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暴食の章
第34話 暴食の果てに
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「う…うぅ……ここは?」
目が覚めると一面純白の世界に倒れ込んでいた。確か僕はゼクスに食われて……
「ソウルリンク…そうか!」
おぼろげな記憶をたどりに状況を把握していく。まずは最初に立てた作戦は失敗したようで成功したということが分かる。ここは記憶が確かなら蛇の腹の中であるのにこれほどまでに何もない。色も、音も、建物の残骸も、食い荒らしたウェンデゴの姿もない。つまりこの駄々広い一面ホワイトカラーの空間は精神世界だと言えるだろう。もう1つ考えられるのはここが死後の世界である……という何とも受け入れがたい事実が広がっているのかもしれない。この際死んだという仮定は置いといて、良かった方に転がったとしよう。
「問題はここが暴食帝のどの記憶を再現しているのか……だな」
これほどまでに何もないと自分の中で考えているのか、口に出して考えているのか混同してしまう。現に先ほど言葉で思考をつなぎ合わせるというよく分からないことに……うん、深く考えすぎるのはよそう。どのみちゼクスのヨルムンガンド形態は殺さなければ止まらない暴走状態なのだから。
「……か…あ」
乾ききった弱々しい少年の声がどこからか聞こえる。どこだ…?耳を澄ませて目をつむる。全神経を聞くことに割いて集中する。やっぱりここはゼクスの精神世界だった!死後の世界なんてものじゃない、何とか帰れるかもしれない!
「誰……助けて…」
「あっちか!」
急いで少年の元へ駆け出す。ほとんど死にかけの相手なら何のことはない。帰れるのだ、またあの世界に。
「あ…あ…」
「はぁ…はぁ…見つけたぞ、ゼクス!」
ほとんど声など出てはいなかった。しぼんだ風船が絶えず空気を漏らすような音を立てて、虚ろな顔は誰に向けるでもなくただ真っ白な空を眺めていた………なんてやりにくい相手なんだ。良心の呵責で自身の中での論議は白熱し、何も出来ずにいた。だって、情けをかけようとしている少年は殺すべき相手なのだから。僕は猛毒の入ったカプセルを片手に空を見上げる。
「………よし、覚悟は出来た!悪いがこれを…うっ……」
唐突な頭痛に苛まれ、地面に倒れ込んでしまった。なんだこれは…記憶なのだろうか?ひもじい少年の記憶…もしやこれはゼクスの記憶なのか?しかし、この世界とはかけ離れた景色だ。なぜこんな記憶が…?
「あ、あれ…?涙が」
こすってもこすってもずっと出てくる。溢れ出して止まらないようだ。あぁ…これが彼の気持ちだったんだな。こんな絶望をこの若さで体験させられたのか。
「僕はどうすればいいんだ…」
心の底から答えを渇望した。だが、それは残酷なことに誰かから与えられるものじゃなく自分で決断しなければならないものだ……そんなことは分かっている!分かっているはずなんだ…だから、これほどまでにしんどいんじゃないか!無力な自分に嫌気がさして拳を足にぶつける……何か違和感がある。
「…はは、そうか……こんなものが役に立つとはな」
乾いた笑いと共に立ち上がり彼の元へ歩みを進める。そうだ…別に倒す必要なんてなかったじゃないか。僕はそれを薄い唇に押し込む。
「せめて君の最後が幸せなものになって欲しい…」
カランという子気味良い音が辺りに響く。虚ろな目が段々と細くなっていき、口角がそれに伴って上がっていく。感情の色を見るまでもないくらい幸せに満ちていた。
「…ただ幸せな夢を見ながらおやすみ、ゼクス……ソウルテイク」
白の世界に光が満ちあふれていき崩壊が始まる。魂の同化が完了したのだ。あの化け物とも思えたデカすぎる身体も今となっては悲劇的とも思える。彼が幸せに暮らせる世界を整えるため……僕はまだ戦わなければならない。
