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第4章 サクラサク

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『ピンポーーン』

 “飛鳥“が“旅人“のぽこんちの前で口を大きく開いている時に、玄関のチャイムが鳴った。静寂の中“旅人“の心臓の音だけが鳴り響く空間に、その音は異世界への扉が開くように響いた。

『ドンドンドン』

 扉を叩く音がした。

「ねえ・・・いるんでしょ?」

 それは隣に住む“ミカエル“の声だった。

「さっきは・・・・ごめん・・・」

 “飛鳥さん“はその声を聞くと、バスタブから出て、体を拭き、服を着た。そして玄関のドアを開けた。

「今、お風呂入ってる」

 “飛鳥さん“は“ミカエル“にそう言った。“ミカエル“は“飛鳥さん“の濡れた髪を見て、一緒に入ってたの?と聞きたかったが、喉元に留めておいた。

「そう・・・」

「入る?」

 “飛鳥さん“はドアを大きく開けながら言った。

「いや・・・いい・・・じゃあ」

 そう言って“ミカエル“は自分の部屋へと帰って行った。それを見届けてから、“飛鳥さん“はドアを閉めた。そして風呂場へと向かった。

「あ、だ、大丈夫だった?」

 何が大丈夫なのだろうかと自分でも思いながら“旅人“は言った。そんな“旅人“のぽこんちは変わらずギンギンだった。続きを催促しているようなそのイキリ立ったぽこんちに飛鳥さん“は無性に腹が立った。もちろん理不尽な怒りであることを自覚しながら。

「・・・・出て」

「・・・え?」

「いつまで入ってるのよ、早く出なさいよ」

「・・・え・・・“飛鳥“・・・」

「“飛鳥さん”でしょ?」

「・・・え?」

 “飛鳥さん“はバスタオルを“旅人“に投げつけて風呂場を出た。しばらくして“旅人“が出てきた。

「あ・・・あの・・・・これ」

 そう言ってバスタオルを布団の上で文庫本を読んでいる“飛鳥さん“に渡した。“飛鳥さん“が

「ん・・・」

 と言って本から視線を逸らさずに受け取った。そして一言、

「早く帰りなさいよ」

 と言った。
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