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第4章 サクラサク

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「何してんの?」

 “飛鳥さん“が桜の花びらを風に戻しながら言った。

「・・・別に」

「また喧嘩したんでしょ?」

「・・・うるさい」

「・・・じゃあ」

 “飛鳥さん“がドアに鍵を差し込み回しながら言った。“飛鳥さん“とはおねしょをしたあの日からどうもギクシャクしている。

「あ・・・」

「何?」

「・・・いや」

「そう」

 “飛鳥さん“はドアを開け、中に入った。

(なんだよ・・・入れてくれてもいいじゃないか)

 と“旅人“が思うと同時に、ドアが開いた。

「何してんの、入りなよ」

 “飛鳥さん“が少し開いたドアの隙間から顔を出してそう言った。“旅人“は勢いよく立ち上がって体を捩じ込むようにして中に入った。

 相変わらず殺風景で、散らかった部屋だった。“飛鳥さん“の部屋に入るのは、あの日以来だった。

「あ・・・」

 おねしょをした布団もそのままだった。“飛鳥さん“はあれから自分のマーキングがされた布団に包まれて寝ているのかと想像したら、少し股間がおっきした。

「何か、飲む?」

「・・・どうせ金取るんだろ?」

「・・・これはサービスよ」

「じゃあ先にそれ言えよ」

「・・・」

 “飛鳥さん“は黙って水道の蛇口を捻り、コップに注ぎ、“旅人“が座る床の前に置いた。

「俺、紅茶が飲みたいんだけど」

「・・・じゃあ先にそれ言いなさいよ」

 “飛鳥さん“は床に置いたコップを手に取り、やかんにコップの水を入れ、蛇口から水を足し、火にかけた。湯が沸くまでの間、2人は無言だった。
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