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迷宮5-1)迷子の冒険者
しおりを挟む『こびこびっ☆』
『ぷにぷにっ♪』
コビットさんとスライムさんが、ご機嫌に迷宮をお掃除して行く。
いつもはコビットさんがお手製のミニミニ箒で掃き掃除をしてくれていたのだけど、今日からはスライムさんが加わった。
スライムさんが通った所はレンガ作りの迷宮なのに、陶器のようにつるつるですべすべだ。
迷宮であるわたしを溶かすことなく、表面のゴミだけを綺麗に排除してくれているらしい。
食べられている時はあれほどぬっとりと苦しかった感触だけれど、いまのスライムさんは気持ちいい。
エステでマッサージしてもらっている気分だ。
スライムさんに食べられて大きな穴が開いてしまった壁は、今は透かし模様になっている。
穴の左右のレンガをずらしたり、他の壁のレンガを移動させたり。
パズルのように組み合わせて、お洒落度アップである。
耐久力という点ではちょっと心もとないけどね。
可愛さ綺麗さは大事だと思うの。
そして邪悪だったスライムを倒して純粋な(?)スライムさんにした為か、わたしの迷宮パワーがぐぐーっとアップしている。
増築できそうな感じである。
『こびっ!』
『うーん、わたしはコビットさんの温室を作りたいんだよね。でもコビットさんは、防衛を優先したいの?』
『こびこび、こびー』
『確かに、また魔物がきたら、今度は倒せるかわからないものね』
『ぷに?』
『スライムさんは、もう戦えないのかな』
『ぷに、ぷーにぷに』
『そっかー、もともとは戦わない子だったのね。魔族に操られちゃってたのかー』
スライムさん、もともとは草原で日向ぼっこするのが好きだったらしい。
でも角の生えた魔族に何かされて、邪悪になってしまっていたそうな。
いわゆる正気じゃない状態?
いまは意思疎通できるけど、邪悪な時はわたしの言葉も聞こえていなかったみたいだしね。
悪い魔族もいたものである。
いまのスライムさんは、戦おうと思えば戦えるらしいけれど、あんまり戦いたくないみたい。
わたしの壁の穴を見て、しょんぼりしてたしね。
無理強いは良くない。
でもそうすると、増築と防衛。
どちらを優先するか悩むよね。
迷宮パワーは一杯溜まった感じがするけど、両方実行できるかな。
『こびっ』
『あ、冒険者が近づいてきてるね。久しぶりだなぁ。スライムさんは、迷宮の裏手に隠れていてね。薬草花壇の所よ。薬草は半分ぐらいは食べちゃっても大丈夫だから、食べながら冒険者さんが去るのを待っていてね』
コビットさんは自由に迷宮を移動できるけど、スライムさんはそうじゃない。
うっかり冒険者とエンカウントして倒されちゃったら、泣く。
スライムさんはもともとわたしと一緒で何も食べなくても平気らしいけど、薬草を食べているスライムさんはなんだかつやつやしているのだ。
ぷるるん感も増しましなので、増えすぎちゃった薬草を食べてもらっている。
スライムさんが薬草花壇にたどり着いたのを確認して、わたしはいそいそとレンガをずらして花壇とスライムさんを隠す。
コビットさんが張り切って、宝箱に目一杯薬草をつめた。
なんとか宝箱が閉まるぐらいに、いっぱいいっぱいだ。
めったに冒険者が来なくなっていたから、もりもりに増量大サービスである。
これで準備よし。
さあ、冒険者さん、いらっしゃい!
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