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1章 幼少期
1章7話 神様の好意は想像を超える ※挿絵ジャウフレ
しおりを挟む宇宙に広がる星々を管理する神や女神達の、親とも呼べる存在である最高神ゼウスは、自分のテリトリーである上級神界で、下界を映す鏡《下界鏡》を覗き込み、加護を授けた者達の様子を見ていた。
彼の加護者は、魔法と科学の世界に一人と、デーメーテールの世界に一人ずつ存在している。
デーメーテールの世界に転生したハヤテ(仮名)は、女神によって悲惨な人生を歩んでいたので、今世では幸せであってほしいと願い、特に気にかけている。
最高神『彼奴、今頃プレゼントに気付いたのか。確認するのが遅いと思うが、仕方のないやつだの』
アイテムバック内リストに目を通した瞬間から、徐々に無表情になっていくのが面白くて、最高神はケラケラと笑いながら様子を伺っていた。全て確認し終わり、メッセージを読み終えたハヤテ(仮名)が、空に向かって雄叫びをあげた。
最高神『クックック。確かに少しやり過ぎたわい。ま、美少女顔なのだし、ビキニアーマーを装備しても似合うと思うがの。さて、近々真名の洗礼を受けに教会へ来ると言ってたな……うむ。デーメーテールと一緒に考えてやるかの』
美少女顔だからといって、ハヤテ(仮名)に女装趣味は無いし、正直、陽の目を見ることはないだろう。
そして、最高神様。真名はデーメーテール神に任せて、貴方は大人しくしてたほうがいいのではなかろうか……
関わると碌なことにならないと思う。誰か止めてくれ。
――――――――――――――――――――――――
最高神からの贈り物に目を通し、神器やらなんやら盛りだくさんの内容に頭が痛い。眉間の皺も酷かろう。
目頭を指でグリグリ揉み、神は偉大だから、やる事も一々スケールがデカイんだな……と無理やり納得した。
改めて見返したけど、ビキニアーマーとドレスアーマーにハテナがいっぱいだ。「俺は女子じゃない!」
武器欄にある“”警棒“”は、果たして武器なのか?と疑問が浮かぶ。
“”釘バット“”を持って、異世界のヤンキーに殴り込みに行けばいいのか?
エルダーリッチのローブ羽織って、デスサイズを装備したら、完全に死神になるよな。ダンジョンのラスボスにでもなれと?
踊り子の衣装を着て鉄扇を装備したら、ゲームのキャラみたいだな。誰得?
陰陽師になって式神使えと?……それはちょっと興味あるから後で使ってみようかな。「ややこしや~ってか?」
「武器防具はもういいや」
勇者時代の金ピカ鎧と、装飾過多な聖剣よりはマシだろうからね。
「それにしても、牛乳はゼウス様のほうだったかぁ!!」
転生直後に知りたかったミルクの存在に、ドンッとテーブルを殴りつけた。悔しい。
「まあ腹が減らないし、何故か健康だし、身長は伸びてるから良いけどね」
ここ一年、睡眠欲は湧くが、食欲が湧かなかった。不思議に思ってユエちゃんに教えを乞うたら、なんと!俺の身体は神様製で、魔素を取り込んでれば腹は減らないし、病気にもならないんだと。怪我をしても超回復!化け物か!
