腐男子、転生したら最強冒険者に溺愛されてる

本編 最強冒険者

story137／ 夢幻の世界へ導かれて

僕はアレクの異変に気付き、不安に駆られ
「アレク、起きてよ！」必死に声を掛けたが、
全く反応しない。

表情は穏やかなのに、目も開かれないままだった。

心臓がドキドキと高鳴り、恐怖が全身を包む。
彼はまるで生気を失っているかのようだった。
以前の明るく元気なアレクとは別人のようだ。

ジョイさんも困惑した表情を浮かべながら、
アレクに近づいた。


「何が起きているんだ？ 
アレクレス、どうして反応しないんだ？」


周りを見渡すが、何か異変を感じる兆候はない。
しかし、アレクは明らかに変わってしまっている。
どうしてこんなことが起きたのだろうか？

彼の肌は徐々に青ざめ、
体温も普段のように感じられなかった。

微微たる息遣いが聞こえるものの、
それも奇妙に淀んでいるようだった。

「何かに取り憑かれているのかもしれない。
ショウマ君、すぐに助けなければならない」

ジョイさんの言葉に驚きながらも、僕は行動に移った。

アレクの身体を揺すりながら、声を強くして呼びかける。

「アレク、起きて！ もう帰ろう！」

僕の声が響いても、アレクの体は何の変化も見せない。

心配が募る中、彼の手を握る。
その手は冷たくて湿り気もなく、
触れた瞬間に僕の体に電撃が走った。

何が起きているのか、全く分からない。

アレクはまるで無意識のままで、
動く気配すら感じられない。

僕達は焦りを感じた。その時、アレクの周りに
異変が広がっていくのを目の当たりにした。

まるで闇がアレクの身体を覆い尽くしていくかのように、
徐々に彼を取り囲んでいく。

ジョイさんと僕は共に力を合わせ、
アレクを起こすために必死になった。

「アレクレス、目を開けろ！ ……アレクレス！」

「お願い！目を開けて……っ……アレク！！」

僕達の叫びが響き渡り、
一瞬だけアレクの瞳に光が戻ったように思えた。

しかし、その光もすぐに消え去り、
再び彼の体は無気力なままだった。

僕はアレクをこんな目に合わせた場所から
さっさと離れたくて、ジョイさんの腕を掴み、
宿の部屋へと転移した。

瞬間、驚いたジョイさんだけど、
すぐさま気を取り直した。

その日から、ジョイさんと交代で
アレクの看病を続けた。

しかし、アレクの状態は日に日に悪化していく。
彼が発する微かな呻き声は徐々に消えていき、
代わりに不気味な静寂が部屋を支配した。

焦りと無力感に苛まれながら、
アレクの体は動かず、僕の声にも反応しない。

恐怖に押しつぶされそうになりながらも、
一刻も早く助け出さなければ！という強い思いが、
心を揺さぶった。

その時、突然アレクの体に異変が起きた。
彼の身体がけいれんし始め、口から泡を吹いた。


「……ア……っアﾞアﾞアﾞアﾞアﾞ……」


心臓を掴まれるような悲鳴が部屋に響き渡り、
そのまま彼は意識を失った。


「！？アレク！どうして、ヤダよ！起きてよ！」


必死に呼びかけても、アレクは動かない。
彼の顔は青ざめたままで、
生命の光が完全に消えたように見えた。

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アレクの腹に空いた、触手攻撃による穴は、
ショウマが泣きながら治癒魔法で塞いでくれた。

ホッと息を吐いて「ありがとう」
そう言おうと口を開き掛けたら、
ショウマが立ち上がり、異形の第2王子と対峙した。

(危険だ！)そう思って立とうとしたのに、
体が動かない！目の前も段々と霞んできた。

そして、意識のある内に最後に見た光景は
上下に分かれ事切れた、第2王子の姿だった。



アレクの意識は夢幻の世界に導かれた。
まるで霧に包まれたような光景が、
彼の周りを広がっていた。

アレクは自分がいったいどこにいるのか理解できず、
不思議な気持ちが胸に広がっていった。

すると、突然、美麗な人が姿を現した。
その人物は美しくも妖しげな佇まいで、
微笑みながらアレクを迎えた。

でも、その微笑の中には不気味さが混じり合っていた。

目の前の美麗な人は、
皮肉を込めた口調で言葉を紡ぎだした。

『私は“愛と運命の神、レディスティーナ”
漸く私の元に辿り着いたわね、アレクレス。
思っていたよりも遅かったわねぇ～？
でも、まあ、それもあなたの"運命"ということかしら』

