転生王子の異世界生活〜8回目の人生は幸福であれ〜

1章 幼少期

1章6話 監視対象

アルカディア王国の第3王子(未定)に転生して1年と9ヶ月経った。

ナビゲーターのユエちゃんには、毎日のように情報を貰っていた。

最初に聞いたこの世界の事は、疑問に思った事を質問し、何となく把握できた。

ダンジョンで成り立っている世界なら、農家や畜産業はいないのか？と思ったが。

小麦、豆、ビート、肥料の農家と、牛、鳥、ヤギ、ヒツジ、馬の専門職があるとのこと。

要は、ダンジョン内で収穫出来ない穀物類を育てる農家と、ミルク、卵、チーズ、羊毛の加工専門職と、馬を育てる厩務員という専門職がある。

牛肉、鶏肉、羊肉はクセがなくサッパリしているので人気らしい。ヤギのチーズは高級品なのだとか。

ハヤテはヤギのチーズは苦手なので、牛の乳を手に入れたら自分で作ろうと思ってる。

あと、気になったのが“”果物“”だ。

自分がフルーツ大好きっ子なので、ダンジョンで収穫出来ないなら存在しないのか！？どうなんだオイ！！

と、少し責めるように聞いてしまった。反省。

果物はダンジョンのセーフティエリアで収穫出来る物と、森で自生しているのがあるのだとか。

南国フルーツは、『蜘蛛と蚕のお城ダンジョン』の中級エリアにしか存在しないらしい。

ショックだった。特に好きなマンゴーとパインが、蟲が蔓延る迷宮にしかないなんて。

(食べたいならCランク冒険者になるまで我慢だと！？あと何年待てば良いんだぁぁあ！！)

と、頭を抱えて項垂れた。

しばらく放心してたけど、「仕方ないか」と諦め、食事事情について聞いてみた。

スパイスのダンジョンがあるのだし、屋台メシも食事処も美味いのでは？と思ったのだ。

だがしか～し！！肉串は塩と胡椒振っただけ。スープは塩と胡椒味。パンは発酵させてないからカチカチ。サラダは塩のみ。卵料理は塩味オムレツかゆで卵。

ミルクスープやブラウンスープもあるが、“”出汁“”と“”うま味“”という概念が無いので、ミルクで煮ただけのスープと、ワインで肉を煮ただけのスープしかないんだと。

でも、最近少しだけレベルアップしたらしく、ドネルケバブらしき物が流行ってるらしい。
迫力ある肉の塊を削ぎ落とし、野菜と一緒にパンに挟んで売ってるんだと。


「まんまケバブサンドやん！それ絶対美味いやつ！」


ジュルリ……おっと、ちょっと興奮してしまった。


王族や高位貴族には“”料理スキル“”持ちの料理人がいるので結構良い物を食べてる模様。

ハヤテも一応王子なのだが、軟禁されてるので食べたことはない。食べたいとも思ってないが。

だって、良い物といっても何となく想像出来てしまうし、フランス料理やイタリア料理、日本食には勝てないだろう。

だから、特別食べたい！！とは思わない。

あと、衛生面はさすがファンタジー！って思ったよ。

風呂は貴族の屋敷にはあるが、水魔法でお湯を溜めるか、井戸で汲まなければならず、“”湯船に浸かる“”という行為は超贅沢なので入浴の習慣がなく、普段は生活魔法の洗浄で済ますのだとか。

ハヤテ(仮名)はお風呂大好きなので、壁の一部を壊し、石を加工して風呂釜を造り毎日入ってる。元日本人だからね。綺麗好きなんだよ。

トイレも造った。床に穴開けて便器を造ったよ。用を足したら浄化で消去。うん、清潔。

便器の素材は、壁に使われてる石を魔法で削って、取り出した欠片を錬金術で加工し製造したよ。

一般的なトイレは、床穴の上に座面に穴を開けた椅子を設置し、汚物は浄化の代わりにスライムが処理してるんだって。

ファンタジーだよねぇ。

スライムは街の中で自由に動き回り、ゴミ処理してくれる貴重な存在なので、故意に殺すと罰金刑に処されるみたい。ダンジョンにいるのは例外だけど。



そうそう、3歳までに教会に行かなきゃならないので、ただ今困ってます。僕はまだ名無しなのです。


「ユエちゃん。洗礼受けて真名を貰わないと冒険者登録出来ないんでしょ？放置されてる状態でどうやって行けば良いかな？扉に監視みたいのが2人もいるし、此処から出られないんだよね」


転生4日目から、扉前に監視？が付くようになった。ちょっとした事件があったので。

朝6時と夜9時に交代していて、その度に扉をノックして声を掛けてくる。

優しく諭すように、「出てきて欲しい」「開けて欲しい」と言われるが、無視している。信用してないから。

もう放っておいてほしい。「第3王子は死にました」と処理してくれと思う。


『ハヤテ様。その問いに対しての最善策を提案致します。固有スキルの変化で姿を変え、隠密スキルで気配を消し、扉前の2人にスリープ魔法を掛け眠らせます』


「なるほどなるほど」

固有スキルの変化は結構使えるスキルだと思う。24時間という時間制限はあるけど、大人にも女にも動物にもなれるのだ。


『そして地図を展開し、複雑な離宮を抜け出します。妖精の森に無人の教会あるので、そこで洗礼を受けるのが宜しいでしょう』


無人の教会なら誰にも会わないし、王子だとバレて連絡いく事もないかな？

いい案だと思ったので、その提案を実行する事に決めた。


「OK。分かった。それでやってみる」


さて、いつ決行するか。キリがいいので2歳になった日に作戦実行することにした。

自作のカレンダーに予定を書き込んでいたら、ユエちゃんから忠告が。


『注意してほしい点が一点あります。ハヤテ様の御父上と近衛騎士団長は気配察知能力に長けています。
あと、護衛騎士の一人が竜人です。透視と遠見、魔法耐性スキル持ちです。
隠密がバレる可能性もあるので、見つからないように気を付けて下さい』


