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序章

第17話 サミエムの決断

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 要注意人物の情報を得たはいいが、ずっと外にいるって言うのもなぁ‥‥アステリアに戻るとしてもどれくらいかかるか分からないし、そもそも荷物置いてきたしなぁ‥‥うーん、まぁ会っても関わらなければいいなら戻るか。そう思い、僕は屋敷の方に歩き出すと、アリフィカさんに呼び止められる。

(ちょっと待って!)

「どうしたんです?」

(あんたどうする気なの?まさか、あの坊ちゃんの縁談をぶち壊す気じゃないでしょうね?)
 
「そんなつもりはありませんよ、ただ僕はサミエムの決断を待つだけです」

(まぁいいわ、暴食帝の幹部を怒らせないように気をつけなさいよ?今ぶつかれば必ず負けるわ)

「分かりました、気を付けまーす」

(はぁ‥‥なんか主人公気質なのよねぇ、まぁいいわ!頑張りなさいな!)



 屋敷の門に着くと、豪勢な馬車が数台止まっていた。多分あれが幹部の馬車なのだろうなぁ。しかし、やたら豪勢だな、何金貨分の価値なんだ?おっと、じろじろ見ているとまた切りかかられるかもしれない。さっさと部屋に行くかな‥‥

「おい、私の馬車に何か用かね?」

「ふぇ?!いつの間に‥‥じゃなかった、すみません」

「構わない、別に見られて減るものではない、それよりも貴様の素性の方が問題だ、何ものだ?」

「この屋敷の客人です」

「‥‥嘘ではないな、奇遇だな青年、私も客人なのだ」

「へぇ、そうなんですね、じゃあ僕はこれで‥‥」

「待て」

「はい?」

「何故そう焦っている?」

「別に焦ってないですよ、ははは‥‥」

「私に嘘はつかない方がいいぞ、無駄だからな」

「‥‥先ほど襲われかけましてね、それで少し焦っているというか落ち着きがないんですよ」

「ほう‥‥ふむ、嘘ではないようだな」

「そんなことがあったから部屋で休もうかなと思いましてね、もういいでしょうか?」

「あぁ‥‥構わん」

 僕は幹部らしき男に一礼をして、そそくさと屋敷の中に入った。



 ほっと一息つき、階段をゆっくり上がる。しかし、まさかあんなに早く会うなんてなぁ、思っていたよりも自分はトラブルメーカーなのか?はぁ‥‥アリフィカさんのこともあんまり言えなくなりそうだ。

「客人、聞いているのか?客人!」

「あっ、はい?」

「サミエムを見なかったか?」

「見てないですよ?どうかしたのですか?」

「部屋にいないのだ、もうお相手は来ていらっしゃるのに‥‥よもや連れ出したのではないだろうな?」

「違いますよ!」

「しかし‥‥」

「お父様!」

「おぉ、逃げ出したのかと思ったぞ、どこに行っていたのだ?」

「少し決意を決めに‥‥」

「はは、そうかそうか、まぁお前も結婚するのだからそれくらいは許そう」

「いいえ、お父様‥‥俺は縁談を断ります!」

「何だと‥‥貴様」

 言葉を断ち切るように扉が勢いよく開く。先ほどの男が苛立ちの感情の色を垂れ流しながらこちらに近づき、怒鳴る。

「いつまで待たせる気だ、ゴルディム!」

「すみません、クラウソラス殿‥‥今こちらの準備が整いましたので、どうぞどうぞ」

「全く‥‥」

「クラウソラス殿!」

「うん?お前が娘の相手か?確か‥‥サミエムだったかな、よろしくな」

「遠路はるばるお疲れ様でございますが、私は!」

「おい、やめろ!へへ、すみませんねぇ‥‥元気が有り余っているようで、お恥ずかしい限りです」

「ゴルディム、その手をどけろ‥‥そいつが何を言おうとしたのかが気になる」

「ですが!」

「どけろと言っているのだ」

「承知いたしました‥‥」

「ほら、話せるようになったぞ?」

「ありがとうございます、私は縁談を断ろうと考えております!無礼を承知の上で、謝りいたしますので、どうか‥‥ご慈悲を!」

「ほう‥‥サミエム、帝都からこの辺境に来るまでどれだけの危険があると思う?」

「‥‥」

「魔物や盗賊が何度襲撃してきたか、分かるか?そんな危険をわざわざ娘に味わせたのだぞ、この縁談のためにだ」

「お待ちください、クラウソラス様!」

「もうよい‥‥サミエム、この償いをしてもらおう‥‥お前の魂を頂く」

「そうはさせるか!メンタルダウン!」

「うぐっ、貴様も魂術師なのか」

「大丈夫か、サミエム!」

「ありがとう、灰崎‥‥だが、どうする?あいつに勝てる気はしないんだけど?」

「そうだな、とりあえず逃げるしか‥‥」

「逃がすと思うのか‥‥これほどまで腹立たしいことはない、恩を仇で返すというレベルでは済ませられぬ!お前ら2人は必ず殺す!」

「うへぇ、カンカンだぜ?」

「ここで戦わざるを得ないのか‥‥サミエム、やれるかい?」

「あぁ‥‥なんとかやるしかない」

「遅いぞ、若造ども!くらえ、ソウルロック!」

「うわっ、なんだこれ‥‥動けない」

「さて、じわじわとなぶり殺しにしてやろう」

 クラウソラスはゆっくりと勝利を確信した様子で近づいてくる。どうする‥‥どうする‥‥アリフィカさんのシールドはこの家じゃ使えないし、レイサムさんは護衛でいないし、僕たちは動けない!そんなことを考えている内に、クラウソラスは、槍状になっている杖を振りかざし、サミエムに向かって突き刺す。僕は怖くなり、目をそらす。次の瞬間、血しぶきが頬に当たり、涙のように流れ落ちた。
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