隣のマスクの彼

伊藤明日香

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お隣さん

お預かり

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新村さんの弟のルイ君と妹のルナちゃんを家で預かることになった。



二人共見た目可愛いんだけど、家に来て大人しくしてるものの読んでる本が可愛くない!



『中世の拷問』をルイくんが読み、『完全犯罪クラブ』をルナちゃんが読んでいる。



…どこで売ってるの?


そんな物騒な本。



本屋で見たことないよ?


「お茶」



ルナちゃんが俺へコップを差し出す。



「はい」


俺はそのコップにお茶を注ぐ。



何で執事みたいになってんの!俺!






「奏汰こっちも。」




ルイ君もコップを差し出してきた。




「はいはい。」



コップにお茶を注ぐ。



ふと視線を感じた。



その視線の先を見るとこの家の主・豆がいた。


双子がこの家に入ってすぐ追いかけ回され、


疲れてぐったりしていたのが復活できたらしい。


「あの猫いつからいるの?」


ルナちゃんが本から顔を上げ、豆を見る。


「俺が高校のときに拾ったんだ。だから2年位。」


俺が答えるとふーんとルナちゃんがつまらなさそうにする。


「老けてんじゃん。」


ルイ君もいつの間にか豆を見ていた。


「うん、拾ったときには5歳位って言われてたんだ。」


拾った当時のことを思い出す。



「豆はね片方の耳が聞こえないんだ。」



その言葉にルイ君とルナちゃんが息を呑んだ。



「だからゆっくり近づいてあげてね。」



ルイ君とルナちゃんを見ながら言うと二人共頷いた。












お昼を食べ、夕方になるとルイ君とルナちゃんは豆を挟んで寝てしまった。



あの後、豆も二人がいるのに違和感がなくなったらしく、猫じゃらしに付き合ったり、二人と遊んでくれた。


ピーンポーン


夕食の準備をしているとインターホンが鳴った。


「はーい。」


玄関の引き戸を開くとガスマスクの男性が立っていた。


「お疲れ様です。新村さん。」


「ごめんね、甘えてしまって。やっと最後の患者が帰ったんだ。」


新村さんは手を合わせて謝ってくれる。


「気にしないでください。どうぞ上がってください。」


俺は新村さんに上がってもらった。


「何だ寝てるのか?」


新村さんはため息をついた。


すると豆が新村さんに気づき起きる。


そして、新村さんを見ると再び寝出した。



「ふふっお茶入れますね。」



俺はお茶を注いだコップを2つ用意し、2人と一匹が寝ているすぐ近くのちゃぶ台に置いた。


新村さんはちゃぶ台の前に座り、お茶を飲む。


「あの猫、僕に警戒しないね。」



「はい、豆は基本子供以外は警戒しません。」


「え?逆じゃない?」


「豆は耳が聞こえないから子どもの甲高い声が嫌いみたいです。」


「そうなんだ。」



豆の拾った頃を思い出す。







    
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