9 / 52
1章 幼少期
1章1話 目覚めたら地下だった ※挿絵ハヤテ1歳
しおりを挟むアルカディア王国の王城城壁内にある、第2側妃が住まう離宮の一室で、生後1年になる小さな赤ん坊が寝息を立てて、すやすやと眠っている。
陽の光を浴びてキラキラ光るパープルシルバーの髪と、ツルツルモチモチの頬っぺ。スっと通った小さな鼻とプルプルなピンクの唇。
そして、長いシルバーの睫毛と、クリクリな大きなパープルアイ。瞳の中には黄金の小さな星が散りばめられており、魔力の高さと神聖さを醸し出している。
そんな天使のようなベリーキュートな赤ん坊は、一応この国の第3王子なのだが、母親の第2側妃は存在を隠蔽し、仮名前も授けていない。
《※本来なら、産まれてから教会へ行き、洗礼を受け真名を授かる》
しかも赤ん坊は離宮内の地下、薄暗いカビ臭い牢のような部屋のベッドに寝かされており、世話は下っ端召使いが日に2度ほどミルクを与えにくるのみ。
何故そんな扱いをされているのか?
それは、産声をあげた時以降、泣きもせず笑いもせず、ボーッと天井を見詰めてるだけで、精巧な人形のように薄気味悪いから。
それでも、側妃にしたら待望の子供だし、王と王太后の色彩を持って産まれたのだ。可愛がっても良さそうなものだが、自分よりも美しい息子が疎ましく、更に笑わない泣かないから薄気味悪い。なので母親は育児放棄した。
だが、放置しすぎて死なせてしまったら、ステータスに“”毒親“”や“”子殺し“”等、王の妃として不名誉な称号が付いてしまうので、それを恐れた側妃は最低限の世話をしている。召使いがだが。
そんな不憫な赤ん坊を見守る存在がいる。上級神界にいる最高神ゼウスだ。
(何度転生しても、彼の人生はスタートがマイナスなんだな....)と、憂いを帯びた瞳で赤ん坊を見詰め、呟いた。
ただ、今回の転生は最高神の加護があるので、食事をしなくても周りの魔素を吸収してれば身体はキチンと育つ。だから、前世のように餓死する事はない。
その事に安堵した神は、1歳になった彼が目を覚ましたと同時に、一旦下界鏡を切った。
「....んにゅ....くりゃいな....よりゅかな?」
目を覚ました彼は、小さな手を持ち上げ目をコシコシ擦り、クワッと欠伸をした。
そして、頭を動かし薄暗い室内をキョロキョロと大きな眼で見回した。
「にゃんか、カビくちゃい」
クサクサする鼻と口を小さな手で塞ぎ、暫し逡巡した後(そういえば)と思い出した。
「たしかぁ、神しゃまがシュテータシュみてねって言ってたなぁ」
(ん~と、どうやるんだ?ステータス~出ろ~見せて~)
「うにゃ!?」
やり方が分からず「うぅん、うぅん」と唸りながら、心の中で唱えたら『ヴォン』という音と共に、目の前に半透明のモニターが現れた。ビックリした。
「ほへぇ。こりぇがシュテータシュかぁ」
涼太が読めってプレゼントしてくれた小説に出てきたのと同じ感じかな?
