モブ令嬢ですが、悪役令嬢の妹です。

霜月零

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お茶会をまずは乗り越えましょう(2)

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 ふぅ、危ない危ない。
 どうしてお姉さまは、こうも見た目がキツイのか。
 お姉様は、見た目だけは私と同じだ。
 本当に見た目だけ、容姿だけだ。
 両親ですら、黙っていたら私達の見分けがつかない。


 容姿で唯一の違いは、口元のほくろだけなのだ。
 1mm程度の小さなほくろは、お姉様は右に、私は左にある。
 小さすぎて、本当に良くみないと分からない。
 それに淑女たるもの、扇子は常に持ち歩き、口元を隠していますからね。
 見えるはずがない。


 同じ容姿でほくろの位置だけが左右で違うのは、たぶん乙女ゲーの絵師が神絵師だったせい。
 一枚の絵を左右反転させてドレスの色を変えれば、ね?
 二キャラ分になるでしょう。
 有名イラストレーターに予算内でイラストを発注する為に、苦肉の策だったんじゃないかなと思う。


 ちょっと釣り目気味の紅い瞳と、長い銀髪縦ロール。
 整い過ぎた容姿は人形めいた美しさと、冷たい印象を周囲に与える。
 貴族の令嬢らしくあまり感情を大きく表に出さないせいか、酷薄そうにも意地悪そうにも見える。


 そんなお姉様が何かを言うと、悪いほうへ取られがちだ。
 お姉様にはそんなつもりは欠片もないのにね。

 容姿だけなら同じ顔の私も美人のはずだけれど、なぜかな。
 前世を思い出したからか、他人事のように思えてしまうけれど。


 とにかく私がしっかりサポートしないと駄目。
 全く同じ容姿とはいえ、性格はまるで違うから。
 

 
「クリスさまっ、王都のドレス専門店は、わたしなんかが行かれる場所なのですか?」
「もちろんよミュリエル。ドレスはオーダーメイドと思われがちだけれど、既製品からセミオーダーまで幅広く扱われているの。
 ミュリエルに合うドレスも、きっと見つかるわ」

 オーダーメイドは一点物で高くつくけれど、セミオーダーならミュリエルも気後れしないんじゃないかな。
 侯爵令嬢である私がセミオーダーや既製品を手にとれば、皆それに習ってセミオーダーや既製品を手にとるでしょうから、ミュリエルが恥をかくことはないはず。
 実際に皆で本当に行くかどうかは分からないけれどね。

「ミュリエル、このお菓子は食べた事があるかしら? 色とりどりで、貴方に合いそうよ」
「ルシアンティーヌ様、今日はじめて食べました! すっごく美味しいですねっ、それに可愛い!」

 お姉様が示したマカロンを、ミュリエルは小さく愛らしい雰囲気で頬張る。
 ふくっと膨れたほっぺたは本当に栗鼠みたいで可愛いけれど、それ、貴族のご令嬢としてはちょっとはしたない。

「一つずつ食べた方が、長く美味しさを味わえますわ」
「クリスさま、言われてみるとそうですねっ。一個ずつ食べることにします」

 にこっと笑うミュリエルの口元に、生クリームがくっついている。
 あぁ、この子も間違いなく天然ね。

 私は、ハンカチでミュリエルの口をそっと拭いてあげた。
 そうして皆で本当にお茶会を楽しんでいると、屋敷のほうから声がかかった。

「随分と、楽しそうだね」
「お兄様、いらしてたのですか?」

 ルーリル=バーレンダ伯爵令嬢が立ち上がり、声のしたほうを振り返る。
 そこには、ルーリルの兄、マーベリック=バーレンダ伯爵子息が笑顔で佇んでいた。

 彼は妹のルーリルと、私達に軽く挨拶をすると、そのまま少し話して屋敷の中へ戻っていった。
 ちらっと、お姉様をみたような気がするけれど。
 ヒロインであるミュリエルに、特にこれといった関心を持った様子はない。

 ……攻略対象者でも、ヒロインを見ただけで恋に落ちるとかは無さそうね?

 彼、マーベリックは八人の攻略対象者のうちの一人だ。 
 それも、正解攻略対象のうちの一人でもある。
 バーレンダ伯爵家の次男だからか、十七歳だけれど、婚約者がまだいない。
 そして、恋人もいないはず。
 乙女ゲームだと、泣きながらその場で俯くミュリエルを慰めるキャラだ。

 ほら、私がさっき前世を思い出すきっかけになったお姉様の言葉ね?

『平民が、どうしてこのお茶会にいるのかしら』

 この言葉に対して現れる選択肢で、泣きながら走り去るのと、その場で泣くのが合って。
 ショックで動けずにその場で泣いていると、マーベリックが颯爽と現れて助けてくれるのだ。

 ちなみに、走り出した場合は門の外に飛び出した瞬間、馬車に轢かれかける。
 その馬車は王太子がお忍びで乗っている馬車で、王太子とのフラグが立つのだ。
 王太子には当然、婚約者がいる。

 フラグ立たせたら破滅エンドまっしぐらですよ、えぇ。
 ミュリエルは、私が前世を思い出して、痛みに思わず声を上げなかったら走り出そうとしていたから、ほんと、ぎりっぎりのぎりぎりで私は間に合った感じ。

 でも……。

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