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迷宮18-2)不思議な夜

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「うーん、そうすると青い夜は関係ないのかな。今夜が一番青く光り輝くんだよ。赤い月が青く輝くのは見物だぜ」
『綺麗なのかな?』
「もちろん! 青い夜は魔物が危険になるけれど、幻想的だから、恋人たちが告白する夜としても知られてるんだよ」
『ルーくんは、フェアリアちゃんに言わないの~?』
「わっ、いきなり何言い出すんだよっ。前も言ったけど、俺とフェアリアは、そんなんじゃないからなっ」
『ふぅ~ん?』
「なんだよぅ、じっと見ないでくれよ。大体俺は迷宮さんのほうが……」

 ルーくん、真っ赤になって俯いちゃった。
 いけないいけない、ついつい、聞きすぎちゃった。

『こーびー……』

 てくてくと、コビットさんが女神像まで歩いてくる。

「うわぁ、コビットさんもほんとに元気ないね。ここまで歩いてきたのか?」
『こびこび……』

 コビットさん、いつもなら『こびっ☆』て笑いながら、ぽんっと出現するんだけど、今日は温室からてくてく歩いて来てた。
 でも手にはちゃんとルーくんへのお土産が握られている。

「あぁ、ごめん、こんなに体調悪いって分からなかった。そういえば、ケロケロさんもずっと欠伸してたよね」
『こーび、こび……』
「気にするなって? 気にするよ普通。えっと、ちょっとじっとしててな」

 ルーくん、コビットさんに手をかざして、意識を集中する。
 すると、スライムさんみたいに、ルーくんの手から白い光が溢れて、コビットさんを包み込んだ。

「苦手ってばかり言ってられないからさ。魔法も練習してるんだ。治癒魔法使ってみたんだけど、どうだろう?」

 ルーくんがコビットさんを抱き上げる。
 でもコビットさん、くてーっと身体に力が入らない。

「あー、やっぱり駄目かぁ。俺が温室に行けばよかったよ。コビットさん、無理させてごめんな?」
『こび、こびー……』

 コビットさん、一生懸命ルーくんに笑顔を向けるけど、やっぱり辛そう。
 どうすればいいのかな。

『迷宮パワー、使ってみようかなぁ?』
「小鳥さん達は、それで元気になったんだっけ? そういえば今日みてないな」
『小鳥さん達もくってりで、温室で眠っているのですよ~』
「うわぁ、それは本当に大変なんだな。あいつら、お喋りが取り柄みたいな子達なのに」

 ルーくんがほんとに困った顔をする。
 ハーピーさんとなった三羽は、ルーくんとももちろん話せてて、この間はルーくんに女の子の褒め方について指導してたっけ。
「女の子には、常に褒め言葉を言うべきですのよ? ほら、わたくしで試してみて」とか。
 ルーくんたじたじだったよね。

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