懐かしい記憶を思い出しながら、目の前で淡い光を放ち見ろ!と主張している半透明を興味深く眺めた。
そこに書かれている内容を確認すべく「どれどれ」と上から順番に目を通した。
--------------------------------------------------
《ステータス》
名前:??? 年齢:1歳 種族:人族(※※※)
職業:無し 上位属性:聖属性
体力:30000 魔力:50000
攻撃力:5000 防御力:3000
レベル:1 幸運値:88
スキル:剣術(SS) 体術(B) 弓術(C) 聖魔法(SS)
索敵(C) 隠蔽(S) 隠密(B) 遠見(A) 気配察知(A)
馬術(A) 料理(B) 分解(B) 解析(B) 魔力操作(C)
魔力加工(C) 生活魔法(火種、流水、乾燥、洗浄)
固有スキル:変化1/1(D) 付与(紙、金属) 世界地図
言語理解 異空間収納(勇者時代引継ぎ)
称号:転生を繰り返し者
元勇者(経験値獲得率アップ)
龍殺し(使役)
女神シャルディーナの寵愛(幸運値アップ 拾得率アップ)
最高神ゼウスの加護(創造魔法 状態異常耐性 魔法攻撃耐性)
天照大神の加護(小)(情報検索)
※※※※※(予定)
備考:アルカディア王国第3王子の予定。教会にて名を授かれば王族の一員となる。3歳までに洗礼を受け真名を得よ。
異空間収納には、勇者時代に集めたアーティファクトや食材、各種武器、防具、野営道具、女神からのラブレター、聖域ハウス、契約獣、天照大神からの贈り物、最高神ゼウスからの贈り物が入ってます。
--------------------------------------------------
「....わぉ。体力と魔力ありすぎにゃ件。天照大神って地球の神様や~ん。※印の予定ってにゃんやね~ん」
あまりの内容に暫し考えるのを放棄した。(後で落ち着いたら色々と確認だな)
(それにしても今いる場所は私室か?随分とカビ臭いが)
今世は王子として転生した筈だ。だとしたら住まいは王宮だと思うが。
寝かされてる布団もゴワゴワだし、室内は冷えてて寒いのに肌着はペラペラだし、カビ臭い。
環境の劣悪さに嫌な予感がヒシヒシ感じる。今の状態を、前世で体験した事がある。
とりあえず現状確認をしたいが、真っ暗で何も見えない。困った。
(蛍光灯みたいな明かりが欲しいなぁ)そう心の中で呟き、想像したら、部屋がパッと明るくなった。
眩しくて「うひょっ!」と奇声をあげ目を閉じた。そして明るくなった室内をゆっくりと目を開けてキョロキョロと見回したんだが開いた口が塞がらない。
ベッドも棚もボロボロだし、窓は鉄格子が嵌ってる。扉も金属の重たそうなドアだし、床や壁がゴツゴツした岩みたいなのだ。
“”まるで牢屋のようだ“”と思った。
(まさかこういう部屋がデフォな王宮なのか?)
そう思ったが、(んなわけねぇーわ!)と思い直した。
果てさて。産まれて1年しか経ってないのに幽閉か、軟禁か、誘拐か?
どんな状況なのか全く理解不能だが、2度目の人生で産まれて速攻幽閉されたのを思い出した。
だから今世も、容姿か色彩かわからないが、何か自分に要因があってこうなってるのだろう。と、無理やり理解して「ははは....」と乾いた笑いを零した。
(幸運値88の恩恵がまるで無い!!女神の寵愛とか、不必要にある能力とか要らないから、まともな転生させてくれよ!!)
まさか王族に転生しても扱いが酷いとは。寿命を全うしなきゃならないのに詰んだな。
半ば諦めモードで(う~ん。どうするか)と、これからの事を思案した。
短い腕を胸の前で組み、目を閉じて眉間に皺を寄せグルグル考えていたら、部屋の外に人の気配を察知した。
慌てて(光よ消えろ~)と念じ、パッと消えた事に安堵し、ふぅ~と息を吐き出した。
薄目を開けて、入ってくる人を観察しようと思ったが、真っ暗闇なのを思い出した。
(しゃぁない。相手さんが明かりになる物を持ってるだろう)
どんな人が来て何されるのかドキドキしながら待ち構えていた。
カチャカチャ。ギギギギー。
鍵を解除する音と、扉が開く音が部屋に響き渡り、コツコツと靴音を鳴らしながらベッドに近付いてきた人は案の定、右手にランプを持っていた。
どんな人で、誰だろ?と、チラッと盗み見たら、顔の下らへんで光るランプに照らされた顔は、完全にホラーだった。
あまりの恐怖に目を見開き、ピキっと身体が硬直した。
どんな状況でも、割と冷静に対応できる自信があるのだが、如何せんホラー的な事だけが唯一ダメなのだ。大嫌いなのだ。全身が拒絶反応を起こす。
恐怖に戦き、固まってる俺に構う事なくヤツが近寄ってきた。
ホラーな人がニタッと笑った。気がした....
ホラーな人が手を伸ばした。爪がピカッと光った....
ホラーな人が布団を剥いだ。寒くてブルっと震えた...
ホラーな人が凶器を構えた。婆さんの萎んだ乳みたいな凶器…
その凶器がゆっくりと顔に近付いてくる。
(やめてやめてやめて!!)まずい!婆さんの萎んだ乳で殺される!オーマイガー!万事休す!
(にぎゃぁああ!)
130
お気に入りに追加
496
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる