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暴食の章
第20話 非常識な訪問者
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たらふく食べて、いいベッドで寝て、すごい役回りまで貰って…もうこのままでもいいかも知れないなぁと感じていた夜明け前のこと
「お……おい…おい、起きろ」
「…?」
「寝ぼけているのか?」
「そりゃこんな時間ですよ……?」
「まぁいい、さっさと支度をしろ…仕事だ」
「は、はぁ?何をするって言うんですか」
「見られちゃ不味いことだよ」
ライゼンは黒のローブを身にまといながら薄ら笑いを浮かべている。手渡された彼と同じような服を羽織るよう急かす。寝起きだし、そもそもこんな時間に何の約束も無しに訪れるなんて失礼だろ!むくれている僕に対して、謝罪もせずにへらへらしているライゼンが唐突に指をならす。すると、場所が一変した。豪華なホテルの一室が唐突に廃れた廃墟のような建物が立ち並ぶ道へと。
「そう驚くな、こっちだ」
「ただの壁なのでは?」
「……見られちゃ不味いものをそのまま隠す馬鹿がどこにいる」
「隠し扉があるならさっさと開けるなりしてくださいよ、全く…」
「少しからかっただけだ、ここをこうして……開いたぞ」
何の変哲もない壁が砂ぼこりをあげながら開く。一体何をしようと言うのだろうか?確実にろくなことではないと感じるが…逃げ場はもうないし、やるだけやってみるしかない。僕はそう決意し、暗い扉の奥へと進んでいった。
おかしい……一体どれくらい潜っただろうか…かれこれ数十分はこの暗くてジメジメした階段を降りている。終着点はあるのだろうか?ライゼンがこんな場所に信用していない僕をなぜ招き入れたんだ?
「ひょっとして罠だったのでは……」
「気が付くのに少しかかったな、まぁ及第点くらいはやるさ」
「やっぱり!」
ガチャという機械音がなり、今まで歩いていた階段は急な坂道に変わった。滑り落ちるように坂を下っていくと、前方に何やら光が見える。出口だ…!そう直感した僕は少し安堵した。勢いよく出口に敷いてあるクッションに尻をぶつけ、苛立ちながら周囲を見渡す。見知らぬ機械や壊れかけの鉄格子、山積みの資料にくしゃくしゃに丸めた紙がそこらへんに散乱している。
「研究所……?」
「あぁ、そうだ」
「なぜこんな重要そうな場所に僕を?」
「状況に応じた対応と嘘を上手くつく技術、最低限は事実を誤魔化す能力があると判断したからだ」
「は、はぁ」
「ここで私の実験を手伝ってもらう、まずは…………」
そこからは実験とは名ばかりの肉体労働が始まった。魔法の術式が正常に作動するかの記録を始めとした雑用から、作り出された機械との戦闘をさせられたり……はたまた、呪文の実験台までさせられた。まぁこれは人体には全く影響はないのだが、それにしても横暴な賢者もいたものだ。
「よし、今日はここまでにする」
「や、やっと終わった…」
「明日もあるんだ、これでへばってしまっては話にならん」
「そんな…あっ、僕の友人も連れてきましょう!」
「ダメだ」
「なんでですか!」
「あいつはお前と違って正直で嘘が下手だからな、仲間なら分かってるんじゃないか?」
「うっ…確かに」
「分かったなら明日に備えていろ、行くんだろ?あいつの研究所に」
「…えぇ、あんまりいい記憶はないですが」
「……私もだよ、では君の宿に転移させるぞ」
来た時のように指をならすと、元居た場所に戻っていた。驚くことにあれほど実験していたのにも関わらず、戻った時の時刻は彼が訪れた頃とほぼ同じであった。就寝時間が用意されていると喜ぶべきか非常識だと怒るべきか…それはともかく今は寝るとしよう。明日は精神的に削られるかもしれない…何せあの非道な研究をしていた元宿敵、クラウソラスの研究所へ行くのだから。
「お……おい…おい、起きろ」
「…?」
「寝ぼけているのか?」
「そりゃこんな時間ですよ……?」
「まぁいい、さっさと支度をしろ…仕事だ」
「は、はぁ?何をするって言うんですか」
「見られちゃ不味いことだよ」
ライゼンは黒のローブを身にまといながら薄ら笑いを浮かべている。手渡された彼と同じような服を羽織るよう急かす。寝起きだし、そもそもこんな時間に何の約束も無しに訪れるなんて失礼だろ!むくれている僕に対して、謝罪もせずにへらへらしているライゼンが唐突に指をならす。すると、場所が一変した。豪華なホテルの一室が唐突に廃れた廃墟のような建物が立ち並ぶ道へと。
「そう驚くな、こっちだ」
「ただの壁なのでは?」
「……見られちゃ不味いものをそのまま隠す馬鹿がどこにいる」
「隠し扉があるならさっさと開けるなりしてくださいよ、全く…」
「少しからかっただけだ、ここをこうして……開いたぞ」
何の変哲もない壁が砂ぼこりをあげながら開く。一体何をしようと言うのだろうか?確実にろくなことではないと感じるが…逃げ場はもうないし、やるだけやってみるしかない。僕はそう決意し、暗い扉の奥へと進んでいった。
おかしい……一体どれくらい潜っただろうか…かれこれ数十分はこの暗くてジメジメした階段を降りている。終着点はあるのだろうか?ライゼンがこんな場所に信用していない僕をなぜ招き入れたんだ?
「ひょっとして罠だったのでは……」
「気が付くのに少しかかったな、まぁ及第点くらいはやるさ」
「やっぱり!」
ガチャという機械音がなり、今まで歩いていた階段は急な坂道に変わった。滑り落ちるように坂を下っていくと、前方に何やら光が見える。出口だ…!そう直感した僕は少し安堵した。勢いよく出口に敷いてあるクッションに尻をぶつけ、苛立ちながら周囲を見渡す。見知らぬ機械や壊れかけの鉄格子、山積みの資料にくしゃくしゃに丸めた紙がそこらへんに散乱している。
「研究所……?」
「あぁ、そうだ」
「なぜこんな重要そうな場所に僕を?」
「状況に応じた対応と嘘を上手くつく技術、最低限は事実を誤魔化す能力があると判断したからだ」
「は、はぁ」
「ここで私の実験を手伝ってもらう、まずは…………」
そこからは実験とは名ばかりの肉体労働が始まった。魔法の術式が正常に作動するかの記録を始めとした雑用から、作り出された機械との戦闘をさせられたり……はたまた、呪文の実験台までさせられた。まぁこれは人体には全く影響はないのだが、それにしても横暴な賢者もいたものだ。
「よし、今日はここまでにする」
「や、やっと終わった…」
「明日もあるんだ、これでへばってしまっては話にならん」
「そんな…あっ、僕の友人も連れてきましょう!」
「ダメだ」
「なんでですか!」
「あいつはお前と違って正直で嘘が下手だからな、仲間なら分かってるんじゃないか?」
「うっ…確かに」
「分かったなら明日に備えていろ、行くんだろ?あいつの研究所に」
「…えぇ、あんまりいい記憶はないですが」
「……私もだよ、では君の宿に転移させるぞ」
来た時のように指をならすと、元居た場所に戻っていた。驚くことにあれほど実験していたのにも関わらず、戻った時の時刻は彼が訪れた頃とほぼ同じであった。就寝時間が用意されていると喜ぶべきか非常識だと怒るべきか…それはともかく今は寝るとしよう。明日は精神的に削られるかもしれない…何せあの非道な研究をしていた元宿敵、クラウソラスの研究所へ行くのだから。
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