺にとっては、それが特別で貴重な何かなんだ」
「でも、エクシェル。君の命も大切なんだよ。
自分を傷つけることで得られる快感よりも、
一生を共にすることができる幸せの方が大切じゃないか?」
「確かに、危険な面もある。だけど、それを制御することが大切なんだ。
自己嫌悪や痛みに溺れることではなく、その感覚を自分の力に変える事が出来るんだ」
「でも、どうやってそれを制御するの?
自虐的な行為がエスカレートしてしまったり、
健康に悪影響を及ぼす可能性はないのか?」
「自虐的な行為によって得られる快感も、自分を成長させるための道具になるんだ。
ただし、その制御は非常に重要なんだよ」
エクシェルは俺の手を握りしめ、自信にあふれた眼差しで言葉を締めくくった。
「俺達は共に成長するんだ。お前の傍で、自虐的な感情を上手に利用して、強くなる。
そして、お互いを支え合っていこう」
エクシェルと俺は、以来の言葉を胸に抱きながら、貴族学院の騎士科での日々を駆け抜けていった。
卒業が近づくにつれ、二人の絆もより深まっていった。俺達は貴族学院の騎士科で共に努力し続け、最終試験に向けて日夜訓練を積んできた。
果敢な努力の甲斐あって、俺達は最高の成績で卒業を迎えることができた
騎士の称号を手に入れた瞬間、俺は誇りと喜びで胸がいっぱいになった。
これまでの日々の努力が報われた瞬間だった。
2人の卒業後の進路が別々になることは既に決まっていたが、エクシェルと俺の絆はそれにも負けず、ますます深まっていった。
俺達は互いに感じる強い絆と愛情を確信し、
将来のことを考えながらも、卒業の日に特別な時間を過ごすことに決めた。
その日、2人は終業式を終えた後、せわしなく動き回る中、ひとつの場所へと向かった。
それは俺達が密かに予定していた、卒業を祝う特別な場所だった。
その場所は、王都全体を見渡せる緑豊かな丘の上。
まだ春の陽気が感じられる中、
2人は互いに寄り添いながら、卒業の喜びと未来への期待を分かち合った。
「エク、本当にこの日が来たんだな。卒業を迎えるなんて、まだ信じられないよな」
「そうだね、でもこの日が来るまで、ずっと一緒に努力してきたんだ。
ニクスと一緒に頑張ってきたことは、俺にとっての宝物だよ」
2人はお互いの手を握り締めて、心の中で卒業を祝福し合った。
そして、何も言わずにただ互いの存在を感じながら、眼下に広がる穏やかな風景を眺めた。
しかし、卒業後の進路が別々なことについて、
心の奥底に不安があった。
エクシェルは実家の騎士団へと戻り、俺は王都の騎士団で新たな道を歩むことになっていた。
その思いを察したエクシェルが、ゆっくりと口を開いた。
「ニクスが王都の騎士団に行くことを聞いたとき、少し心配したんだ。
でも、俺達の絆はこれからも揺るぎないものだよね」
俺は深い思いを込めて、エクシェルの目を見つめながら答えた。
「それは絶対だよ。これからもずっと一緒にいるって約束したじゃないか」
2人の愛情と絆は、卒業後も途切れることなく続くことを誓い合った。
そして、2人がお互いの存在を確かめ合う時間が過ぎる中、互いに欲望が高まっていった。
次第に、キスが交わされ、服が脱がされていく。
俺達はひとつになることを望み、身体を重ね合わせた。
初めての交わりが青姦だった事に戸惑いながらも、互いの身体を求め合いながら、2人は愛と情熱に満ちた一夜を過ごした。
その瞬間、俺らは再び絆を深め、お互いへの愛情を新たな高みに引き上げたのだった。
結束を強めた2人は、それぞれの道を歩む決意を固めた。
俺は王都の騎士団への進路を選び、将来の責任を背負う覚悟を持っていた。
俺の剣技と魔力、そして元日本人としての知識は、
王都でも高く評価され、将来の成功が期待されていた。
卒業後、2人は互いを支え合いながら、それぞれの騎士団で訓練を積んでいく日々が続いた。
逢瀬は限られていたが、俺達の愛情は時間や距離を超えて深まっていった。
数年後、エクシェルは立派な騎士としての地位を確立し、
俺もまた王都での活躍が認められていた。
2人は婚約者同士として、自分たちの夢を追い求めながらも、お互いの成功を喜び合った。
久々の逢瀬で身体を重ねたあと、2人は再び会うことを約束した。
約束が果たされたのは、それから1年後だった。
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