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578 その頃、天界の皆さんは
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天界の天界樹様の庭⋯
美しい四阿の下、ここは最近ではすっかり女神たちの憩いの場となっている。もちろん凛さんの姿も。
今日も今日とて、天女のような姿をした美しい給仕兼、護衛の天界樹様の眷属が、お茶やお菓子をかいがいしく運んでいる。おいちゃんがいたらこっそり鼻の下伸ばしそうです。
『そんなことしねぇよっ』
「ほんちょ~?」
『当たり前だっ』
『あらあらまあまあ?ここにも女の敵がたくさん⋯うふふ』
『「ひっ」』がくぶる
そんな女の園で
『ジーニ様、今日はイル様についていなくていいの?』カチャッ
〖いいのよ。だいぶ回復してきたしね〗ぱくっ
〖まあ、お母様ったら、本当は心配で一緒にいたいくせに。今日だってお父様に〖外の空気を吸ってきなよ〗と言われなければ一緒にいたでしょう〗もぐっ
〖な、何言ってるの?ちちち、違うわよっ?〗ガチャンっ
『違わないであろ?昔から惚れていたのは魔神様じゃしの。妾たちが柱の影から主神様をつけ狙っていた魔神様に、どれほどヤキモキしておったことか』ずっ
〖そそそ、そんなっ〗ガチャガチャンッ
『あらあらまあまあ~甘酸っぱいわね~うふふ』
ここの所、なんやかんや主神様に付きっきりだったジーニ様が遊ばれ⋯揶揄わ⋯いじられています。
〖何も誤魔化せてないわよね!?〗
気のせいですよ。
そんな平和なお茶会という名の女子会に、突如
『本当だよな。主神は鈍いから全然気づかないしな。バートや工芸神たちと、どんだけ魔神に気づくように仕向けたことか』
野太い声が、両手に大量にお菓子が乗った大皿と共に乱入してきた。
〖俺なんか無理やり剣や武術の相手させたり、本来のダンスの練習相手を無理やり納得させて交代させたり、色々やったんだぜ〗
〖私も食事やお茶の時に相席させたり、かなりお膳立てしたはずなのですが、全く気づきませんでしたからね〗
『本当ですよ。あんなに分かりやすいのに気づかないのですから、呆れ果ててついには魔神様の前に差し出しましたからね』
〖ええ~?差し出したって、あれは僕のおしりを蹴り飛ばしたんだよね?すっごく痛かったんだから~〗
女子会に突如現れたのは、料理長、武神様、工芸神様に、バートさん、主神イル様。
〖な、ななななっ〗
ジーニ様は真っ赤になって、使い物にならなくなってしまったようです。
〖あら、お父様。もう外に出られて大丈夫なのですか?〗
〖大丈夫だよ、シア。少しは動かないとね〗にっこり
『主神様、無理はいかんぞえ?』
〖ありがとう。天界樹ちゃん〗にこにこ
今日もにこにこ。穏やかなイル様です。
『あらあらまあまあ、とにかくお座りになって下さいな』
〖ありがとう。凛さん。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな〗
『ええ。どうぞ』
イル様は有能な天女様たちがあっという間に用意した席に座りました。席はもちろんジーニ様のお隣。
もちろんバートさんたちの席も。
『よう!天界樹。この間もらった杏!さっそく使ってみたぞ!なんと今回は種の中身まで使ったんだぜ!感想聞かしてくれ!』
どどーんっ
テーブルの上には次々と杏を使ったスイーツで埋め尽くされていく。
『なんと!杏酒や、ジャムくらいしか使い道がないと思っておったに、このようにたくさんのすいーつが?はっ!さては、凛!凛のおかげじゃな!?』ぐりんっ!
凛さんのおかげで最近すっかり『すいーつ女子』となってしまった天界樹の精様。テーブルに並べられたジャムクッキー、パウンドケーキ、タルト、チーズケーキや、ゼリーなどなど、もう瞳はキラキラ!ジーニ様はギラギラ⋯
『その通りだぜ!ゲンにも驚かされたが、凛もすげぇよな!ワハハハ!』
料理長も鼻高々!なぜあなたが自慢気?
