21 / 42
4
空からの手紙
しおりを挟むほなみへ
妹に手紙を書くとか恥ずかしすぎるんだけど、腹をくくって、書きます。でも、これをほなみが読んでるってことは、俺はもう、この世から消えた、ってことだよな。なんか、不思議。
これは、全てを知ったほなみが間違った生き方をしないための引き金として置いていきます。そのために、これを書いて、楓に預けておきます。
いきなりで、驚くだろうけどさ。 実は、俺にはもう、これからも生きていくっていう選択肢が、ありません。もう、どうしようも、なくなっちゃったから。5月○×日に、死ぬつもり。
この日は、去年あいつに初めて呼び出された日なんだ。明確な理由は、ないんだけどね。この日に、終わらせようと思う。
ほなみ、知ったんだろうけど。あ、バスケ部の顧問な?詳しくは書きたくもないから、省略するけど許してくれ。あいつに呼び出される場所は、ちょうど最上階で下もコンクリートだから、飛び降りたらきっと、死ねると思う。あいつも、自分がしてたこと立場的にバレたくもないだろうし事故、って処理されるだろうから。都合いい。
俺はこの高校で、人生を終わらせることに決めた。
母さんにも父さんにもほなみにも、バスケ仲間とか彼女にも申し訳ないけどさ。俺、この先はだめ。この先、生きていくの、無理。屈辱的な記憶がありすぎて、苦しい。勝手な理由、だけど。
せめて、みんなに、自殺とだけは思わせたくないんだ。だから俺は、彼女とも別れないままこの世を去るし、家族とも仲間とも、次も会うのが当たり前みたいに接する。最後の、最後まで。俺があいつにされてたことも知られたくないし、誰ひとりにも、分かられたくないから。
ただ、矛盾してるかもしれないけど、ここだけはお願いほなみ。分かってほしい。でもきっと、わざわざこんな風に言わなくても、ほなみはもう、分かってるよな。ほなみ、俺が死んだって聞いたか見たかしたとき、事故じゃなく自殺なんじゃないかって、すぐに勘づいただろ。俺が高所恐怖症なの知ってるし、背中の痣、見せちゃったしさ。
けど、その疑問を持っても、ほなみは誰にも言わないんだろうな。確信を得るまで。無責任な二次災害を、広げない。それはほなみの優しさだって、俺、ちゃんと分かってるから。
父さんと母さんとか絶対、俺が死んだ本当の理由を知ったら、事故で死んだって現実を受け入れるより、もっともっと苦しむもんな。そういう、母親と父親だ。俺とほなみのことを、自分たちの子どものことを、いちばんに考えて、大切にしてくれる親だから。だから、こそ。自分たちの子どもが自殺した、なんて、思わせたくなんかない。それするつもりの張本人、が言えることじゃないけどさ。
それからほなみは、学校とか警察に訴えようと考えてるかもしれないけど、それも、止めてほしい。頼む。俺からの、最後のお願いだ。お願いほなみ。それだけは、止めろ。
忘れろ、知らなかったフリをしろ、とは、言えない。ほなみは優しい子だから、きっと自分の傷みとして背負う。抱えるし悩むし、苦しむと思う。それでも、これは俺のことだよ。ほなみ。ほなみには、なんの関係もない。もし、ほなみが俺に対して何か悔やんだり自分を責めたりしてるなら、それは違う。絶対に、違うから。
ほなみは、何にも悪くないよ。それだけは、覚えておくこと。
だけど、ほなみばっかり、苦しい思いさせてごめんな。弱い兄貴でごめん。自分だけ、逃げる。ずるくてごめん。ほなみ、ごめんな。
本当に、自分勝手なんだけどさ。俺、ほなみには世界中の誰よりも幸せになってほしい。笑って、生きてほしい。
そういやほなみは、未来で、どんなやつと結婚してるんだろうな。あ、これ知ってる?ほなみが中1のとき、お前初めて彼氏できたじゃん?そのとき、父さんこの世の終わりみたいな顔して母さんに泣きついてて。俺、それみて爆笑してたんだけどさ。やっぱり、なんかちょっと、寂しかったな。そんな、暖かい永谷家が、大好き。ここに、産まれてこれてよかった。それだけで、俺は、誰よりも幸せ者だ。
家は、俺がいなくなったら、子どもはほなみだけになるよな。だから、出来ればほなみの未来の旦那様とやらには、ぜひムコに来てほしいかも。永谷、の姓になって、未来へ繋いでいってほしい。考えかた昭和だな、俺。まあ、単純にほなみに嫁に出てほしくないだけだけどさ。さみしいし。
たくさんたくさん、ほなみのこれからを、見届けてやりたかった。高校の制服姿とか成人式の着物とか、ウエディングドレスとかさ。絶対、綺麗だよな。父さんは大変だろうけど。気がかかりだろうな。可哀想。あれ、俺おっさんみたいなことばっか言ってる?まあ、いっか。本音だし。
えーと、ここまでごちゃごちゃ沢山書いたけど、俺はほなみに笑って幸せに生きてほしい、ってこと。です。はい。それだけが、全て。絶対に、俺のことを背負わないで。
自分勝手に、決めちゃってごめんな。こんなアニキだけど、兄ちゃんは、ほなみのことが大好きだから。ほなみが、俺の妹で、幸せだった。
きょうともみつきとも、楽しく明るく、最高にハッピーに過ごして、笑って生きていけよ!
ほなみ、ごめんな。
ありがとう。
じゃあな。
空より
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
さよならまでの六ヶ月
おてんば松尾
恋愛
余命半年の妻は、不倫をしている夫と最後まで添い遂げるつもりだった……【小春】
小春は人の寿命が分かる能力を持っている。
ある日突然自分に残された寿命があと半年だということを知る。
自分の家が社家で、神主として跡を継がなければならない小春。
そんな小春のことを好きになってくれた夫は浮気をしている。
残された半年を穏やかに生きたいと思う小春……
他サイトでも公開中
恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜
k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」
そう婚約者のグレイに言われたエミリア。
はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。
「恋より友情よね!」
そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。
本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる