上 下
14 / 16

究極の一枚

しおりを挟む
 山頂で朝焼けを見ながら、写真家の高橋真一郎は、自分で沸かしたコーヒーを楽しんでいた。彼はこの場所で夜通し待ち続け、ついに完璧な写真をおさめたのだ。

「これぞ、究極の一杯だ…」真一郎がほくそ笑んでいたその時、突然背後から声がした。

「美味しそうね、一口ちょうだい?」という声に驚き、真一郎はコーヒーカップを少し傾けてしまった。

「ちょ、ちょっと!誰?」と振り返ると、そこには風に髪をなびかせる若い女性が立っていた。彼女は軽装で、しかもハイヒールを履いていた。

「私、木村梓。あなたが有名な山岳写真家の高橋真一郎さんだって聞いてね。会いに来たの」と梓がにっこり笑いながら言った。

「ええっ、ここまで?特別な装備もなしに?」真一郎は驚愕しながらも、どこか彼女の無邪気さに心を引かれた。

「山を登るのは初めてじゃないわ。でも、こんな美しい朝焼けを見るのは初めて。それに、あなたの写真みたいになる瞬間をこの目で見たかったの」

「はは、それにしてもハイヒールはないだろう…」と真一郎が苦笑いする。

「これ、実はお守りなの。失敗しないようにって、母がくれたの。」

「へえ・・・」

 梓はコーヒーを指差し、「これがあなたの写真が素晴らしい秘訣かしら?」

 真一郎は少し考え、「ああ、これはね、山を登った後のご褒美なんだ。でも、おかげで君に会えたわけだし、一緒に飲もうか」と言い、もう一つカップを取り出した。

 二人は山の頂でコーヒーを飲みながら、写真のこと、登山の魅力、そして日常の小さな楽しみについて語り合った。

 朝焼けの光は、彼の会話を優しく照らした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜下着編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショートつめ合わせ♡

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おっぱい編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート詰め合わせ♡

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜アソコ編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとエッチなショートショートつめあわせ♡

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜肛門編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショートの詰め合わせ♡

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おしっこ編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショートの詰め合わせ♡

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...