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嫉妬の章
第21話 遅れてきた希望
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ソウルアーマーによって限界以上の速さにまで引き上げられた僕の一撃は空気を切り裂き、埃1つなかった床は見るも無残に破壊され、何かも分からない埃の霧が周囲に広がっていた。自画自賛みたいで恥ずかしいが、この攻撃を生身の人間に使えば致命傷は逃れられないだろう。それほどまでに自信があった。
「…やったな」
「誰をだ?」
僕は驚き過ぎて声が出なかった。なんとカトルは生きていたのだ。しかし、何故だ?確かにあれを避けられる身体能力なんてなかったはず…もしかして怠惰帝のアーティファクトか?イージスが僕の攻撃を自動で防御した?それとも何か別の…僕の頭の中でとんでもない数の原因があふれ出る。要するに混乱しているということだ。
「なんで防げたか分からないという顔だな?」
「だからどうした!」
「お前から奪ったこれ…こいつのおかげだよ」
「ウルフクロー…まさか!」
「そうだ、こいつの持つ野生の勘…第六感がなければ俺はここにいなかっただろう」
傷を作りたくなかったらウォーウルフには気を付けろ……ヘリオに教えられた言葉で、冒険者の常識にもなっている。奴らは危機察知能力が鋭く、攻撃がまともに当たらないという冒険者も多い。それがあだとなるとは…やっぱり少し遠出でもして違う魔物を魂縛化させとけばよかったか?いや、結局奪われていただけか。
「では、この攻撃は返させてもらおう」
カトルが持っている盾からビームのような光線が出る。咄嗟にスライムの盾を構えたが、勢いは止まらず、顔をかすめた。そう僕はビームをかすめただけだった。それなのに言いようがない痛み…気持ち悪さに襲われる。あれはただ攻撃を跳ね返すだけじゃなく、それの追加効果まで再現するとでもいうのか?しかし、こんな感じになるのか…魂術にかけた相手は気の毒だな…
「フハハハハ、どうだ?自分の攻撃は…」
「はぁ…はぁ…敵に同情するよ」
「同情か…まぁ、お前はこれからもっと味わうことになるがな!」
あれからどれくらい経っただろうか…ひび割れた床の上で僕は防戦一方の苦戦を強いられていた。なんせ攻撃すれば跳ね返され、何もせず時間だけ過ぎていけば能力を奪われるという徐々に不利になる戦況だ。しかし、カトルが持っているガメイラロッドにはクールタイムがあり、その間隔がどのくらいかを把握出来たのは不幸中の幸いだろう。そう思うしかこの戦いを続けられない。残りの魂縛石も少ない…早くサミエムたちが来てくれなきゃ時期に負ける。
「ガメイラロッド、奴が手にしているあの能力を奪え」
「くっ…ソウルリアクティブ!」
「余裕がなくなってきたじゃないか、あの強化魔法は使わないのか?」
「はは…持久戦に持ち込みたいからね」
「仲間を待っていると言いたいのか?残念だが来ないぞ」
「なんだと」
「この施設には兵舎があり、現在こちらの戦力は数千人に達している…その全てが諜報員が押し込められているあの部屋に向かわした」
「…こっちだって精鋭だ!数だけで負けるはずがない」
「希望を持つのはいいが、それだけでこの状況は変わらないぞ?」
ぐうの音も出なかった。確かにその通りだと思ってしまった。たとえサミエムたちが来たとしてもあの盾の突破法を考えなきゃ攻撃することさえ出来ない。しかし……しかし…その希望にすがるしか僕に勝機がないというのは明らかだ。
「さて、チェックメイトだ…ガメイラロッド、奴が」
カトルがとどめと言わんばかりに杖をこちらに向けたその時だった。この部屋の扉が豪快に破壊された。こんな開け方するのは……僕は嬉しくて泣いてしまいそうになりながらも、その姿を見続けた。
