♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おしっこ編〜♡

♡どこか卑猥な水の音♡

　河川敷にグラウンドがある。放課後、小学生達が集まり少年野球をしている。

「この握りのまま振りきんねん」

「えー、どーゆーこと？」

「手首を返さず、このまま、押し出す感じやな」

　義男はナックルボールの投げ方をコーチの田之上に聞いている。

「意味わからんわー。それであんな変化するんやなんて」

「ターチちょっと投げてみてやー」

　と大志が言った。田之上コーチ、略してターチと子供達に呼ばれている。

「俺が投げれるわけないやろ。ライトやったっちゅーねん。それに軟式のボールじゃそんなに変化せんしな」

「えーそーなん。ターチおもんなー」

　と大志が言った。

「うるさいわアホ。それにお前らに変化球はまだ早いわ。ストレートちゃんと打てるようになってから言えや。ほら守備練するぞ。散った散った」

　子供達はそれぞれの持ち場へ勢いよく走って行った。気温は5°、風は強く曇り空、それでも子供達の表情は明るく、生命力が漲っている。何も気にせず、赴くままに走り回る時代が自分にもあったなー、と36才を迎えた田之上は思った。最後に全力で走ったのはいつだっただろうか。そんな事を少年達と接しているといつも思う。だが、その思いは思いのまま留まり、いつも霧散する。

「いくぞー！！」

　田之上は大きくライトにボールを飛ばした。ライトの義男は大きく手を上げた。

「オーライオーライ！！」

　義男は大きな声を上げながらボールを後逸した。

「あほー！！しっかり取れーーー！！！」

　田之上は大声を張り上げた。

　ボールはグラウンドを転がり、グラウンドと河を区切るフェンスまで届いた。フェンス付近には草が生い茂り、グラウンド側の草は刈り込んでいるが、フェンスの向こう、河に近付くにつれて傾いている斜面には、刈り込まれていない、少年の背丈ほどに伸びている草が縦5メートル、横は川に沿って300メートル程続いている。

「なんであんなんが取れへんかなー。才能ないんかなー」

　そんな事をボールを拾いながら考えていると、フェンスの向こうの草むらから音がした。

「ジョンロロロロロロ」

　水の音だ。

　ここは河川敷だ。当たり前に水の音はしている。だけどその音は、いつも聴く河川敷の水の音とは異なり、どこか卑猥で、明確な意思を持っている音だった。

「ジョンロロロロ…ジョロ…」

　義男はその音の正体を確かめたかった。鷺か何かがいるのだろうか。義男は水鳥が好きだった。美しく、凛としているからだ。

　だが今は何よりもこの手に握ったボールを投げ返さなくてはならない。義男は振り向き、ボールを投げた。そして定位置へと、走って行った。

　

　凛子は全部出し終えるとティッシュで軽く拭いて、パンティを履いた。立ち上がると、走り去る少年の後ろ姿が見えた。