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第一章

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 路地裏の奥から、ガタンっという音が響いた。

(っ、まさか……っ)

 音のした路地裏に駆け込む。
 そこには、子供の口を塞いで今まさに連れ去ろうとしている男が!

「何をしていらっしゃるのですかっ。その子を離してください!」

「へぇ? こいつは俺の子だけど」

 わたしを見るなり、男はにやりと笑ってそんな事を言う。
 あり得ないだろう。
 子供も必死に顔を振って男の手を振り払おうとしている。

 目が合った。

(えっ、メイナちゃん⁈)

 大きな男の手で口をふさがれていたからよく見えていなかったが、チェルおばさまの一人娘だ。断じてこの男の子ではない。

「その子は知り合いの一人娘です。貴方は、その子をどこに連れていくおつもりなのですか」

「………それにこたえる義理はねぇよなぁ」

「それは……っ」

 メイナちゃんを取り返そうと足を踏み出した瞬間、背後から羽交い絞めにされ、口をふさがれる。

「んんーーーーっ、うーーーーーっ」

 首をひねって背後を見れば、見知らぬ男がわたしを捕らえている。いつの間に近づかれていたのだろう。少しも気が付かなかった。

「暴れるなっ、大人しくしろ!」

 ぐいっと腕をねじり上げられ、涙がこぼれる。口を塞がれていなかったら、悲鳴も漏れていたはずだ。

「ちょっと予定外だが、こいつも連れていくか」

「うっす」

 にやつく男達は、わたしとメイナちゃんをどこへ連れて行こうというのか。
 身体をひねって拘束を振りほどこうとするが、きつく掴まれている腕はびくともしない。

「暴れるなって言ってんだろーが!」

 パンっと思いっきり頬を叩かれた。叫ぼうとしたが、痛みと恐怖で声が出ない。
 メイナちゃんをみるとぐったりとしている。気を失っているのだろうか。

(助けなきゃ……っ)

 そう思うのに、震える身体は言う事を聞いてくれない。

「……こいつだけここで済ませるか」

 なにを?
 思った瞬間、修道服を掴み上げられた。

(えっ、破かれる⁈)

 そう身構えたのと、男が吹っ飛ぶのが同時だった。
 蹴りだ。
 突然男が蹴られたのだ。
 震える足では立っていることができなくて、わたしはその場に座り込む。

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