国王陛下と近衛騎士団長。その2人にはバレないだろう。離宮になど来ないだろうから。

問題は竜人の彼だ。さすがドラゴニュートだと感心するレベルで強い。事件は彼が起こした。

扉前の監視役の一人なのだが、転生3日目に扉に攻撃を仕掛け、体術と魔力のゴリ押しで封印の護符を破壊したのだ。

あの爆発はマジで心臓止まるかと思った。

そして開けられた重厚な扉。慌てて走り寄り、開けさせまいと力の限り押したのだが、おしくらまんじゅうみたいになり、数分攻防を繰り広げた。

「そこの者、扉を開けて下さい」

「イヤぁ」

「イヤぁ！！じゃない。そこを退けなさい」

「イヤぁ」

と、抵抗を続けた。最後には向こうが折れてくれたんだけど、軟禁されてるのに元気だし、赤ん坊なのに力は強いし。部屋は豪華だし。で、任務外の時まで監視されるようになってしまった。

ずっと視線と気配を感じるんだ。黄金の縦長瞳孔の瞳を四六時中ビシバシ感じる。

だからさ、十中八九、城を抜け出す時バレると思うんだよね。どうにかして監視から逃れたいが、ヤツを躱すのは無理なのかもしれない。


「ユニちゃん。このままじゃ作戦失敗になっちゃう。ヤツを欺くにはどうしたら良いかな」


『ーー竜人の監視から逃れる方法ーー
検索致しました。問いに対する答えをお教え致します。結論から言いますと、“”不可能“”です』


「ですよねぇ。スリープとか認識阻害使ってもダメかな」


『竜人の中でもトップクラスに強い方ですし、魔法耐性レベルも高いので効果はないでしょう。
ハヤテ(仮名)様はスキルレベルは高いのですが、基礎レベルが低いのです。鍛錬するのをオススメします』


なんでそんな存在が城にいるのか甚だ疑問なのだが。

はてさて、回避不可を告げられ、あまつさえ基礎レベルの低さを指摘されました。悲しい。

でも仕方ないと思うのだ。なんせまだ1歳9ヶ月だし、部屋にいたら戦う相手いないし、鍛錬したくても出来ないじゃぁあん！！

それでも、レベル5までは上がったんだ。部屋に湧く虫とネズミを倒したら上がったんだぜ？スゲェだろ。


「ふふんっ」


いや、そんな事よりだ。回避不可能という現実をどうしようか。


(いっその事、全て打ち明けて仲間になってもらうか？いや。ダメだな。騎士ってのは国に忠誠を誓ってるからな)

色んなパターンを考えたが、いい案が浮かばない。なので、一旦考えるのを放棄して、別の事をしようと収納を漁ってみた。

そしたら有りました。考えるのを放棄して夢中になれそうな物が。


「ジャジャーン！取り出したるわ最高神ゼウス様からの贈り物～！いやぁ、うっかりポッカリ忘れていやした！すみませんゼウス様ぁ」


という事で、プレゼント開封の瞬間です。ハヤテはハラハラドキドキしながら中身を確認した。

天照大神様の時に度肝を抜かれたから、ゼウス様のは普通であってほしい。

そう願って、マジックバックになってる袋の入り口に手を翳した。


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《最高神ゼウスからの贈り物》

武器：日本刀(桜楼)　ロングソード　バスターソード　クレイモア　レイピア　ダガー　メイス　警棒　モーニングスター　釘バット　ハルバード　手裏剣　ブーメラン　弓　クロスボウ　鉄扇　薔薇鞭　デスサイズ    ウィザードロッド

防具：レザーアーマー　メタルアーマー　ドラゴンメイル　ドレスアーマー　ビキニアーマー    龍牙のガントレット　龍爪のグリーブ　ウィザードローブ　エルダーリッチのローブ

野営道具：テント(大中小)　タープテント(大中小)　水筒　折り畳みテーブル　チェア　魔導ランプ　魔導コンロ　魔導キッチン　魔導保冷BOX　温冷付与毛布　結界付与枕　魔導ベッド(水、風)　鍋(大中小)　フライパン　包丁　釣竿

魔除けの護符　結界の護符　封印の護符　式神　

結界魔導具　遮音魔導具　認識阻害付与耳環　遠耳魔導具　調剤器具　錬金釜　

HPポーション(最高級、最良、良)
MPポーション(最高級、最良、良)
回復ポーション(最高級、最良、良)
解毒ポーション　状態異常解除ポーション

霊薬(エリクサー　ソーマ)

魔法の書　スキルの書　魔法陣ブック　錬金術の書

魔核　魔石　魔水晶　魔法銅　魔法銀　魔法金　ミスリル　オリハルコン　アダマンタイト　ヒヒイロカネ

転生先の野菜、果物、薬草、山菜、肉、乳、チーズ

正装衣　戦闘服　司祭服　踊り子衣装　ドレス


～～ハヤテ・ミナズキへ～～

シャルディーナの件、誠に申し訳なかった。寿命を迎えるまで、干渉できないよう処置したので安心してほしい。
技術革新のお願いをしたが、強制ではないので、自由に生きてくれ。

武器や防具は鍜治の神ヘファイストス作なので、神具となっておる。破壊不可、防汚、使用者限定が付与されてるので安心してくれ。

ではな。ハヤテ・ミナズキ。幸多からんことを。


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「やりすぎですゼウス様ぁぁあ！！」