『あらあらまあまあ、そんな大したことはしてないわよ。ただ、一つお味見させて頂いたら、とっても美味しかったものだから、色々作りたくなってしまったのよ。その分、お酒に回す量が減ってしまったと思うのだけど、ごめんなさいね』
『気にするでないぞよ!杏ならまだたんとあるでな。いくらでも使うが良いぞ!それより、早く食べさせてたも!どれも美しく光り輝いておるのじゃ!』
〖ほんとね。どれも美味しそうね。どれから食べようか迷うわね。全部食べるけど!全部食べるけど!〗
もう獲物を見る目!
〖お母様、お気持ちはわかりますが、太りますわよ〗
〖だ、大丈夫よっ〗
〖まあまあ、魔神ちゃんはぼくと半分ずつ食べればいいじゃない。そうすれば全種類食べられるでしょ?〗にこにこ
〖主神、ありがとうっ〗キラキラ
仲良し夫婦。
〖そんな必要ないと思いますけどね。魔神は結局誰より食べますよ〗
〖ですわよね。むしろお父様に残るか心配した方がいいのでは?〗
〖残らねぇだろ?〗
『魔神様の胃袋はバート並だからのぉ』
『安心しろ。あの二人の分は計算してある』
『あらあらまあまあ。おほほほ』
皆さん、言いたい放題ね。気心知れた仲間だからということかしら?
『ま、今の主神には残り物位で丁度いいだろ』
〖ひどいっ?〗
『それより、はやく食おうぜ!あ、主神にはこれな!杏仁豆腐って言うんだってよ。柔らかくて今の主神にはぴったりだろ。さっき言った杏の種を割ってな、中の仁ってやつを使うんだぜ!面白いよな~考え出したヤツに会ってみたいぜ!あ、その上に乗ってるクコの実ってやつな、それも薬膳ってやつらしいからな、しっかり食えよ!』
『そうえ。この庭園で妾たちが育てた杏。そして、クコの実。更に見たところ添えてあるものは仙桃。とすれば、体には良いはず。ささ、お召し上がりくだされ』
料理長と天界樹の精がすすめる。
〖うん、ありがとう。頂くよ〗カチャッ
主神様が杏仁豆腐の器を目の前まで持ち上げて、
ぷるんっ
〖うわぁ~ぷるぷるだね~。ん~それに、甘い香りがするね〗
イル様、目を瞑って香りを楽しんでます。
『あらあらまあまあ、気づいていただけて嬉しいわ。その香りは、本物の杏の仁を使ったからこその香りなのよ。手間がかかるから、代用品で作ったりもするのだけど、一から丁寧に作って下さった料理長さんに感謝ね』
『何言ってんだ。凛が教えてくれなきゃ出来なかったんだぜ。まあ、確かに種を割るのは面倒だったが、それだって凛がバキバキと怪り⋯』
『あらあらまあまあ、何かしら?』にこにこゴゴゴ
『いや、なんでもねぇ⋯』ぶるっ
『そう?』にこにこ
『まあ、とにかく、凛と天界樹の精たちのおかげだな』
『あらあらまあまあ、私はお手伝いしただけよ』
『妾は杏を提供しただけじゃの』
料理長もおいちゃんと同じ香りが⋯うっかりさんという香りが⋯
〖ふふ。とにかくたくさん手間ひまがかかってるんだね。心して頂くよ。ありがとう〗にこにこ
『おう!』ニカッ
『あらあらまあまあ、どうぞ召し上がれ』
『ふふ。早く食さねば隣から奪われますぞよ』
〖そんなことしないわよっ?〗ササッ
ジーニ様、背中にスプーン隠しましたね?
