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本編 最強冒険者

story102/ 助言を聞きながら

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アレクと文字通りの“”痛い再会“”を果たした翌日、
目覚ましの音は“”アレクの声“”だった。

決してベッドの横で寝てたわけじゃないんだよ?

ここの従者部屋って、主人の部屋にすぐ行けるように、
“”続き間“”っていうの?で繋がってるんだけどね、
その仕切りが、薄っすい申し訳程度のドアなの。

しかも、従者用の部屋は簡素な造りで広く無いから、
アレクの生活音が響くわけ。

昨日の夜もさボソボソ喋ってるのが聞こえてきてね…
本来なら聞かない方が良いんだろうけど、
気になっちゃってさぁ……思わず聞き耳立てちゃった。

独り言の内容は…その日の出来事だったんだけどね……
見えない僕に語ってたんだよねぇ~。

嬉しそうに、時に悲しそうに喋っててさぁ~
しかも話しの途中途中に、途切れ途切れだけど
「会いたい」「寂しい」「抱き締めたい」「苦しい」
って聞こえてくるのぉ……
だから思わず「傍にいるよ」って呟いちゃった。

そしたら「お前の声が聞こえた気がするよ……」
って言うからめちゃくちゃ焦ったよ。

そんな独り言を聞いてたら、
恋愛感情抜きで仕えるのが難しくなると思って、
布団被って耳を塞いで目を瞑ってたらいつの間にか寝てたの。

で、朝の目覚まし音“アレクの声“が聞こえて来たんだけど…
朝から止めて下さい!って思わず叫びたくなったわ。


{はぁ…はぁ…うっ…ショウマ…可愛い…はぁ…ふっ}


ってさぁ~!マスべの音と声が僕の耳に響いてくるの!
今日から仕えなきゃいけないのに……
アレクの顔見たら思い出しちゃいそう……


(は!ダメだめ、僕は従者、恋人じゃない、心頭滅却!)


心でそう唱えて深呼吸してたら落ち着いてきたので、
顔を洗って、ご飯食べて、歯磨きして、従者服着用。
姿見を出して全身チェック~♪


「はわわ…何でしょう…この麗人は…
桃色の髪と紺色のチャイナ服が凄く合う!
髪型弄ってみようかなぁ~?
宝塚の男役の人みたいにワックスで固めてみるかな~」


なんて1人で喋りながら口笛いて、ノリノリで髪型set。


「完成したけど……うん……小動物感全く無いわ!
これならパパに会っても大丈夫だねぇ~♪
呼ばれるまで暇だなぁ……
(さっきの声色っぽかったな)」


は!ダメだってばぁ~!心頭滅却!煩悩退散!
早く呼びに来てぇ~!セバスリンさ~ん!


コンコン。

「おはようございます。旦那様の元へ参りましょう」


「おはようございます。宜しくお願い致します」


前を歩くセバスリンさんの足さばきを見てたら、
足音立てずに忍者みたいに進んでて驚いた。
僕も真似しようとしたけど全然出来ない……
凄いなぁ~と感心してたら声を掛けられた。


「ふふふ。昨日の姿とまた違い、素敵ですね。
ショウ様の面影が全くありませんね」


「あ、ありがとうございます。
自分でも全く別人になったと思っていました」


「左様で御座いますか。ふふふ。
本日よりアレクレス様の従者として仕えて頂きますが、
主人と従者は単なる上下関係では御座いません
共感と信頼の絆で結ばれているのです」


「共感と信頼の絆ですか……」


「何を求め、望んでいるのかを理解し、
傍で支えるのが貴方の使命です」


「………………」


「そして、主人の意思を推し量りつつ、
適切な時に助言をする事が求められます」


(共感と信頼、傍で支える…意思を推し量り助言するか。
なんか、僕とアレクが成長する為の答えみたい)


「もうお気づきかと思いますが、恋愛と同じですね。
お2人が成長する為の布石として、私からの助言です。
お2人が共に成長し。信頼し合う関係を築くための
一助となれば幸いです。ふふふ。
さぁ、到着しました。旦那様がお待ちです」


セバスリンさんの有難い言葉を聞きながら到着しました。
このドアを開けた瞬間から従者としての僕が始まる。


コンコン
「旦那様、お連れしました」

ドアをノックし声を掛けたら、中から「入れ」と威厳のある声で入室の許可が出た。

今まで聞いた事のないパパの声音に促され、ドアを潜ったら、
部屋の奥にパパとアレクの姿を捉えた。

恭しく一礼し、堂々とした姿勢で座っている前まで進み、
姿勢を正してから胸に手を当て頭を下げた。

「顔を上げよ」という声で顔を上げたら、
厳しかな面持ちで僕を見詰めるパパの姿が目に入った。
「話せ」と言うように頷いたので、僕は口を開いた。


「お忙しい中お時間を頂きまして感謝致します。
ユリウス様よりアレクレス様の従者として雇われた、
ヨウマ・フェリアスと申します。
未熟者ではございますが、
アレクレス様の従者として雇われたことを
心より光栄に思っております。
アレクレス様の期待に添えるよう、精一杯努力いたします」


「うむ。分かった。
アレクレスの従者として仕えるのを許可する。
が、その前に1つ問いたい事がある。
君に今、恋人はいるかね?若しくは慕っている者は?」


従者として仕える事を許可され、ホッ、とした瞬間、
「問いたい事がある」との言葉の後、そんな質問をされた。
(何で今その質問すんの?意味が分からないんだけど)
と思ったが「そのような者はおりません」と答えたら、


「成程。では君に1つ忠告しておく。
アレクレスに仕えるのは構わないが、
不埒な思いは抱く事のないようにせよ。
息子には既に婚約者が居るのでな、
君は、主君に仕える者として、
信念を持ち、心からの忠誠を誓い従者として務めよ」


(アレクには婚約者がいるから手を出すなって事だよね)
「そのような事は致しませんので、ご安心を。
従者として誠心誠意お仕えさせて頂きます」


「その言葉、心に刻むようにな。
ではアレクレス、執務室へ戻り本日の業務を全うせよ」


「はぁ。分かりました。では部屋に戻ります。
おい!行くぞ、着いてこい」


こうして少しだけ緊張した挨拶を終え、退室した。

そしてアレクの後ろを追いながら
「宜しくお願いします」と声を掛けたのに無視!
「本日のご予定は他に御座いますか?」と聞いたのに無視!
「お手伝いが必要なら仰って下さい」と言っても無視!

何を聞いても全て無視されながら執務室へ辿りついた。
そして「何かお飲みになりますか?」と聞いたら、
やっと口を開いたんだけど、その言葉に僕は顔が引き攣った。


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