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375.5 山桜桃は見た!

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    ゲンさんがご不在の為、本日、恐れ多くも神様方を前に、サーヤちゃん監修の元、春陽と私が焼き方の先生として、ホットケーキパーティーを開催することとなりました。

ゲンさんも色々すごかったですけど、サーヤちゃんも十分にすごいです。

実はお野菜が苦手だったと仰った、ジーニ様や結葉様の為に、

「おんやしゃいは?」

と、いつもとは違う温野菜サラダというものを提案して下さったり、ドレッシングの使い方まで提案して下さいました。
私たちはまだまだだと、改めて痛感致しました。

ホットケーキのトッピングに関しても、前回と同じではご納得なさらないようで、先程から

「じっけんじっけ~ん♪」

と歌ってらっしゃいます。とても可愛いらしいです。

    さて、皆様にホットケーキの焼き方を説明しなくてはいけなかったのですが、皆様の前でお話するなんて、本当に緊張致しました。
何しろ、神様までいらっしゃるのです。私など本来ならお目にかかることすらないはずなのに、本当に未だに信じられません。
ですが、皆様暖かく、緊張する私たちを励まして下さいました。涙が出そうになってしまったのは内緒です。

    説明を終えた途端、サーヤちゃんをはじめ、ちびっこ達がさっそく自分たちで焼き始めようと動き出しました。
危ないです。お願いですから、私たちが着くまでじっとしていて下さい。

サーヤちゃんがホットケーキより先に野菜を焼き始めました。どうも、おばあちゃんとゲンさんから、まずは野菜を食べなさい。と、教わったらしく、常にそれを実践されているのです。偉いです。

今回、サーヤちゃんとゲンさんが作り出してくれたお野菜。ブロッコリー、トマト、とうもろこし。他にもありましたが、私はこの三つが特に気に入りました。ジャガイモと、玉ねぎ、にんじんはこの世界にも似た物がありますし。
ブロッコリー、茹でてマヨネーズを付けるだけでこんなに美味しいなんて衝撃でした。花の蕾とお聞きして更にびっくりです。
しかも、サーヤちゃんは

「むしちゃほうが、もちょっと、はごちゃえがあって、あじみょ、こい?かにゃ?」

と、仰ってました。調理法でそんなに変わるなんて!ゆで卵も茹で方で体にかかる負担が違うのだとか。びっくりです。とはいえ、料理や好みによって、硬さを変えてもいいそうです。料理は奥が深いです。

後は、茎もちゃんと使わないと、もったいないお化け?というものが出るそうです。

「もったいね~もっちゃいね~って、くりゅんだよ」

と、お化けの真似をしてらっしゃいましたが、怖いどころか可愛いだけでした。

トマトは生でも、とても美味しいのに、

「とまちょは~、ものしゅご~~~っく、いりょんにゃこちょ、できりゅにょ~」
と、力説されてました。
「ぴ~ざ、ぱすちゃ~♪」
と、歌まで歌って。

そして、なにより、トウモロコシです。味見で皆さんと食べたとき、そのあまりの甘さと、はじめての味に驚きました。思わず夢中で食べてしまいました。そこでもサーヤちゃんが

「あちょで、ちゅかうんだ~」
と言って、
「あちゅっあちゅっ」

と言いながら芯から実を外し始めました。時々つまみ食いしているのがバレていないと思っているのもかわいいです。

    さて、前置きが長くなってしまいました。
私たちが席に到着してお手伝いしようと思いましたら、サーヤちゃんは、ドワーフさんに作って頂いた足台に立って、お一人でジャガイモを鉄板に乗せて調理しだしたのです。バターをぽとり、お塩をパラパラ。乗せるだけの作業のようでホッとしていましたら、次に、菜箸を使ってほうれん草と、先程一生懸命むいてらした、とうもろこしをバターで炒めだしたのです!
先程の乗せるだけとは違う作業に、本来でしたらお手伝いしなければならないのですが、あまりに楽しそうにやってらっしゃるので、ただただ、見守ってしまいました。火傷だけはなさらないで下さいとハラハラしながら。

「できちゃ~♪」

と、美味しそうに、はふはふしながら完成した「じゃがバタ」?を食べ始めるサーヤちゃん。
気づくと周りをジーニ様たちが取り囲んでいらっしゃいました。

フゥさん達とちびっこの皆さんですか?サーヤちゃんを真似しながら、ほぼ同時進行でお料理してましたから、夢中で食べてらっしゃいますよ。クゥは手伝いに徹してましたので、私同様食べていませんが。

サーヤちゃんを取り囲んでいた皆様は、サーヤちゃんの新提案を受け入れて戻っていかれましたが、途中、華火様がサーヤちゃんのじゃがバタマヨ?を盗み食いしてしまい、サーヤちゃんが泣き出しそうになってしまった時は、焦りました。
ジーニ様とシア様エルンスト様から殺気が⋯
ご無事で何よりです。

    そして、いよいよサーヤちゃんは、ホットケーキを焼き始めるようです。

あっあっ、そんな爪先立ちでプルプルしながら!