〖ふふ。いただきます。⋯うん。美味しいよ。とろけるね。つるんとして喉が気持ちいいよ⋯ん?優しいミルクの味の奥に、ちょっぴり薬っぽい味と香りが?〗ぱくぱく
『あらあらまあまあ、鋭いわね。杏の仁は漢方薬⋯ん~お薬にも使われることがあってね。喉や肺に良いと言われているのよ。だから、少し薬っぽく感じたのかもしれないわね』
〖へ~。こんな美味しい薬なら大歓迎だよ。慣れたら気にならないし。うん。おかわりしたいくらいだよ〗ぱくぱく
だってこの世界のお薬、ポーションは臭くて苦くて不味くて気絶するほど!おいちゃんが開発を任されるほどに!
このあと天界に杏仁豆腐の一大ブームが怒るのは仕方ない!
『それは良かったわ』にこにこ
〖そうだ!凛さん、せっかくならコレもバートに届けてもらいなよ!〗ぱくっ
『そうですね。お易い御用ですよ』
『ありがとうございます。ですが、今更だけど天界の物を私が食べたり、サーヤたちに送っても大丈夫かしら?例えば、ほら、その仙桃だって、万病に効くとか、不老長寿とか言うじゃない?』
確かに、伝説に出てきそうな食材がふんだんに⋯
〖ん~今更かな~?ほら、すでに色々やらかしてるし?地上ですでにサーヤとゲンさんが規格外なもの作ってるし?あはは〗
『ええ?』
笑い事じゃ済まないのでは?
『そうじゃの。妾も普通なら反対するところであろうが、今更な気がするの。聖域以外は問題外だがの。欲深き者共には毒となろう。だが、聖域の者であれば問題あるまいに。なんなら、苗も持っていくかえ?聖域以外では根付きもしないであろうが、聖域であればたちどころに実るのではないかえ?』
『あらあらまあまあ?さすがにそれは⋯』
ダメなんじゃ?
『ふふ。まあ、苗は冗談としてもじゃ、こちらで出来たものを食す位なら問題ないであろう。心配なら調理したものだけにするとかの。ほれ、何せ地上には予測不可能なことをするのがいるであろ?彼奴、種さえあればそこから育てかねんのではないかえ?』
『え?』
彼奴?
〖あ~そうですね。天界樹が言っているのがアレのことなら〗
〖笑いながらやりかねないわね〗
〖〖結葉⋯〗〗はあっ⋯
『そうであろう?』ふっ
シア様とジーニ様の大きな溜息に天界樹の精様も苦笑い。
『うふふ。だってぇ、楽しそうじゃない?くすくす』
うん。絶対やりそう。
〖ははは、ま、まあ、みんな食べようよ。ね?せっかく作ってくれたんだからさ〗
『そうじゃの』
『そうね。では⋯』
平和に食べ始めようとしたその時、ジーニ様が気づいてしまった
〖あっ!バートに武神!何先に食べてるのよ!それは私のよ!〗ガインッ
『名前など書いてありませんが?』ガガッ
〖バートと魔神がいるんだぞ?遠慮してたら無くなるだろが〗ガガガガっ
〖なんですって!?〗ガンガンっ
ああ、仁義なき戦いが⋯
〖ちょ、ちょっと、落ち着いてっ!なんでフォークで物理的に火花が散るの!?〗
〖お父様、無駄ですわ〗
〖ええ。やらせておきましょう〗
『あっちでやり合ってくれればこっちは平和だしな。ほら、主神は一口ずつな』
〖ええ?〗
『さあさあ、こちらはこちらで』
『あらあらまあまあ、うん。ドライフルーツも成功ね。これも届けてもらっていいかしら?杏のドライフルーツは和食にも使えるのよ』
『マジか?』
『ええ。後でお教えするわね、料理長さん。ゲンさんも作れるはずだから、バートさんこれもお願いしますね』
『かしこまりました。私にも後で食べさせてくださいね』
『ええ。もちろんですよ』
やっと平和なお茶会に?
ガインガインっ!
平和なお茶会?