目が覚めると一面純白の世界に倒れ込んでいた。確か僕はゼクスに食われて……
「ソウルリンク…そうか!」
おぼろげな記憶をたどりに状況を把握していく。まずは最初に立てた作戦は失敗したようで成功したということが分かる。ここは記憶が確かなら蛇の腹の中であるのにこれほどまでに何もない。色も、音も、建物の残骸も、食い荒らしたウェンデゴの姿もない。つまりこの駄々広い一面ホワイトカラーの空間は精神世界だと言えるだろう。もう1つ考えられるのはここが死後の世界である……という何とも受け入れがたい事実が広がっているのかもしれない。この際死んだという仮定は置いといて、良かった方に転がったとしよう。
「問題はここが暴食帝のどの記憶を再現しているのか……だな」
これほどまでに何もないと自分の中で考えているのか、口に出して考えているのか混同してしまう。現に先ほど言葉で思考をつなぎ合わせるというよく分からないことに……うん、深く考えすぎるのはよそう。どのみちゼクスのヨルムンガンド形態は殺さなければ止まらない暴走状態なのだから。
「……か…あ」
乾ききった弱々しい少年の声がどこからか聞こえる。どこだ…?耳を澄ませて目をつむる。全神経を聞くことに割いて集中する。やっぱりここはゼクスの精神世界だった!死後の世界なんてものじゃない、何とか帰れるかもしれない!
「誰……助けて…」
「あっちか!」
急いで少年の元へ駆け出す。ほとんど死にかけの相手なら何のことはない。帰れるのだ、またあの世界に。
「あ…あ…」
「はぁ…はぁ…見つけたぞ、ゼクス!」
ほとんど声など出てはいなかった。しぼんだ風船が絶えず空気を漏らすような音を立てて、虚ろな顔は誰に向けるでもなくただ真っ白な空を眺めていた………なんてやりにくい相手なんだ。良心の呵責で自身の中での論議は白熱し、何も出来ずにいた。だって、情けをかけようとしている少年は殺すべき相手なのだから。僕は猛毒の入ったカプセルを片手に空を見上げる。
「………よし、覚悟は出来た!悪いがこれを…うっ……」
唐突な頭痛に苛まれ、地面に倒れ込んでしまった。なんだこれは…記憶なのだろうか?ひもじい少年の記憶…もしやこれはゼクスの記憶なのか?しかし、この世界とはかけ離れた景色だ。なぜこんな記憶が…?
「あ、あれ…?涙が」
こすってもこすってもずっと出てくる。溢れ出して止まらないようだ。あぁ…これが彼の気持ちだったんだな。こんな絶望をこの若さで体験させられたのか。
「僕はどうすればいいんだ…」
心の底から答えを渇望した。だが、それは残酷なことに誰かから与えられるものじゃなく自分で決断しなければならないものだ……そんなことは分かっている!分かっているはずなんだ…だから、これほどまでにしんどいんじゃないか!無力な自分に嫌気がさして拳を足にぶつける……何か違和感がある。
「…はは、そうか……こんなものが役に立つとはな」
乾いた笑いと共に立ち上がり彼の元へ歩みを進める。そうだ…別に倒す必要なんてなかったじゃないか。僕はそれを薄い唇に押し込む。
「せめて君の最後が幸せなものになって欲しい…」
カランという子気味良い音が辺りに響く。虚ろな目が段々と細くなっていき、口角がそれに伴って上がっていく。感情の色を見るまでもないくらい幸せに満ちていた。
「…ただ幸せな夢を見ながらおやすみ、ゼクス……ソウルテイク」
白の世界に光が満ちあふれていき崩壊が始まる。魂の同化が完了したのだ。あの化け物とも思えたデカすぎる身体も今となっては悲劇的とも思える。彼が幸せに暮らせる世界を整えるため……僕はまだ戦わなければならない。
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