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561 鍛冶神様による説明

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〖へえ~いいとこだな。こういうの好きだぞ。まるっと木なんだな。工芸神も好きそうだ〗

ここは主に、おかみさんたちが使う工房。中はジーニ様の魔法により、かなり空間拡張を施されてはいるが、ログハウスの中は木で作られた暖かみのある作業台や棚であふれている。

『あ、ああありがとうございます』
『こ、こここちらにおかけください』
『い、いいいまおちゃを⋯』
おかみさんたち、緊張しすぎてサーヤのようなカタコトな話し方に

『うん?ああ、気にしないでいいぞ。ありがとな』ニカッ

『いいい、いえ』
『めめめ、めっそうもない』
『そそそ、そういうわけには』
おかみさんたち、緊張しすぎて倒れる寸前!

『おかみさんたち、大丈夫だ。お茶なら俺が出せるから、落ち着いてくれ』
〖そうよ。こんなの相手に緊張することないわよ〗
〖その通りですよ。さあ、皆さん座って下さいな〗
〖おい。こんなのってなんだよ〗
ゲンや、ジーニ様、シア様がカチコチになっているドワーフさんに座るように促します。
さすがに椅子が足りないから、すぐ様、丸太で作った椅子をジーニ様が複製し、半ば強引に全員を座らせました。

そして
〖それより、鍛治神、はやく昨日のことを教え下さい。何が分かったのですか?〗
エル様がズバッと聞くと

〖ああ。そうだな。その前に、医神、昨日は助かった。エルフたちの治療ありがとな〗
〖いいえ。あの位、当然のことですから。私はそちらには加わりませんでしたからね。そちらこそお疲れ様でした〗
〖ああ。まだエルフたちは目をさまないが、料理長が凛と⋯あっ、天界にいる凜な。一緒になって美味い病人食作るって張り切ってたからな。あとは任せて大丈夫だろ〗
〖それは良かった。安心ですね〗ほっ

ほっとするエル様。エルフの国には行かず、天界に運ばれてきた者たちを治療していたエル様は、サーヤたちを心配させない為に治療を施し、鍛治神たちの帰りを待つことなく、聖域に戻って来ていた。それを鍛治神は心得ていたから、まずは安心させるために先に伝えたのだ。
この辺りの配慮が出来るあたり、脳筋とは言いきれないのだが、その辺りは、ジーニ様たちも

〖この辺りが本物の脳筋とは違うとこよね〗
〖ええ。武神だったら、こちらから聞かないといけないところでしたね〗
〖まあ、天界では武神と一緒にやりたい放題ですけどね。それこそ今の気遣いが嘘のように〗
〖〖不思議よね〗〗
〖不思議ですね〗

〖言いたい放題だな?おい〗むすっ
神様たち、いじり放題。


〖へぶしっ〗
『うわっ!てめぇ武神!何しやがる!』
〖ああ、悪ぃ悪ぃ。許せ龍〗
思わぬとばっちりなのは武神のペットの神龍⋯


『あらあらまあまあ、天界の私は元気かしら?』
自分の話が出たことで、どこか呑気にたずねる凜に

〖おお!元気だぞ!この間なんか武神を回し蹴りでぶっ飛ばしてたぞ!あ、そうだ。これは土産だ!受け取ってくれや!〗
『あらあらまあまあ、私に?何かしら?』いそいそ
〖あっちの凛にせがまれてな?作った暗器だ!こっちの凛のサイズに合わせてあるぞ!どうだ?〗ニカッ
『あらあらまあまあ、とても手に馴染むわ、この苦無。素敵だわ~。まあまあ!手裏剣も、他にも色々あるのね~』うっとり
〖お前たちがいた世界の武器は面白いな!ついつい夢中で色々作っちまったぞ!素材も天界の素材で打ってるからな、丈夫だぞ!俺たちの加護付きだしな!〗
『あらあらまあまあ、とっても素敵♪ありがとうございます』うっとり

『おいおい。凛が武器に頬ずりしてうっとりしてるぞ?大丈夫か?』
『あ~凛さん、忍者とか大好きだからな~暗器とかめちゃくちゃ詳しかったしな⋯』
あまりのことに親方もようやく復活⋯
ゲンも色々思い出しつつ、呆れ顔。