「灰崎、遅くなってすまん!」
「サミエム……みんな…」
「旦那、暗殺チーム全員が助けに来たぜ」
真っ暗な深夜のはずなのに彼らの後ろから後光が見えたのはきっと気のせいだろう。
「…やったな」
「誰をだ?」
僕は驚き過ぎて声が出なかった。なんとカトルは生きていたのだ。しかし、何故だ?確かにあれを避けられる身体能力なんてなかったはず…もしかして怠惰帝のアーティファクトか?イージスが僕の攻撃を自動で防御した?それとも何か別の…僕の頭の中でとんでもない数の原因があふれ出る。要するに混乱しているということだ。
「なんで防げたか分からないという顔だな?」
「だからどうした!」
「お前から奪ったこれ…こいつのおかげだよ」
「ウルフクロー…まさか!」
「そうだ、こいつの持つ野生の勘…第六感がなければ俺はここにいなかっただろう」
傷を作りたくなかったらウォーウルフには気を付けろ……ヘリオに教えられた言葉で、冒険者の常識にもなっている。奴らは危機察知能力が鋭く、攻撃がまともに当たらないという冒険者も多い。それがあだとなるとは…やっぱり少し遠出でもして違う魔物を魂縛化させとけばよかったか?いや、結局奪われていただけか。
「では、この攻撃は返させてもらおう」
カトルが持っている盾からビームのような光線が出る。咄嗟にスライムの盾を構えたが、勢いは止まらず、顔をかすめた。そう僕はビームをかすめただけだった。それなのに言いようがない痛み…気持ち悪さに襲われる。あれはただ攻撃を跳ね返すだけじゃなく、それの追加効果まで再現するとでもいうのか?しかし、こんな感じになるのか…魂術にかけた相手は気の毒だな…
「フハハハハ、どうだ?自分の攻撃は…」
「はぁ…はぁ…敵に同情するよ」
「同情か…まぁ、お前はこれからもっと味わうことになるがな!」
あれからどれくらい経っただろうか…ひび割れた床の上で僕は防戦一方の苦戦を強いられていた。なんせ攻撃すれば跳ね返され、何もせず時間だけ過ぎていけば能力を奪われるという徐々に不利になる戦況だ。しかし、カトルが持っているガメイラロッドにはクールタイムがあり、その間隔がどのくらいかを把握出来たのは不幸中の幸いだろう。そう思うしかこの戦いを続けられない。残りの魂縛石も少ない…早くサミエムたちが来てくれなきゃ時期に負ける。
「ガメイラロッド、奴が手にしているあの能力を奪え」
「くっ…ソウルリアクティブ!」
「余裕がなくなってきたじゃないか、あの強化魔法は使わないのか?」
「はは…持久戦に持ち込みたいからね」
「仲間を待っていると言いたいのか?残念だが来ないぞ」
「なんだと」
「この施設には兵舎があり、現在こちらの戦力は数千人に達している…その全てが諜報員が押し込められているあの部屋に向かわした」
「…こっちだって精鋭だ!数だけで負けるはずがない」
「希望を持つのはいいが、それだけでこの状況は変わらないぞ?」
ぐうの音も出なかった。確かにその通りだと思ってしまった。たとえサミエムたちが来たとしてもあの盾の突破法を考えなきゃ攻撃することさえ出来ない。しかし……しかし…その希望にすがるしか僕に勝機がないというのは明らかだ。
「さて、チェックメイトだ…ガメイラロッド、奴が」
カトルがとどめと言わんばかりに杖をこちらに向けたその時だった。この部屋の扉が豪快に破壊された。こんな開け方するのは……僕は嬉しくて泣いてしまいそうになりながらも、その姿を見続けた。
「灰崎、遅くなってすまん!」
「サミエム……みんな…」
「旦那、暗殺チーム全員が助けに来たぜ」
真っ暗な深夜のはずなのに彼らの後ろから後光が見えたのはきっと気のせいだろう。
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