サーヤちゃんはまずは、生地を流し始めたのですが、小さめの丸?違いますね?ちょっと長いですか?葉っぱみたいな?
そして、反対側からまた⋯今度は逆の向きに?
ああ!ココロちゃんのおしりのハートですね!
すごいです!たしかにゲンさんは、基本の丸と仰ってましたが、こういう事だったんですね!勉強になります!
サーヤちゃんも満足気です!キレイなハートになりましたからね!
ご自分で拍手してらっしゃいます。かわいいです。

ハートのホットケーキに気づいたココロちゃんが早速、春陽に手伝ってもらいながら真似をし始めました!もちろん、周りの皆さんもです。

    そんなことは、気づきもせず、次を焼きにかかるサーヤちゃん。ああっまたそんな爪先立ちでぷるぷるとっ!
なぜ爪先立ちしてしまうのでしょうか?お願いですから倒れないで下さいね!

サーヤちゃんはご機嫌で鼻歌交じりで生地を鉄板へ。今度は基本の丸?ん?違いますね。大きめの丸に二つの小さな丸?すると、

「ありゅうひ♪もりにょ、にゃか~♪くまさんに~♪でああっちゃ~♪」

と、可愛く歌ってますが、森の中で熊さんにあったら、ふつう死んじゃいます!サーヤちゃんは出会ったことがあるのでしょうか?

そして、サーヤちゃんは、私たちから渡された果物を使ってお顔を作り出しました。
そうやって使う為だったのですね!またまた、びっくりです。
これはもっと果物を増やさないといけないですね!

だけど、あのかわいい顔が本物の熊だと思っているのなら、大問題です。サーヤちゃんが森の中で、もし、本物の熊に会ったら、驚きすぎて逃げるのも忘れてしまうのではないでしょうか?もしくは、抱きついてしまうとか?どちらにせよ、魔物についてのお勉強をしなくてはいけません。
後ほどジーニ様に申し上げなくては。

そんなことを思いながら、怪我しませんように見つめていると、

「ゆすらちゃん?」

と、心配そうに覗かれてしまいました。
失敗しました。慌てすぎて思わず本音が⋯いえ、そうではなく、えっと、くまさんホットケーキをひっくり返すのにフライ返しがもう一つ欲しいのですね。こうなったらやるべきことをするしかありません。

くまさんホットケーキをひっくり返すべく、サーヤちゃんの後ろから抱えるようにしてお助けします。役得です。息を合わせて

『せーのっ』
『「えいっ」』

ちゃんとひっくり返ったでしょうか?心配です。
すると、サーヤちゃんが大丈夫そうだと教えてくれます。
良かった~のハイタッチをしました。
この時はまだ気づいていませんでした。周りの気配に。

くまさんホットケーキをひっくり返している間に、ハートのホットケーキが焼けました。
サーヤちゃんはバターとハチミツの基本のホットケーキにするのかと思いましたが、さつまいものピューレを絞り器でハートを縁どり始めました。これはかわいいです!それに美味しそうです!ですがサーヤちゃんは

「くりに、きたい」

と、仰ってました。ということは、栗の方がもっと美味しいということでしょうか?ごくりっ

こちらをデコレーションしている間に、今度はメインのくまさんホットケーキが焼けたようです。リンゴの焼けるいい香りがしています!
さて、これは、上手くひっくり返るのでしょうか?
でも、やるしかありません。

『せーのっ』
『「えいっ」』

サーヤちゃんと二人、息を合わせてひっくり返すと⋯成功です!あとはこれをお皿へ!

「やっちゃあ!」

と、かわいい声が!実験は大成功のようです。サーヤちゃんはこちらにもベリーソースや生クリームでデコレーション。かわいいくまさんを書きました。お耳にはアイスも添えて。レモンの酸味を和らげてくれるでしょう。
一口食べたサーヤちゃんはよほど美味しいのか、足をパタパタしています。
どうですか?と、お聞きしたらなんと

「あ~ん♪」

と、私に一口下さろうとするではありませんか!お断りしましたが、再三の「あ~ん♪」に思わず赤面してしまい、顔を背けてしまいました。まだまだ修行が足りないですね!頑張らなくては!
そして、「あ~ん♪」に負けて一口頂くと、しかもサーヤちゃんの「あ~ん♪」で、です。美味しくないわけがありません!思わず感想を大きな声で言ってしまいました。お恥ずかしい限りです。ですが、夢のような楽しい一時は

〖サーヤ?山桜桃~?〗

というジーニ様のお声により現実へと引き戻されてしまいました。
今、皆さんに囲まれています。
あまりの怖さにサーヤちゃんと抱き合ってしまいましたが⋯。
サーヤちゃんは気づいておられないと思いますが、この大半の感情は「あ~ん♪」に対する嫉妬ではないかと⋯私は無事にこのあとも生きていられるでしょうか⋯?
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