『寿命まで生きろ』という、神様からの使命を果たすには、良い身体だから良しとした。
「勇者時代に欲しかった機能だよ。風邪はひかなかったけど、生傷は絶えなかったからな」
神様製の身体は嬉しいが、特にヒャッハーしたのは《く・だ・も・の!!》
「最高です最高神様!!」
早速、「フルーツラブ・ハヤテ(仮名)が食してやんよ!」と、気合い入れて、果物の種類は何でしょう?とリストと睨めっこ。
「異世界果物は名前が違うよな」と、インスピレーションでコレ!と思った物を食べようと思ったが……
――――――――――――――――――――――――
《果物・デーメーテール神の恵》
〇禁断の果実。
アポの木に成る果物。妖精の好物。森に自生している。国民の一般的なデザート。
〇ピンクのお尻。
逆ハートの木に成る果物。形がお尻に似ている。妖精の好物。ダンジョン産。
〇喋るサンフル。
収穫する際に奇声をあげる果物。魔物の好物で人間は忌避している。ダンジョン産。
〇パープルキッズ。
母なる木にぶら下がってる果物。子宝に恵まれると言われ家族持ちに人気。赤、白、緑があり、ワインの原料。ダンジョンにもあるが、ワイン農家が畑で育ててる。
〇ダブルボム
魔物の背に寄生する木に成る果物。身が柔らかく収穫する際たまに爆発する。黄色と緑の双子。ダンジョン産。
〇初恋の吐息
リモネの木に成る果物。口臭消臭対策用の薬剤に使われる。貴族は礼儀として、騎士や冒険者は足消臭剤として使用している。他にも美容品の材料に使われる。森に自生。
〇メロンメロン
果物から発せられる甘い匂いが誘惑剤となり、収穫に来る人をメロメロにする。子供が好きな果物。ダンジョン産。
〇ソーンモンスター
トゲトゲの皮を飛ばしてくる魔物。ラビリンスランドで出現する雑魚魔物。ドロップする身が食べられる。
〇太陽のたまご
太陽が生み落したような真っ赤な果実。高級品。王族への献上品として使われる。上級ダンジョン産。
〇黄金の手
ひと房に沢山の実が成ってる様が手に見える。高級品だが雄の象徴に見えるので女性には不評。ダンジョン産。
〇ノーネーム
ナナシの木に成る果実。9月~11月だけ収穫できる季節限定品。便通が良くなるので女性に人気。ダンジョン産。
――――――――――――――――――――――――
他にも一季節しか成らない果物があり、森に自生していて、ノーネーム以外はディアの好物なので人間は収穫しないようにしている。らしい。
「……ネーミングよ。何、なんなの?普通の名前じゃダメなわけ?ニュアンス的にどんな果物かわかるけどさ。ピンクのお尻って……桃じゃん!桃でいいじゃん!!」
一つ取り出してみたら、まんま桃だった。匂いがリンゴだったのは気にしない事にした。食べてみた。桃味リンゴ臭だった。脳が混乱した。
さて次は初恋の吐息ね……「レモンだろ!そんな爽やかな口臭ないわ!キスだってレモン味じゃねぇから!」
また一つ取り出して一人ツッコミ。レモンだった。ブツブツ言いながらレモネードを作った。「酸っぱ美味い!」
「さてさてお次は、太陽のたまご!これは、アレだろ?俺の大好物マンゴー!キタコレ!」
さっそく切ってみた……「ん?んん?んんん?」
見た目はマンゴー。花咲カットしたけどマンゴーだった。が、無臭だった。あの芳醇な香りがしなかった。
「何かがおかしい……」と、恐る恐る口に含んだ。
「…………バナナやないかーい!なぜ!?マンゴーフォルムでバナナ味ってなんなんだよ!!美味いけどね!!」
ハヤテ(仮名)は憤怒した。そして、「マンゴーが……」と呟き、涙が頬を伝った。
食べ終わったら異変を感じた。別に疲労してたわけじゃないけど、身体がシャキーンとしたのだ。「なんだ?」
不思議に思ったけど「異世界だしな」と結論付け、調べもせず効果を放置した。気にしたら疲れるし。
一通り食べ終わり、「なんだかなぁ」と物思いにふけってたら、ピクっと肩が揺れた。自分にスキルを使われたみたいだ。犯人は分かってる。竜人くんだ。
「今日もご苦労なこった」
そんなハヤテ(仮名)の様子を観察していた竜人騎士は、テーブルにある太陽のたまごの残骸を見た瞬間、クワッと縦長瞳孔を見開いた。
ジャウフレ「何処で手に入れたのか知らんが、太陽のたまごだと!?ここ何年も収穫出来ずな、あの!もはや幻となってしまった太陽のたまごを食べていただと!」
この日、非番だったジャウフレは、騎士仲間と城下町の飲み屋に繰り出し、昼間から酒を煽っていた。
特段、ジャウフレは酒を好んで飲まないが、この日は仲間の恋の為に付き添っていた。
酒屋の姉ちゃんに惚れ込んでる男は、稼いだ金をばら撒くように使うから、完全にカモられてるんだろう。
だが、幸せそうに寄り添い口付けし合ってるし、なんなら今すぐ情交しそうな勢いだ。
「勝手にやってろ。俺はそろそろ隊舎に帰るわ」
2人の世界に入り込んでる奴らに、一応声を掛けてから店を出た。酔いを冷まそうと広場のベンチに座り、空を見上げた。
暫くボーッとしていたが、ふと、護衛対象が気になり遠見を発動させた。ら、テーブルに広がる果実の残骸を発見した。その中に太陽のたまごの欠片があった。
「こうしちゃおれん!」と、最速スピードで城内に向かって駆け出した。
ジャウフレ「今日こそは部屋に入れて貰うぞ王子!待ってろよ!ふはははは!」
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