上 下
12 / 66

♡珍凸撫でると前屈み♡

しおりを挟む
 凛子は近所の交差点で青信号になるのを待っていると、雨がポツリと頬を撫でた。

「変態!」

 そう言って上を向くと、すぐそこに信号機があった。手を伸ばしたら届くぐらい。

 信号が変わって向かいから人が小走りで渡ってくる。その中の一番背の高い男を捕まえる。

「あんたちょっと飛びなさいよ」

「え?」

「いいからここで飛びなさい」

「な。なに言ってんだあんた、こんな雨の中で」

 雨は勢いを増す。凛子の圧も勢いを増す。

 男は仕方なくジャンプした。チャリンと音がした。

「馬鹿ね、手を伸ばして飛びなさいよ」

「は、はい」

「馬鹿、もっと本気で飛びなさいよ」

「は、はい!」

 男は思いっきりジャンプした。手が信号機に触れた。

「なるほどね」

 凛子は納得した。そして男のポケットに手を突っ込み、珍凸を少し撫でた。

「あっふっ!」

 男は前屈みになった。去り行く凛子の手には、小銭が握られていた。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

闇メン【エキスパート裏メンバー派遣会社 】~牌戦士シリーズepisode2~

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:104,577pt お気に入り:3,123

ヒマを持て余した神々のアソビ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:611pt お気に入り:7

ようやく幸せになりました!〜泡沫の華々たち《異譚》

恋愛 / 完結 24h.ポイント:454pt お気に入り:3,106

処理中です...