上 下
251 / 681
連載

297 精霊たちの怒り

しおりを挟む
『あまり大きな口を開けないことをおすすめするわ』
『そうですね。つい、うっかり。なんてことになりかねませんからね』

氷と水の精霊が妖艶な笑顔を向けながら二匹に忠告する。

『な、何のつもりだ』
『そうよ!私たちをなんだと…っ』
ギリイッ
『『ウグッ』』
水と氷の輪がたちまち二匹の口を締め上げる。

『まだ状況が分かっていないようですね』
ギリッとまた一段階締め上げる水の精霊。

『グッ』
呻き声をあげる先代の兄

『私たちがまだ我慢している内に謝罪の一つでも言えれば、多少は許しを得られるかもしれないのにね』
氷の精霊が言うと

『誰が!許しを乞うのは貴様ら…っっ』
ギリイッ
『ギャンっ』
氷の精霊が今度はハクの母親を締め付ける。

『言葉に気をつけなさい。今度は締め付けるだけじゃ済まないわよ。それとも謝罪する気になったかしら?ああ、口先だけの嘘の謝罪なら受け付けないわよ』
氷の精霊が冷たく言い放つ。睨みつけてくる愚かな二匹。そこに

『ねぇ、森の主、先代。今なら、今まで言えなかったことを言えるんじゃない?』
風の精霊が提案すると、

『そうよね。今なら喋れないですもの。聞くしかないわよね?』
雪の精霊も二匹に冷気を吹き付けながら賛同してきた。

『ふむ。それもそうですね』
ギリッ
『·····っ』
水の精霊がなにか喋ろうとした口を更に締め付ける。

『でも、森の主と先代の前に私たちが言わせてもらう。いいわよね?』
ギリッ
『·····ぅっ』
氷の精霊も同様に締め上げる。

『ああ。分かった』
先代も了解し、
『話を聞かないようならまたこいつを締め上げてやる』
そう言ってギン様は氷の龍で軽く締め上げる
キリキリッ
『『ぐうっ』』

『面白そうだな。参加させてもらうぞ』
『…聞かないって言ったら懲らしめてやればいいよね?』
火の精霊に続いた土の精霊がそう言うと空中に無数の石が刃となって無数に浮かぶ。

『お、それいいな。俺もやる』
『賛成』
火と雷の精霊も空中に無数の炎と雷の槍を展開させる。

さすがにこれには二匹も顔を青くしている。

『さあ、それじゃ話しましょうか』
ビュオ~っと風の精霊が風を吹かす。

『まずは、私たち精霊や妖精たちが、あんたたちに守られたことなどないわ』

『『なっ』』ビクッ
周りに浮かぶ槍などがいっせいに動いて、止まる。

『…今はまだ喋らないでくれるかな?分かった?』
土の精霊が面倒くさそうに言うが、目は鋭い。二匹は頷いてひとまずは黙った。

『あんたたちが何をしたか?森を守る?ふざけたこと言わないで!力を誇示するために無駄に自然を壊し、森を守るといいながら、自分より弱い魔物をこれみよがしに倒し、強いものは見て見ぬふり』
風の精霊が怒りを抑えながら言うが、その周りでは風が唸っている。

『その時、何が起こっているか?あんたたちが破壊した自然にも妖精や精霊がいる。その子たちは不意打ちで攻撃され傷ついた』
今度は雪の精霊が堪えきれずいくつもの雪玉を二匹の顔に。

『『グッ』』
固い雪玉は二匹の顔を腫れあげ、傷を作る。

『自分より弱い魔物を倒すために無駄にでかい魔法を使うため、無理やり妖精たちの力を使いボロボロにした。もちろん周りの自然もな』
そう言って火の精霊は二匹の顔にできた傷を焼く。

『『グアッ』』
二匹はなすすべなく攻撃を受けるが、何かを言おうとしてまた締めあげられる。

『…お前たちが見て見ぬふりをした強いものが何をするかなど、馬鹿でもわかるだろう?』
土の精霊はドガン!と土の槍を地面から突き出し、二匹の顎を打つ。
『『グガッ』』


『あんた達がやったことはまだまだあるけど、それが大事にならずに来たのはなぜだと思う?その後始末をして回ったもの達がいたからよ』
ピシャンっと今度は雷の精霊の落とした雷が全身を駆け抜ける。

