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序章

第9話 僻みは考えを曇らせる

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「お待たせいたしました!こちらがスキルリストでございます」

「ありがとうございます」

 そういえば、スキル目的だった。目の前で色々なことが起こっていたから忘れていた。というか、いつの間にか周りの人たちはどこかにいないし、まぁいいか。えーと‥‥ソウルブレイクとメンタルポリューションだったかな?どれどれ‥‥まずはソウルブレイクは魂縛化耐性を無視した魂破壊呪文?なるほど、概ね想定通りといった所だな。それで、メンタルポリューションは、魂縛化耐性ダウンか‥‥耐性対策ならどちらかでいいかな‥‥

(待って!)

「アリフィカさん?」

(装備によっては、デバフ耐性なんてのもあるの!だから、両方取るべきよ)

「でも‥‥そんな装備って高いイメージが‥‥」

(あなたが持っている魔法の鎧あるでしょ?あれがいい例よ、魔法耐性とデバフ耐性を1段階上がるの。だから、魂縛化出来なかったでしょ?)

「‥‥」

(な、なによ?)

「いや、そこまで知ってるなら教えてくれても‥‥」

(だ、だってあの時は仕方ないじゃない!あと、私だって何でも知ってる訳じゃないからちゃんと調べてるのよ?)

「まぁ‥‥その辺は感謝してますよ」

(ふふ、もっと感謝してもいいわよ?)

「さて、スキルを‥‥」

(むー、返答くらいくれてもいいじゃないの!)

 むくれてる彼女を尻目にスキルリストに目をやる。とりあえずは彼女のオススメ通り2つとも取るとして、他はどうしようか‥‥お、メンタルダウン?気絶させる技で消費MPが少ない‥‥これは、もしもの時使えそうだな。よし‥‥

「すみません、ソウルブレイクとメンタルポリューション、あとはメンタルダウンを習得したいです」

「かしこまりました。では、少々お待ちください‥‥はい、これでスキル習得いたしました!」

「ありがとうございます、あっ、この鎧はそちらに提出するのですか?」

「いえ、そちらは戦利品扱いなので灰崎様がお好きにお使いください」

「なるほど、ありがとうございます」

 防具か‥‥これはどうしようかな?装備してもいいけどちゃんと動ける気がしないなぁ、とりあえずは着てみて‥‥うーん、これは‥‥動くと音が鳴っちゃうから今までの作戦がしにくいなぁ。今日のところは宿にでも置いといて、さっさと魂縛石を集めにいくか!



 レベルが上がったからかMPが多くなり、魂縛石もより多く手に入るようになったからか残りの石を今日で集めきることが出来た。もちろん、植物系モンスターとゴブリンの魂縛石である。そして、僕は町に帰り、ヘリオさんの店へ向かっていた。今日でこの生活も終わりかな?でも、安定した仕入れ先がどうのこうのって言ってたしな‥‥厄介なことにならないといいけど‥‥

「おい、店前で突っ立ってないで早く入ってきたらどうだ?」

「ああ、すみません」

「全く‥‥旦那も病み上がりで無茶するなぁ」

「はは、ゆっくり休めましたよ」

「そうか‥‥じゃあ今日も魂縛石か?」

「はい、それと今日で目標達成ですよ」

「ほう、見させてもらおう‥‥ふむ、これは少し時間がかかりそうだな」

「構いませんよ」

「おう、悪いな‥‥そういえば旦那、例の集落のことなんだが」

「ああ、知ってますよ、壊されたんですよね?」

「中々耳が早いことで、それで潰した奴が貴族のアレクシエルの人間だそうで。聞くところによると、そのボンボンが旦那のライバル名乗ってるそうだな?」

「ええ、まぁそうですよ」

「なるほどな、それは少し不味いかもなぁ」

「どうしてです?」

「いいか、冒険者なんてものは大衆向け、いわば庶民だった奴が一攫千金を狙う奴が多い。つまりだ、元から持っている奴は妬ましく思われるんだよ、例えば、貴族とか」

「それで、今朝の出来事が‥‥」

「まぁそういうことだな、それに噂によれば落ちこぼれだろ?いいサンドバッグみたいなもんだろ、そんな奴は冒険者の野郎どもにはな」

「で、ですが、アレクシエル家は名門の貴族なんですよね?報復とか‥‥」

「アレクシエル家は名門だが、落ちこぼれを助けてやるほど有情な奴らじゃない、色々と異常だぜ?あいつら‥‥まぁ、あんまり関わりすぎねぇ方がいいぜ、旦那」

「‥‥分かりましたよ」

「よし、確認終了だ。お疲れさん、旦那。また頼むぜ」

「すみません、そろそろ別の場所に‥‥」

「そうか、冒険者だからな?そりゃ色々巡りたいとは思うよな、まぁいい、魂縛石も売りさばけるし、それ以外も‥‥さて、ほらよ、金貨だ。これで、依頼は完了だ」

 彼は何かをごまかすように金貨を渡す。それを何か聞くべきなのは分かっているが、彼が本当に不利になるようなことを言うと思えないから僕は聞きだせなかった。とりあえずは帰って、明日に色々物を買いそろえてから、次の町に行こう‥‥この町じゃメインの収入源は売れないから、早めに出たいなぁ。



 翌朝、ギルドショップに向かっていると、唐突に知らない人に呼び掛けられる。

「灰崎さん、ですよね?」

「はい、そうですが」

「よかった、アレクシエルのやつを煽っていたら、最近見つかったダンジョンに突入しまして‥‥生きて帰ってくるかどうか賭けませんか?」

「‥‥そのダンジョンって危険なんですか?」

「はは、分かりませんよ。だって、未発見だったんですし、まぁあいつが生きて帰って来られるようなモノじゃないってことだけは確かですよ」

「それはどこにあるんですか?」

「平原の奥にある森で見つかったとかなんとか‥‥って、どこ行くんすか?ちょっと!」

 僕は走り出していた。正義感とかではない、彼らが僻みでそのようなくずのような考えを持っていることに腹が立ったからだ‥‥こんな馬鹿馬鹿しいことは終わらせてやる。死なないでくれ、アレクシエルさん!
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