『それもだけどさ、色々聞き捨てならないセリフがあったよね?』
『武神様を回し蹴りでぶっ飛ばしたとか』
『暗器の素材が天界の物だとか』
『〖俺たちの加護〗って、言ってたよね?たちって⋯』
おかみさんたちも、繰り出される非常識な会話にようやく浮上⋯

『凛さん、あっちでもこっちでも、なにやってんだ?』
『『『さあ?』』』
ほんとにね⋯


パンパンッ!
〖はいはい。二人とも、その話は後ほど続きをどうぞ。それよりも、はやく昨日の報告をして下さい〗にっこり  ひゅおお~

〖お、おう。すまん〗
『あらあらまあまあ、つい夢中になっちゃって、ごめんなさい。おほほほ』
エル様本日、早くも一番の冷気!


〖ごほっ。まずは、昨日、俺と普段は主神を護衛している部隊の少数精鋭でエルフの城に乗り込んだんだ。いやぁ、悪趣味極まりない城だったからな、粗方破壊してきたぞ。厄介な魔道具なんかもな〗

『ふん。相変わらずだったってことねぇ。城の主も相変わらずオークみたいだったんじゃなぁい?』ふんふんっ
〖〖お母様、落ち着いてくださいませ〗〗
『落ち着いてにゃ』
『やぁね~落ち着いてるわよぉ』ふんふんっ
結葉様、ものすごいお怒り⋯空気がピリピリしてます。

〖ああ。ありゃ、エルフから種族が変わってたな。あのオーク野郎〗うげっ
『あら、やっぱりぃ』ふんっ
〖〖お母様⋯〗〗
『結葉様⋯ガラ悪くなってるにゃよ』

鍛冶神と結葉様、そろって眉間にシワ。

〖それでな、とにかく違法奴隷がたくさんいたんでな、獣人やら、エルフやらな。逃がして、治療して、中でも酷いものは急遽、医神に手を借りたわけだ。ほんと、助かった〗

〖とんでもない。それで?〗

〖オーク野郎共には絶望をってことだったからな。ちゃんと生きてる内に天罰が下るようにしたぞ。耳と目はちゃんと残したからな〗

〖それは良かった。捉えられていたエルフたちに五体満足な者はいませんでしたからね。最後に彼らの痛みが少しでも分かったのではないですか?〗ふんっ

〖ならいいがな。あれはほんとにクズだったからな。分からんな〗ふんっ

『きっと分からないわよぉ。ふんっ』
『『お母様⋯』』
『相当たまってるにゃね』
出来ればその場にいたかったと息巻く結葉様⋯

〖それでな、その時にオーク野郎が言った言葉が問題だったんだ〗

ぴくっ
〖問題?何を言ったの?〗

〖俺たちは、エルフの中に占星術師がいて、そいつが聖域の存在に気づいたと思っていたが、違ったんだ〗

〖違った?〗
〖どういうこと?〗
〖まさか?〗
ジーニ様たちの顔が、険しくなった

〖そのまさかだ。ヤツだよ。黒いローブを纏い、顔は隠していたらしいがな?ある日ふらっと現れたそいつは、『聖域に精霊樹はいる。取り戻したいなら、精霊の愛し子の鎧を使い、聖域に攻め込めばいい』と、エルフ共を唆したらしい〗

〖な、なんですって?〗
〖だって!お父様がヤツに深手を負わせたはずじゃ!?〗
〖ヤツは実体を取り戻しただけではなく、聖域の存在に気づいていたということですか?〗
信じたくはないジーニ様たちが鍛冶神に食ってかかるが、エル様だけは一見、冷静に問いただしたが、その手はきつく握られ震えている。

はぁ⋯
〖その通りだ⋯〗
深く息を吐いた鍛冶神が認める

〖そんな⋯〗
〖なぜ、どうやって⋯〗
〖それで、ヤツはそこにいたのですか?〗
愕然とするジーニ様とシア様。その顔からは血の気が引けている。
エル様だけが何とか話を続けようとしている。

〖その場にはいなかった。だが、まあ、その話はもう少し後だ。とにかく、エルフのオーク王を捉えてから、地下の隠し部屋を見つけたんだ。そこに鎧と残りのエルフが捉えられていた〗

