モブ令嬢ですが、悪役令嬢の妹です。

霜月零

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一緒にご飯? 遠慮なく辞退いたしますわ(1)

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 入学式のイベントを何とかクリアした私、クリスティーナ=ローエンガルド。
 私はいま、絶望の真っ只中にいる。

「クリスさま、そんなに落ち込まないで下さいませ。わたしのケーキを差し上げますからっ」
「ミュリエル、貴方はなんて優しいの。でもこれはわたくしの問題なのよ」

 学食のケーキを私に差し出そうとしたミュリエルの手を、そっと押さえる。
 彼女のトレーの上にはそれはそれはおいしそうな、生クリームたっぷりのシフォンケーキが乗っているのだけれど。
 それはミュリエルが大・大・大好きな抹茶のシフォンケーキだから絶対に貰えない。
 なんで中世風な世界設定で、和風な抹茶ケーキが存在するのか謎だけれど。
 あ、正確にいえば抹茶じゃないな。
 学食の入り口にあった本日のお勧めケーキの説明欄に、チャッマティーの粉末を入れてどうたらって確か説明が載っていたわね。
 味はまんま抹茶なのだけれど。

「クリスさまの分のケーキがないなんて……」

 しょんぼり。
 幻覚の尻尾と耳がミュリエルに見えそうなぐらい落ち込んでいる。
 でも私が凹んでいるのはシフォンケーキがないからじゃない。
 それももちろん食べたかったけれど、問題は、今日も攻略対象が居ないからだ。

 正解攻略対象の最後の一人、ビター=ブラウニー準男爵子息。
 彼は大商人ブラウニー準男爵の三男で、乙女ゲーム『煌きは貴方と共に』では人懐っこいワンコ系キャラだった。
 そのくせ、いざと言う時はちゃんとヒロインを守ってくれて、頼りがいもある。
 お父様の大商人としての資質もきっちり受け継いでいる彼は、男爵位を国から購入してミュリエルと幸せに暮らすのだ。
 正解攻略対象の中で、ミュリエルに一番お勧めしたいキャラと言ってもいい。

 でも……。

 私は、平民で賑わう学食をもう一度見渡す。
 白いゴールデンレトリーバーを髣髴とさせるプラチナブロンドは、茶色い頭がひしめくこの学食ではかなり目立つはずなのだけれど。

「シフォンケーキがないのは残念だけれど、木苺のタルトもキノコのグラタンもとても好きなの。だからわたくしは大丈夫よ」

 落ち込んでいる本当の理由を、まさかミュリエルにいえないからね。
 でもキノコのグラタンは本当に好きだし、ここの学食は美味しいのよね。
 貴族も口にするからか、侯爵家の食事とさほど変わらない感じ。
 もっとも、メニューは庶民的だけれど。

 あ、ちなみに。
 ルシアンティーヌお姉様は、貴族しか入れないサロンで食事をとっています。
 本当なら私もそちらで食事をするのだけれど、ミュリエルが攻略対象と初めてエンカウントするのがこの学食ですからね。
 ちゃんと正しい選択肢に誘導するべく、側で見ているのだけど……。
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