『まあ、それはともかく、皆様の神獣どうされますか?』
バートさんが訪ねます。残像が見える高速で手を動かしながら⋯
〖ああ、サーヤたちの『あだ名事件』だよね〗
〖まさかあだ名で進化するなんて驚きでしたね〗
〖ズルいよな。俺のとこの龍はどうなるかな〗
〖私のグリだって。是非、次は私が⋯〗
〖〖ダメよ〗〗
〖まずは私たちでしょ〗
〖そうですよね。お母様〗
〖僕も行きたいけど、暫くは難しいかな。でもさ、強くなるなら、はやくつけてもらいたいよね。それで、数日たつけど、牙王に変化は?〗
『ないようですよ。一時的なものではないようですね。あとは天界に戻った時にどうなるかですね』
〖そうか。何にしろ、検証が必要だね。まずはバートと、医神の天ちゃんだね〗
『はい。しっかりと行って来ますよ』
〖うん。よろしくね〗
さあ、いよいよ、バートさん出動?
〖あ、医神とバートがそろっちゃうね。まあ、大丈夫だよね?ね?〗
〖〖〖〖⋯⋯〗〗〗〗
『『⋯⋯』』
『あ、あらあらまあまあ?嫌な沈黙ね?』
イル様の疑問に皆、黙りこくってしまいました。
『あらあらまあまあ、空気が思い?気のせいかしら?』
『ふふふふ⋯』ニヤリ
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
お読みいただきありがとうございます。更新遅くなってすみません。
美しい四阿の下、ここは最近ではすっかり女神たちの憩いの場となっている。もちろん凛さんの姿も。
今日も今日とて、天女のような姿をした美しい給仕兼、護衛の天界樹様の眷属が、お茶やお菓子をかいがいしく運んでいる。おいちゃんがいたらこっそり鼻の下伸ばしそうです。
『そんなことしねぇよっ』
「ほんちょ~?」
『当たり前だっ』
『あらあらまあまあ?ここにも女の敵がたくさん⋯うふふ』
『「ひっ」』がくぶる
そんな女の園で
『ジーニ様、今日はイル様についていなくていいの?』カチャッ
〖いいのよ。だいぶ回復してきたしね〗ぱくっ
〖まあ、お母様ったら、本当は心配で一緒にいたいくせに。今日だってお父様に〖外の空気を吸ってきなよ〗と言われなければ一緒にいたでしょう〗もぐっ
〖な、何言ってるの?ちちち、違うわよっ?〗ガチャンっ
『違わないであろ?昔から惚れていたのは魔神様じゃしの。妾たちが柱の影から主神様をつけ狙っていた魔神様に、どれほどヤキモキしておったことか』ずっ
〖そそそ、そんなっ〗ガチャガチャンッ
『あらあらまあまあ~甘酸っぱいわね~うふふ』
ここの所、なんやかんや主神様に付きっきりだったジーニ様が遊ばれ⋯揶揄わ⋯いじられています。
〖何も誤魔化せてないわよね!?〗
気のせいですよ。
そんな平和なお茶会という名の女子会に、突如
『本当だよな。主神は鈍いから全然気づかないしな。バートや工芸神たちと、どんだけ魔神に気づくように仕向けたことか』
野太い声が、両手に大量にお菓子が乗った大皿と共に乱入してきた。
〖俺なんか無理やり剣や武術の相手させたり、本来のダンスの練習相手を無理やり納得させて交代させたり、色々やったんだぜ〗
〖私も食事やお茶の時に相席させたり、かなりお膳立てしたはずなのですが、全く気づきませんでしたからね〗
『本当ですよ。あんなに分かりやすいのに気づかないのですから、呆れ果ててついには魔神様の前に差し出しましたからね』
〖ええ~?差し出したって、あれは僕のおしりを蹴り飛ばしたんだよね?すっごく痛かったんだから~〗
女子会に突如現れたのは、料理長、武神様、工芸神様に、バートさん、主神イル様。
〖な、ななななっ〗
ジーニ様は真っ赤になって、使い物にならなくなってしまったようです。
〖あら、お父様。もう外に出られて大丈夫なのですか?〗
〖大丈夫だよ、シア。少しは動かないとね〗にっこり
『主神様、無理はいかんぞえ?』
〖ありがとう。天界樹ちゃん〗にこにこ
今日もにこにこ。穏やかなイル様です。
『あらあらまあまあ、とにかくお座りになって下さいな』
〖ありがとう。凛さん。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな〗
『ええ。どうぞ』
イル様は有能な天女様たちがあっという間に用意した席に座りました。席はもちろんジーニ様のお隣。
もちろんバートさんたちの席も。
『よう!天界樹。この間もらった杏!さっそく使ってみたぞ!なんと今回は種の中身まで使ったんだぜ!感想聞かしてくれ!』
どどーんっ
テーブルの上には次々と杏を使ったスイーツで埋め尽くされていく。
『なんと!杏酒や、ジャムくらいしか使い道がないと思っておったに、このようにたくさんのすいーつが?はっ!さては、凛!凛のおかげじゃな!?』ぐりんっ!
