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0章 プロローグ
0章3話 プロローグ ※挿絵ゼウス(最高神)
しおりを挟む(....また白い空間かよ。もう転生とか転移とか召喚とか飽き飽きなんだが)
何もない真っ白い空間でプカプカ浮かびながら悪態ついているのは、女神シャルディーナに目を付けられ、愛されてる魂だ。
1度目の人生は農民だった。クソほど何も無い僻地で、貧乏なのに子供8人の大家族。
4男で身体が小さくひ弱だった為に「使えない」と両親に疎まれていた。
そんな俺を唯一可愛がってくれていた元冒険者だった祖父が、家族が寝静まった真っ暗な闇夜の中「この村を出るぞ」と言って、俺を抱えて村から逃亡した。
鬱蒼とした森の中を拠点とし、成人する歳まで様々なスキルを教えてくれた。採取、探索、戦闘、料理等。
真面目にコツコツスキルを磨き、「やっと成人だ!冒険者になって爺ちゃんと旅が出来る!」と喜んだ雪の降る寒い月のある日、大好きだった爺ちゃんが老衰で亡くなった。
悲しい気持ちをぶつけるように魔物を狩り続け、冒険者になって2年でSランクになった。
実力を付け悲しみが癒えた頃、故郷があるであろう地域に邪龍が現れ、国からの依頼で討伐に向かった。
俺も龍も満身創痍でボロボロになり、最後の一太刀を同時に浴び、世界の平和と共に最年少Sランク冒険者、後に英雄と呼ばれた俺が永遠の眠りについた。
と思ったら、貴族の子息として目覚めた。それが2度目の人生だった。
邪龍が滅びた後の世界で、“”黒“”が忌み嫌われる世だったため、黒髪の俺は産まれてすぐ幽閉された。
自我があったので、どうにか生き延びてやろうと孤軍奮闘したが、水もない乳もない赤子では空腹に耐えられず、産まれて1ヶ月も経たず塔の牢で餓死した。
次に目が覚めたのは真っ白い空間だった。
そこで初めて女神シャルディーナに出逢った。スライディング土下座をし、『転生先を誤りました!』と言われたが、俺の頭の中は「???」だった。
その勢いのまま女神は『次こそは新しい人生を歩めます!どうか世界を救って下さい』と言い放ち、俺をむんずと掴んで放り投げた。
訳が分からないまま目を覚ましたら、3歳の男の子になってた。しかも猫獣人。それが3度目の人生だった。
女神が「世界を~」とか言ってたから、俺なりに鍛えて兄と一緒に旅に出た。が、人族の奴隷商に捕らえられ、戦闘奴隷として最前線で戦った。
善戦していたが、戦場に突如現れた黒龍の囮にされ、またも虚しく命を散らした。
4度目、5度目、6度目と転生を繰り返し、どの人生でも戦闘特化だった為、常に戦場の前戦に立っていた。
そして、必ず現れるデス・ブラック・ドラゴンと一騎打ちし亡くなるのだ。
(もういい加減にしてくれ....土下座は良いから。生を終わらせたい)
白の間で、相変わらず土下座をする女に願った。(楽になりたい)と。
だが『それは出来ない』と首を横に振られた。
だから(また生かされるなら、今度は平和な世界が良い。そして今までの記憶を封印してくれ)と頼んだ。
その願いに、女神は暫し逡巡した後『わかりました。本当に申し訳ありません。少し待ってて下さい』とその場から消えた。
その数秒後、別の神?に攫われたと思ったら7度目の人生がスタートした。
地球の日本。北海道札幌市で、まっ更な状態で生を受けた俺は、割と裕福な家庭で育ち、順調に人生を歩んでいた。
家族仲は良好だし、友達も沢山出来た。スポーツが得意で勉強も出来る。才能の塊みたいな存在だった。容姿も整っていたし、背も高かった。
何故か“”彼女“”という存在だけが出来なかったけど、童貞を捨てたのは早かった気がする。
まあ、「一度だけでも....」という女性ばかり寄ってきて、気が乗れば相手してたからな。
そんな軽い気持ちで抱いていれば、本気の彼女なんて出来るはずもなく、「それならそれでいいや」って思ってた。
それよりも剣道や弓道、空手やボクシング、合気道や総合格闘技で体を鍛えるのが楽しかった。
プロを目指していた訳じゃなく、そうするのが当たり前みたいな感覚があったんだ。
あとは料理をするのも好きだったし、電化製品を解体するのが好きだった。
その為に料理の基礎本やらレシピ本を集め読み耽り、電気工学に興味を持って高校~大学も専門の所を受けた。
好きな事を好きなだけ出来る環境が楽しくて、日々充実した生活を送っていた。
21歳の誕生日。友達が祝ってくれ、沢山のプレゼントを貰った。
皆に感謝しながら、ホコホコした気持ちで家に帰り、「これめちゃくちゃ面白いから颯も読んでみ」と、親友の涼太オススメ本“”異世界行ってスローライフ“”を興味本位で読んでみた。
「さす涼だわ。めっちゃオモロかった。小説だけど描写が浮かぶっつーか、世界観に惹き込まれるな。
でも、な~んか既視感があるっつーか?特に魔物との戦闘シーンとかさ、リアルに想像できんだよな」
そんな不思議な感覚をベッドに寝転びながら感じていたら、突如眩い光に包まれた。
そして気が付いた時には真っ白い空間に居て、絶世の美女が佇んでいた。
此方をニコニコと見詰める美女が『ようこそ勇者ハヤテ。私は女神シャルディーナ』と言った瞬間、今までの人生の記憶が脳にインプットされた。
それが7度目の人生で、一番最低で最悪な“”勇者“”としての始まりだった。
で、またしても現れたデス・ブラック・ドラゴン。
その存在に世界中が震えあがった。そして、勇者として討伐の旅に出た。重騎士、魔法使い、自称聖女を引き連れて。
役に立たない勇者パーティメンバー。性行為に耽るだけなら要らないと何度思ったか。
向こうも俺を邪魔だと思ってて、国からの命令だからイヤイヤ付き添っているだけだった。
邪魔だから、最終決戦地へ設置した小屋に放り込み、龍と1体1で対面した。
お互い初対面ではないので、微妙な空気が流れる中、戦闘開始。そして同時に倒れ、勇者としての役目を終えた。
のだが。またしても白い空間。そして冒頭のセリフである。
(いい加減にしてくれ!おいシャルディーナ!シャル!龍を倒して使命を果たしたぞ!結婚すんだろ!出てこいコラ!!)
