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本編 最強冒険者

story111/ それぞれの処遇とアレクの怒り

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僕が鬼畜野郎の所業から逃れる為、
最後の力を振り絞り抵抗した結果、
建物が瓦礫と化した。

多分、魔力封じの腕輪に込められた魔力量を
遥かに超えた僕のチート力が発揮してしまい、
辺り一面を吹き飛ばす程の
魔力風圧が漏れ出てしまったと思うの。

周りを見渡し、
この惨状を引き起こしてしまった後悔と
自責の念が胸を締め付ける。

ここには傷ついた人々がたくさんいる。
彼らの目には、僕の行動の結果が映し出されている。

そして、僕は自分自身を責めた。
なぜ、この状況を回避できなかったの?
なぜ、もっと注意深く行動しなかったの?

もしあの時、少しでも違う選択をすれば、
こんな悲劇は起こらなかったかもしれないんだよ。

でも、もう遅い。後悔しても、自責しても、
この現実は変えられないんだ……

そんな無力感が僕を襲ってくる。
自己嫌悪の念が押し寄せ、
自分を許せない気持ちで苦しい……

そんな気持ちを抱えたまま、
現状の謝罪と説明、そして報告をする為、
今回の事件の指揮を執ってる
エクシェル副騎士団長の元へ向かった。


エクシェル兄様の元へ辿り着いた瞬間、
空気が重くなった。

兄様は無言のまま僕を見つめていた。
僕は胸が締め付けられる思いで、深く息をついた。


「エクシェル副騎士団長様、本当に申し訳ありません。
私が力及ばず、こんな惨劇が起きてしまいました」


と、言葉を詰まらせながら謝罪した。

エクシェル兄様は重い口調で返答した。


「いや。フェリ君も無事発見出来たし、
事件の被害者達が無事なのは幸いした。
それに今回の黒幕も生きたまま捕らえられた。
なので、大変感謝している」


「いえ、そんな……勿体ないお言葉です」


「ふむ。だがな……
事件の現場がこの有様なのは問題があるんだ。
この惨状になった原因は説明出来るか?」

そう問われたので、
囚われてからの事を詳細に話した。

その1つ1つの説明に、耳を傾け真剣に聞いてくれた。
そして、魔力風圧で建物を吹き飛ばした事まで
説明して報告を終えた。


「先程、彼らから聞いた話と一致しているな。
フェリ君、辛い思いをしたな。よく頑張った。
早急に助けられなくて申し訳なかった」


「いいえ!そんな、気にしないで下さい!
こうして来てくれただけでも嬉しいです」


「そうか。その優しさに感謝する」


そう言ってエク兄様は優しく笑って、
胸に手を当て僕に向かって頭を下げた。
それに倣って、他の隊員達も頭を下げたから、
驚愕してオロオロしちゃった。

そして、エク兄様達は一泊置いてから、
被害者達の方へ向き直り、
胸に手を当て言葉を発した後、頭を下げた。


〈被害に遭ったみなさん、
事件の発覚の遅さや不手際により、
多くの苦しみを強いられましたことを、
心よりお詫び申し上げます。

私は騎士として、辺境伯次男として、
責任を追及されるべきです。

しかし、これからも皆さんのために戦い続けます。
心からの謝罪を込めて、
貴方方の信頼と尊敬を取り戻すため全力を尽くします〉

エク兄様の言葉には真摯さと決意が感じられ、
彼の言葉は被害者達に安心感と希望を与えていた。

その後はアレクが冒険者代表として、
フォルテォエ辺境伯三男として謝罪した。


〈救出が遅れてしまい心からお詫び申し上げます
私たちの手落ちが、貴方々の大切な時間と
誇りや尊厳を奪ってしまったこと、
言葉では言い表せません。
至らぬ事があった事を自覚しております。
誠実にお詫び申し上げます〉