凛さんのおかげで最近すっかり『すいーつ女子』となってしまった天界樹の精様。テーブルに並べられたジャムクッキー、パウンドケーキ、タルト、チーズケーキや、ゼリーなどなど、もう瞳はキラキラ!ジーニ様はギラギラ⋯
『その通りだぜ!ゲンにも驚かされたが、凛もすげぇよな!ワハハハ!』
料理長も鼻高々!なぜあなたが自慢気?
『あらあらまあまあ、そんな大したことはしてないわよ。ただ、一つお味見させて頂いたら、とっても美味しかったものだから、色々作りたくなってしまったのよ。その分、お酒に回す量が減ってしまったと思うのだけど、ごめんなさいね』
『気にするでないぞよ!杏ならまだたんとあるでな。いくらでも使うが良いぞ!それより、早く食べさせてたも!どれも美しく光り輝いておるのじゃ!』
〖ほんとね。どれも美味しそうね。どれから食べようか迷うわね。全部食べるけど!全部食べるけど!〗
もう獲物を見る目!
〖お母様、お気持ちはわかりますが、太りますわよ〗
〖だ、大丈夫よっ〗
〖まあまあ、魔神ちゃんはぼくと半分ずつ食べればいいじゃない。そうすれば全種類食べられるでしょ?〗にこにこ
〖主神、ありがとうっ〗キラキラ
仲良し夫婦。
〖そんな必要ないと思いますけどね。魔神は結局誰より食べますよ〗
〖ですわよね。むしろお父様に残るか心配した方がいいのでは?〗
〖残らねぇだろ?〗
『魔神様の胃袋はバート並だからのぉ』
『安心しろ。あの二人の分は計算してある』
『あらあらまあまあ。おほほほ』
皆さん、言いたい放題ね。気心知れた仲間だからということかしら?
