腐男子、転生したら最強冒険者に溺愛されてる

玲央

文字の大きさ
上 下
36 / 232
本編 最強冒険者

story19/ 甘々な恋人

しおりを挟む
「………どうですか。思い出しましたか?宰相閣下」

 肩を激しく上下させながら、息も絶え絶えな宰相閣下の姿に同情する気は一切起きない。体を拘束され口を塞がれては魔法も使えない。未だに困惑して目を彷徨わせている宰相閣下に溜息が出る。彼は前回の事が蘇っても自分の何が悪かったのか全く理解していなかった。それどころか、後悔すらしていないときた。

「あの大公家にしてやられましたね。いや、今回の貴方は喜々として大公家に尻尾を振って協力してましたね。その結果がコレだ。貴方の大事な国は内乱で滅亡寸前だ。ああ、国じゃない。王家と現政権が、でした」

 あからさまな皮肉が効いたのか、宰相の目は怒りで血走っていた。そんな目で睨まれても怖くもなんともないし、むしろ滑稽だった。
 その怒りは自分が馬鹿にされたというものだ。どこまでも自分が可愛いのだ。それに無自覚なのが余計に質が悪い。

 前回で、ブリジット様を失った原因の一つがこの男の存在に有る。

 真実を知った時は『被害者の父親』に早変わりだ。面の皮が厚いにも程がある。
 当時、宰相という立場と共にまだ公爵でもあった。ブリジット様の実父であり公爵家当主でありながら娘を糾弾する側に立つとはどういう了見だろうか。
 
 この男は被害者側ではなくだ。
 
 ミゲル様は情に厚い。
 悪く言うと情に脆い処があった。義父として涙ながらに謝罪すれば許されると本気で思っていたようだが、謝罪する時期はとっくに過ぎていた。しかもその事に気付かなかった。寧ろ、終わった頃に言われたせいで逆にミゲル様の怒りを買ってしまった。
 そもそも、娘が冤罪を掛けられてそれを鵜呑みにした男だ。
 ブリジット様を信じず、追い込んだ人間の一人だろうに。
 理解に苦しむ。

 結果的にそれらの行動が仇となったわけだ。

 宰相の地位も公爵の地位も何もかも取り上げられた。

 ブリジット様の件が起こる前から何かと「父親」として思うところはあったようだ。

 それでもブリジット様の実父。
 他の者達と同類にはできなかった。
 ミゲル様は義父を屋敷の地下牢に幽閉した。

 普通の幽閉では飽き足らなかったのだろう。
 日の光が当たらない場所で生涯を閉じる事を望んだ。
 親子として和解など以ての外だという考えは心の中をのぞくまでもなかった。
 


 
 今回は、ブリジット様を王家にとられる事なく無事だ。
 内乱が終結すれば、ミゲル様とブリジット様の双方がこの国の頂点に立たれる。

 都合の悪いことは直ぐに忘れる男は、「父親」という名目を恥ずかしげもなく晒すだろう。若い二人を支えるとか何とかいって。
 自分が裏切って踏みにじってきたという事すら忘れて――

「実の娘を裏切っておいて、義理の息子が許すと本気で思っているところは今も昔も変わらない。未来のある二人のために貴方は邪魔なんです」

 この男は今度こそ報いを受けるべきだ。


 
しおりを挟む
感想 140

あなたにおすすめの小説

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

処理中です...