『『ギャンッ』』
気絶しそうになった二匹に水の精霊が冷水を浴びせる

『順番が逆で良かったですね。水は雷をよく通す。試してみますか?』

『『ううっ』』
よろよろになりながらもまだ睨みつける二匹

『後始末をして回ったのは誰か?それは、お前たちが散々弱いだなんだと罵ってきた森の主たちよ。しかも、必ずお前たちのせいで傷ついたものたちに、あんた達に変わって謝罪までしてね』
氷の精霊は今度こそ無数の氷の刃を立てた輪で締め上げた。

『『グッ』』
ぽたぽたと口の周りから血を垂らす二匹。

『これだけの事をされてきた妖精や精霊たちが、あんたたちに力を貸すとでも?まして従うだなんてありえないわ。許すわけが無いでしょう!』
今まで堪えていた風の精霊が、風で二匹の頬を切りつける。

『『……っ!』』
これだけ言われてなお、二匹は精霊たちを睨みつけていた。
それを見ていた者たちは…

『子供たちを、あちらに行かせておいて正解だったな』
『全くだ。とてもだが見せられない』
アルコン様は双子たちを、ゲンはサーヤたちのことを思って呟いた。
〖そうね、これはあまり、教育的によろしくないわ〗
〖ちょっと、やりすぎといいますか〗
〖バートがいたら喜んで参戦しそうですね…〗
神三人のつぶやきに、皆、想像したのか
『『〖〖うわぁ~〗〗』』と声が揃った。

バートさんを知らないアイナ様だけが
『ええ?なんですの?』
そんな、アイナ様に

『アイナ様、世の中にはのぉ』
『知らんでいいこともあるんじゃよ』
じぃじ達は悟りを説いていた……
『は、はあ?』

アイナ様、その内、お会い出来ますよ。フフフ…

        ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆
    お読み頂きありがとうございます。1話を私にしてはだいぶいじりました。訂正前を覚えてる方は少ないかと思いますが、どちらがいいのかちょっと迷いつつ直してみました。お時間がありましたら見ていただけると嬉しいです。よろしくお願いしますm(*_ _)m
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

可愛いけど最強? 異世界でもふもふ友達と大冒険!

ありぽん
ファンタジー
[お知らせ] 書籍化決定!! 皆様、応援ありがとうございます!!      2023年03月20日頃出荷予定です!! 詳しくは今後の刊行予定をご覧ください。  施設で暮らす中学1年生の長瀬蓮。毎日施設の人間にいいように使われる蓮は、今日もいつものように、施設の雑用を押し付けられ。ようやく自分の部屋へ戻った時には、夜22時を過ぎていた。  そして自分お部屋へ戻り、宿題をやる前に少し休みたいと、ベッドに倒れ込んだ瞬間それは起こった。  強い光が蓮を包み込み、あまりの強い光に目をつぶる蓮。ようやく光が止んできたのが分かりそっと目を開けると…。そこは今まで蓮が居た自分の部屋ではなく、木々が生い茂る場所で。しかも何か体に違和感をおぼえ。  これは蓮が神様の手違いにより異世界に飛ばされ、そこで沢山の友達(もふもふ)と出会い、幸せに暮らす物語。 HOTランキングに載せていただきました。皆様ありがとうございます!! お気に入り登録2500ありがとうございます!!

もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!

ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー] 特別賞受賞 書籍化決定!! 応援くださった皆様、ありがとうございます!! 望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。 そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。 神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。 そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。 これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、 たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。

転生美女は元おばあちゃん!同じ世界に転生した孫を守る為、エルフ姉妹ともふもふたちと冒険者になります!

ひより のどか
ファンタジー
目が覚めたら知らない世界に。しかもここはこの世界の神様達がいる天界らしい。そこで驚くべき話を聞かされる。 私は前の世界で孫を守って死に、この世界に転生したが、ある事情で長いこと眠っていたこと。 そして、可愛い孫も、なんと隣人までもがこの世界に転生し、今は地上で暮らしていること。 早く孫たちの元へ行きたいが、そうもいかない事情が⋯ 私は孫を守るため、孫に会うまでに強くなることを決意する。 『待っていて私のかわいい子⋯必ず、強くなって会いに行くから』 そのために私は⋯ 『地上に降りて冒険者になる!』 これは転生して若返ったおばあちゃんが、可愛い孫を今度こそ守るため、冒険者になって活躍するお話⋯ ☆。.:*・゜☆。.:*・゜ こちらは『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』のスピンオフとなります。おばあちゃんこと凛さんが主人公! が、こちらだけでも楽しんでいただけるように頑張ります。『転生初日に~』共々、よろしくお願いいたします。 また、全くの別のお話『小さな小さな花うさぎさん達に誘われて』というお話も始めました。 こちらも、よろしくお願いします。 *8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。

小さな小さな花うさぎさん達に誘われて、異世界で今度こそ楽しく生きます!もふもふも来た!