『ま、今の主神には残り物位で丁度いいだろ』
〖ひどいっ?〗
『それより、はやく食おうぜ!あ、主神にはこれな!杏仁豆腐って言うんだってよ。柔らかくて今の主神にはぴったりだろ。さっき言った杏の種を割ってな、中の仁ってやつを使うんだぜ!面白いよな~考え出したヤツに会ってみたいぜ!あ、その上に乗ってるクコの実ってやつな、それも薬膳ってやつらしいからな、しっかり食えよ!』
『そうえ。この庭園で妾たちが育てた杏。そして、クコの実。更に見たところ添えてあるものは仙桃。とすれば、体には良いはず。ささ、お召し上がりくだされ』
料理長と天界樹の精がすすめる。
〖うん、ありがとう。頂くよ〗カチャッ
主神様が杏仁豆腐の器を目の前まで持ち上げて、
ぷるんっ
〖うわぁ~ぷるぷるだね~。ん~それに、甘い香りがするね〗
イル様、目を瞑って香りを楽しんでます。
『あらあらまあまあ、気づいていただけて嬉しいわ。その香りは、本物の杏の仁を使ったからこその香りなのよ。手間がかかるから、代用品で作ったりもするのだけど、一から丁寧に作って下さった料理長さんに感謝ね』
『何言ってんだ。凛が教えてくれなきゃ出来なかったんだぜ。まあ、確かに種を割るのは面倒だったが、それだって凛がバキバキと怪り⋯』
『あらあらまあまあ、何かしら?』にこにこゴゴゴ
『いや、なんでもねぇ⋯』ぶるっ
『そう?』にこにこ
『まあ、とにかく、凛と天界樹の精たちのおかげだな』
『あらあらまあまあ、私はお手伝いしただけよ』
『妾は杏を提供しただけじゃの』
料理長もおいちゃんと同じ香りが⋯うっかりさんという香りが⋯
〖ふふ。とにかくたくさん手間ひまがかかってるんだね。心して頂くよ。ありがとう〗にこにこ
『おう!』ニカッ
『あらあらまあまあ、どうぞ召し上がれ』
『ふふ。早く食さねば隣から奪われますぞよ』
〖そんなことしないわよっ?〗ササッ
ジーニ様、背中にスプーン隠しましたね?
〖ふふ。いただきます。⋯うん。美味しいよ。とろけるね。つるんとして喉が気持ちいいよ⋯ん?優しいミルクの味の奥に、ちょっぴり薬っぽい味と香りが?〗ぱくぱく
『あらあらまあまあ、鋭いわね。杏の仁は漢方薬⋯ん~お薬にも使われることがあってね。喉や肺に良いと言われているのよ。だから、少し薬っぽく感じたのかもしれないわね』
〖へ~。こんな美味しい薬なら大歓迎だよ。慣れたら気にならないし。うん。おかわりしたいくらいだよ〗ぱくぱく
だってこの世界のお薬、ポーションは臭くて苦くて不味くて気絶するほど!おいちゃんが開発を任されるほどに!
このあと天界に杏仁豆腐の一大ブームが怒るのは仕方ない!
『それは良かったわ』にこにこ
〖そうだ!凛さん、せっかくならコレもバートに届けてもらいなよ!〗ぱくっ
『そうですね。お易い御用ですよ』
『ありがとうございます。ですが、今更だけど天界の物を私が食べたり、サーヤたちに送っても大丈夫かしら?例えば、ほら、その仙桃だって、万病に効くとか、不老長寿とか言うじゃない?』
確かに、伝説に出てきそうな食材がふんだんに⋯
〖ん~今更かな~?ほら、すでに色々やらかしてるし?地上ですでにサーヤとゲンさんが規格外なもの作ってるし?あはは〗
『ええ?』
笑い事じゃ済まないのでは?
『そうじゃの。妾も普通なら反対するところであろうが、今更な気がするの。聖域以外は問題外だがの。欲深き者共には毒となろう。だが、聖域の者であれば問題あるまいに。なんなら、苗も持っていくかえ?聖域以外では根付きもしないであろうが、聖域であればたちどころに実るのではないかえ?』
『あらあらまあまあ?さすがにそれは⋯』
ダメなんじゃ?
『ふふ。まあ、苗は冗談としてもじゃ、こちらで出来たものを食す位なら問題ないであろう。心配なら調理したものだけにするとかの。ほれ、何せ地上には予測不可能なことをするのがいるであろ?彼奴、種さえあればそこから育てかねんのではないかえ?』
『え?』
彼奴?
