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第一章

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 絶え間なくささやかれる陰口を聞きながら、わたしは次の患者の所に歩き出した。
 お義姉様ほどではなくとも、わたしにある癒しの力を求めている患者はまだまだ沢山いるのだから。精一杯、癒していきたい。

 お母様が生きていた頃に教わった薬草知識もある。
 修道院でも教わっているが、薬師として生計を立てていたお母様の知識は、少々独特だったようだ。通常の塗り薬に魚の鱗を粉にして混ぜると傷跡がごく薄くなることを知ったのも、お母様の知識だ。
 滲みづらい塗り薬の調合もある。

 修道院ではそれぞれの修道女に仕事が割り振られている。
 日替わりだったり、週替わりだったり。

 ここで学んだ薬学知識とお母様に教わった知識とで、わたしは呑み込みが早いと言われて調剤も担っている。

(予備の塗り薬も大分在庫が減ってきたわね……)

 患者が増えているのもあるが、裏庭の薬草畑の採取量が減っている。早めに調合しておいた方がいいだろう。 
 そう考えていたわたしに、院長が声をかけてきた。

「面会、ですか?」

「そうです。支度なさい」

 わたしに面会、ということはルピナお義姉様の関係者だろうか。
 ロザリーナとしていたとしても面会は誰からもないだろう。わたしはずっと病弱ということにされ、社交は一切制限されて友人もいないのだから。

 けれどルピナお義姉様に面会するような知人も知らない。

 あのパーティーでの一件以来、お義姉様は親しい友人達からも縁を切られている。探ろうなどとしなくとも、お義姉様がヒステリックに叫んでいたからすべて筒抜けだった。

(入れ替わりを見抜かれたりはしないかしら……)

 知られれば、アイヴォン伯爵家も自分も終わりだ。王家を謀った罪で、死罪を賜るだろう。
 ふっと息を吐く。

 院長の後をついていきながら、窓に映る自分の姿を確認する。
 ローブを纏い、ヴェールで顔はわからない。

 唯一見えている髪は、お義姉様と同じ緩く波打つ銀髪だ。わたしの方がお義姉様よりも白い銀髪だけれど、二人並んで見比べない限り、わからないだろう。

(大丈夫、大丈夫よ……)

 緊張する気持ちを落ち着けさせながら、わたしは面会室にはいる。
 瞬間、怒りに満ちた声が響いた。

「ルピナ……っ」
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