ひより のどか
ファンタジー
気がついたら何かに追いかけられていた。必死に逃げる私を助けてくれたのは、お花?違う⋯小さな小さなうさぎさんたち? 突然森の中に放り出された女の子が、かわいいうさぎさん達や、妖精さんたちに助けられて成長していくお話。どんな出会いが待っているのか⋯? ☆。.:*・゜☆。.:*・゜ 『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』の、のどかです。初めて全く違うお話を書いてみることにしました。もう一作、『転生初日に~』の、おばあちゃんこと、凛さん(人間バージョン)を主役にしたお話『転生したおばあちゃん。同じ世界にいる孫のため、若返って冒険者になります!』も始めました。 よろしければ、そちらもよろしくお願いいたします。 *8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。

もふもふが溢れる異世界で幸せ加護持ち生活!

ありぽん
ファンタジー
いつも『もふもふが溢れる異世界で幸せ加護持ち生活!』をご愛読いただき、ありがとうございます。 10月21日、『もふもち』コミカライズの配信がスタートしました!! 江戸はち先生に可愛いジョーディ達を描いていただきました。 先生、ありがとうございます。 今後とも小説のジョーディ達、そしてコミカライズのジョーディ達を、よろしくお願いいたします。       ********* 小学3年生の如月啓太は、病気により小学校に通えないまま、病院で息を引き取った。 次に気が付いたとき、啓太の前に女神さま現れて、啓太自身の話を聞くことに。 そして啓太は別の世界の、マカリスター侯爵家次男、ジョーディ・マカリスターとして転生することが決まる。 すくすくそだった啓太改めジョーディは1歳に。 そしてジョーディには友達がいっぱい。でも友達は友達でも、人間の友達ではありません。 ダークウルフの子供にホワイトキャットの子供に。何故か魔獣の友達だらけ。 そんなジョーディの毎日は、父(ラディス)母(ルリエット)長男(マイケル)、そしてお友達魔獣達と一緒に、騒がしくも楽しく過ぎていきます。

小さいぼくは最強魔術師一族!目指せ!もふもふスローライフ!

ひより のどか
ファンタジー
ねぇたまと、妹と、もふもふな家族と幸せに暮らしていたフィリー。そんな日常が崩れ去った。 一見、まだ小さな子どもたち。実は国が支配したがる程の大きな力を持っていて? 主人公フィリーは、実は違う世界で生きた記憶を持っていて?前世の記憶を活かして魔法の世界で代活躍? 「ねぇたまたちは、ぼくがまもりゅのら!」 『わふっ』 もふもふな家族も一緒にたくましく楽しく生きてくぞ!

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

作業厨から始まる異世界転生 レベル上げ? それなら三百年程やりました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
第十五回ファンタジー小説大賞で奨励賞に選ばれました! 4月19日、一巻が刊行されました!  俺の名前は中山佑輔(なかやまゆうすけ)。作業ゲーが大好きなアラフォーのおっさんだ。みんなからは世界一の作業厨なんて呼ばれてたりもする。  そんな俺はある日、ゲーム中に心不全を起こして、そのまま死んでしまったんだ。  だけど、女神さまのお陰で、剣と魔法のファンタジーな世界に転生することが出来た。しかも!若くててかっこいい身体と寿命で死なないおまけつき!  俺はそこで、ひたすらレベル上げを頑張った。やっぱり、異世界に来たのなら、俺TUEEEEEとかやってみたいからな。  まあ、三百年程で、世界最強と言えるだけの強さを手に入れたんだ。だが、俺はその強さには満足出来なかった。  そう、俺はレベル上げやスキル取得だけをやっていた結果、戦闘技術を上げることをしなくなっていたんだ。  レベル差の暴力で勝っても、嬉しくない。そう思った俺は、戦闘技術も磨いたんだ。他にも、モノづくりなどの戦闘以外のものにも手を出し始めた。  そしたらもう……とんでもない年月が経過していた。だが、ここまでくると、俺の知識だけでは、出来ないことも増えてきた。   「久しぶりに、人間に会ってみようかな?」  そう思い始めた頃、我が家に客がやってきた。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。