Gifted:また世界に××××

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1話 食ろうて回る

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1話 食ろうて回る


この物語は20××年東京、普通の家庭に確かに存在した少年の物語。
「君が真田心利くん?」
赤いネクタイにネイビー色のスーツを見に纏う優しそうな男性が僕に話しかけた。
「先生だよ!心利挨拶は?」
僕の肩を優しく撫でると母は僕の背を押し、送り出した。
「こんにちは真田心利です。本日から宜しくお願いします。」
その一言でスーツの男性は目を丸くした。今の言葉は男の目の前にいる幼い少年から出るような言葉ではない、少年の大人びた振る舞いに男は疑問を持つ。
「あのお母様、再度確認させて頂きたいのですが、心利くんは今おいくつになりましたか?」
「3歳です!」
スーツの男は少し呆気に取られた様だが持ち前のトーク力で持ち直した。
「そうなんですね、3歳で敬語ができるなんて教育ご熱心なようで!」
そんなスーツの男の言葉に母は首を傾げる。
「いえ、私も彼も敬語までは教えておりません。」
「はい?では、どこでいまの言葉遣いはどこで覚えたんでしょうか?」
「え?どうしてだろう?」
母は少し考えた答えを出す。
「多分ですが、私は家でテレワークの業務があるのでそこで覚えちゃったのかな?」
「なるほど、それはあるかもしれないですね。子供は身の回りにあるものを吸収して育ちますから、」
「あの...先生から見てもこの子は大人びで見えますか?弟の琉星ができるまで泣き虫でもっと感情的な子だったんですけど、」
「お母様、宜しければ、こちらのほうでIQテストの方実施させて頂けないでしょうか?」
「今聞いた話からすると心利くんは通常の同年代の子らよりもIQが高いことが伺えるます。こちらとしても心利くんに見合った正しい教育を施したいので、是非受けてみませんか?」
男の勧めに母は承諾し、僕はそのテストを受けることになった。
 結果、僕はそのテストでギフテッドだと診断された。国語、算数、理科、社会、美術、体育と、どの分野にも優れていた。
 そして数年が経ち、文武両道で全てに優れていた僕が小学二年生に上がった頃、弟の琉星にあることが母から知らされた。そこで弟は会話もままならない程の知的障害があることがわかった。
両親がそれを僕に話した理由、それはどうやら僕にも弟の世話を協力してほしいとの事だった。共働きの両親は弟に付きっきりでそばにいる事が難しく、やむ終えず弟の病気を僕に吐露したのだ。

それからは日々は弟の世話に追われた。弟の身支度、食事、入浴に追われ、日常的な補助を手伝わされた。当然学校の友達と遊び暇なんて無くなった。その時順風満帆だった日々が壊れた気がした。

弟の世話に追われる日常、学校に行く前に世話、塾から帰ってきたら世話、家にいるのが何よりも苦しかった。それに積み重なる様にある事に気づく、小学三年生が終わろうとした時、両親が呼ぶ僕の名称が次第に変わっていったのだ。
昔は母と父は僕のことを「心利」と呼んでいた。
そう僕の名前で呼んでくれていた。

でも今は僕の事を「お兄ちゃん」と呼ぶ様になった。弟の事は「琉星」と呼ぶのにも関わらず。僕のことは名前で呼んでくれない。

お兄ちゃん、そう呼ばれるたびに何か弟の世話を押し付けられる時なんだと、僕ははらわたが煮え切りそうだった。
「ふざけるな!!!」
僕は無意識に弟の琉星に掴みかかってしまった。
「ど、どうし、お兄ちゃん!!」
「お兄ちゃん」、その言葉で僕に拍車が掛かる。
「うるさい!何で僕がお前なんかの世話をしないと行けないんだ!」
不意に溢れ出してしまった感情に僕は後悔する。弟は僕の叫び声で弟は大声で泣き出した。
「琉星、ご、ごめっっ」
必死宥める僕の後ろで戸が開く。
「あんた何をやってんの!!!」
母の甲高い声が耳に刺さる。母は僕を突き飛ばすと弟に駆け寄り、大声で泣く弟を宥める。母はゆっくりと振り返ると僕に一言言い放った。
「あんたお兄ちゃん失格だよ。」母の言い放ったその言葉を聞き、僕は心の何かが切れた気がした。

すると途端に不快なノイズが僕を襲った。何処からか流れる未知なるノイズが僕の負の感情を膨れ上がらせる。
「うるさい!」

そんな最中、母は僕に何か言っている。

そのノイズは次第に大きくなる。
「だまれ!」
不快なノイズはまるで耳の中でなっている様だった。
(言えよ本音を、)
ノイズが言葉となり僕に襲いかかる。
「もう世界(家族)なんていらない。」
そう言い放つと先ほどのノイズと共にあらゆる音がピタリと止まった。母の声、弟の鳴き声、それはまるで時が止まった様だった。
「何だよこれ、」
人息つく間のなく、足元にある自分の影が沼となり、足を引き摺り込む。それによって足首が埋まり、腰が埋まり、首まで埋まり、僕は泣きながら叫ぶ。
「ふざけんな!僕の日常を返しやがれ!あいつの人生じゃない!僕、いや俺の人生だ!何のために!クソッふざけnあぁぁぁっっ...」

そうして俺、真田心利は未知なる非科学的な影に飲み込まれていった。
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