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序章

第13話 アレクシエル襲来

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 歓声が落ち着き一段落した頃、サミエムは静かに舞台から降り、僕に頭を下げた。自分勝手にやった謝罪だろうか?まぁ、お金自体には困っていないからいいが‥‥

「サミエム‥‥頭を上げてくれよ、僕は別に不満になんて思ってないよ」

「ありがとう、灰崎‥‥さて、ステータス更新だろ?時間取らせて悪かった、行こうぜ!」

 彼が受付に向かって走り出す。それを追いかけるように僕もついていった。



「冒険者ギルド受付です、ご用件はなんでしょうか?」

「ステータス更新をお願いします」

「かしこまりました!少々お待ちください‥‥おめでとうございます!魂術師が12レベルとなりましたよ‥‥あら?スキルポイントが多く溜まっていますね‥‥これならダブルライセンスが出来そうですよ」

「ダブルライセンス‥‥?」

「はい、基本的に最初についた職業を変えることは出来ませんが、それは絶対ではありません。実際には2つほど変える方法があります。1つは、職業進化でございます。基本職からランクアップさせる時の方法でございます。しかし、灰崎様は魂術師でございますので進化先がありません」

「2つ目の方法であるダブルライセンスは、上級職のみに適用されるものです。こちらは、大量のスキルポイントを消費して同ランク以下の同系統職業を追加するということが出来ます。追加という形なため、職業進化のように元の職業が使えないことはありません」

「なるほど‥‥うーん、スキルを取るか職業を取るかですか‥‥少し考えても?」

「どうぞ!」

「ありがとうございます」

 さて、どうしたものか‥‥上の段階にあるスキルを取れば戦闘の選択肢は増えるのか?基本的に魂縛化が重要になってくるし、それを売って生計を立てる予定だからなぁ‥‥もし、職業を取れば魂術師以外の戦い方も出来るし、選択肢も増える‥‥

「よし、決めました!ダブルライセンスをします」

「かしこまりました、ではリストをお持ちいたしますので少々お待ちください‥‥」

 多分これはいい選択だと思うけど、大丈夫かな?そもそも魂術師と相性が良い職業を見つけられるかな?あれ‥‥スキルポイントって共通して使えるものなのかな?帰ってきたら聞いてみよう。

「おーい、灰崎!」

「あれ、サミエムさん?」

「おっ、まだやってたのか、俺はもう終わらせたぜ!」

「早いですね」

「おうよ、MPとか関係ないから名前がかっこいい奴選ぶんだよ、はは!」

「ははは、そんな選び方して後悔したことってないの?」

「なくはない!」

「えぇ‥‥」

「お待たせいたしました!こちらがリストでございます」

「え、なんで職業リストなんだよ?」

「あぁ、ダブルライセンスしたからだよ」

「ダブルライセンス‥‥って、お前何レベルになったんだ?」

「えっと、12だったかな?」

「俺はまだ8レベルなのに‥‥ぐぬぬ」

「まぁ元々レベル差があったから仕方がないよ」

「いいぜ、それでこそ抜かし甲斐があるってもんだ!」

 よし、魔術系の職業‥‥魔術‥‥あっ、これっていいかも‥‥でも、これもいいなぁ。あぁ、迷う!すごく迷う!あっ、決める前にあれ聞いとくか。

「すみません、スキルポイントについて聞きたいことが‥‥」

「はい、なんでしょうか?」

「ダブルライセンスで取った職業で得たスキルポイントって他の職業でも使えますか?」

「ええ、使えますよ。しかし、職業レベルは1からじゃなく元の職業を参照します。だから、ダブルライセンスでスキルポイントを大量獲得とはいきません」

「なるほど、ありがとうございます」

「それで決まったの、灰崎」

「もう少し待ってくれよ‥‥あっ、これだ‥‥この職業が合いそうなだ!」

「やっと決まりそうだなぁ‥‥待ちわびたぜぇ」

「すみません、この幻術師を取りたいです」

「はい、分かりました!少々お待ちください‥‥はい、これでダブルライセンス完了です!」

「ありがとうございます‥‥お待たせ、サミエム」

「おう、じゃあ今日はどこ行こうか?平原じゃレベル上がりにくそうだ‥‥し‥‥え?」

 彼が唐突に口ごもる。どうやら驚きと恐怖が入り混じった感情の色をしているから‥‥なんだろう?分かんないなぁ‥‥うん?前にいる人がずっとこっちを見てる?なんだろう‥‥とりあえずお金持ちというのは分かる。見るからに品質の良い鎧だ‥‥この辺じゃ扱ってないだろうな。

「ようやく見つけたぞ、サミエム」

「なんでこんなところにいるんだよ、兄さん!」

「兄さん?」

「そっちの彼は誰だ?」

「こいつは、ただの‥‥知り合いだよ」

「そうか、なら都合が良い、帰るぞ」

「今更なんだよ‥‥あの家には帰らないからな!」

「そういうと思った、だから力づくでも帰らせる」

「‥‥灰崎、絶対に手を出すなよ」

「別に2人でも構わない、その時は彼も連れていくことになるが」

「うるさい、俺は帰らない!」

「駄々をこねているだけで隙だらけだ」

「うっ‥‥」

「サミエム!」

「さぁ‥‥君はどうする?個人的には弟の恩人に手荒な真似をしたくないから、大人しくして欲しいが」

「‥‥悪いですが、彼には僕も恩がある‥‥まぁ、お相子って感じだけど‥‥」

「お喋りが過ぎるようだな、はぁ!」

「うぐっ‥‥」

 頭に強い衝撃が走り、目の前が段々と暗くなる。あぁ‥‥これが、気をうしな‥‥そこで僕の記憶は終わった。
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