アレクは困惑した表情を浮かべながら、
重要な言葉に気づいた。

「愛と運命の神？だと？ここはどこだ？」

アレクは戸惑いながら尋ねた。

神は冷笑を浮かべながら、
嫌味ったらしくアレクに語りかけた。

『ああ、アレクレス、あなたも何も知らないのね。
あなたは選ばれし者、運命の輪を回す存在なのよ。
そして、この夢幻の世界は、
あなたの運命が紡がれる場所なのよぉ～？』

アレクは驚きと疑問が入り混じった表情を浮かべた。

「運命の輪？俺が紡がれる存在？
俺はただの普通の人間だ。
それに…何か大事な事を忘れているような……」

運命の神はアレクを見下すような目で見つめ、
不気味な笑みを浮かべた。

『普通の人間だと思っているのは甘いわ～。
あなたにはまだ自分の運命を知るべき時期が
やって来ていないだけ。私が導いてやるわぁ』

その一瞬、銀髪の男の子が脳裏を掠った。が。
直ぐに消えた為、神の言葉に従う事にした。

アレクは神の指示に従いながら、
夢幻の世界の中で自分の運命を探求し始めた。

だが、神の語りかけは冷めた言葉ばかりだった。
神はアレクの過去や現在の選択に対して揶揄し、
嘲笑いながら次々と問いかけた。

『本当にそれが最善の選択だったのかしら？
あなたは自分の運命を真剣に考えたかしら？』

アレクは神の言葉に苦しめられながらも、
自分自身の選択に自信を持つように努力した。

彼は夢幻の世界で多くの困難に立ち向かい、
自分の心の迷いや過去の過ちに向き合った。

運命の神はその過程を見守りながら、
さらに嫌味な言葉を投げかけ続けた。

『なんて愚かな選択よ。もっと深く考えなさい。
自分自身を正しく知ることができれば、
運命の輪も変えることができるのよぉ～？』

アレクは苦しい状況の中で、
自分自身と向き合うことの大切さを学んでいった。

彼は神の言葉に屈することなく、自分自身を信じ、
運命の輪を変えるための力を探求し続けた。

運命の神がアレクに語りかける中で、彼は成長し、
夢幻の世界での試練を乗り越えていった。

彼の意識は次第に明瞭になり、自己の本質や
望む未来についての洞察を深めていった。

最終的に、アレクは
自分の運命を変えるための答えに辿り着いた。

彼は運命の神に向かって、
自信と決意に満ちた言葉を放った。

「もうあなたの言葉に惑わされることはない。
自分自身を信じ、運命を切り拓く覚悟を持った」

運命の神は驚きの表情を浮かべたが、
次第に満足そうな微笑が神の唇に浮かんだ。

『まあ、成長したわね、アレクレス。
自分の運命を切り拓く覚悟を持つことは大切なことよ。
では、次なる道はあなたが選びなさい。
彼に対する今の愛情を取るか、未来の愛情を取るか』

その選択肢にアレクは疑問を持ちながらも、
自らの選択を固く決め、
自信に満ちた心で意識の世界を後にしようとした。

彼は夢幻の世界での経験から学んだ教訓を、
胸に刻み込みながら、現実世界へと戻っていった。


その背中を見つめ酷薄な笑みを浮かべた神は、
意味深な言葉を発しながら、下界が映る鏡を見つめた。


『フェリス様の愛し子ちゃん。ふふふ。
貴方の運命の人は、どちらかしらねぇ。
光の勇者か、武の勇者……
この先の展開が楽しみだわぁ♡
彼は貴方を覚えているかしら？ふふふふ』