鍛冶神は話し続ける

〖鎧に囚われていたのは日の巫女と呼ばれていた十にも満たない少女だ。これがえげつなくてな。仲が良かった精霊と無理矢理契約させて、その精霊を鎧の中に描いた魔法陣に少女ごと縛り付けて、力を奪ってやがった。その上、なりふり構わず俺に攻撃させてな〗

『なんということを⋯』
『許せないですわ』
『⋯⋯』
アイナ様、リノ様も怒りで震えている。結葉様は俯いて黙ってしまっている。あの結葉様が⋯

〖それだけじゃない。その魔法陣、血で描かれていた。大量の精霊の血を混ぜてな〗ギリッ

『『ヒッ』』
『⋯やっぱりあの時、滅ぼすべきだったのね。私がっ』
悲鳴を上げるアイナ様たち、だが、結葉様は普段からは想像もできないような低く沈んだ声で、呟いた。しかし
〖結葉、ダメよ。あなたのせいじゃない〗
〖そうです。間違えてはいけません。悪いのはあなたではありません〗
ジーニ様たちが、続きを言わせなかった。

『でも⋯っ』
〖『でも』ではありませんよ。あの時の貴方には何もできることはありませんでした。そして、今回のことも、誰も予想することも出来ませんでした〗
エル様も言い方は厳しいが、結葉様が自分を責めないように気遣っている。

〖その通りだ。落ち込んでる場合じゃないぞ。お前にはこれから役目がある〗

『え?』
そこに鍛冶神様が割って入った。

〖お前にはこれからやってもらうことがある。だが、今は話を続けさせてもらうぞ〗

『⋯⋯』こくり
『『お母様』』
『結葉様、大丈夫にゃ』
姿勢を正した結葉様を両脇からアイナ様とリノ様が支える。ニャーニャも。

〖俺たちはなんとか、鎧に眠る精霊を叩き起すことに成功した。それでようやく日の巫女を鎧から引き出すことが出来たんだが、ここからが厄介でな。何しろ血の魔法陣なんて厄介なものが出てきちまったからな。こいつを何とかしないとならない〗はぁっ

今一度、息を吐き出し、鍛冶神様が続ける

〖ここでな、本来なら現れるはずがなかったアイツが現れてな、かなり無茶をしやがったんだよ。ったくよ、あのバカが〗ふんっ

〖あいつって?〗

〖お前の旦那だよ。主神だ。あのバカ、バート振り切って降りてきたんだよ〗はあっ
本日一番のため息。

〖は?なんで主神が?あと、うちの旦那をバカバカ言わないでくれる?〗
〖お母様⋯〗
〖ブレませんね〗

〖バカはバカだろ。まったく。魔法陣と聞いて降りてきたんだよ。きっとヤツに繋がってるってな。ったく、無茶しやがってよ。ああいう時のアイツは止めても無駄だからな、だからせめて無茶はするなって言ったのによ〗ガシガシっ
思い出して、頭をガシガシかく鍛冶神。

〖それで主神はどうしたのよ?早く言いなさい!それから主神はやる時はやるのよ!〗
〖お母様⋯〗
〖ブレませんね〗

〖あいつ、魔法陣と精霊を切り離してから、魔法陣に自分の魔力流し込んでヤツを追ったんだよ。それだけじゃない。力を集めてたヤツの魔道具を破壊し、ヤツに攻撃した〗

〖やるじゃない〗ふふんっ
〖お母様⋯〗
〖やっぱりブレませんね〗

はあっ
〖それから、あの阿呆〗

〖今度はアホ?〗ムカッ
〖お母様⋯〗
〖魔神、黙りましょうか?〗ひゅお~
〖はい⋯〗

〖阿呆だよ。あいつ、それだけのことをしながら魔法陣を書き換えたんだよ。ヤツに取り込まれた精霊とエルフの魂を奪い返したんだ。途中でぶっ倒れても不思議じゃなかった。よくやったよ〗

