モブ令嬢ですが、悪役令嬢の妹です。

霜月零

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ゲームになくともかわして見せます(1)

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 不味い事になったわね……。

 こちらに対する嫌悪を隠そうともしないマリーゴールド様に、私は内心頭を抱える。
 表情だけは変えないように努めているけれど、できることなら今すぐここから逃げ出したい。
 できませんけれども。

「マリーゴールド様。本日もご機嫌麗しいようでなによりですわ」

 ルシアンお姉さまの目の前で仁王立ちになって見上げてくるマリー様に、お姉さまは丁寧にお辞儀を返す。
 ここの辺りはさすが侯爵令嬢。
 どれほど苦手でも、一切その感情を見せない。

「あらぁ、ルシアンティーヌ様はお世辞がお上手ねぇ? でもわたくし、とっても不機嫌ですのよ。なぜだかわかるかしらぁ?」

 ふんっと鼻を鳴らして、マリー様はお姉さまを見上げる。
 お姉さまの表情が、私にしかわからない程度に憂鬱さを帯びた。

 ミュリエルとビターは、ただならぬ雰囲気を感じてか、そっと寄り添って固まっている。
 余計なことを言わないでくれるのはありがたいし、二人の距離がさらに縮まるのはよいことだけれど、こんなイベント、ゲーム内で起こった記憶がない。

 全ルートをくまなく思い出せたわけではないからなのか、ゲーム内ではお菓子を買いに行くなんて本来しなかった行動をしてしまったせいなのか。
 何となく、後者な予感がする。
 焼き菓子を買いに行来ましょうなんて提案してしまったあの時の自分を、止めれるものなら今すぐ止めたい。
 侯爵家の料理人に作ってもらうか、使用人に買いに行ってもらうのがきっと正解だった。

「……お菓子が売り切れてしまっていたのかしら」

 マリー様の不機嫌さは、明らかにお姉さまに会ったからなんだけど、お姉さま、ナチュラルにそんなことをいう。
 天然のお姉さまにだって、お菓子のせいじゃないことぐらいはわかっているはずだけれど、それ、もう、完全に火に油を注いでますっ。

「はぁ? ルシアンティーヌ様は相変わらずおかしな人ね! いま来たのに売切れているかどうかなんてわかるはずないじゃない。わたくしは、大好きなお店の前で大っ嫌いなあなたを見たから不快なの。わからないのかしらね!」

 だんっ、と地面に片足を強く置くマリー様。
 
 その瞬間、私の脳裏にミニミニサイズのマリー様のデフォルメイラストが思い浮かんだ。

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