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♡ 今日も肛門からうどんを出して♡

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 瀬戸内海に面した小さな町で、秋季大運動会が行われた。

 

 町長の御子柴義男は、日に日に過疎化していく町に頭を悩ませていた。

「都会への人口流出を防がなくては、この町に未来はない」

 そう考えた町長は、町民の結束を強めるために、町をあげて運動会をする事にした。それに対して町民達からはブーイングの嵐。

「そんなに暇じゃねぇ!」

「やるなら1人でやれや!」

「そんなんしたって無駄やけん、この町に未来なんてないわ」

「ウチ高校出たら東京行くし~」

 非難轟々けんもほろろだった。それでも町長の御子柴は諦めなかった。毎日毎日町の一軒一軒をまわり、町民の説得をした。人が集まるスナックや公園、釣り場、いろいろな所に顔を出しては、次から次に嫌われていった。

「もー我慢できん!ワシ、やっちゃるわ」

 うどん屋の店主の坂間透がキレた。毎日毎日仕込みの時間に町長が嘆願に来たためだ。

「俺も手伝うわ!」

「私も!」

「あっしも!」

 町民が結束した。そして町民たちはうどん屋で町長を待ち伏せした。

「ごめんくださーい」

 朝の早よから予定通り町長が現れた。

「坂間さーん、いませんかー?あれ?おかしいなー」

 と言いながら店に足を踏み入れた瞬間、漁師のジョージが町長にタックルして床に倒した。

「ぎゃあ!」

 すかさずそこに八百屋の播磨が現れて町長の腕と足を縄で縛る。

「お、お前たち、い、一体何を!?」

「うるせぇ町長の糞ったれ!毎日毎日迷惑なんだよ!!」

 坂間はそう言って村長のズボンを脱がし、ブリーフを剥き、肛門にうどんを捩じ込んだ。

「あっ♡いやっ…あっ、ちょっと…ん♡」

 町長は開発済みだった。その一部始終を床屋の町山晴美がスマホで録画していた。

「SNSで拡散されたくなかったら、もう嘆願してまわらないことだね!」

 晴美はそう言った。町長はそれを肛門からうどんをひょっこりさせながら聞いていた。

「あぁぁ、動画、撮ったのかい?」

「そうよ!ばら撒かれたくなかったら…」

「くれ!」

「え?」

「その動画、ワシにくれ!」

「…別に、良いけど」

「やったね!」

 一同は不思議な面持ちで解散した。

「町長、開発済みだったね」

「誰とだろう、米屋のマサかな?」

「うわ、想像したくね」

「動画町長にあげてよかったんかいの?」

「オリジナルはこっちにあるから…いざって時は」

 翌日その動画はSNSに投稿された。投稿主は町長だった。

 そしてそれがバズってマスコミが大勢町に取材に来た。町は一躍”肛門うどんの町”として有名になった。
 
 そんな中秋季大運動会が行われた。町には大勢の観光客が押しかけた。坂間の店も繁盛した。名物はもちろん”肛門うどん”だ。

 それから毎年町では秋季大運動会が行われるようになった。おかげで人口流出も減り、町への移住者も増えた。

 だから町長は今日も肛門からうどんを出しているのです。
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