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第一章

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(やはり、門限には間に合わなかったわね)

 メイナちゃんをチェルおばさまに送り届けて魚を受け取り、急ぎ足で修道院に戻ったのだがすでに門は閉じられていた。

 門の脇の魔導ベルを鳴らすと、門が開く。
 どういった原理かはわからないが、修道院の関係者であるものだけは、この魔導ベルを鳴らすと自動で門が開くようになっている。

 洗濯物もまだ取り込めていないから、やることはまだまだある。
 買い出しを頼まれた食材は料理長のバンダさんに、治療衣と包帯は補充棚に補充して、干場に向かう。

「あら?」

 洗濯物がない。
 投げ捨てられている様子もない。

 きょろきょろと見渡していると、一人の修道女が近づいてきた。
 思わず、一瞬身体が強張った。
 けれどそんなわたしに彼女は明るい声で話しかけてくる。

「洗濯物はあたしが取り込んでおいたから、もう大丈夫よ」

 取り込んでおいた?
 わたしが来てからというもの、洗濯物はいつもわたしが洗うようになっていた。取り込むのも当然わたしだ。水を使い洗う作業は特に手が荒れるから、嫌がる修道女は多いのだ。

「信用できない?」

 わたしが困惑しているのを、彼女はそう受け取ったようだ。

「いえ、驚いてしまって……すみません」

「あははっ、まぁ、そうだよねぇ。今日はあたしは仕事があんまりなかったからさ。そだ、あたしのことってわかる?」

「隣の部屋の、モナさん……?」

 少し自信がないのは、常に全員ヴェールを被っているからだ。背格好と髪の色、そして声で判断するしかない。肩より少し長めの黒髪と、声の感じでおそらくモナさんだと思う。

「正解! あんたが街に遊びに行ったって聞いてたけど、ほんとは違うんでしょ?」

「遊びに? いえ、買い出しでしたが……」

 町へは修道院の用事以外で出たことはない。なぜ遊びに出かけたことになっているのだろう?

「やっぱりねー。今日さ、修道院にまた第三王子様が来てくれてたのよ。ルピナに会おうとしてるのを知ったグルフェ達が、あることないこと言ってるのがちょっと聞こえたからね。とりあえず、厨房に行こう」

「え、えっと……」

「もう夕食終わってるからね。門限遅れたのも買い出しがルピナだけだったせいでしょ。料理長に頼んどいたから、ルピナの食事もとっておいてあると思う。さ、行こう!」

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