転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

連載

ある日の七草粥日記 番外編

「おばあちゃん⋯」へにょん
『あらあらまあまあ？その複雑なお顔は何かしら？』
サーヤがおばあちゃんのしっぽを掴んで変なお顔してます

「おばあちゃん、おかゆ、おいちいおかゆ？」
『美味しいおかゆ？』
なんのことかしら？

「おいちゃんが⋯」
サーヤが指さす方向には

『せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これぞ七草♪』
と、鼻歌交じりに言いながら草をつんでいます。

『ああ、七草粥ね！』
「うにゅ～」
サーヤの変な顔は更に変な顔に

『あらあらまあまあ、なるほどね。サーヤは本当の七草粥は少し苦手なのよね』
「うにゅ～う」
七草の中には今は雑草の扱いになって食べないものも多いから、苦味と匂いが確かに子供にはちょっと辛いかしらね。

「しぇりみょ、ちょっちょ⋯でみょ、だいこんちょ、かぶは、へいち。ぢゃけぢょ～」
『セリも得意じゃないけど、少しなら何とか食べられて、大根とカブに関しては葉っぱも大丈夫なのよね。問題は、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、なのよね』
「うにゅ～う」
困ったわねぇ。ゲンさんのあの調子じゃ伝統的な七草粥作る気満々のようだし⋯でも

『伝統も大切だけど、お鼻がきくハクやギン様もいるから、匂いがきついのは確かに大変かもしれないわねぇ』
「どちて、おかゆ、たべりゅ？」
あらあらまあまあ、サーヤがどうしても食べたくないのか、理由を聞いてきたわね。

『あらあらまあまあ、説明したことなかったかしら？まあ、本来なら人日の節句の日の朝に春にね、七草が入ったお粥を食べると、その年、無病息災でいられるって言うことなのよ。病気も怪我もなく元気でいられるってことね』
「むびょーしょくしゃい…」
『そうよ。ゲンさんもきっと、サーヤやみんなに元気でいて欲しいから、楽しそうに七草をつんでるのね』
「しょっか～」

あら、サーヤの顔が変わったわね。ちらちらゲンさんを見てるし。
『サーヤ、せっかくゲンさんがサーヤたちの健康のために作ってくれるのだから、一口だけでも美味しいって食べてあげたらどうかしら？それとは別におばあちゃんが食べやすいお粥も頼んであげるから。そうね、大根とカブが入って居れば七草の一部も入るしね。どうかしら？』
サーヤにせっかくだから頂いてみたらと言うと、

「あい。さーや、おいちゃん、あいがちょちて、たべりゅ」
握りこぶし作って鼻息荒く決意を顕にしてるわね。そこまで決意が必要かしら？

『ふふ。そうね。ありがとうは大事ね。偉いわサーヤ』なでなで
「えへへ～♪」
ふふ。単純ね。でも、ありがとうを自分で気づいたんだから偉いわ。サーヤ。

その後
『今日は七草粥だぞ～これを食えば一年間無病息災！さあ、食べてくれ！』

ゲンさんが元気に振舞った七草粥は案の定⋯

『お、お父さ～ん、お鼻が～』
『ハク、私も同じだが、あのお粥とやらからは、何か神聖な気を感じる。が、頑張って一口だけでも』
『息子よ、ワシの分、勿体ないが食べさせてやる』
『親父、孫の前で何を言うんだ』
『吹雪さん、孫の手本になってくださいな。さあ』
『し、白雪、かんべんしてくれ』
やっぱり鼻のきくフェンリル一族にはちょっと厳しいようで、他にも

『ゆ、山桜桃ぼく倒れそう』
『春陽、が、頑張って。配膳まではしないと⋯』
獣人の山桜桃ちゃんと春陽くんも辛そうです。

でも、神様たちは
〖あら、これ位、今までのポーションに比べたらなんてことないわよね〗
〖そうですね。この苦味も慣れればなかなか美味しいですよ〗
〖ふむ。大人の味ということですね〗
神様には中々好評。

結葉様や精霊王様たちも
『あらぁ。これ、食べられたのねぇ。しかも栄養があるなんてぇ』
『まだまだ知らないことがあるのですわね』
『勉強になるにゃ』
『中々美味しいですわね』
好評みたいです。そして、

「おいちゃん、あいがちょ、いちゃぢゃきましゅ」ぷるぷる
サーヤは左手で鼻をつまんで涙目で、右手はスプーンにお粥をすくってぷるぷる。
一生懸命食べようとしてます。

『あらあらまあまあ、そこまでかしら？まあ、頑張って』
「あ、あい。しぇーにょっ」ぱく

もきゅもきゅ

あらあらまあまあ、目をつぶって食べてるわね

ごっきゅん
「ぜーぜー、ちゃ、ちゃべちゃ。おいちゃん、あいがちょ、おいち」
あらあらまあまあ、サーヤったら涙目ね

『そうか、そりゃ良かった。ありがとな』
「あい」ぜぇぜぇ
これにはさすがにゲンさんも苦笑いしながら、サーヤの頭を撫でているわね。

それじゃあ、頑張ったサーヤたちに、そろそろ助け舟を出してあげないといけないわね。
『偉いわ。サーヤ、よく頑張ったわね。それじゃ、子供たちと良かったらギン様たちもこちらなら食べられるのではないかしら？』

そう言って用意したのはセリと大根、カブ、それから大根とカブの葉、そして、ほうれん草と鶏肉と卵で食べやすくしたもの。セリも香りがあるから量はほんの少しね。
「あいがちょ。おいち」
『うん。これなら大丈夫～ありがとう～』
『ありがたい。これなら何とか』
『ワシは鶏肉多めで⋯』
『孫に手本を見せてくださいな』
『はい⋯』
ふふ。サーヤもハクたちも大丈夫そうね。

『凛さんありがとうございます』
『助かります。でもあちらもちゃんと頂きました』
『あらあらまあまあ、それは良かったわ』
山桜桃ちゃんと春陽くんは調理するのも大変だったみたいね

『う～ん、匂いが強いの考えなきゃな。うん。匂いがしない品種改良でもしてみるかな』
「ほえ？」
『あらあらまあまあ⋯』
ゲンさん、何事も程々にね。
ともあれ⋯

〖うん。これでまた守が強くなったわね〗
〖凄いですわね。異世界の料理〗
〖もっと取り入れてもらいましょう〗
〖〖〖ふふふふ〗〗〗

あらあらまあまあ、どうやらまた一つ、聖域の防御力が上がったみたいね。