〖あ~そうですね。天界樹が言っているのがアレのことなら〗
〖笑いながらやりかねないわね〗
〖〖結葉⋯〗〗はあっ⋯
『そうであろう?』ふっ
シア様とジーニ様の大きな溜息に天界樹の精様も苦笑い。
『うふふ。だってぇ、楽しそうじゃない?くすくす』
うん。絶対やりそう。
〖ははは、ま、まあ、みんな食べようよ。ね?せっかく作ってくれたんだからさ〗
『そうじゃの』
『そうね。では⋯』
平和に食べ始めようとしたその時、ジーニ様が気づいてしまった
〖あっ!バートに武神!何先に食べてるのよ!それは私のよ!〗ガインッ
『名前など書いてありませんが?』ガガッ
〖バートと魔神がいるんだぞ?遠慮してたら無くなるだろが〗ガガガガっ
〖なんですって!?〗ガンガンっ
ああ、仁義なき戦いが⋯
〖ちょ、ちょっと、落ち着いてっ!なんでフォークで物理的に火花が散るの!?〗
〖お父様、無駄ですわ〗
〖ええ。やらせておきましょう〗
『あっちでやり合ってくれればこっちは平和だしな。ほら、主神は一口ずつな』
〖ええ?〗
『さあさあ、こちらはこちらで』
『あらあらまあまあ、うん。ドライフルーツも成功ね。これも届けてもらっていいかしら?杏のドライフルーツは和食にも使えるのよ』
『マジか?』
『ええ。後でお教えするわね、料理長さん。ゲンさんも作れるはずだから、バートさんこれもお願いしますね』
『かしこまりました。私にも後で食べさせてくださいね』
『ええ。もちろんですよ』
やっと平和なお茶会に?
ガインガインっ!
平和なお茶会?
『まあ、それはともかく、皆様の神獣どうされますか?』
バートさんが訪ねます。残像が見える高速で手を動かしながら⋯
〖ああ、サーヤたちの『あだ名事件』だよね〗
〖まさかあだ名で進化するなんて驚きでしたね〗
〖ズルいよな。俺のとこの龍はどうなるかな〗
〖私のグリだって。是非、次は私が⋯〗
〖〖ダメよ〗〗
〖まずは私たちでしょ〗
〖そうですよね。お母様〗
〖僕も行きたいけど、暫くは難しいかな。でもさ、強くなるなら、はやくつけてもらいたいよね。それで、数日たつけど、牙王に変化は?〗
『ないようですよ。一時的なものではないようですね。あとは天界に戻った時にどうなるかですね』
〖そうか。何にしろ、検証が必要だね。まずはバートと、医神の天ちゃんだね〗
『はい。しっかりと行って来ますよ』
〖うん。よろしくね〗
さあ、いよいよ、バートさん出動?
〖あ、医神とバートがそろっちゃうね。まあ、大丈夫だよね?ね?〗
〖〖〖〖⋯⋯〗〗〗〗
『『⋯⋯』』
『あ、あらあらまあまあ?嫌な沈黙ね?』
イル様の疑問に皆、黙りこくってしまいました。
『あらあらまあまあ、空気が思い?気のせいかしら?』
『ふふふふ⋯』ニヤリ
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
お読みいただきありがとうございます。更新遅くなってすみません。
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そんな俺はある日、ゲーム中に心不全を起こして、そのまま死んでしまったんだ。
だけど、女神さまのお陰で、剣と魔法のファンタジーな世界に転生することが出来た。しかも!若くててかっこいい身体と寿命で死なないおまけつき!
俺はそこで、ひたすらレベル上げを頑張った。やっぱり、異世界に来たのなら、俺TUEEEEEとかやってみたいからな。
まあ、三百年程で、世界最強と言えるだけの強さを手に入れたんだ。だが、俺はその強さには満足出来なかった。
そう、俺はレベル上げやスキル取得だけをやっていた結果、戦闘技術を上げることをしなくなっていたんだ。
レベル差の暴力で勝っても、嬉しくない。そう思った俺は、戦闘技術も磨いたんだ。他にも、モノづくりなどの戦闘以外のものにも手を出し始めた。
そしたらもう……とんでもない年月が経過していた。だが、ここまでくると、俺の知識だけでは、出来ないことも増えてきた。
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そう思い始めた頃、我が家に客がやってきた。
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