アレクの謝罪と誠実な態度に触れ、
被害者達も、もちろん僕も感銘を受けていた。


今回事件を起こした黒幕の男達の処遇についてだけど、
鬼畜野郎は一般市民、所謂平民なので、
権限はフォルテォエ辺境伯に委ねられる事になった。

パパはこのような事件を担当する権限を持ってて、
その処遇に対する最終的な決定権を持つの。

実際に処遇を決めてるのはユリウス兄様だと思うけどね

そして、肥えた豚野郎は子爵位の貴族だったので、
権限は王都ウォルデンの国王に委ねられる。

王都ウォルデンの国王は、
国内での重要な判断を行う立場にあり、
貴族の処遇もその一つなんだよ。

国王様は肥えた豚野郎に対して、
適切な貴族としての処罰を下してくれる筈だよね。

そんな処遇を言い渡されてる当の本人達は、
それぞれ違う反応をしていた。

豚貴族は、膝を付き頭を垂れて項垂れてるけど、
鬼畜野郎は、被害者達を見回してはニヤニヤし、
くくく、と笑い出したりと本当に気持ち悪かった。

そして、僕の姿を捉えた瞬間、大声で叫んだ。


「おい!そこの桃色頭の美人さん!
お前が1番美味かったんだよな~!
性器から出る白濁も凄ぇ甘ぇしよー!」


「んな!?キモイキモイ!やめてよ!」


「後孔から溢れ出る蜜も媚薬みたいでよー!
だから、俺の逸物を突っ込むの
後回しにしちゃってなぁー?」


「巫山戯るなよ!気持ち悪いんだよ!!」


「あーあ!さっさと突っ込んどきゃ良かったよ!
ギャハハハハハ!」


「(なんて事を大声で叫んでんだよ!!
周りの人達ドン引きしてるよ!!)…ひっ!?」


(やっバイ、ヤバい!隣からドス黒いオーラがぁ!
チラッ……んぎゃあ~!怖っ!黒っ!)


「フェリくんよ」 「え?はい、なんでしょう」

「ここ数日、触れ合ってないよな」 「え??」

「俺さ、朝と夜中に自慰してんの」 「はい?」

「お前の事考えて」 「左様で御座いますか」

「裸を想像しながら」「ショウマ様のですね?」

「いや、お前。フェリ」「……私で御座いますか」

「帰ったら楽しみだなぁ」 「……何がです?」

「覚悟しておけよ?フェリくん?」 「…………」


そう言って僕を見て不敵に笑ったアレクは、
次の瞬間には前を向き、
未だ卑猥な言葉を喚いてる鬼畜野郎に視線を向け、
(目で殺せちゃうんじゃない!?)
と心で思った位の眼力で睨み付け殺気を放った。

それをまともに喰らった鬼畜野郎の身体が硬直し、
声も震え始めた。

ヤツは深く息を吸い込み、
残りの卑猥な言葉を、ゴクッ、と飲み込んだ。

アレクの殺気に圧倒されながら、
鬼畜野郎は恐怖に取り憑かれたようだった。

ヤツの手が震え、そして失禁していた。
アレクは何も言わず、
ただ凶暴なまなざしで鬼畜野郎を睨み続けた。

しばらくの間、その場は静まり返った。
鬼畜野郎は何もできず、
ただアレクの凶悪な視線に耐えるしかなかった。

とうとう鬼畜野郎は、
アレクの圧倒的な存在感に耐えきれず、
下を向いて項垂れた。
ヤツは逃げることもできず、
ただ恐怖と屈辱を味わい続けた。

アレクは、喚きながら卑猥な言葉をぶつけていた鬼畜野郎に一瞥を向けた。
その表情は冷酷で、鬼畜野郎を蔑むように見据えた


「次から次へと不快な発言をするような奴は、
この世から消えてしまえ。
お前のような存在はこの世に必要ないんだ。
理解できるか?」


アレクの言葉は冷徹で冷酷だった。
その言葉が彼の口から出るや否や、
周囲の空気が一気に重くなった。

アレクの目は冷たい眼差しで、
相手を見下すように睨みつけていた。


「お前はただ喋りたいだけだろ?
自分の感情や思考を爆発させるためだけに、
他人を傷つけているんだよな。
そんなヤツこの世に存在する権利はないな」


そう言ったアレクの表情には怒りが見え、
「殺したい」という心情が僕に伝わってきた。
だから(これは不味い!)と思って声を掛けた。


「で、でもねアレク。
ヤツの発言が気に入らないからって、
簡単に消してしまう事は出来ないでしょ?
許せない事があったかもしれないけど、
奴等の適切な処置は、法の元で裁かれるべきだよ」


アレクはまだ怒ったままの表情で、
考え込むような沈黙を保った。
何かを返そうとしているのかもしれない。
少し時間が経った後、
アレクは深い溜息をつきながら言った。


「フェリの言う通りだよな。
俺が感情のままに行動することは、
他人にとって本当に危険なんだろう。
ただ、許すことができるのかと問われると、
正直なところ絶対無理だ」


「でもね、自分の感情に素直になる事も大切だと思う。
ただ、他人を傷つけることなく
表現する方法が必要なんだよ。
苦しいようなら、
相手に自分の気持ちを伝えることも大事だよ」


アレクは悩んだ表情で僕を見つめた。
そして、ゆっくりと頷いた。


「感情を抑え込んで爆発させることでなく、
冷静になって自分の思いを伝える。
それが大切なんだな」


僕はアレクの言葉に満足げな笑みを浮かべた。
アレクの心情が少しでも変わってくれたなら、
それだけでも嬉しかった。
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