〖それでこそ主神よ〗
〖ええ。お父様、素晴らしいですわ〗
〖ですが、それだけの無理をしたなら⋯〗

〖ああ。ボロボロなはずだ。寝込んでも不思議じゃねぇよ。なのに、バートにこっぴどく叱られてたな。正座で〗

〖主神⋯〗
〖お母様⋯〗
〖では、ひとまずは?〗

〖ああ。取り込んだ力を根こそぎ奪い返して、媒介にしていた水晶も破壊したから、しばらくは大丈夫だろって言ってたぞ〗

〖そうですか⋯〗

〖だが、ヤツは聖域に気づいた。だから、ここも完全に安全とはいかなくなったわけだ。いつになるか分からんが、必ずやってくるだろう〗

『待ってくれ、鍛冶神様。そうしたらサーヤの居場所も』
〖ああ、おそらく、気づいてるだろう〗
『そうか』

しーん⋯
なんとも言えない思い空気が、部屋を支配する。が⋯

『あらあらまあまあ、みんなどうしたの?遅かれ早かれ、いずれは知られることだったでしょう?いつバレるのかと、ハラハラしているよりも、もう知られているなら、開き直って、一刻も早く私たちが強くなるしかないんじゃない?』
『凛さん』

静まり返った部屋に凛の言葉が響き渡った。

『大丈夫よ。今のサーヤはとっても元気だし、みんなもいる。それに、今度は私も負けないわ』
凛は口では強気の発言をしているが、グーになったクマの手はぶるぶる震えている。

『そうだな。俺たちが強くなればいいだけだな!』
凛に触発されて、ゲンも奮い立つ

〖そうね〗
〖はい。その通りですね〗
〖大丈夫ですよ〗

〖そうだな。あ、救出したエルフたちな、主神やバートが厳選してこっちに何人かくるはずだ。それから、助け出した精霊もな。ヤツから奪い返した精霊とエルフの魂は、主神が責任もって輪廻の輪に乗せるって言ってたからな。こっちに来るヤツらの世話頼むな〗

『まかせてぇ』
結葉様のやらなきゃいけないこととは、このことのようです。が、
『ダメですわ!お母様に任せては!』
『そうですわ!何をされるか分かりませんわ!』
『そうにゃ!危険にゃ!』
アイナ様たち大反対!

『え~?ひどぉい、大丈夫よぉ』
『『『ひどくない(にゃ)ですわ!』』』
うわぁ~

〖お前ら仲良いなぁ。まあ、頼むな。それから、魔神、シア、お前ら一度天界に戻れ。んでもって、あいつ無理やりにでも休ませろ。そばで見てるしかできなかった俺が言うんだ。かなり無茶してるはずだ〗

〖お父様、普段はなんでもないことでも、大騒ぎしますけど、ほんとにしんどい時は何も言いませんからね〗
〖仕方ないわねぇ。そういう奴なのよ。昔から。ほら、シア行くわよ〗いそいそ
〖え?今すぐですか?〗
〖そうよ!ほら速く!〗

〖おう!バートにこっぴどくやられてるからな、存分に甘やかしてやれよ。俺がしばらくこっちにいるからよ〗

〖甘やかしはしないけど!まあ、主神がどうしてもって言うなら考えてあげてもいいわよ〗ツーン
〖お母さま⋯〗
〖ブレませんね。まあ、頼みますよ。ついでに人選も手伝ってきたらどうです?〗
〖そうね。じゃあ、留守番お願いね!ほら、シア!〗
〖み、皆さん行ってきま⋯〗シュンっ

『行ってらっ⋯しゃ~い。あらあらまあまあ』
『シア様の声も凛さんの声も途中だったな』
『あらあらまあまあ、そうねぇ』
みんな、ジーニ様の勢いにあんぐり。

きゅるる『あれが噂のツンデレ?』
『あらあらまあまあ、そうね?』
ジーニ様、あとでネタにされるね。

〖まあ、そういうわけでな、しばらく俺もこっちに世話になるからよ、頼むわ〗ニカッ

『『『は、はい!』』』
『『『よろしくお願いします』』』
ドワーフさんたち一斉に立ち上がって深深とおじぎ!

〖おう!〗

と、言うわけで鍛冶神様、聖域に仲間入りです。

『賑やかになるくらいで済めばいいけどな』
〖難しいでしょうね。それは。頑張ってくださいね、師匠〗
『はあ⋯』
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