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342 おいちゃんの秘策

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    アイナ様とニャーニャにゃん。今すぐに急いで必要なのは、めーめーさんのバリカンだという。

『なんじゃそりゃ?』
『今までの話の流れでバリカン⋯』
『『まあ、アイナ様とニャーニャだからなぁ』』
涙を浮かべて話していたはずなのに、あまりに唐突な展開に呆れながらも、付き合いの長い親方たち、あっさり納得。

『ううっ親方たちが何だかひどいですわぁ』よよよ⋯
『事実だから仕方ないだろがよ』
『親方、容赦ないにゃ』
『このやり取りも久々な気がするねぇ』
ずずっとお茶をすする奥さん。どうやら、落ち着いてきたようだ。

『ま、まあ、取り急ぎ、私たちが戻って来たきっかけはバリカンでしたけれども、ドワーフのどなたかには来ていただかないといけない。とは、私たちが行くよりも前、それこそ、初めから話していたそうですわ』
気を取り直して話すアイナ様。

『そうなのか?』
バリッ!おせんべいをバリバリしながら会話しだした親方。こちらも落ち着いたようだ。

『そうにゃ。でも聖域は綺麗な心の持ち主しか入れないにゃ。だから、各地で不遇の境遇にある者たちを、神様方が保護して、その中でも心の綺麗な者を聖域に送るおつもりなんだそうにゃ』
『ですから、これから獣人やエルフ、ドワーフ、人間と、あらゆる者たちが少しずつ集まるだろうと言うことです。今はまず、以前から天界で保護されていた獣人の山桜桃ちゃんと、春陽くんが来てますわ』
『ドワーフもそれで見つかるのを待つおつもりだったそうなんだけどにゃ?そんなドワーフがそもそもいるかも分からないわけにゃ。だから、いつ来るかも分からないにゃよね?』

『そうさねぇ』
バリンっ奥さんもおせんべいがお気に入り。

『でも、生活はしなきゃいけないにゃ~』
『そんな風に悩んでるところに、一番初めに現れた精霊王が、ドワーフと繋がりが深い私だったわけですわ。そうしましたら、お母様がのんきに『こっちに引っ越してくればいいじゃない♪』とか、おっしゃいまして』
はぁ~まったく。ご自分で精霊王は別々に暮らした方が良いとか言いましたのに。と、ため息をつくアイナ様。

『でもにゃ、ご主人も親方も既にこの土地があるにゃ。みんなが暮らすこの土地を放置することは出来ないし、村ごとみんなで引っ越すなんて出来ないにゃ』

『まあ、そうだよな』
『そうさねぇ』
ずずずっ。バリバリバリバリ
『『お代わり』』ずいっ

『あっ。はい。ですから、一度はこの村からドワーフを呼ぶお話はなかったことになったのですが』
お代わりを用意しながら話すアイナ様。

『ぽぽちゃんの、ご主人様のそばにいるならきっとすごいドワーフさん発言から、話が再浮上したのにゃ~』
お茶を注ぐニャーニャ。とくとくとくとく。

『ふんふん。やっぱり見所のある小僧だな』
『会ってみたいねぇ』
バリンっ。ずずっ
『『あちっ』』

キラーン!
今、言いましたわよね?
言ったにゃね
『では、会いに行きましょう』
『今から行くにゃ!』

『は?』
『今からかい?』
ボロっ
『あっしまった』
『もったいない』
ひょい。バリッ

『そうですわ。何しろめーめーさんたちが待ってますし』
『みんなも待ってるにゃ』
『何しろ、親方に頂いたナイフでも手に負えませんでしたの』
『ちびちゃんたちはなんとかなったみたいなんだけどにゃ』
『大人のめーめーさんは、手に負えなかったのですわ』
『おどろいたにゃ~』
『驚きましたわね~』
は~あ、と、頬に手を当ててため息をつくアイナ様とニャーニャにゃん。そこに

『なっ!?ちょっと待ってくれ!ナイフってアイナ様に渡した護身用のあのナイフか!?』
『うちのが打ったあれかい!?』
ガシャっ
『ああっ茶がこぼれた!』
『何やってんだい!』
『お前もだろが!』
『拭いて拭いて!』
『『あ~もったいない』』

キラーンッ!
食いつきましたわ!
食いついたにゃ!
『は~ぁ。そうですわ。あのナイフですわ。私もショックでしたわ』
『ニャーニャもにゃ。まさか、ドワーフ最強の親方のナイフが敵わないなんてあるわけないと思ってたにゃ。ショックなんてものじゃなかったにゃ』
はぁぁぁ~

『『⋯⋯』』

チロっ
効いてますわね。
効いてるにゃね。
『でも、あのナイフ以外は全部刃こぼれしてしまいましたから』
『やっぱり親方はすごいってことにゃね』
ゲンさん直伝、落としてあげる作戦、通用するでしょうか?
分からないにゃ。信じるしかないにゃ~

『あのナイフが効かなかった⋯だと?』
『あんた。どうするんだい』
『どうするもなにも、俺が打ったもの以外通用しなかったんだろ?なら、俺が行くしかねぇだろが』ニヤリ
『それでこそドワーフの長だね』ニヤリ

キラーンッ!
釣れましたわ!
釣れたにゃ!
『親方、おかみさん、それでは』
『行ってくれるにゃか?』

『当たりめぇだ!このままじゃドワーフの名折れ!何としてでもそのバリカンやらハサミやらいうものを作ってやろうじゃねぇか!おい!支度だ!』
『はいよ!あんた!』

やりましたわ!
やったにゃ!
親方ゲットですわ!
ゲットだにゃ!

『おい!手空いてる腕利き集めろ!足りないもん調べ尽くすぞ!』

『え?あ、あの?』
『お、親方?』
ちょ、ちょっと待って⋯

『あいよ!女衆も声かけるかい?』
『おう!向こうに工房を作るまでには通いになるぞ!』
『忙しくなるね!あんた!』
『おうよ!腕が鳴るぜ!ワハハハハ』
『そうさね!あんた!ワハハハハ』
親方たち、やる気になり過ぎた!

『あ、あの?とりあえず親方だけでも、あの⋯』
『ムリにゃ。ご主人、腹くくるにゃ。あの暴走は止まらないにゃ』
『で、でもぉ』
『親方!おかみさん!少数精鋭で頼むにゃ!』
戸惑うアイナ様と、開き直ったニャーニャ。

『ああ?仕方ねぇなあ!』
『分かったよ!』
ニャーニャ、えらい!ぱちぱち

『せめて出来るのはこのくらいにゃ⋯』ふ~。
額の汗を拭うニャーニャにゃん。
『ニャーニャ!素晴らしいですわ!』
ニャーニャにゃんにすがりついて感謝するアイナ様。

『『ワハハハハハ』』

兎にも角にも、作戦は見事成功したようだ。

『『は~あぁぁぁ』』
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