教会へ寄る度に神域へと招き、抱きついてニャンニャンしてくるシャルディーナは、『早くデス・ブラック・ドラゴンを倒してお嫁さんにして』と擦り寄って来ていた。
美人で可愛い女神だが、繰り返される転生人生に辟易していた為、“”結婚“”のお願いは叶えてあげたいとは思わず、言われる度に適当にあしらっていた。
それよりも「早く解放してくれ!」と願い、色んな理不尽に耐え、必死こいて使命を果たしたのだ。
最後は相打ちみたいになったけど、龍は倒したし、「これでシャルから解放されるか!?」と思ったのに、また白い空間....そして誰も居ない。
(どうなってんだよ?おーい)
いつもと違う展開に困惑していたら、凄まじいオーラを感じて、魂のままだけど冷や汗が流れる感覚がした。
若干の恐怖を感じていたら、『やぁやぁお待たせ。女神シャルディーナの愛し子よ』という言葉と共に、オーラが徐々に人型を形成していった。
腰まであるサラサラな金の髪、黄金の眼、真っ白いローブ。そしてこの世のものとは思えぬ迫力ある美貌。まさしく“”The神様“”な人?が、目の前に現れた。
最高神『私は数多ある星々を管理する神達を束ねる上級神である。名をゼウス。
お主は女神に選ばれし者。世界を混沌とさせる者。世界を安寧へ導く者。自由であり自由でない者。
転生を繰り返した主の魂は、次の生で寿命を全うしなければ消滅するであろう。
日本と勇者時代の記憶と私の加護を持って生まれ変わり、人生を謳歌せよ』
(えっ?人生を謳歌?消滅?いや待って、また転生?最高神ゼウス様?シャルディーナは?は?)
最高神『....うむ。転生し寿命いっぱい人生を謳歌し、シャルディーナとの約束を果たせ。
使命は無いが、魔法の力を授けるので停滞している世を発展させて欲しい。私からの願いはそれだけだ』
(魔法....ですか。もう転生人生は懲り懲りなんですが....わかりました。ゼウス様の期待にどれだけ応えられるかわかりませんが、俺の知識で出来るだけ発展させてみせます。シャルディーナとの約束....は、今まで色々あったのでもう少し考えたいです)
最高神『相分かった。シャルディーナの事はゆっくり考えると良い。それよりも良き人生を謳歌せよ。
転生先は剣と魔法の世界。様々な国がある中のアルカディア王国の王族だ。赤ん坊から記憶があると色々と困るだろう。1歳になったら思い出すようにするからの』
(王族ですか....しかも剣と魔法の世界って事は、また戦闘必須な世界ですか。はぁ....わかりました。自分なりに人生謳歌してみます。ご配慮ありがとうございます)
最高神『うむ。使命は無いからの。魔物はいるが、どんな人生を歩むかは其方の自由だ。
そろそろ時間だ。目が覚めたらステータスを確認せよ』
(自由....わかりました)
最高神『ではな。お主の人生に今度こそ幸あらんことを』
ゼウス神様の言葉と指パッチンが同時に鳴り、眩しい光に包まれたと思った瞬間、視界がぐるんと回り、俺の意識は無くなった。
最高神『どれどれ。天照大神も心配していたからな。暫く様子見していようかの』
無事送り出した不憫な魂が、新たな命を得たのを確認し、満足気に頷いてからその場を去った。
最後の仕上げをしに、地球の神“”天照大神“”の元へ向かったのたが、その結果を知るのは1年後だ。
転生を繰り返した元勇者の8回目の人生がスタートした。どんな人生を謳歌するのか、物語はこれから始まる。
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