上 下
10 / 12
2巡目

第10話 説得成功?!

しおりを挟む
 私は混乱していた。お嬢様が転生者?それじゃまるで特異点があの女じゃなくて彼女本人みたいじゃない。あの神って、私が実家で会ったあいつのこと?情報が渋滞し過ぎて分からない。

「ともかくあなたはこれから敵よ!」

「待ってください!」

「…なによ」

「まだ混乱していてよく分かりませんが、なぜ敵と決めつけるんですか!」

「あの神はね…人のことを何とも思わない奴なのよ、正式な歴史だか何だかで協力しろって?冗談じゃないわ」

「しかし、あなたはこのままでは辺境の地に飛ばされて死んでしまうんですよ?これは悪いことでしょ…」

「私にとってあれは幸せなことだった!何よりこの国が…あの人が悲しまずに済むのは」

「何が待ってるのですか?」

「この国が滅ぶのよ、代えがたいような因縁のせいでね」

「この国が…?」

「えぇ、だから私は数周回って王子の好みにあった女性を探して、ようやく彼女を見つけたの」

「あの女はアリア様が…」

「もういいかしら?私の分の教科書取りに行かないと…あなたも邪魔しないでね」

 数周…彼女は数周も1人でこの事態になるように動いていたのね。優しい彼女が自身の幸せよりも国民の幸せのために犠牲になって…なんなら自分が悪役に陥れてでも守り抜きたかったものを私が奪っていい訳がない。だけど……だけど…だけど!

「いい訳ないだろ!!」

「…え?」

「犠牲になればそれでOKだって?なんでそんなの望んでいるとか嘘つくのよ!」

「嘘なんかじゃ…」

「じゃあなんで王子と過ごしたあの日々をあんなに楽しそうに語っていたのよ!あれも嘘だって言うの?」

「だ、だから」

「それに王子の気持ちはどうなるの?何周回ったのか分からないけど、どうやっても告白してきたからあんな手を使ったのでしょ?」

「仕方ないじゃない!どうすることも出来ないのよ…」

「…私がどうにかしてみせます」

「無理よ…相手は国家なのよ?」

「何とかしてみせます!だから…だから、あなたの幸せを諦めないでください」

「…私だって……諦めたくなんてなかったわよ!」

 それで口火を切ったように彼女の透き通った目から涙がこぼれ落ちる。我が子のように愛おしいその姿を私は静かに…でも、強く抱きしめた。誰だって幸せになりたくないなんて思わない。彼女のすすり泣く声でそう感じた。しかし、これからが大変である。国との外交問題を解決させるという大役を私と彼女がしなければならない…時間ループメイドと転生悪役令嬢の生存ルート模索が始まるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

乙女ゲームの悪役令嬢は生れかわる

レラン
恋愛
 前世でプレーした。乙女ゲーム内に召喚転生させられた主人公。  すでに危機的状況の悪役令嬢に転生してしまい、ゲームに関わらないようにしていると、まさかのチート発覚!?  私は平穏な暮らしを求めただけだっだのに‥‥ふふふ‥‥‥チートがあるなら最大限活用してやる!!  そう意気込みのやりたい放題の、元悪役令嬢の日常。 ⚠︎語彙力崩壊してます⚠︎ ⚠︎誤字多発です⚠︎ ⚠︎話の内容が薄っぺらです⚠︎ ⚠︎ざまぁは、結構後になってしまいます⚠︎

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

処理中です...